2008-03-05 07:52 | カテゴリ:未分類

ダンシング・ヴァニテイ

 

この小説は筒井康隆の最新作である。登場人物は、何かと頭上に羽を大きく広げて鶴の求愛ダンスのまねをする秘書、興奮するとすぐに身体を横にして壁に突進してぶっ倒れる編集者、誰彼かまわずと横の人物を持ち上げて床に落とす趣味の大女の妹、首振りをけいれん的に繰り返す母親、「匍匐(ほふく)前進!」と号令すれば剛直して匍匐前進を始める群衆、などなど気質的な変人が多く登場する。一時の赤塚不二夫のマンガの「天才バガボン」の登場人物の種々のキャラクターが物語になったようなものである。

 

数ページにわたってト書きも含めてほぼ同文で3-4回にわたって繰り返される物語が、全部で多分数十話延々と展開される。文章は全編にわたって全くの章節がないべったりのお話しである。過去・現在・未来の時空を超えた内容である。真面目につきあうと頭がこんがらがってしまうであろう。すべて夢の中を表現していると考えたら納得がいくだろう。

 

この実験小説手的な手法につきあって、読んでいていやになったのだが、で、いったいこの作者はこういう手法で何を表現したいのだろうかという疑問に導かれたのも事実である。かってのパロデイ小説である『文学部唯の教授』のような腹を抱えて笑える“どたばた”劇でもない。

 

但し、この本の最終段階の本人の御臨終の場面(259ページあたり以降)にいたって、意識のもうろう状態のなかでいくつもの過去の挿話が想起されてト書きされるのだが、その内容に関しては、これまでに繰り返し繰り返し語られてきた内容にまじめにつきあって、その内容がよく記憶されていなければ、その絶妙な朦朧(もうろう)境の表現を読者は味わうことが出来ないだろう。

 

思わず、筒井康隆も死に場所を探しているのかもしれないな、という気がした。

 

 

(森敏)

秘密

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