2010-07-18 13:53 | カテゴリ:未分類



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 葛飾北斎 
諸国瀧廻り 木曽路ノ奥阿弥陀か瀧
  (
朝日新聞より無断撮影転載)

         
      
ピカソの秘密

     

  先日、腰痛で一週間に亘って寝ながらテレビ見ていたら、あるとき、離婚してたしかニューヨークで1人住まいしている、ピカソの何番目かの現在80歳代の夫人(フランソワーズ・ジローかジャクリーヌ・ロック)の取材を放映していた。放送局は憶えていないが。その中での、このご婦人の発言がすごかった。

     

  「私は、ピカソと何年間か一緒に過ごして、ピカソのすべてが分かってしまったのよ。だから彼から離れたのよ」

  

  しかし彼女は、その<分かってしまったピカソの秘密>を、このとき語ったわけではない。ピカソの名誉のために、きっと今後も語らないだろう。

   

  小生はこの発言を聞いて、彼女の言葉の意味は、<ピカソのあの”キュービズム“の発想の原点を知ってしまった>ということではないだろうか、ととっさに思った。

   

  小生が中学生の時に絵の授業で先生にキュービズムの紹介をされた。小生はピカソの「泣く女」などの絵を見て、「この絵のどこが面白いんだろう、不快なだけではないか。しかしそもそもどうして、ピカソはどうしてこんな奇妙な絵を描くのだろう?」と思って、それ以来ずーっとそのことが疑問であった。ピカソに関してはこれは世界中の誰しもそういう思いがあることだろう。

   

  長じて、ある時突然気が付いたことは、ピカソの発想の原点は「キス」ではないか、と言うことであった。そしてその時の自分のひらめきは、今でも正しいと思っている。

   

  「キス」の時はお互いに目をつぶってしまう。しかし、ピカソは目を開けて、両目をあけて相手の女性を観察してみたのだろう。そうすると、相手の鼻がじゃまをして、相手の女性を片目で別々に見つめることになるので、焦点が合わずに、あの泣く女の絵のように、顔の片半分ずつが少しずれ気味に見えるのである。少し互いの唇を回転すると、歪みがさらに激しくなり、見方によっては、デフォルメされた面白い顔になる。

   

  ピカソはこの<特殊な見方>を発展させて、<一般化>させて、ゲルニカのような、大作に昇華させていったのでは無かろうか?。

   

  ところが、つい最近の朝日新聞に、葛飾北斎の「諸国瀧廻り 木曽路ノ奥阿弥陀か瀧」(太田美術館所蔵)というのが掲載された。この絵は瀧の上のたまり水を上から見た曲水様にえがき、落下する瀧を真正面から見た垂直に描いている。つまり二つの視角を同一平面に描いている。

   

  これはまさしく、ピカソが唱えるキュービズムではないか。この絵を見ながら、ピカソが浮世絵の天才画家葛飾北斎の影響を受けたであろうことを実感した。ピカソの発想の原点に浮世絵が大きな影響を与えていることは間違いないだろう。(ゴッホやゴーギャンなど他のヨーロッパの画家に関しては実はこんなことは通説なのだが、ピカソに関しては小生は知らない。)

   

  我々には依然としてピカソの創作上の発想の原点は分からないのだが、そのテレビに登場したご婦人に、創作上の秘密を完全に解読されたので、離婚後、ピカソは怒って、彼女に見返すために、本人は90歳代の高齢にもかかわらず、その後益々画業に励んだのだそうである。

   

  画家も没後の後世にまでカリスマ性を維持するためには、創作上の秘密を墓場に持っていくことが必要なのであろう。

       
  それにしても、あまりキュービズムなど何だのと、難しい理屈をこねるよりも、「キス」がピカソの発想の原点だと思ってピカソの絵を見る方が、肩がこらなくていいと思いませんか?
      
     

(森敏)

秘密

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