2017-02-05 05:41 | カテゴリ:未分類

昨年夏に福島県浪江町で車を転がしていると、道路脇に低木の新鮮な若木がはえていたので、何気なくサンプリングして、大学に持ち帰った。サーベイメーターで測ると、葉の部分が異常に高い放射能値(660 cpm) を示した。葉の部分がこんなに高い内部被曝の植物はこれまで検知したことがなかったので、これは外部被曝のせいかな?と思った (図1,図2.)。

  

そこで押し葉にしたら、葉は実にペラペラの半透明で薄い紙のようになった。だからオートラジオグラフを撮ると実に鮮明な像がとれた。(図3,図4)。枝分かれしたどの葉も葉脈が明快にわかり、葉脈間もほぼ均一に内部被曝していることがわかる。外部被曝は全くない。

     

  木本(もくほん)で地上部がこんなに放射能が高いのはこれまで経験がない。あまり気にしていなかったのだが、この植物が生えていた土壌が腐葉土で可溶性の放射性セシウムを大量に含んでいたのかもしれない。あるいは、この植物の根のカリウムイオン・トランスポーター(膜輸送体)がかなり特異的にセシウムイオンも吸収するトランスポーターなのかもしれない。セシウムイオンの濃度を調べる必要が出てきた。この植物は意外にセシウムを濃縮する植物なのかもしれない。

 

  この植物の名前が長い間わからなかったのだが専門家に同定してもらったところ「ミツバウツギ」ということである。
     
  表1でもわかるように、この植物の葉や茎はとてつもなく高い放射線量で被曝をしていることがわかる。繰り返すが、図3,図4でわかるようにこの植物は全く外部被曝に特徴的なホットパーテイクルが見られない、すなわち全部腐葉土から放射能を吸収したものである。

      

 

 

 





ミツバウツギ低木jpeg 
 図1.ミツバウツギ。光っているのはセロテープ。
 
       
 
 
スライド1 
 図2 ミツバウツギ 黄色のメモ用紙にガイガーカウンターでの測定値(cpm:1分間計数値)がかかれている。
 
     
    
 
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図3.図2のオートラジオブラフ(ポジテイブ画像)放射能がどの葉にも均一に分布していることがわかる。全部内部被曝である。

 




 
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図4。図3のネガテイブ画像 中心部の茎の分かれ目が強く感光しているのは、いつも説明していますが,ここは導管と師管が複雑に入り乱れている部分なので放射能の滞留量が多いからなのです。
  

  

       

表1 ミツバウツギの放射能 


ミツバウツギの放射能jpeg 
(森敏)
謝辞: ミツバウツギは若林芳樹(株アスコット)氏による同定です。ありがとうございました!

2017-01-04 11:50 | カテゴリ:未分類
スライド2 


図1。直径10センチのキノコ。山土が砂質土壌で、ミネラルの吸着力が低いと思われる。地表面の放射線量は 毎時7.79マイクロシーベルト(ビニールが反射して見にくいですが)。 津島高校分校校庭にて。

 

 

キノコは放射性セシウムの吸収蓄積能力が高いので、いまでも福島とその隣県の自治体では野生のキノコは100ベクレル/kg新鮮重 以上のものが検出され続けており、販売は禁止されている。(付記1)

    

チェリノブイリ原発事故以降の文献でもヨーロッパばかりでなく、その後25年経った日本でもCs-137が有意に100ベクレル/kg新鮮重 を越えるものが、今回の福島原発事故が起こる以前にもあった。このようにキノコの自然環境の中でのセシウム吸収力はしぶといのである。

      

その一方では、放射性セシウム吸収力の強いキノコは原発事故由来の放射性銀(Ag-110m)の吸収力も強いことがチェリノブイリ以降の文献でもいくつか実証されている。(付記2)

        

小生らは、ずっと昆虫を中心に放射性銀(Ag-110m)の動向を追跡調査している。(付記3)

2016年には、ジョロウグモ以外のほとんどの昆虫では、放射性銀(Ag-110m)は消滅している。それは物理的な半減期減衰によるものと、銀の土壌への吸着不溶化によるものである。(付記3)

        

しかし、昨年2カ所でサルの糞を偶然採取したのでそれを測定したら、いずれも放射性銀(Ag-110m)を含んでいた。いったいサルは何を食べているからその糞に放射性銀が多いんだろうか?と、ずっと疑問に思っていた。
        
スライド1 
図2. サルの糞を乾燥させたもの (加賀谷雅道カメラマン提供)(表1 サルの糞 昼曽根 に対応)
 
スライド1 
 図3. 上:図2のオートラジオグラフ(ポジテイブ画像)。下:図2のネガテイブ画像
               
        最近浪江地区の松を採取した津島高校分校のグランドにあちこちはえている大きなキノコ〔図1〕を2日間にわたってゲルマニウム半導体で測定したら、わずかであるが放射性銀(Ag-110m) が検出された (表1。最下段の赤字)

               

  そこで思うのだが、猿は無意識にビタミンDの供給源としてキノコを大量に食べるのではないだろうか?(猿のクル病って聞いたいたことがないですよね。) しかしサルは消化しきれなくて繊維質を大部分排泄する。そのとき不要な放射性銀(Ag-110m)も吸収されずに濃縮されて排泄されるのではないだろうか? 図3の上下のオートラジオグラフを見ると、サルの糞 (表1 サルの糞 昼曽根 に対応)の中にはいくつかの際だって放射能が強いたべものの残査があることがわかる。これが野生のキノコかもしれない。
                   
       一度、いたずらに、どこかの動物園でサルにキノコを投げて、嗜好性を見てみようと思う。
       
      
         
      表1.各所のサルの糞とキノコの放射能 
糞とキノコjpeg 

     
(森敏)
           
    

(付記1)2013/11/23 : 放射能汚染キノコ2態 (クリックしてください)

(付記2)それはおそらくキノコの持つカリウムトランスポーターのどれかがごく微量のセシウムも吸収するためであるとおもわれる。(ただし、キノコからこの特異的な高親和性のカリウムトランスポーターをクローニングしたという例は小生は知らない)

(付記3)Hiromi Nakanishi et al . Proceedings of Japan Academy  Ser. B 91 (2015)160-174
      

 

 

2016-12-08 14:14 | カテゴリ:未分類
  小生は年のせいで(:今年末から後期高齢者なかまに突入した)、放射能汚染現地調査の途中では、結構頻繁に水分を補給している。そうしないと、足の筋肉への血流が悪くなるためか、時々足がしびれるからである。だから、必然的に頻繁に尿意をもようすので、自動車を降りて道ばたから少し林内に入って、尾籠(びろう)な話で恐縮だが、立ちションベンをする羽目になる。そのときは、必然的にあたりの植生をじっと眺めることになる。もちろんかなりの放射能を浴びながら。そういうときにも結構あたらしい発見がある。
  
     
       飯舘村の 「あいの沢」 は、本来はキャンプ場であったのだが、いまは人っ子一人いない。昨年夏にここでやっと除染作業が行われた。除染といっても道路と道の両側の20メートル幅の山林の下草や土を深さ15センチばかりをとりのぞくのだから、どうしても地下茎で連なっている一部のシダ類などは、のぞき切れていない所がある。そこまで徹底的にやると作業に時間がかかって、だから除染作業員の労賃がかかるので、しかたがないからだろう。一応地表面が毎時0.23マイクロシーベルトにまで低下することを目指しているようではあるが。
  
  昨年の春、例によって小便をすべく林内に入った。数メートル入った林の中の空間線量は毎時4.5マイクロシーベルトであった。そこでは芽を出し始めたばかりの丈の低いワラビが群生していた。
      
  ワラビのいくつかを根から切り取って研究室に持ち帰って、ガイガーカウンターで測定してみると、意外に葉のベータ放射線量が高いので、それをオートラジオグラフに取ってみた(図2)。また、組織を各部位にわけて放射能を測定した(表1)。
 

 
スライド4 
 
 図1.春先の若いワラビの写真

 
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図2.図1の若いワラビのオートラジオグラフ
   
 
 


  表1 ワラビの各部位の放射能(ベクレル/Kg乾物重)
 ワラビjpeg  



       図2で定性的に,表1で定量的に明らかなように、シダも未展開葉では若干放射性セシウム含量が高い。しかし、次の図3のように葉が全面展開したものでは、図4、図5で見るように、枝の最先端の葉は少し他より放射能が高いようだが(図5のネガテイブ画像で特に理解されると思う)、比較的放射能は全葉に均一に分布しているように見える。また、一見、左側の茎のみの部分が強く感光しているように見えるが、これは茎が葉に比べて数倍の厚みがあるので、放射能が重なって感光しているためである。


  
 
スライド1 
 図3.浪江町で採取したシダ
 
スライド2 
 
 図4.図3のシダのオートラジオグラフ ポジ画像
 
 
スライド3 
 図5.図3のートラジオグラフ。ネガ画像
 
 
  
地下茎の多年生のシダ類(ワラビはシダ類の一種)はタケノコと同じように地下系が土壌の表層直下数センチあたりを縦横にうねっていて、根がそのあたりまでに大部分が集積している「土壌の可給態の放射能」を吸収して地下系を通じてあちこちの新芽に直ちに分配輸送されるので、いつまでも地上部の放射能が高く推移する可能性が高いのである。


  

 
(森敏)
 
付記1:タケノコについては以下のブログを参照ください。
 
 2016/05/20 :
まだタケノコは要警戒: 給食のタケノコご飯から基準超のセシウム

 
付記2:シダ類の同定には 「フィールド版 写真でわかるシダ図鑑  池田怜伸 著」 トンボ出版 を参考にした。


 
 
 
  
2016-06-20 06:46 | カテゴリ:未分類

   
焼却処理が完了 放射性物質汚染の下水汚泥 2016/06/01 11:02 福島民報 )

 郡山市の県県中浄化センター下水汚泥仮設焼却施設で31日、東京電力福島第一原発事故による放射性物質に汚染された下水汚泥の処理が完了し、施設の運転が終了した。
 施設は環境省が整備し、平成25年9月に1キロ当たり8000ベクレルを超える放射性セシウムを含む「指定廃棄物」の汚泥約1万1千トンの焼却を開始した。26年4月からは同8000ベクレル以下の汚泥約2万7千トンを県が処理した。
 汚泥は全て同センターでの下水処理の過程で発生した。焼却前、フレコンバッグ(除染用収納袋)に入れられ、センターの敷地内に山積みされていた。
 焼却灰約7500トンはフレコンバッグと貨物コンテナに入れて敷地内で保管している。このうち約7千トンは指定廃棄物で、国有化された富岡町の管理型処分場に搬入される見込み。8000ベクレル以下の残る約500トンは埋め立て処分できるが、県は環境省と対応を協議している。県は29年3月までに施設の解体を完了する予定。費用は東電に請求する。
   
   

去る20151121()午後900分~949分 に放映された
NHKスペシャル シリーズ「東日本大震災追跡原発事故のゴミ」
に関しては、このWINEPブログでも紹介したのだが、読者はすでに忘却の彼方だと思う。
   
     このときの現地の映像がすこし放映された『福島県・県中浄化センター』について、「放射能汚染した活性汚泥の焼却を終えた」という由の記事が、上記「福島民報」に掲載された。小生はこのNHKテレビクルーの取材のときに、頼まれて福島県郡山にある「県中浄化センター」に同行したので、今回の新聞記事には感慨深いものがある。小生自身もこの時カメラ撮影したので、以下に施設を簡単に紹介しておきたい。最近の義務教育では生活科学科での環境教育の一環として <下水道施設の見学> などが組み込まれているようなので、若い世代には以下の内容はめずらしくもないかもしれない。しかし60歳以上の日本国民は下水道施設を見学された経験のない方が多いと思うので。


  
スライド1

 図1.福島県「県中浄化センター」本館の最上階のガラス窓越しに北側の 微生物による汚泥処理施設 を俯瞰した光景。 画面中央部全面は広大な開放型の曝気槽。 
  
     
  図1の手前の暗渠(あんきょ)から下水を取水し、画面中央部の開放系の曝気(ばっき)層で好気的に菌体を培養して汚水成分を栄養源として吸収させて増殖させて、左上方の白い建家(図2)の中に生じた菌体(汚泥成分)を回収し、汚泥脱水機(図3、図4)で、水分を絞って濃縮汚泥とし、これを回収し(ここに菌体に取り込まれた放射能が回収される)、きれいになった:(生物的酸素要求量(BOD)が低下した)水は向かいの山がわの下を流れる阿武隈川に放流される。
 
  原発事故以来この県中浄化センターでは濃縮汚泥の一部を掻き取って1リットルのプラスチック容器に入れて(図5)、放射能測定器で放射能を測定している(図6)。以前にもWINEPブログで紹介したように、主としてI-131、Cs-134、Cs-137が現在でも検出され続けている。

 

 

 

odeisyoritou.jpg   
 
図2.汚泥処理棟

 


 
 

10%汚泥脱水機 

図3.汚泥脱水機 


 
 

 

dassuisyoricyuu 10 

図4. 汚泥脱水機の横のふたを開けたところ。フィルター越しに絞り水がでている。

 


 
 

odeisokuteiyouki.jpg 
図5.汚泥脱水機から掻き取った汚泥が入ったの測定用容器
 

 

 

 

10%bekurerumonita 

図6.放射能測定器。このなかに図5の容器が入っている。測定値が机上のコンピューター画面上上でピークパターンとして表示されている。 

 

 
スライド3 
図7. 奥の赤い建物が本館。玄関南正面に汚泥が入ったフレコンバックががずらりと約1万袋並んでいる。写真右の空き地は、これまでに焼却処理にまわされたフレコンバックがあったところ。図1の写真はこの本館最上階から北の山側を俯瞰したもの。 

 

  図7にみられるフレコンバック内の汚泥を順番に高温で燃焼して減容化していっているのだと所員に説明された。高温燃焼は民間業者が請け負っており、「平成27年までに終了すべし」という地域住民との契約であるので、その時点で解体するとのことであった(今回の福島民報での報道は、その住民との約束を忠実に実行している、ということの表明なのだろう)。この高温燃焼炉なるものは建屋全体が全面的に高い塀に覆われたもので、中身は残念ながら見学させてもらえなかった。高温燃焼で出てきた線量の高い飛灰を付着したバグフィルターや、高濃度に濃縮された焼却灰の取り扱いをどのように行っているのか非常に興味があったのだが、現在あいにく工事中という理由で見学は断られた。映像がテレビで放映されて、クレームがくるのをおそれたのかもしれない。この燃焼施設などの建設や運転費用なども教えてもらえなかった。上記の記事では汚泥焼却にかかった費用は東京電力に請求すると報じられている。当然だろうが、いつ実現するのだろうか? 

スライド2 
図8.燃焼した灰やバグフィルターなどの保管庫エリア。奥の方にももう一か所山積みされている。あと2カ所別のところにも。
 
    

  放射線量が高い焼却灰などはフレコンバックに詰められて、それらがこの時点ではステンレス製(?)の20トンコンテナに内蔵されていた。図3.の写真に見るように、このコンテナが20(横)x3(横)x4(高さ)x(2カ所)=480個ばかり集積されており、まだ増える様相であった。写真のコンテナを囲む緑のフェンスの脇で放射線量を所員に測定してもらうと毎時0.23マイクロシーベルトで、そこからはなれるごとに線量は低下していったが5メートル離れても 毎時0.12マイクロシーベルトあった。コンテナの中身は相当な放射線量と思われる。我々が訪問した昨年10月の時点では、このコンテナに収蔵された高濃度放射能含有廃棄物はこれをどこに持っていって貯蔵するかあてがないようであった。しかし今回の新聞報道では「このうち約7千トンは指定廃棄物で、国有化された富岡町の管理型処分場に搬入される見込み」とある。実際にはいつになることやら。
        
  
現在も発生し続けている低濃度放射能汚染汚泥は、許容基準が8000Bq/kg以下という暫定基準を満たしているかぎり、従来通りの扱いになるのだろう。しかしいくら合法的だと言っても、従来通りのルートで埋め立てや従来通りの燃焼炉での焼却にただちに持っていけるかどうか、不透明なところがある。しばらくはまだ敷地内に集積保管されるのではないだろうか。
             
  以前にも述べたように、福島県ではこの県中浄化センターと県北浄化センターは原発事故以来、忠実に活性汚泥の放射能値を毎日測定し毎月ごとにホームページ上に開示している。このモニタリング事業は地味だが非常にすばらしい活動だと小生には思える。なぜなら、もし東電福島原発が廃炉工程で再度爆発したりして放射能が飛び散れば、それが直ちに活性汚泥に反映されることが今や明らかになっているからである。このモニタリング事業は一種の原発の監視機構として機能しているのである。したがって福島第一原発の廃炉が続くまでずっと続けるべき事業だと思う。
 
      
(森敏)
付記:濃縮汚泥にいまだにI-131が検出され続けている理由については、別の機会に紹介したい。
追記:以下の記事です。ご参照ください。
福島県では依然として下水に放射性ヨウ素(I-131) が放流されている 
  
 


  
 
  



     

  


2016-03-31 07:46 | カテゴリ:未分類

18日に本格運用 第一原発の焼却設備 東電廃炉作業の廃棄物減容化            

  2016・03・16福島民報 )

 東京電力は15日、福島第一原発の廃炉作業に伴い増え続けている廃棄物を減らす「雑固体廃棄物焼却設備」の本格運用を18日に始めると発表した。東電は、焼却で廃棄物の体積を20分の1程度まで減らせ、保管場の確保が課題だった使用済み防護服などの減容化につながるとしている。
 焼却設備は昨年11月に敷地内に完成した。事故前からあった設備が震災の影響で使えなくなり新設した。
 第一原発では現在、1日約7千人の作業員が働いている。廃棄物として保管されている防護服などの衣類は昨年末時点で約7万立方メートルに上っており、減容化できなければ将来的に保管場所がなくなり、新たに整備せざるを得ない恐れがあった。
 東電は2月初旬から3月初旬にかけて、実際に廃炉作業で使った防護服や手袋などを燃やす試験焼却を実施した。約42トンを処理し、排ガスなどに含まれる放射性物質の量は検出下限値未満だった。
 試験焼却をめぐっては、焼却で発生する高温の排ガスを冷やす冷却器で水滴漏れが確認され、焼却を一時中断した。
 第一原発の廃棄物には防護服などのほか、設備の解体で発生したがれき類が約17万立方メートル、伐採された木材が約9万立方メートルある。
 いずれも放射性物質で汚染されているため構外に運び出せず、敷地内で保管している。木材なども焼却し、コンクリートや金属類は細かく砕くなどして体積を小さくした上で保管する。

        

防護服などの第1原発・廃棄物焼却、18日から本格運用開始

20160316 0855分 (福島民友)          
 東京電力は15日、福島第1原発の廃炉作業に伴い増え続ける防護服などの廃棄物を燃やすための「雑固体廃棄物焼却設備」の本格運用を18日に開始すると発表した。試験焼却で排ガスの放射性物質濃度が全て検出限界値未満であることが確認されたことなどから、本格運用に着手する。

 東電によると、焼却設備には放射性物質が付着したちりの飛散を防ぐバグフィルターなどが設置されている。排気筒に設置された二つのガスモニタで、汚染された廃棄物を燃やした際の放射線量を測定したところ、一つは1.76~2.76cps(1秒当たりの放射線計測数)、もう一つは1.85~3.04cpsで、ともに焼却停止時と同等の値だった。

 試験焼却では42トンの廃棄物を燃やし、0.8トン(ドラム缶16本分)の焼却灰が発生した。焼却灰の入ったドラム缶の表面線量率は毎時7~160マイクロシーベルトで、放射性物質に汚染された廃棄物専用の固体廃棄物貯蔵庫で保管される。

               

  以上、福島民報と福島民友の記事を併記した。お互いに数値的に欠陥を補うような記事になっている。

記事のなかで、わかりやすくするために一秒間計数値(cps)から一分間計数値(60秒) (cpm)に換算すると、焼却場の2つの排ガスモニターは105.6165.6 cpmであり、111182.4 cpmで、これが焼却停止時の放射線量(バックグラウンド値)と同じだったというのだから、東電敷地内での焼却場周辺の放射線量は風向きによってまだ相当変動しているということがわかる。これを要するに、こんなにバックグラウンドが高いと、排ガスの放射能の濃度は誤差の範囲に収まってしまうということであろう。住民が住まない東電の敷地内だから堂々とやれることだ。通常のバックグラウンドは数十cpm以下である。
     

  一方、焼却灰(これには焼却飛灰をトラップした高濃度汚染バグフィルターも含まれていると思われるが)を入れたドラム缶の素材と厚みが記事には記されていないが、その外側からは毎時7160マイクロシーベルトも放射線が検出されている。これは相当高い数値である。おそらく中身は数千万ベクレル/kgであろう。
         

  この高濃度汚染灰を有するドラム缶の埋設も住民がいない東電の敷地内だから堂々とできることだ。

    

  翻って、福島県内の高濃度汚染林地の空間線量は毎時10-100マイクロシーベルトある。だから、この伝でいけば、高濃度汚染の国有林や自治体が有する林地で焼却場を設けて大々的に減容化を促進することは、当初からやるべきことであった。上気の記事に紹介されている東電の提供する資料からは 最終的に 0.8トン/42トン=1/60 の減容化率となる。ドラム缶の容積が加わるので結局 1/20 ということになるのかも知れない(だが細かい計算の詳細は記事だけからはわからない。このように世の中の新聞記事が提供する数値はいつも計算の根拠資料として非常に使いにくい)。
  
      
       

  WINEPブログでは以下のように、早くから何度も焼却による減容化の必要性を繰り返し主張してきたのだが、2016年現在でも2-3カ所を除いて焼却による減容化はなかなか現実化していない。それは、除染作業を請け負う大手建設会社(つまりゼネコン)が放射能汚染土壌の表土を5-10センチに剥いで、フレコンバッグに積み上げておく作業のほうが、お金が儲かるだからとしか考えられない。
     
  彼らがいかにもくそまじめにやっていることは「除染作業」ではなく「移染作業」であるといまや日本人ならではだれもが認識していることである。「土を掘れば経済が活性化する」という、この除染作業は昔大学の授業で習った「ケインズ経済学」のシンプルな原理を地で行っているとしか思えない。しかしこれは途方もない税金の垂れ流しである。早くまじめに減容化の流れを作れといいたい。

                 
 
·  2015/11/21 : NHKスペシャル シリーズ東日本大震災 追跡原発事故のゴミ
·  2014/06/30 :
意外に早く「放射能汚染土壌の減容化技術」は達成するかもしれない

·  2014/01/26 : この選別の原理はなんですかね?

·  2013/06/24 : 研究者は環境放射能の除染廃棄物の減容化研究をもっと真剣にやるべきだ

2012/08/29 : 再論:ロータリーキルンによる放射性セシウム汚染土壌の減容化について

2012/03/24 : 環境省による減容化実験の公募採択課題について

·  2012/02/22 : 今度こそ本物であってほしい

2012/01/20 : 「灰は危険」とばかり言わずにそこから「教訓」を導き出すべきだ

·  2012/01/03 : 大成建設はやる気らしい

·  2011/09/03 : 提案17:放射性セシウム濃厚汚染表土は汚染現場で焼却処理すべきである

          
(森敏)
付記:みなさま、今回の記事と直接関係はありませんが、タンポポの奇形観察をお忘れなく。
2016/03/10 :
タンポポの奇形をお見逃しなく :観察次第ご連絡ください (クリックどうぞ)
 

 

 

 

 


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