2016-05-20 14:01 | カテゴリ:未分類

給食のタケノコご飯から基準超のセシウム 宇都宮の小学校

 宇都宮市は11日、市内の小学校で10日に提供した学校給食のタケノコご飯のタケノコから、基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。

 市によると、10日の給食で同校児童531人が食べたタケノコごはんを簡易検査したところ、基準を超える放射性セシウムが疑われたため、栃木県林業センターで精密測定。その結果、最高で234ベクレルを検出した。

 県環境森林部がタケノコの出荷者に事情を聴いたところ、出荷制限がかかっていない宇都宮市産に、出荷制限区域のタケノコが交じっていた可能性があるという。(産経新聞 2016:5:11
  

              

以上のように栃木県宇都宮市の学校給食に使われたタケノコから規準越えのタケノコが検出された。栃木県が全県でタケノコを全量検査して出荷しているということは聞いていないので、おそらくこれは氷山の一角だろう。5年経って福島県以外の栃木、群馬、茨城、千葉などの行政や住民は山菜料理に無警戒になりつつあるようで、今後もこういう事件が頻発するだろう。山菜や椎茸など行政や流通業者で食品の放射能の長期モニタリング体制を敷いていないところでは、販売網をすり抜けて、却って人々の口に放射能が取り込まれる可能性が出てきたといえよう。2011年の東電福島第一原発事故当時は放射能汚染に神経質になっていたので人々は山菜はあまり口にしなくなっていたからである。人々の警戒心がゆるんできたのである。
  

  市販の農家が栽培する栽培作物はセシウムイオンと拮抗するカリウムイオンの施肥が農協などで指導されているところでは、可食部の放射性セシウム含量が低く抑えられる可能性が高いが、山菜には養殖物を含めて積極的に施肥基準値を定めたカリウムが施肥されているとは思えない。なので、どうしてもタケノコの可食部の放射能は事故年(2011年)から比べて一定程度急速に低下しているとしても、その後は極めてゆっくりと低下しているものと思われる。タケノコ林の中で放射性セシオウムの循環が始まっていると考えられる。
     

  ところで小生たちはすでにタケノコの分析結果を2014年に論文で報告している(付記1)、オートラジオグラフも以前にこのWINEPブログで紹介している(付記2)。そのブログで紹介したときは論文に投稿する前であったのでブログでは詳しいことは述べられなかった。なので、ここであらためて少し論文の内容などを紹介しておきたい。(詳しいことは付記の論文をご覧ください)。
     
スライド2 
図1.マダケ(真竹)のオートラジオグラフ (上の写真が原図、下がオートラジオグラフ)。
両者でタケノコの像の位置が少し入れ替わっていますが、はしご状(ラダー)があるのは薄く縦切りにした断面です。今のびつつあるタケノコの先端部分が非常に濃い(放射性セシウム濃度が高い)ことがわかります。(測定値は図3に示してあります)

 
  
スライド3
  
 図2.マダケの皮をはいだ可食部のみを薄く5枚に縦切りにしたモノのオートラジオグラフ。先端部が濃く写っていることがわかります。上の写真のように新鮮な時にIP-プレートにセットしたのですが、感光中にだんだん乾いてくるので、下のオートグラフの像は上の写真と比べて位置が少し動いているとともに少ししぼんで見えます。 
  
スライド1
図3.上はマダケの可食部を上部(TOP25番目が最先端)から順番に節位ごとに輪切りにして、測定した放射性セシウム(134Cs + 137Cs)の濃度。それぞれの節位に対応するタケノコの皮の部分も測定しています。下は同じ部位の天然の非放射性セシウム(133Cs)濃度。可食部の放射性セシウムは先端部分の柔らかいところが非常に高いことがわかります。(133Csが皮の先端部で異常に高い理由はいまだにわかりません)。
 
スライド1 
図4.上の写真は竹藪のなかの各所の竹の皮を薄くカッターナイフで削ったモノ。下はそのオートラジオグラフ。竹の表皮の表面側に沈着したフォールアウトははがれ落ちていないで固着したままであることがわかる。5年たってこの竹が枯れたりしたら、除去しなければ、虫に食われて生物の食物連鎖(林内循環)に入っていく。
    

(森敏)

付記1.

Hiromi Nakanishi, Houdo Tanaka, Kouki Takeda, Keitaro Tanoi, Atsushi Hirose, Seiji Nagasaka, Takashi Yamakawa & Satoshi Mori (2014) Radioactive cesium distribution in bamboo [Phyllostachys reticulata (Rupr) K. Koch] shoots after the TEPCO Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant disaster, Soil Science and Plant Nutrition, 60:6,801-808,

(無料でダウンロードできます)
   

付記2.

 

 

 

 

 


2016-04-18 12:40 | カテゴリ:未分類

        九州には熊本の北西110kmに玄海原発が運転停止しており、南90kmに川内原発が再稼働している。一方北東140kmの対岸の愛媛県には伊方原発が運転停止している。

    

        首相官邸と原子力規制委員会が互いにもたれ合って、稼働中の川内原発を「運転停止しない」ための屁理屈を模索している。首相官邸と原子力規制委員会どちらも今後の連鎖地震で川内原発が暴走したときの「刑事責任」をとりたくないがためである。

 

        熊本地震で熊本から北東に走る活断層沿いの地域の人ばかりでなく九州一円の人心が不安に落入っている。こんなときのリスク管理はまず人心を沈めることではないだろうか。次々と地震が発生している最中にも震源の近隣に稼働中の原発があるということだけでも、人々は不安要因を抱えることになっている。

 

        いつどこでどれくらいの規模の地震が発生するかなどの予知などできない。この点では科学は全く無力であることは今日の常識だ。だから原子力規制委員会がどんなに原発が安心安全といっても今では全く信用できない。

 

        菅直人民主党政権は、過去の自民党政権が営々と築き上げてきた原子力平和利用路線の象徴である福島第一原発が、東日本大震災によってメルトダウンした責任をとらされて退陣を余儀なくされた。なんと「対応がまずかった」という非科学的な理由からである。
      
  今では明きらかになっている、すでにメルトダウンしていた原発を、その後のどんなに対応しても、放射能の広域拡散汚染は防ぎようがなかったにもかかわらず、当時はマスコミが大合唱して、そういう「やいのやいの」の無責任な政権追い落としの俗論が通じたのである。

            

        安倍自民党政権も、今回の想定外の地震対策を誤ると、これが「政権崩壊への引き金」になるかもしれない。川内原発をひとまず停止して政権崩壊への連鎖が起こらないようにこの不安要因をあらかじめ取り除いておくことが必要だろう。これは「政治判断」の問題だから。安倍首相には「頑迷」ではなくそれくらいの「柔軟性」を望みたい。原発稼働自体がつねに想定外の大きなリスク要因であることは論を待たない。
       
  蛇足だが、産油国が増産停止で協調できずに石油価格は今後も低下の一方だから、九州電力も発電力の小さな川内原発を今後数ヶ月停止しても大した損益にはならないだろう。 

 
    
(森敏)
追記:この記事を書いた直後に以下のニュースがあった。(4月18日1時50分)
相変わらずですね。これで3つの原発のどれかに異常が起これば「想定外」といって逃げるんでしょうね。
原子力規制員会の工学的発想しかできない連中は、地域住民を人体実験にさらすつもりなのでしょう。
 

規制委員長「川内原発停止不要」 地震で臨時会合

2016418 1329
 
原子力規制委員会の田中俊一委員長は18日、記者会見し、熊本、大分両県を中心に相次ぐ地震を受け、全国で唯一稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を予防的に停止させる可能性について「安全上の理由ああれば止めなければならないが、今の状況で問題があるとは判断していない」と否定した。

 規制委は同日、臨時会合を開き、九州、中四国地方の4原発に異常がないことを確認。揺れの大きさを示す最大加速度は、九電玄海原発(佐賀県玄海町)の20・3ガルが最も大きく、いずれの原発も原子炉が自動停止する設定値を下回っていたが、地震が続いていることから状況を注視する。

 規制委の情報発信が不十分と批判が出ていることに関し田中委員長は「率直に反省しないといけない」と陳謝した。

 会合では原子力規制庁が、今回活動した布田川・日奈久断層帯に関し、川内1、2号機の新規制基準への適合性審査で、断層の長さ92・7キロ、マグニチュード8・1と想定して地震動を評価したと説明。原発への距離が約90キロと遠く、影響は限定的とした。

 薩摩川内市では14日以降、最大で震度4が観測されたが、原発に伝わった揺れはそれより小さく、九電は安全上影響がないとして発電を継続。政府も「運転を停止する理由はない」(菅義偉官房長官)としている。

 玄海原発、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)、中国電力島根原発(松江市)は、いずれも運転を停止中。核燃料は使用済み燃料プールに移されており、一連の地震で異常は確認されていない。

(共同)

 

 

2016-04-02 07:15 | カテゴリ:未分類

原発が標的だった?察知され変更か 自爆テロ容疑者

ベルギーのテロ事件で、容疑者が原発を狙っていた可能性が出てきました。地元メディアは、テロで自爆した容疑者のバクラウィ兄弟が、事件前にベルギーの原子力開発の責任者が自宅に出入りする様子をビデオカメラで隠し撮りしていたと伝えました。パリの同時テロに関連した当局の家宅捜索でこのビデオが押収され、先月、140人の兵士が原発周辺に配置されたということです。地元メディアは「容疑者は計画が事前に察知されたため、空港や地下鉄の爆破テロに変えた可能性がある」と伝えています。(2016・03・24)ANNNEWS

 

   

  小生の知人で航空機事故の専門家である某氏は、リスク管理の専門家でもあるのだが、従来事故原因として呼称されてきた「ヒューマンエラー」という言葉だけでは最近の航空機事故はくくれないと年賀状で書いてきた。彼は「ヒューマンファクター」という言葉を提唱している。

      

機器の誤作動以外に、いくら厳格なマニュアル通りのトレーニングを受けても無意識のうちに操作を間違って事故が起きる場合の「ヒューマンエラー」と概念を区別して、意図的に事故を起こそうとしている人物に事故が起因する場合は「ヒューマンファクター」と呼ぶべきである、と提唱している。

      

  上記のANNNEWSの <<原発テロ>> は、まさにその範疇の事故に属する。原発労働者の中に全くそんな人物が紛れ込んでいないとだれが断言できるだろうか? 原発労働者の心まで立ち入って管理するのは至難の業であろう。世界に頻発しているように、人生に絶望的な、あるいはストレスで神経が衰弱した、知的レベルの高い若者が、自爆テロを決意して、「原発テロ」に矛先を向けてくることも十分にありうることだと思われる。

      

世界のどこかで、今度は「ヒューマンエラー」ではなく「ヒューマンファクター」による原発メルトダウンが起こされる予感がしてきた。
 
  日本の原子力規制委員会はそんな「人の深層心理」に踏み込んだ規制基準をどこにも設けていないだろう。また規制委員会に属する工学的発想しかできないメンバーにそんな基準を草案できるはずもない。だから現在の原発規制基準をクリアしたからと言って、今後の再稼働原発はぜんぜん安全安心ではないのである。事故はいつも新しいタイプの要因(それこそ「想定外」)に起因して起こるからである。無責任な言い方かもしれないが、次に世界のどこかでおこる原発事故は地震や津波や火山爆発によるものではなく、「ヒューマンファクター」によるものではないか? と小生は予測する。そうならないことを祈る。
         
(森敏)

付記:この記事を書いたあと、4月9日付けの朝日新聞では、「私の視点」という投稿欄(実際は依頼原稿が多そうだが)で、

 

原発どう守る 「フクシマ」テロの可能性

 

というタイトルで NEW YORK TINMES の記事を抄訳で紹介している。

著者はハーバードケネデイ行政大学院ベルファーセンター所長(グレアム・アリソン)、もと米エネルギー省国家核安全保障局副局長(ウイリアム・トビー)。

 

それによると

::(略):: 先月のブリュッセルの攻撃後やっと、ベルギー当局は核施設の従業員の個人情報を調べ、10人ほどの従業員の作業員資格は無効にすべきだと結論づけた。

最低限の対策として、兵器転用できる核物質もしくは、大規模な放射能漏れを引き起こすおそれがある低濃縮核燃料を保有するすべての施設は、武装した警備員が守るべきだ。そして、原発の全従業員の経歴は、雇用前に徹底的に調査すべきだ。

テロリストたちは原発に目を向けている。だからこそわれわれも目を向けなければならない。

 

とある。この記事の趣旨は小生の文章とあまり変わらない。

 

朝日新聞はこの原発部門のテロのリスク管理に関する専門家が日本にはいないと思っているのだろう。原子力規制庁にはぜひ専門官を設置すべきと考える。政府にテロで原発が爆発したときに「想定外」といわせないためにも。

2016-03-22 21:10 | カテゴリ:未分類

裁判官らが避難区域3町で検証 「生業を返せ」福島原発訴訟
          

 東京電力福島第1原発事故による県内外の被災者約4000人が、国と東電に原状回復や慰謝料を求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟で、福島地裁の金沢秀樹裁判長らは17日、全域が避難区域となっている浪江、双葉、富岡の3町を訪れ、被害の現状を検証した。原告側弁護団によると、全国の20を超える地裁で起こされている原発事故をめぐる訴訟で現地で検証が行われるのは初めて。

 検証は審理の一環として行われ、金沢裁判長と裁判官2人を含む計約80人が参加した。この日の検証の結果は証拠として扱われ、判決に向けた判断材料となる。原告側が「現場に行き、被害を五官で感じることが必要」として地裁に検証の実施を求めていた

 金沢裁判長らは川俣町山木屋地区を経由して浪江町に入った。

 全身を覆う防護服に着替えた後、居住制限区域の同町立野にある、畜産業の原告の自宅を訪れ、動物の侵入や雨風によって荒れ果てた住宅や、震災当時150頭の牛がいたという牛舎を見て回った。

 双葉町では、JR双葉駅から荒廃した店が並ぶ商店街を歩き、帰還困難区域の原告宅を訪れた。第1原発から北西約4キロの位置にあり、自営業を営んでいた双葉町長塚の福田祐司さん(67)の自宅前に近づくと、裁判官らが持っていた線量計の警戒音が一斉に鳴り始めた。その中で福田さんは、自慢だった庭園や、動物に荒らされた自宅の様子を説明した。裁判官らは放射線量が高く、原則立ち入り禁止となっている住宅内部の被害状況などを確認した。

 富岡町では道路1本を境に、帰還困難区域と日中の立ち入りができる居住制限区域に分けられた現状を見た。

 検証には国、東電側の代理人らも同行した。

 原告側は福島市の仮設住宅など中通りでの検証も求めており、次回5月17日の口頭弁論で実施が正式決定する見通し。
20160318 0810分 (福島民友)
   
  

上記、福島民友(福島民報にも同じ記事が掲載されている)に、原発訴訟で担当裁判官が放射能汚染現場にでかけて実況見分を行っているという記事が出ている。線量計を持って防護服を着ての、実地検証ということである。現場を訪れて、その場の4次元の空気(雰囲気)を五感で感じ取り、測定計器でその場で定量的な値を得るということは、科学者ならあたりまえのことである。ところが実に不思議なことであるが、日本の裁判官は、「書面審査」と「証拠物件」と、「証人尋問」で最初から最後まで貫き通すことがほとんどである。小生のこれまでのいくつかの公害裁判にかかわった経験からの感想では、裁判官が現場検証をあまりしたがらないのは「現場に出かけて稚拙な質問をして恥をかきたくない」という間違ったエリート意識からくるもではないかと思われる。

      

現場検証では、文字化されたり図面化されたり、写真にとられたりして、人為加工処理された(なんらかのフィルターにかけられた)裁判用の原告や被告から提出された証拠類では、本当に明らかにされていない事象が浮かび上がってくる可能性が大いにある。なので、本来ならばどんな裁判でも、裁判官自身による「現場検証」は必須であると思う。

   

今回原発裁判では初めて現場検証が行われたとのことである。この報道を聞いて小生には「原発裁判もやっとここまで来たか」と感慨新たなるものがある。

     

ここからは蛇足で、私事になるが、小生は15年前ごろ、東京理科大学の専門職大学院(MOT)で2年間客員教授を務めたことがある。ここでは社会人が多額の年間授業料を払って、仕事がはねてから午後6時から午後9時までの授業を各人がパソコンを持ち込んで熱心に聴講していた。その中に、女性の司法研修生がいた。小生の授業は主として土壌・食料・健康・環境などに関してであったのだが、若いころいくつかの公害裁判にかかわった経験から、ダイオキシン、水俣病、催涙ガス、カドミウム中毒、DNA鑑定、農薬汚染、放射能汚染などの公害問題も講義した。理系の知識が必要であったが、彼女はよく食いついてきていたと思う。現代裁判は理系の知識がなくては判断ができない場合が多いので、極力若い時に裁判官候補生は機会をとらえて、自然科学的知識を積極的に取り込んでおくべきだ、裁判官自身による現場検証が非常に重要である、ということを彼女には強調したつもりである。

    

最近、テレビや新聞では科学鑑定を争う裁判にも陪席裁判官や裁判長に女性が起用されている場合が多くなっている。名前と顔をすっかり忘れたが、そのうちの誰かは当時の彼女であるかもしれないと思うことがある。
    
(森敏)


付記:みなさま、タンポポの奇形観察お忘れなく。
2016/03/10 : タンポポの奇形をお見逃しなく :観察次第ご連絡ください

 


2015-12-14 07:20 | カテゴリ:未分類

これまでの「WINEPブログ」で何度も述べてきたように、小生の所属していた東大農学部植物栄養肥料学研究室は(故)三井進午教授が農学関連の研究への放射性同位元素(ラジオアイソトープ)導入の日本での先駆者であった。だから、1960年代は東海村の国産第一号原子炉(JRR1)を放射性同位元素の製造に利用して植物生理学実験をしたり、1970年代以降は高崎の原子力研究所での泊まり込みでの共同利用研究が連綿と行われてきた。三井先生自身は国際原子力機構(IAEA)の参事で頻繁にウイーンでの国際会議に通っていた。IAEAからは研究資金ももらっていた。また、研究室にはインドからの留学生も受け入れていた。

    

今回日本とインドが原発輸出協定を結ぶことにしたようだ。しかし、インドは原爆を所持し、核実験を行い、NPT(核不拡散条約)署名国に頑として参加していない。インドからすれば原爆を有するパキスタンや中国が脅威であるので、抑止力としてぜったいに原子爆弾は放棄しないという立場である。だから従来から日本の文科省はインドからの留学生を原子力機構など原子力関連の研究に共同参画させなかった。核保有国でNPT非加盟国の留学生たちを日本の核の機密に近付けさせない(軍事目的に原子力技術を転用されたら困るので「スパイ」させない)ために施設に立ち入りさせない、というのがその建前上の強固な理由であった。そのために、せっかくの先端的なラジオアイソトープを用いた高度の研究手法を彼等に体験させられずに泣く泣く帰国させざるをえないことも多かった。核を保有し、核実験を繰り返した中国やパキスタンからの留学生に対しても同じ扱いだった。被爆国として核に関しては日本国政府はそれほどかたくなだったのである。

 

日本-インド間で、どの研究分野がいちばん学術交流を推進してきたのかと問われれば、昔は農業分野、現在では間違いなく IT関連だろう。上述のような断固とした日本政府の理由で理学工学系の日ー印間の「原子力関連の交流」は皆無であったはずである。今回は、原発輸出を契機にその矜持を簡単に捨ててしまおうということらしい。原発輸出のためには被爆国の悲願であるNTP(核不拡散条約)という国際的な協約なんかどうでもいい、ということなんだ。『これを契機にインドが今後NTPに加盟しやすくなるかもしれない』とか『停電が頻発するインドの電源が安定する』だとか『COP21の温室効果ガス削減に寄与できる』とか、『将来インドが原爆実験をやったら即原発支援を停止する』とか(単なる口約束)、安倍首相と岸田外相が国民を愚弄する詭弁を繰り返している。それをマスコミが無批判に繰り返し報道している。「嘘も堂々と繰り返せば、国民はいずれ忘却してどうでもよくなる、つまりいつの間にか既定事実になる」という政策手法が安倍政権の国民愚弄化政策として堂々とまかり通っている。安倍は被爆国日本の世界に冠たる矜持をかなぐり捨てて、福島第一原発暴発国日本の居直りを世界に宣言した。言っちゃ悪いが、政治家としての職業倫理がずっこけた〇〇としか思えない. 東芝・三菱重工・日立など「原発コンツエルン」に天下りをねらう経産省や財務省の狡猾な官僚に操られているのだろう。彼は国を危うくする。(○○に適当な言葉を入れよ)

 

 

(森敏)

付記1:インドからの一番最初の留学生マハトマ・シン氏は非常に優秀であり、戦後のインド人留学生としては日本での最初の農学博士号を得た人物である。「老朽化水田」の原理を学び帰国後「インドの水田農業」の生産力上昇の強力な立役者となった。その後も植物栄養肥料学研究室ではインドから数人が留学してきた。中でもG.K.バラット氏は物静かなベジタリアンで彼と小生とはヒンデイー哲学論義をよくしたものである。素晴らしい人格者だった。非常にためになった。我々の分野ばかりでなくとも農学関連分野ではインドの各大学との連携は続いたが、ほかの医学、薬学、工学、理学の研究分野ではそうでもなかったように思う。インドの研究者は英語が通じる宗主国U.K.や U.S.A.への志向が強く、日本に顔を向ける研究者はほかのアジア諸国に比べれば今でも格段に少ないのではないだろうか。

     

付記2:小生のインド人研究者への印象は、かれらは英語(機関銃を打つような早口のIndian Englicだが)が堪能なので、頭がいい研究者は、国際研究機関や国際学会では総合的な取りまとめ役に秀でており事務局長や議長になっている人物が他国に比べて多いと思う。一般的に手足を動かしてデータを取る作業よりは、他人のデータを使って“きれいに”話を作り上げること(モデル化)に長けている。つまり「分かったように思わせる抽象論」に長けている。多分99x99の九九を諳んじる数理的才能がそうさせているのだと思う。エリート階級は手足を動かす汚い作業をあまり忠実にやりたがらないように思う。これは彼らの深層心理に骨肉化した旧来の陋習であるカースト制も関係していると思う。概して日本の大学では英語が通じるので日本語を熱心に学ぼうとする姿勢はあまりないようだ。以上今日の若いインドからの留学生が聞いたら激怒するかも知れない老書生の偏見です。
   
追記1:その後「インドへの原発輸出」の件では以下のネットで優れた多角的な見解が展開されている。
http://www.fsight.jp/articles/-/40781
 
要するにほとんどの日本国内原発メーカーから見ても、企業不信のインド世論からみても、インドへの原発輸出はほとんど不可能な提案だということである。

追記2:その後の展開です。

日印原子力協定締結へ=首脳会談で署名方針

 日本、インド両政府は、11月中旬にモディ首相が来日し、安倍晋三首相と会談するのに合わせ、日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定に署名する方針を固めた。政府関係者が31日、明らかにした。安倍政権はインフラ輸出を成長戦略の柱に掲げており、インドに対する原発輸出の環境が整う。
 日本が核拡散防止条約(NPT)非加盟国と原子力協定を締結するのは初めて。インドは核保有国であるため、被爆地である広島、長崎両市などから「核不拡散体制を形骸化しかねない」との反発が出る可能性もある。(2016/10/31-16:59

  

 

 

FC2 Management