2010-11-27 10:19 | カテゴリ:未分類

奄美大島の集中豪雨で、大島紬の「泥染め」がダメージを受けた理由について

        
      

    台風による豪雨で、奄美黄島の大島紬(つむぎ)の業者が、大打撃を受けたことがテレビで放映されていた。

         

    この島の業者は、庭に1-2坪の泥田を持っており、この泥に、あらかじめ樹汁につけた絹布を、何遍も浸けては絞り、浸けては絞りして、青色に染めていくのだそうである。

         

    ところが今回の豪雨でその田んぼに洪水で土砂などが流れ込んでしまった。そのために泥の染める能力が極端に低下し、回復に何年かかるか分からないと言うことである。

          

    藍染めの原理は、シャリンバイやアイの絞り汁にあるタンニン成分やカテキンなど、ベンゼン環に水酸基がシスに配位する化合物と、水に可溶性の2価鉄イオンや3価鉄イオンが結合することによって発色する、と言われている。(付記参照)

       

    であるから、重要なのは、泥田の中に、つねに可溶性の鉄イオンが存在することなのである。それではなぜ洪水で土砂が流れ込んでしまうと、泥田の染色機能が低下するのだろうか?

      

    染色業者の泥田は、永年にわたる染色という攪拌作業で粘土質(水田の表土が耕作を続けると粘土質になるのと原理は同じ)となっており、このような泥田は、水を張って一定期間靜置していると、奄美大島のように年中温暖な気候条件の下では、土壌微生物の活発な作用によって、有機物が分解されるので、泥の中の酸素が消費されて、還元的条件になってくる。還元的な条件では、泥(粒径の小さい粘土鉱物)の表面の不溶態の鉄が2価鉄イオンとして少しずつ溶出してくるのである。
  
  大島紬の染色にはこの遊離の鉄イオンを使っているのである。

        

    つまり、洪水で流れ込んできた土砂は、目が粗く(表面積が少なく)、しかも粘土鉱物の表面が不溶態の酸化鉄(Fe2O3)であるので、水に溶ける鉄分(2価鉄イオン)が全くないのである。これが、従来の泥田の微細な粘土と混ざってしまった。であるから、鉄分が溶出しやすくなるためには、土をこねて、靜置して嫌忌的条件を維持して、ということを、何万回も繰り返すことをやらないと、優良な泥田にならないということなのである。

          

    応急措置としては、洪水を受けた泥田の中の土を、付近の水田表土と全部入れ換えることであろう。(あくまで、入手可能ならば、という仮定のはなしであるが)

           

     

(森敏)

       

付記:「土で染める」(寺師健次 執筆) という2頁にわたる文章が 「土の100不思議」日本林業技術協会編 東京書籍  に書かれている。

秘密

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