2009-06-27 13:38 | カテゴリ:未分類

中央大学高窪統教授殺人事件の物証に関する疑問

      

この事件に関して、山本某君が任意同行ののち逮捕されて、いろいろ自供している内容が検察側から一方的にリークされている。その中で本当に刑事裁判の時に物証になりうるのは何なのかを考察してみた。以下に下線を引いている点が今後の刑事裁判での争点なると思われる。「裁判員になったつもり」で本件にかかわる物証が検察側によってどこまで開示されているかを、考えてみたい。

 

まず発表期日が前後するが、報道内容を簡単に紹介する。

 

1)5月26日(火)朝日新聞朝刊14版

山本容疑者は犯行後、着ていた衣類のほとんどと凶器の刃物をごみとして処分したと供述しているが、自宅で押収された衣類の一部(:物証A)について、犯行時に着ていたことを認めたという。捜査本部は、衣類や自宅二階の自室から検出された血液反応(:物証B)などについて鑑定。これらから高窪さんのDNAが検出されれば物証になるとみている。 

   

2)5月28日(木) 朝日新聞 夕刊

「トイレで襲ったのち、校内の野外手洗い場で手に付いた血を洗い流した」・・・高窪さんが現れると、個室を飛び出し、植木ばさみを細工した刃物(:物証C)(枝切りはさみを分解し、ほかのはさみの部品と組み合わせるなどしたほか、手のケガを防ぐための工夫もしたなどと説明している、と言う他紙の報道もあるで背後から襲いかかったという。・・・・一号館の北側にある屋外運動場の側の手洗い場で、血の付いた手を洗い、地下鉄春日駅から電車に乗って帰宅。凶器の刃物や衣類、靴(物証D)などはごみとして捨てたと供述しているという。

    

3)週刊文春(2009.6.4.号)筆者不明の記事。

「犯行の2-3ヶ月前に先生を殺すつもり」で凶器を購入。・・・・

凶器は高枝切りバサミ(:物証C)を「改造した」(供述)ものだ。。。。。

今年1月14日朝。黒のロングコート(:物証E)を羽織った山本は(他紙では30代で黒っぽい帽子(黒ニット帽という表現もあるバッグ(:物証F)に手製の凶器を偲ばせ、平塚から電車を乗り継いで、・・・

トイレに立った高窪教授の後ろ姿に、山本が無言のまま襲い掛かった。血だまり(:物証G)の中、うつぶせに倒れる高窪教授の身体に刻まれた傷跡は40以上を数える。(他紙の表現では10から60という回数の傷の幅になっている。また、高窪さんは胸や腹、背中などに四十数カ所の刺し傷や切り傷があり、司法解剖の結果、死因は胸を刺されて内臓が損傷したことによる失血死と判断された。と言う他紙の表現もある。倒れていたところはトイレの入り口付近という報道もある

刃渡り20センチを超える鋼製の刃は、高窪教授の体内を背後から貫通し、トイレの床を鋭く突いて刃片(:物証H)を残していた。

   

4)読売新聞53135分ネット配信の記事

(警視庁)関係者によると、今月21日の逮捕後、山本容疑者の自宅からは数冊のノートやメモ用紙などが押収された。それらには転職を繰り返す自らの不遇を嘆く多数の記述があり、その中に「やってしまった」「家族に申し訳ないことをした」--などの記載(:物証I)が見つかったという。日付はなかったが、同庁で分析したところ、書かれた順番や言葉の前後関係から、事件後に高窪さんに関して記述した可能性が高いことがわかった。・・・
捜査員が任意同行を求めに自宅を訪れた際、玄関先で事情を聞かれた山本容疑者は、その場で「私がやりました」と容疑を認めたという。DNA鑑定のための口腔(こうくう)内細胞(物証J)の採取にも素直に応じた。

     

5)産経ニュース 5月30日

あっさり犯行認めるも

 「捜査を尽くし、怪しい人物から順次聞いていく段階だった。山本容疑者がいきなり認めたので、われわれとしてもびっくりした」

 捜査幹部はこう明かす。

 湘南海岸にほど近い神奈川県平塚市の閑静な住宅街。事件発生から4カ月が過ぎた5月21日昼前、薄緑の2階建て民家の前に車が止まり、スーツ姿の捜査員たちが家の中に入っていった。室内にはホームセンターのアルバイトを終えた山本容疑者がいた。

 「私がやりました」

 捜査関係者によると、捜査員が山本容疑者の前で捜索差し押さえ令状を読み上げ、事件当時の行動などを尋ねると、山本容疑者はその場で犯行を認めたという。高窪さんのつめに残された微物(物証)と山本容疑者のDNA型(物証J)も一致。捜査本部は容疑が固まったとして、同日午後11時すぎ、殺人容疑で山本容疑者を逮捕した。

     
6)山本容疑者を精神鑑定へ中央大教授刺殺事件 (共同通信)[ 200953022 ]

 中央大の高窪統教授=当時(45)=刺殺事件で、東京地検が殺人容疑で逮捕された山本竜太容疑者(28)の精神鑑定を実施するため、拘置期限前の6月上旬に約3カ月間の鑑定留置を東京地裁に請求する方向で検討していることが29日、捜査関係者への取材で分かった。鑑定留置が認められれば拘置はいったん停止され、鑑定医が都内の医療施設で事件当時の精神状態を調査。責任能力があるとして起訴された場合、裁判員裁判の対象となる。

      

以下考察してみよう。

 

1.  さて、すでに山本容疑者が犯人であるという前提で、マスコミは報道しているが、その逮捕の一番の物的証拠(物証)は、山本容疑者のDNAが高窪教授の爪の間の微物(?)のDNAと一致したという当初の報道であった(WINEPブログ 5月26日 付けを参照してください)。この鑑定をいつどこでやったのかが報道記事を追いかけてもはっきりしない。山本容疑者がDNA鑑定のための口腔内細胞の採取に素直に応じたと言っているが、これは逮捕前の自宅前で採取したということなのだろうか? 鑑定結果を本人に示して逮捕したのだろうか? DNA鑑定結果が出るには数時間はかかるはずであるから、そうではないだろう。まず本人を任意同行させて、警察署で口腔細胞を採取して、科学警察研究所に送ってDNA鑑定をして、彼のDNAが高窪教授の爪の間の微物と一致したから夜の11時に逮捕ということになったのであろうとしか、これまでの筋からは考えられない。

 

2.  しかるに、検察側はこれでは物証としてまだ不十分と考えてのことなのか(あるいは、この鑑定結果は本人逮捕のための偽造であったのか? 足利事件の場合はそうであった))、これでは不安なのか異なる形でのDNA鑑定をしたがっている。

当初の報道では山本容疑者は犯行当時の衣服は全部ごみとして捨てた、と報道されていたが、のちの報道では、自宅で発見された一枚は当時着ていた衣服(:物証A)であるということを認めたと報道されている。彼は洗濯せずにわざわざ着ていたものを脱ぎ捨てたままにしていたのであろうか。生来内省的で几帳面に見える男がそんな事をするだろうか? この衣服の中に血痕があったのかどうかも報道では明示されていないが、自宅のあちこちに(?)何らかの血痕とおおぼしきものが検出されたので、それが高窪教授のものであってほしい(物証B)と検察側は言っている。しかし、山本容疑者は高窪教授の血のついた自分の手を中央大学の運動場の洗い場で洗ったと言っているので、自宅に帰ってから彼の手から血痕がどこかにつくとは考えにくい。つくとすれば衣服からであろう。実は山本容疑者が、黒のロングコートで犯行におよんだのかどうかという重要な点が報道されていない。(コートは脱いで犯行し、返り血を浴びた衣服を隠すために犯行後黒のロングコートを羽織って逃げたと言う他紙の記事もある。とてもそんな余裕があったとは考えにくいのだが)。この血痕だらけの黒のロングコートをわざわざ自宅の自分の部屋に持ち込んでから、脱いで、刃物や靴と一緒に捨てたのだろうか?(場所は自宅のゴミ集積所か?どこに捨てたのかも正確には報道されてい ない)。 

  

3.  我々が注意しなければならないことは、警察は高窪教授の血だまりの血(:物証H)や、高窪教授自身から採取した血液などを持っている可能性があるということである。このような場合、この血を警察は被疑者の物(ブツ)(衣服や自宅の部屋のあちこち)に塗りつけることが可能であるということである。すなわちDNA鑑定に必要な証拠の偽造が可能な状態にあるということである。

    当初、山本容疑者は犯行時の衣服は全部ごみとして捨てた、と報道されていたのに、のちほど自宅で発見された衣服が犯行当時のものであった、と本人が認めていると修正して報道されている。これが上着なのか下着なのかは報道されていない。通常ならば上着(黒のコートを脱いで犯行に及んだ場合は、コートの内側が血痕で汚染されているだろう、コートを着たまま犯行に及んだならばコートの外側が汚染されているだろう。ズボンなどは脱いだとは一切報道されていないので、かなり外側が血痕で汚染されているだろう)は明らかに血痕が付いているだろうと思って捨てるだろうから、室内で発見されたものはこれは下着と考えていいだろう。下着で露出している部分としては下着のそでの部分とか、くびの襟の部分とかであろう。犯行時で返り血を浴びたので中央大学のグランドの手洗い場で手を洗ったと報道されているから下着の袖口は血痕が付着しているであろう。それは本人も充分気が付いていはずである。だからそんな下着を自宅に脱ぎ捨てたままにしておくとは考えにくいのだが。“自宅で発見された衣服が犯行当時のものであった、と本人が認めている”という2日後の修正報道は実に不思議な修正項目である。この衣服に警察が高窪教授の血痕をなすりつければ、高窪教授のDNAが検出されうるのはの当然の理屈である。今後、検察側によってこのような偽の工作がなされないという保証はない。

   

4.  高枝切りばさみ(物証C)をあらかじめ細工して(どのように細工されたのかその鋏の形状なども全く図面で報道されていない)、犯行に及んだと報道されている。準備周到な山本容疑者が、血痕だらけの黒のロングコートをわざわざ自宅に着て帰るほどとんまなのだろうか?もしそうならば血痕は黒のロングコートからしか自室のどこか(実際に血痕が発見されたのがどこかは報道されていないが)に移り得ないだろう。通常ならば刃物はどこかの公園の藪に捨てたり、川に捨てたりするだろう。ロングコートも途中で丸めて捨てるのではないだろうか。犯行に使われた刃物を行くとき持っていったバッグに入れて持ち帰ったのか、黒のレインコートにかくして持ち帰ったのかも報道されていない。そもそも刃物を隠し持っていたバッグ(物証F)は一体どこに行ったのだろうか?

   

5.  山本容疑者は犯行現場の中央大学から最も近い後楽園駅ではなくわざわざ三田線の春日駅まで下って、そこから家に帰ったということである。さらに前日に下見をしたということである。普通の成人はあちこち移動するのにPASMOSuicaを利用するだろうから、山本容疑者がこれらのカードを使っていれば、これらの履歴が印字されているはずである(物証K)。この点は全く報じられていない。

   

6.  当初自宅で見つかったノートやメモには犯行を裏づけるような動機などの記述が見いだせなかったとい言いながら、のちに、「やってしまった」「家族に申し訳ないことをした」--などの記載(:物証I)が見つかったという。どの紙にこの文章は書かれていたのだろうか?。本人の文字の写しが映像でどこにも示されていない。証拠物件である衣類や靴や刃物を捨てた男が、なぜこんな証拠になるようなことをわざわざ書く必要があるだろうか。

   このことに関してよくあることは、刑事が連日の密室での取り調べの時に、容疑者が刑事による連日の取り調べに疲れて、精神が朦朧(もうろう)境にある時を狙って、無知な容疑者に紙を出して、裁判に必要な「自供を示す証拠に必要な文章」をなにげなく書かせてみせるということがある(無罪を勝ち取った「狭山事件」がその典型である。最近では17年ぶりに被告が保釈された「足利事件」でも、そういう過酷な強制尋問が続けられて、やりもしないことを“やった”と菅家利和さんが自白に追い込まれたことが報じられている)。発見されたと称するこのメモがそのようにして密室の取調室で偽造されたものでなければよいのだが。

   

7.  何よりも犯行の現場の記述が明快でない。小便中の高窪教授に背後から無言で切りつけた、としても倒れた教授になお刃物を突き刺して貫通して床に刃がささるまでの力は尋常ではない。かって山口乙矢が浅沼書記長を襲った日比谷公園での短刀を真横に突き立てるシーンを思い出すのだが、相当信念をもった訓練した人物でなければこのようなことはできないのではないだろうか? 体中深く入った刃物を抜き取るには相当の力が必要なのではないだろうか? この辺の犯行の具体的な記述がきわめてあいまいである。高窪教授の爪の微物のDNAが山本容疑者のものと一致した、ということは高窪教授は、便器から振り返って、一度は山本容疑者と正面から対峙して、もみ合ったことになる。そして山本容疑者の顔か手から体組織を引っ掻いたはずである。したがって、山本容疑者のほうにはその時の引っかき傷がどこかにあるはずである。それに関する検察側の言及が一切ないのも不思議である。

   

8.  犯行後に廊下につきたてて残された刃物の断片は、有力な証拠物件である。この刃物をどこの店で購入したのかを山本容疑者に聞いて、その店に行って、同じ品物を購入した日時を店のレシートから検索することは容易なことであろう。そしてその時のレジの係に顔写真を見せて本当に山本容疑者が購入した人物なのかを同定してもらえばいいのである。なぜ警察はそれをしないのだろうか(すでにしているのかもしれないが)。とにかくこんな単純なことが、報道されていない。彼はそんな高枝切りバサミなど買わなかったのかもしれない。

  

9.  以上のような一連の犯行の事実を証拠づけるためには、山本容疑者を連れて犯行当日、彼の自宅から出て、大学で犯行に及んで、また自宅に帰るまでの一連のプロセスの現場検証を行うことであろう。検察はすでにそれをやったのであろうか? それにしては、これまで検察側の発表によって開示されているものだけでは、以上の物証(A)から物証(K)までの証拠があまりにも貧弱としか言いようがない。彼がいつどこで何をやったのか、一連の行為を証明する物証が、現在までのところ不鮮明であるといわざるを得ない。

   もしかしたら、山本容疑者が実行犯でないのでこの点を供述できないので、この方面の捜査がいき詰まっているのかもしれない。

      

10.           最後に、山本容疑者の精神鑑定が何故必要なのだろうか? 彼の供述に矛盾がなく、彼の犯行に至る経過がすべて物証で裏付けられていれば、精神鑑定などは全く必要無いのではないだろうか。供述(自白)が矛盾だらけだから、捜査が難航しているのではないだろうか?

    

      

(管窺)

付記:参考文献を示します。

「財田川暗黒裁判」 矢野伊吉著 立風書房刊(S50年)

「免田栄獄中記」  免田栄 解説青地晨 社会思想社(1984年)

 

秘密

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