2010-02-28 11:31 | カテゴリ:未分類

隠された飢餓 (Hidden Hunger)

     

植物栄養学の分野ではHidden Half(隠された半分)という言葉がある。この意味は、われわれは植物体を見るときに地上部は見ているが、地下部は見ていない。なぜなら地下部は土に埋まって見えないから。生け花の場合も根から掘り取って飾る人はいないだろう。すなわち植物の地下部の栄養生理を普段、人は考えないという意味である。

   

実は普通の植物体では丁寧に根を掘り取ると分かるのだが地上部と地下部の乾物重(バイオマス)はほぼ等しいのである。それほど地下部は植物の生育にとって重要な機能を担っているのである。

  

植物体には地上部に異常があるときには、時として地下部(根部)にその原因がある場合がある。何らかの物理的、化学的、生物的な土壌要因で根の成長点が障害を受けて、吸水や養分の吸収が行われない、病原菌に感染して導管経由で全身に菌体やウイルスが蔓延している、導管が線虫などでふさがれて導管水が地上部に移行しない、などで地上部の生育が阻害されているのである。

  

要するに目に見えない意識しない半分(half)の要因によって、異常が起こっていることがままある、ということである。

  

表題のHidden Hunger ということばは、これを人体栄養学に置き換えた場合の話である。

  

一見、我々は食事から十分な栄養成分をとっていると思っていても、人体に必要な栄養素を一定のバランスで摂取していないと、成分間のバランスが崩れてきて、結局特定成分の欠乏症(や過剰症)などの生理病になる。その基礎代謝の異常が続くと、ついには、感染症、糖尿病、心臓や脳などの血管系の病気、ガンなどを招来することになる。この栄養のバランスが崩れたことによる相対的な栄養飢餓(Hunger)は時として無意識の食生活の中で起こるので、隠された飢餓(Hidden Hunger)というわけである。

 

つまり、人間は腹一杯食えばいいと言うわけではない。

  

例えばアジア人40億人のうちの20億人以上が潜在的(latent)な鉄(Fe)欠乏症である。アジア人はお米を主食としており、全食品のうち主食の白米からの鉄の摂取量が半分以上を占めている。しかし白米の鉄含量はいくら多くても数 ppm以下であり、これでは一日に必要な鉄の摂取量 約10 mg をとても満足できていないからである。(これをお米だけで満たすためには一日数百グラム以上のお米を食べなくてはなりません)。亜鉛(Zn)も鉄と同様に欠乏症になりやすい必須元素である。

      

(森敏)

   

付記:実は年を取ってくると、感染症に対する免疫力も低下してくるので、免疫附活作用がある食品を摂取したいのだが、残念ながら現代の食品栄養学は「免疫附活力」をどういう基準で測ればいいのかまだその標準化の基準(Index)を開発できていないようなので、食品分析表には、その数値が記載されていない。したがって巷には、免疫附活作用があると称する商品が氾濫している。

  

秘密

トラックバックURL
→http://moribin.blog114.fc2.com/tb.php/773-c6a9dd1b