2011-01-31 11:24 | カテゴリ:未分類

理系学部はもっと高専型の早期体験型教育をなすべきではないか

         

    大方の方には意外と思われるかもしれないが、実は日本の国立高等専門学校(高専)は51校あるのだが、教育面で世界的に非常に高い評価を受けている。このことは下記のOECDの高等教育に関する調査団報告書に示されている。

OECD Reviews of Tertiary Education in Japan,

http://www.oecd.org/dataoecd/44/12/42280329.pdf

       

    しかし、高専教育の実態はロボコンテスト、ソーラーカーコンペなど以外は、あまり国民には知られていない。 その理由は毎年約120万人の中学卒業生のうち、1万人が高専に進むだけで、ほとんどが高校に進学し、その後、約70万人が大学に入るので、圧倒的に、高専は進学の選択肢になりにくいからである。

  

    しかし、理系離れが言われる今日でも、高専に対する玄人社会の評価は非常に高く、技術を売りにする一流メーカーが顔を揃え、卒業生に対する求人倍率は10倍を超え、就職率は100%である。

   

    ところで、昨日のニュースでは、大学4年生で今期の就職をのがした学生のうち19000人が、大学への留年ではなく「専門学校」に進学するつもりであるという。 専門学校側では1年間コース(授業料120万円)を設けて「就職試験に徹底した」カリキュラムを設定した教育を行うのだという。

     

    明確な問題意識や、専門的な実務的な技術教育を受けていない学生が、大金を払って就職試験の技術を身につけに専門学校に通うなどというのは、なかなか哀しいものがある。自分の何を売りにするつもりなのだろう?

    

    4年生の大学卒業生の就職率が悪いということは、熾烈な交際競争の条件下に置かれた企業の要求する、技術や技量を持つ人材が、現今の4年制大学院大学での学部教育では系統的に組織的に世の中に提供されていない、ということの反映であろう。
    
  ほとんどの大学院大学の理系の学部教育は、4年間を大学院に進学させるための研究型の人材育成を行っているので、実務型教育が非常に弱くなっている。

    

    カリキュラムとして実務研修(インターンシップ)を掲げているところでも、資金面の補償が無く、教員の負担が大きいという点からでも、学生に与えられる「単位」はお涙程度である。
      
  インターンシップを受け入れてくれる企業を探すのも教員の自己努力に依っているところが大部分である。大学と企業が組織的にタイアップしているやっているところも増えているが、研修中の衣食住の補償や労働災害補償の問題点などもあって、企業の側も本当に恒常的に積極的な受け入れ態勢が出来ているとは言い難い面がある。
           

    ところが一方、現今では大学院大学を出て博士になっても研究職への就職率が極めて厳しい(分野によっては30人に1人とか)。
     
  それならば早くから、早期体験型教育を行って、確実に実になる特技を身につけさせることが出来る「高専」教育に、子どもも親ももっと目を向けるべきであろう。

         

    4年制大学は高専の教育に学ぶところが非常に大きいと思われる。

      

    ちなみに、現文部科学大臣である高木義明議員は高専出身ではないが、山口県立下関工業高等学校出身で、三菱重工長崎造船所に就職して、組合運動で頭角を現している。実務型教育をうけて、職場の実践活動で政治に開花して行った、人材であろう。技術があったから次のステップに人生を進められたのである。

   
    
         

(森敏)

       

付記1:上記の文章は、徳田昌則東北大名誉教授(現NPO地域研究応用センター)から日本における高等教育の現状と改革私論 (雑誌「金属」Vol.79(2009)所収)の別刷りの寄贈を受けて、「高専」教育の紹介を兼ねて書いたものです。
    
付記2:実務型教育ばかりやらされては、肝心の研究がお留守になる、というのが大方の大学教員の危惧するところであろう。しかし、地域の課題を掘り起こして、学生と実務教育を行いながら、それが地域社会に貢献し、サイエンスとしても大きなテーマにふくらんでいく経験を有している研究者も少なからずいるのである。高専からもそういう研究成果が出ている。

秘密

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