2009-06-04 10:46 | カテゴリ:未分類

若者が留学したがらない理由

  

  「科学技術白書」が日本の若者が留学したがらないことを嘆いて「内向き志向」を打破せよと言っている。

   

  留学の一番のメリットは人によっていろいろ感想があるのだろうと思うが、その土地(異邦)に住んでみて、自分と異なる文化や発想があるということを学ぶことだと思う。日本という狭い国土で「和を持って尊としとす」という島国根性では理解できない人種がごろごろいるということを知ることではなかろうか。外から日本を見る視点を身につけることであろう。

  

  留学しても、なにも日本になんか帰ってくる必要なんかないのであって、その国が気に入れば、そして実力があればあちらの国の大学や研究機関で定職(ポジション)を得て家庭を構えればいいのである。

  

  留学したがらない理由として、日本に帰って来ても留学経験がプラスに評価されない、国を留守にしている期間にポジションを取られてしまう、という研究室があるのだそうである。本当かな?と思ってしまうのだが。。。

  

  一昔前は、大学の研究室の入口には研究室のメンバーの名札が「教授・助教授・助手・教務・技官・ポスドク・博士・修士・卒論性・研究生」などの順番で張ってあった(今もあるところがあるのかもしれないが)。助手が3名いる研究室で一番年上の助手がアメリカに1年留学して日本に帰ってきたら、自分の名札が2番目の助手に降格されていた、ということで、本人が<腐りきっていた>のを覚えている。その研究室では留学経験がマイナスに評価されていたわけである。結局この研究者は外の大学に転出していった。

 

  昔、先進国への留学組は大体その国の研究施設や人間環境がすばらしいので、そちらのほうがきっと良い研究ができると思って、希望に胸をふくらませて、尊敬するボスのところに留学したのである。当時のそういう留学組が今ノーベル賞を受賞しているのである。日本の研究室は彼らを外国に追い出したのである。

 

  しかし、少なくとも現在の日本ではいくつかの研究機関では施設・設備とも諸外国に勝る分野が結構出来てきている(ただし、その機器類の支援の人材(オペレーター)や事務処理のマネージメントの人材が数も質も貧弱な点は話にならないのだが)。したがって別に外国の偉い人に指導されなくても自分でガンガン仕事をやりたい若い人材は、その能力を発揮できる研究環境さえ与えてあげれば、あえて諸外国に留学したいという気持ちになりにくくなっていることも事実であろう。

 

  今は国際学会での交流も活発で、メールで直接情報交換ができるので、その気になればかなりのところ、学問の最先端を日本にいても走ることができる。

 

  ただし、多くの理系の学問は英語圏のジャーナルで独創性や先駆性争いがなされているので、自分の投稿論文に対して誰がレフェリーになるのかなどを判断する際に、若い時から相当詳しい人脈のネットワークを構築しておかないと、いろんな意味でジャーナルへの掲載を妨害されるので、常日頃から国際学会へ参加したり留学を通じて、その道の権威と交流を深めておく必要がある。学問的にはこれが留学の大きなメリットであろう。

 

  

  それと逆のケースについて述べたい。

 

  一時、科学技術振興機構(JST)の戦略的基礎研究(CREST)のプログラムでは、西欧圏の若い研究者を日本に来させるためにポスドクの給料を税込800万円(年額)という世界でもまれな金額を設定していた。給料で吊ろうというわけである。実際には大学の施設が貧困であったので、nature誌science誌で世界に公募してもあまり西欧圏の若者を呼ぶ成果はなかったと思う。

  

  しかし現在、外国の若者に関しては徐々に日本に留学しに来る優秀な人材も増えてきているように思う。まだまだ限られた分野ではあるが日本の研究施設の国際的に開かれた運営が少しずつ認知され始めたからであろう。国際的に開かれた研究施設の管理運営(ガバナンス)がなされているかどうかに関しては、特に国立の共同研究機関ではそれが重要な施設に対する「評価基準」となっている。

   

  従って、「科学技術白書」は、日本の若者が留学したがらないことを嘆くばかりでなく、外国の若者が魅力を感じるような受け入れ体制や施設整備が日本の研究機関に完備しているかどうかも真剣に考えたほうが良い。外国の優秀な若者が日本に来て若い時から日本の優秀な若者と交流して親密な人間関係を築くことは、日本の優秀な若者が外国に行くことと遜色ない大きなメリットが日本の若者にもあるだろう。

   

 日本に滞在中に得た(かすめとった?)アイデアでノーベル賞を取った人物もいることだし。

 

 

(森敏)

  

追記:もっとも重要な事を忘れていた。それは、現在の大学の人事体制についてである。国立大学法人が大学院大学になって行く過程で、正規の研究室員(スタッフ)が教授・准教授・助教の3名構成(あるいはそれ以下の不完全構成)になったところが多い。名目上はこの3者は各人が独立した研究者であると位置付けされているが、実際はこの3名が団結して仕事をして行かなければ、伝統的な研究教育の水準を保つことは極めて難しい。この構成だけでは、研究教育のマンパワーとしては全く充分ではない。若い準教授や助教は研究に専念しなければならず、雑用に振り回されていては、充分な研究時間が取れない。従って、彼や彼女が外国に留学するとなると、ヘタすると研究室が機能麻痺に陥る。だから上司は部下の若者に長期の留学をなかなか薦められない状況にある。これが若い助教が留学したくても出来ない真の理由であろう。

秘密

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