2009-12-13 15:39 | カテゴリ:未分類

  

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       NHKニュース

       

  

気孔が増えれば地球温暖化の防止につながる???

             

 先日の朝のNHKテレビニュースで京都大学の西村いくこ教授が「気孔の数を支配している遺伝子(ストマジェン)を見いだした」と言うことで、画面に登場していた。

     

 そのときは「いい研究だなー」と何気なく聞いていたが、その後この放送を聞いた何人かの市井の人物から、「すごい研究だね、温暖化防止に貢献するんだって?!」という感想を聞いて、「おい、おい、おい、ちょっとまてよ、」という気持ちが涌いてきた。

        

    これでは、まるで「風が吹けば・・・桶屋が儲かる」という、うますぎる話ではないか。

      

①植物の気孔の数が増える  ②植物の光合成による炭酸ガスの同化量が活発になる  ③大気中の炭酸ガスが減少する  ④地球温暖化が抑えられる

      

という理屈なんだろうか?

      

        ①              から④までのプロセスがまるで事実のようにNHKのアナウンサーが解説していたということである(熱心に聞いていたのではないから、西村教授が言ったのか、アナウンサーが言ったのか小生にはしかとした記憶がないのだが、その時のテロップには写真のように確かに「手軽なやり方で気孔増やせれば地球温暖化の防止につながる」書かれている)。

  

  しかしそんな、一方通行のうまい話はこれまでにどんな科学者も証明したことがない。生命現象は人間が考えるほど単純ではない。

         

 事実、西村教授の以下の論文には、「植物は(葉肉細胞などの中にある)光合成器官である葉緑体などの活動を最適にするために気孔の数を制御している」(下の要旨の赤字文)といっているにすぎない。つまりこの論文では何ら<法螺(ほら)>は吹いていないのである。もし、小生がレフェリーなら、そんな法螺は直ちに削除させるだろう。

           

Nature advance online publication 9 December 2009 | doi:10.1038/nature08682; Received 9 June 2009; Accepted 17 November 2009; Published online 9 December 2009

Stomagen positively regulates stomatal density in Arabidopsis

Shigeo S. Sugano1,4, Tomoo Shimada1,4, Yu Imai1, Katsuya Okawa2, Atsushi Tamai3, Masashi Mori3 & Ikuko Hara-Nishimura1

Stomata in the epidermal tissues of leaves are valves through which passes CO2, and as such they influence the global carbon cycle1. The two-dimensional pattern and density of stomata in the leaf epidermis are genetically and environmentally regulated to optimize gas exchange2. Two putative intercellular signalling factors, EPF1 and EPF2, function as negative regulators of stomatal development in Arabidopsis, possibly by interacting with the receptor-like protein TMM3, 4, 5, 6. One or more positive intercellular signalling factors are assumed to be involved in stomatal development, but their identities are unknown7. Here we show that a novel secretory peptide, which we designate as stomagen, is a positive intercellular signalling factor that is conserved among vascular plants. Stomagen is a 45-amino--rich peptide that is generated from a 102-amino-acid precursor protein designated as STOMAGEN. Both an in planta analysis and a semi-in-vitro analysis with recombinant and chemically synthesized stomagen peptides showed that stomagen has stomata-inducing activity in a dose-dependent manner. A genetic analysis showed that TMM is epistatic to STOMAGEN (At4g12970), suggesting that stomatal development is finely regulated by competitive binding of positive and negative regulators to the same receptor. Notably, STOMAGEN is expressed in inner tissues (the mesophyll) of immature leaves but not in the epidermal tissues where stomata develop. This study provides evidence of a mesophyll-derived positive regulator of stomatal density. Our findings provide a conceptual advancement in understanding stomatal development: inner photosynthetic tissues optimize their function by regulating stomatal density in the epidermis for efficient uptake of CO2.

       

  

  光合成に関係する遺伝子は数多く存在する。あまりにも専門的になるので詳しくは述べないが、これらの遺伝子を1つだけ遺伝子導入した作物を作っても、最終的に純光合成量が増えたり、あるいは作物収量(バイオマス)が増えたり、種子の収量が増えたりするという再現性のあるデーターは、これまでのところ一つもないと言ってよい。

         

  この西村教授の研究でも、うす暗い条件でも気孔を増やして光合成を高めたり、明るすぎて気孔の数を減らしたりして、環境に適応するやり方があるということを言っているにすぎないのである。

         

  植物は、このほかに気孔の開閉で炭酸ガスの出入量を調整して光合成を制御していることはよく知られている。この後者に係わる遺伝子は多数知られている。

     

    西村論文の場合は、植物の環境適応能力として気孔の数を調整して光合成量を制御する場合があることの遺伝子的裏付けを行ったと言うことなのである。

         

  我々研究者が注意しなければならないのは、現在、文科省や、経産省や、それこそ最近の<事業仕分け人>が、基礎研究の社会貢献を声高に要求するので、基礎研究者は牽強付会(自分の都合のよいように無理に理屈をこじつけること:広辞苑)的に、研究成果の将来展望を述べさせられる悪弊が蔓延していることである。

     

  研究者があまり出来もしない夢ばかり語るとイソップ童話の<オオカミ少年>と見なされて、そのうち見放されるだろう。

          

  もって瞑すべし、である。

          

(森敏)

 

 

 

秘密

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