2010-02-26 13:04 | カテゴリ:未分類

遺伝子組換え技術実用化への姿勢について(一会員からの投稿原稿です)

     

遺伝子組換え技術の進歩に伴い、アメリカ、中国を筆頭に今や世界25カ国で遺伝子組換え作物の商用化栽培が行われている。我が国では消費者の根強い抵抗感等もあり、商用化栽培は行われていないものの、現実として遺伝子組換え作物が輸入され、非遺伝子組換え作物に混入し、誰もが知らぬまま日常的に口にしている。今や遺伝子組換え作物は、流通量は異なれ、世界中の国々に行き渡っているといっても過言ではない。

 

遺伝子組換え作物の利用が年々拡大される理由は、一重にその利便性に起因すると言っても過言ではない。単収増加・農薬使用量削減等により生産コストが抑えられ、雑草・害虫防除に掛かる手間も低減される。世界中の農業において収益性向上、人手不足解消等は重要課題だ。このため、人体や生態系への安全性は未だ絶対的ではないが、遺伝子組換え作物の世界的な普及は極めて自然な現象と解釈できる。加えて、近年の人口増加に伴う食糧不足、バイオ燃料への注目の高まりがその導入拡大に拍車をかける。

 

害虫耐性・農薬耐性に加え、不良土壌耐性・高栄養価等、様々な機能を付与した遺伝子組換え作物が開発されつつある。これらの実用化が世界中の農業に恩恵をもたらし、食糧問題・環境問題の解決に寄与する可能性を秘めていることは明白だ。しかし、我々は決してその裏側に潜むデメリットを軽視してはならない。数十年という期間に渡りヒトが捕食し続けた場合の安全性は誰も保障できない。また、人類が構築した環境安全性評価システムが、極めて繊細なバランスの上に成り立つ地球の生態系を長期的に保持するに耐えうる水準にあるとも断定できない。人工的に創出した新たな生命種の放出は、生物多様性に確実な変化をもたらす。

 

農業の大規模化や緑の革命により、人類は食糧危機を乗り越えてきた。しかし、その代償として熱帯雨林の伐採を始めとした生態系破壊が進行し、肥料・エネルギー依存度の高まりにより、資源価格高騰等で運営が容易に崩壊しうる基盤の脆弱な近代農業が築き上げられた。過去の農業技術が果たした役割は大きい。だが今後は、目先のメリットに目がくらみ長期的なデメリットの推測が不十分であった点を素直に反省し、同様の過ちを繰り返さぬことが重要だ。

 

遺伝子組換え技術が、世界の食糧問題と環境問題の解決に寄与しうる可能性は計り知れない。だがそれゆえに、我々には利便性に駆られた安易な実用化は極力控え、飢餓や砂漠化等で導入に差し迫られた地域に限定して利用していく姿勢が求められるのではなかろうか。

      

青山 貴紘)

秘密

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