2014-05-14 20:54 | カテゴリ:未分類

  以下の記事によると、中国では土壌の重金属汚染が深刻である。これは日本の農学研究者には半ば公然の常識であったのだが、今回中国当局自身がその実態を正直に告白した。PM2.5などの大気汚染ばかりでなく、土壌の重金属汚染も、中国ではこれ以上のっぴきならない状況になっていることがうかがえる。中国ではまだまだ米食が主食であるので、このまま放置すると今後潜在的なカドミウム摂取由来のイタイイタイ病が全国で多発するだろう。

 

  1960-1970年代の日本の高度成長期に経験した「公害」が、中国では日本の10倍の人口であるがゆえに10倍の速度で進行していると考えたほうがよい。日本の10年が中国では一年で汚染が進行しているのだ。

 

  日本の公害問題の解決のための苦難の歴史の成果が、今中国では生かされるべきである。日本の公害防止のための、科学技術の成果である製品(ハード)や立法や行政のノウハウ(ソフト)を技術移転する格好の時期が来たといえる。すでに日中韓で連携プレーが始まっているようだ。

   
早くも小生がこのブログで何回も紹介してきた、近年日本の農水省が発明した、無カドミウム米コシヒカリ環1号」の出番だと思う。

 

 

中国の土壌汚染深刻、農地の19・4%で基準超

20140419 2030

 

 【上海=鈴木隆弘】中国で初めて全国的な土壌汚染調査が行われ、農地の19・4%で基準を超えるカドミウム、銅などの重金属や有機物が検出され、土壌汚染が深刻なことが明らかになった。

 

 17日に調査結果を公表した環境保護省と国土資源省は、農産物や人体に影響を与える恐れも指摘した。

 両省は2005~13年に中国の総面積の約3分の2に当たる約630万平方キロ・メートルで重金属や有機物の汚染状況を調べた。林地や草地、建設用地などを含めた土壌全体でも16・1%が汚染された状況にあり、両省は「状況は楽観できない」と危機感を表す。

 特に経済が発展した上海市を中心とする長江デルタ、広東省の珠江デルタのほか、東北の工業地帯で深刻だった。鉱工業生産で排出される汚水や排ガスが主な原因だが、農業でも化学肥料や農薬の過度な使用が汚染を引き起こしていた。

20140419 2030 Copyright © The Yomiuri Shimbun
 
 

 

中国、土壌汚染も 全国の土地16%で基準超え 初の全国調査

2014.4.18 01:00

 中国環境保護省と国土資源省は17日、全国の土壌汚染の状況をまとめた報告書を公表し、調査した約630万平方キロの土地のうち、16.1%で国が定めた基準を超える汚染が確認されたと明らかにした。

 土壌汚染の全国調査は初めて。報告書は汚染状況について「楽観できない」としている。

 調査は2005年4月~13年12月に実施。鉄鋼業や製紙業などの工業用地やその周辺では36.3%、工業用地の跡地では34.9%でそれぞれ基準を超えた汚染が確認された。

 また耕地では19.4%で基準を超えており、主な汚染物質はカドミウムやニッケルなどとなっている。(共同)
 
    

  

(森敏)
 

追記1:
こういうことを書くと、「外交音痴の大学人がまた無責任なことを書く」と直ちにマスコミや農水省から反撃されそうだ。日本人の現在の尖閣列島を巡る「嫌中国」の雰囲気では、とても
「日本が開発した貴重な農業技術を、中国に供与することなどもってのほかのことだ。中国人は感謝の念を示さないだろう。過去の日本の中国に対する無償のODA援助の場合と同じく、供与したいなら『もらってやる』という態度を示すのではないか」
という疑念がただちに持ち上がるかもしれない。
 
 しかし、せっかくの世界に向けて発信しうる日本のノーベル賞ものの品種が、農業の実際の被害現場で全然生かされないのは非常にもったいないことと思う。
   

 

      作物の土壌からのカドミウム汚染防止対策には、従来は 1.工場からの排出源処理と、2.汚染土壌の剥離と非汚染土壌の客土 しか有効な対策がなかった。前者は行政問題であり、中国のような共産党一党独裁政権下での工業と共産党員が癒着した構造を直ちに断ち切るのは絶望的に困難なことだろう。後者は曾ての日本のカドミウム除染の経験でも、膨大な予算と年月を要するだろう(例えば、近年の福島県における放射性セシウム汚染水田の「表土剥離」と「客土」にいかに膨大なお金がかかるかを考えてみてもわかるだろう)
   
      最終的に上記1。と2。の政策でこの中国でのカドミウム問題を解決するにしても、当面日本が開発した「カドミウムを吸収しない品種・環一号」で人体へのカドミウムの経口吸収汚染を避けることは非常に賢明な政策だと思うのだが。イタイイタイ病その他の将来の医療費もかからないことになるので中国国家経済にとってもいいことだらけだろう。と考えるのは、あまりにも単細胞すぎるだろうか。
 
追記2.この新品種については以下に詳しく紹介しております。
http://www.winep.jp/news/153.html

2014-03-04 10:27 | カテゴリ:未分類
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昨日、

2014年3月11日発行(と巻末に印字されている)

カメラマンの三留理男(Tadao Mitome)氏の写真集

3.11  FUKUSHIMA被曝の牧場 (具象舎刊)

が請求書入り(定価本体1900円+税)で送られてきた。

送り主は 反原発・細川裁判を支える会準備会である。

裁判へのカンパの要請文も入っている。

 

この写真集は三留氏が、福島第一原発暴発の2011年3月11日以降、合計で20頭の馬が連続死し続けた飯館村の細川徳栄さんの牧場で、泊りがけで密着取材したものである。東北大学による馬の病理解剖などのなまなましい現場が撮影されている。「百聞は一見に如(し)かず」 である。小生は豪放磊落な三留さんとは細川徳栄さん宅で一度偶然お会いしたことがある。

 

この本のあとがきで彼は書いている。

 

::::福島で進行している事態は、事故によって普段は見えていなかった糞尿の存在を突然目の前に突き付けられて、右往左往しているようなものである。その対応さえできていないのに、事故から3年が経過しようとしている今、再び原発を稼働させようという意見が強くなっている。そうした事態を目の当たりにすると、日本人の特性は、忘れやすいだけでなく、見たくないものは見ない、思い出したくないものは思い出さないでいられることのような気がする。

(放射能除染土壌の)土嚢や(放射能汚染水の)貯水タンクはこれから先、まだまだ増えるであろう。日本人はいつまで見て見ぬふりを続けられるのだろうか。::::::: 
 
  

   

(森敏)
追記:昨年、福島の調査の帰りに、細川さんの自宅に立ち寄ったら、細川さんが馬の調教をしていた。
「それはどういう芸を仕込んでいるのですか?」(森)
「馬を誰かが注射器で薬殺に来たら、いやだいやだと抵抗しろ!とその抵抗の動作を教えているんだ』(細川さん)
とのことで、馬が頭を土にこすり付けてお願いをする(?)ポーズを繰り返し繰り返し教えていた。
下の写真はそのポーズである。馬にとっては決して楽ではないポーズだなあと、素人ながら観ていて思った。

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 (中西啓仁 撮影)




2014-02-15 23:08 | カテゴリ:未分類

167体で誤測定の可能性 ベータ線を出す放射性物質

 東京電力が福島第1原発の汚染水測定でストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質の濃度を過小に推計していた問題で、東電は14日、事故直後の2011(平成23)年3月から今年1月末までに測定した試料167体について、正確な測定できず、測定値を過小に推計した可能性があるとする調査結果を発表した。いずれも実際の値はさらに上昇する見通し。
 東電によると、167体は、海水や観測用井戸から採取した地下水や、敷地内の土壌など。
 東電が原発事故直後から今年1月末までに測定したベータ線を出す放射性物質の件数は計2万866体。これまでの調査で、測定機器では1リットル当たり20万ベクレルを超える試料は正確な値が測定されないことが判明しており、検体数を確認したところ167体に上った。東電は今後、これらの検体を測定し直し、正確な測定値を公表するとしている。
(2014年2月15日 福島民友ニュース)

 

  

東電の云っていることはこれだけの報道では科学者には、いったい何をもたもたしているのか、理解しがたい。だから東電は

1)        どの容器に井戸水などをサンプリングしているのか?

2)        だれがサンプリングしているのか?

3)        サンプリングの仕方は?

4)        どこで放射能を測定しているのか?

5)        測定方法の具体的なやりかたは?

6)        何ミリリットルを測定しているのか?

7)        測定機器のメーカーの名前は?

などをすべて明らかにすべきである。

高濃度の場合はセシウムとストロンチウムをきちんと測定すべきである。
現状では、余りにも全国で監視しているプロの物理や化学や生物の取り扱いRI研究者をなめているとしか思えない。
原子力規制委員会の目が十分に行き届いていないのではないだろうか?
 

(森敏)

2014-01-13 22:14 | カテゴリ:未分類

農業用のため池の放射能除染の必要性に関しては、少し専門的になりますが、以下の2つの新聞記事にあるように、農業サイドからの問題点が指摘されています。
1.ため池のほとんどが基準値を超える放射能汚染底泥になってしまっている。
2.ため池の水の放射能濃度は現在はわずかだが、しかし氾濫などによって底泥が舞い上がってこれが田んぼや畑に流れ込むと、可食部の放射能濃度を上げる可能性がある。
3.ため池の底泥を掻き出さないと農業用水としての貯水容量が確保できない。
4.ため池の底泥を掻き出さないと排水口がふさがれるので堰が決壊する可能性がある。 
  
  
  しかし環境省は、農業の現場をよく知らないので環境省側からは人に対する放射線防護の観点からしか対応ができていない。つまり「水を張っているほうが低泥(ヘドロ)からの空中への放射線をカットしているので、いま急いで底泥を掻き揚げるべきでないし、その緊急性はない」ということらしい。これこそが縦割り行政の典型である。
  
  
この問題は今後数年のうちにため池の堰が溢水したり決壊するというような事故が多発して初めて問題化されて対応が始まるのかもしれない。現在放射能汚染地域では、農家が原発被災して避難しているために、ため池の管理組合の人員も確保できていないところもあるのではないだろうか。田んぼをいくら除染してもため池を除染しなければ、数年のうちにはまた放射能汚染土壌が少しずつ農業用水に流れ込んで水田に堆積することは十分予見できることである。
 
  なぜなら、すでにこのWINEPブログでも述べたことであるが、これと類似の過去の例がある。鉱山排水の流れこむ下流などのカドミウム汚染水田土壌は、15センチの作土を剥離して非汚染土壌で客土しても約30年で農業用水からのごく微量の汚染カドミウムの経年蓄積で、元の規制基準を超える汚染土壌になってしまう、という試算がなされている。農業用水には水ばかりでなく泥砂有機物がふくまれているので、近年ホットスポット的に頻発する大雨洪水の時には油断すると一気にため池を放流して、流入量が増える可能性が大である。 

  だから、谷内(やち)田などに完全に放射能除染した模擬水田を設定して、そこへの生態系からの今後の放射能蓄積の経過観察をすることは、福島県、宮城県、茨木県、群馬県、栃木県などの研究機関に課せられた今後の重要研究課題だと思う。くりかえすが、水田土壌の場合は用水からの2次汚染の問題があるので、「一度表土剥離除染し非汚染土壌で客土したからこれで問題は解決した」ということには絶対にならないということである。 このように栽培期間中に大量に農業用水を使うという点が水田稲作の特徴で、そういう意味ではチェリノブイリなどの陸地での作物栽培との大きな違いなのである。過去にデータが全くないのである。


農業用ダム・ため池土壌にセシウム 県、土砂拡散防止へ

 県が14日に発表した県内の農業用ダム・ため池の土壌の放射性物資検査で、指定廃棄物の基準(1キロ当たり8000ベクレル超)を超える放射性セシウムが検出された。ただ、環境省は農業用ダム・ため池を除染対象としておらず、国の財政支援を受けられないのが実情だ。県は緊急対策として土砂の拡散防止対策に乗り出す。
 同省は、たまった水に放射性セシウムが発する放射線の遮蔽(しゃへい)効果があり、周辺環境に与える影響は小さいと指摘する。現在は陸上の除染を優先しており、担当者は「現時点で、ダムやため池を除染対象に加える予定はない」と説明している。一方、農林水産省は「実態をきちんと把握し、対策を進めていく必要がある」とし、除染の必要性など省庁によって認識が異なる。
 県によると、農業用ダムやため池には周辺の山などから放射性物質を含む土砂が流入している。通常だと2~3年に一度、農閑期に水を抜き、底にたまった土砂を取り除いて貯水容量を確保している。しかし、東京電力福島第一原発事故後は、土砂の仮置き場がないため作業の自粛を管理する市町村や農業団体に要請している。
 県のこれまでの調査では全3730カ所のうち、1割の370カ所程度で、速やかに土砂を上げないと、排水口がふさがれる可能性があると推測している。発生する土砂は合計1万4800立方メートル、費用は約17億円かかると見込む。
 県は土砂の拡散を防ぐ対策として、一部のダムやため池で、濁り水による拡散防止のため「シルトフェンス」と呼ばれる水中カーテンを設置する。環境負荷の少ない薬剤で土壌を固め、拡散を防ぐ作業も進める方針。
 県農地管理課の菊地和明課長は「調査結果を基に、環境省に除染の必要性を強く訴える」と話している。

2013/11/15 08:39 福島民報 )

農業用ため池、3割基準値超 底土の放射性物質

 県は14日、東京電力福島第1原発事故を受け、県内の農業用ため池1640カ所(避難区域を除く)で底にたまった土砂(底土)などに含まれる放射性物質濃度を調査した結果、3割の450カ所で、国が処分責任を持つ指定廃棄物の基準値(1キロ当たり8千ベクレル)を超えたことを明らかにした。本宮市の明戸石(みょうといし)ため池で最高値1キロ当たり37万ベクレルを検出したのをはじめ中通りを中心に高濃度の放射性セシウムが底土に蓄積している実態が判明。ため池は除染の対象でなく、県は環境省に実測値を提示し除染対象に加えるよう強く求める。
 底土の調査結果が検出限界値未満だったのは1カ所だけで、1639カ所で放射性セシウムを検出した。県は「(濁った水が流れれば)放射性セシウムが水田や畑に流出し、農作物に色濃く影響が出る」(農地管理課)と警戒感を示した。
 ため池の水の調査では、75カ所から放射性セシウムを検出、最高値は1リットル当たり13ベクレルで飲料水の基準値(1リットル当たり10ベクレル)を上回る一方、水を濾過(ろか)して再調査すると、検出したため池は2カ所に減り、最高値も同8ベクレルまで下がった。これはセシウムが土などに付着して水の中を漂っている状況を裏付けるという。
(2013年11月15日 福島民友ニュース)

 

(森敏)

追記:この記事はこの後、(II),(III) と3回にわたって連載しています。
2013-12-25 13:50 | カテゴリ:未分類

 以下に紹介するのは、飯舘村で活動する 福島再生支援東海ネットワークの小早川氏から送られてきた「細川徳栄さん」の実像を紹介した熱烈なアピールです。原発被害を一身に受けて馬のために孤軍奮闘する細川さんへの様々な匿名諸氏からの疑念を、この文章をお読みいただいて払拭してください。 どうか腰を据えて、じっくりお読みください。
  どなたか、海外在住の方で、この以下の文章を英訳して、世界の馬愛好家に自らのブログでアピールしていただけませんでしょうか?(森敏)

 



 

細川とくえい写真-- 

細川徳栄と馬たちの 12

20131211日 飯舘村/福島再生支援東海ネットワーク 事務局

 

22頭の馬の死、2頭の心ならずもの薬殺と5頭の解剖、全ての馬の自力埋葬。

獣医も保健所も血液検査での筋肉や肝臓の異常を認めつつも「栄養状態と餌に問題なし、しかし原因不明」と言い、解剖した大学研究室もまた「よくわからない」というばかりで、どこからも肝心の放射性物質のデータは出されない。馬が次々に死んで行くのに、保健所も行政も原因解明には全く気乗り薄。一般的に考えて、口蹄疫やBSE、エンドファイト(毒性ある微生物)中毒の可能性もあるわけで、パニック状態があって然るべきなのに、ひたすらの沈黙である。

この摩訶不思議を、一体どう考えるべきなのか?

細川徳栄に言わせれば「日本は狂ってる」ということだが、同感と言う以外、言葉はない。本人は「放射能のせいだ」というものの、そう断定できる「科学的根拠」はない。

しかしこの目前に生起しつつある事態にあって因果を疑い、確かめようとするのが正常かつ当然の反応ではないのか。だが、実際誰もそれをしようとはしないのだ。

これが、日本という国の、仮面なきありのままの姿なのである。

細川徳栄とその娘、よく耐えてきた。その忍耐も精神的・肉体的・経済的に限界を超えようとしているが、しかしまだ何とか耐えている。それはあたかも世界の矛盾がすべてこの親子の肩にのしかかっているかに見える。

 

ネット上での批判や中傷について

 

あまり書きたくないのだが、これがある以上、触れないわけにはいかないだろう。

触れる前に申し上げれば、そもそも馬の連続死は紛うことなき事実であって、それを飼い主の素行や人間性の問題にすり替えようとするのは間違いであると思う。

しかし本人を知らない人が疑念を持つのであれば、これには答えておかねばなるまい。

さて、「細川徳栄」で検索すると、ネット上では同情や事態への怒り・支援要請7割に対し、3割ほどの割合で同人への匿名「批判」が出てくる。

いわく「ダンプ窃盗犯だった」、いわく「寄付金を競馬に使い込んだ」、いわく「馬の管理が劣悪である」、いわく「馬を殺して補償金を狙っている」など。

 

ダンプ窃盗の一件は、20073月1日、地元紙に「ダンプ窃盗犯の主犯格を逮捕 須賀川署」という見出しで報道されたこと自体は事実なのである。これがもし本当なら、当然彼の実刑は免れないところなのだが、しかし実際には彼は20日後には放免となる。起訴猶予でもなく、保釈金を積んだわけでもない、無罪放免だったのである。実行犯は勿論有罪で今も服役中。しかしそのことは事後ほとんど報道されることなく、一般には彼が逮捕されたことのみが記憶に残り、仮に「釈放」されたことを知ったとしても「共犯だった、灰色なんだ」という印象だけが残されることになってしまった。そもそも彼が逮捕されたのは、彼に先立って捕まった組織的窃盗グループ4人が「主犯は細川だ」と言ったから。しかし調べるうち、この窃盗グループが盗んだダンプを、盗品であることを隠して細川徳栄に「売った」という証拠となる振込証明が出てくる。ここでやっと事の真相が明らかになったというわけだ。本人言うには「誤認逮捕だ、謝れ」と署長に言ったが、頭は下げてくれなかった、らしい。

 

次、彼が競馬に縁が深く、また競馬場に行っているのは事実。行く理由は競走馬の移送も彼の仕事だから。そして縁のある馬や馬主との関わりの中で、好きでたまらぬ馬の馬券を購入したりするわけだ。馬も好き、競馬も好き。とはいうもののその馬券購入は彼の経済的に許される小遣いの範囲であって、そこに善意の支援金を使っているわけではない。寄せられた支援金は毎月100万円ほど必要な餌代ですべてなくなってしまっている状態である。ちなみに事故後29ヵ月×100万円とすれば、これだけで3,300万円、当初いた75頭分の餌代や運営経費を加えれば出費は楽に67,000万円を越えてしまうだろうし、他方収入は殆どなくなっている。なお支援金は税務署でチェック済みとのことだ。

 

馬の管理が悪い、との指摘。これは牧場に小屋がなく(自宅脇には調教用に数頭分の小屋があるが)、冬は寒いことを云っているらしい。しかし彼はこのやり方で50年間馬を飼い、それで何の問題もなかったし、三代百年の稼業の中で馬の連続死が生起したことも一度もない。ちなみに事故前の1年間で死んだ馬は1頭、それも原因は交通事故による。彼いわく「小屋に入れると、馬は逆に風邪をひき、体質が弱くなる」。栄養状態や餌に問題なかったことは、獣医・保健所が証明済みである。「オレの育て方は愛のムチだよ」とも言う。実際見ていても、確かに彼の馬の訓練は厳しい。しかしそれは「管理の悪さ」とは全く異なる。

 

馬を殺して補償金狙い、というのはどうか。現在彼は東電への補償を求めて裁判準備中とのことだが、そもそもこの訴えは営業補償であって、馬の連続死自体、その死因不明ゆえ訴因に入ってもいないのだ。その裁判にしても、死んだ24頭を入れた全頭(最大75頭)の餌代・人件費・諸経費に営業損失・休業補償、更には今後何十年見込めるはずであった将来収入損失や資産損失を加えれば、それだけで合計何億という金額になる。まだ請求額は確定していないようだが、とてもそんな金額に及ぶ支出証拠は揃いそうにないし、貰えそうにないし、長期裁判となれば仮に支払われてもずいぶん先のことであろう。細川徳栄が愛する馬たちを殺しても、何の得にもなり得ないということだ。

 

細川徳栄という生き方

 

「オレはこれからも馬喰稼業を貫きたい」と細川徳栄は言う。

三代にわたって続く馬喰稼業は、いまや全国にも数少ない。その中で岩手のせり市では出頭数一位を数度記録し、その他にも幾つかのコンテスト入賞がある。201088日にはTV朝日「ナニコレ珍百景」にも、細川牧場で改良された白黒まだらの大変珍しいブルトン種 が紹介(ホルスタインみたいな馬ということで)されたこともある。こうした長く特徴ある馬の飼育や活動実績に、彼は大きな誇りを持っている、という。

 

そんな彼が原発事故後、周辺の畜産・酪農家の依頼で現地に入り、牛舎に置かれたまま水・餌なく死を待っていた多数の牛を救った。

伝染病でもないのに人間都合で動物を殺すことはおかしい。幼稚園や学校、相馬馬追いなど各種イベントに馬を連れて行き、子どもたちと遊ばせることが彼の主な仕事であった。子どもが馬との交流のなかで、どれだけ多くを学び、とりわけ分け隔てない命の根っこにあるものを知ってくれているか。それが彼の生き甲斐であり、ここからしても薬殺は許しがたい人間の横暴に映ったのだと思う

同じ感じ方で、彼は避難地域となった飯舘村にある牧場の馬の薬殺を拒む。移転費用もないし収入もなくなった。幸い頂いた支援金頼みで餌代を工面し、毎日餌やりをしながら馬とともに飯舘村から離れずにいる。しかしなお不条理は続く。相次ぐ原因不明の馬の連続死、三代百年の稼業のなかで経験したことのない事態が原発事故後に現れ、だが公的機関も研究者も、誰もこのことに正面から取組んではくれないし、来ようともしないのだ。あまつさえ、彼が悪いのだといわんばかりの噂が立てられてゆく(彼はネットを知らない。教えられて最近それを知った)。同じ立場に立たされたら、あなたならどう思うだろうか。果たしてこんなことに耐えられるだろうか。

 

細川徳栄は農民ではない、ましてやサラリーマンでは有り得ない。勿論経営者でもない。動物とともに己の人生を歩む、馬喰(ばくろう)であり自然児なのである。

だから常識的な見方からすれば、堅実でもないし、着実でもなく、協調的でもない。

見方によればいい加減であり、特に数字や細部には滅法弱く、これが時には「云ってることが変わる」などと大きな誤解を招くことにもなってくる。

だから好き嫌いが出てきて当然かと思う。

 

問題は人間の価値をどこで判断するか、である。云ってる言葉を信じるのか、それとも現にやっている行いで見るのか、だ。

この基準を、私はぜひ後者に置きたいと思う。原発事故は「人命・人権尊重」とか「主権在民」とか「民主主義」とかいう「言葉」の嘘を、余すところなく暴き出している。

なぜSPEEDIのデータを隠して「安全」を強調し、避難を阻害したのか。なぜ1mSv/yの国際規制基準を事故後に20100と勝手に書き換えるのか。なぜチェルノブイリ避難基準を上回るところに住民を放置するのか。なぜ子どもの健康異常、動植物の変異や

馬の連続死を無視するのか。なぜ無数にあるホットスポットを見て見ぬふりをするのか。なぜ嘘を承知で汚染水「アンダーコントロール」と云うのか……

細川徳栄が少々変わっていることは承知である。しかし彼の云う「人間勝手の薬殺は許せない」は間違っていない。単に云うだけでなく、ここから彼は牛や馬のいのちを守る現実的な行動を起こし、それをそれなりに実現し、今もやり続けている。おかしいのは、一体彼だろうか、それとも……

 

9月以降、10頭の馬を遠隔地に避難させたとのこと。残るは10数頭の小型種である。

でき得れば、各種の支援をぜひ、ぜひ細川徳栄へ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
付記1:小生(森敏)は先日、以下の英文ブログで世界に呼びかけております。
A Variant Cry for Help in the midst of sadness from Hosokawa Horse Ranch at Evacuation-zone, Iitate-village, Japan

以下は、WINEPブログに掲載したそれ以外の過去の細川徳栄さんの馬に関する関連記事です。

 

  
付記2:以前にも紹介していますが、細川さんの住所は以下の通りです。ご支援を!

細川牧場 花塚ボランテイア活動会長 細川徳栄

〒960-1633福島県相馬郡飯館村臼石字町123-1

TEL/FAX(0244)42-0303

携帯 090-9742-3141

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