2009-05-16 13:09 | カテゴリ:未分類

苦節十数年の発明発見物語-リチウムイオン電池

  

週刊文春今週号に リチウムイオン電池開発者である吉野彰(旭化成グループフェロー)の「仕事の話」(聞き手 木村俊介) が載っている。この話の全文が発明発見物語として大変役に立つものである。

 

“市場調査が先にあり、そのあとに発明・発見のターゲットを絞る方が確実にビジネスになる”という指摘は、大学の研究者にははなはだ頭が痛いところである。

 

現在大学の評価には「産官学連携」の成果が強く要請されている。しかし基礎科学から応用科学へのボトムアップの「特許」が多く、実際には大学の99%の特許が製品化されずに死蔵されていると思われる。

 

例えば上記の吉野氏のインタビューの文章には以下のことが述べられている。

 

特許に隙間があれば競合他社に入られて権利は無効になる。だから、「これが花開くだろう」という基本特許の取得はもちろん、枝葉のような技術、それこそ五行のメモで終わるような小さい技術の独創性も含めて特許を準備しておく戦略が必要ですね。興味深いのは巨大ビジネスになる分野ほど予想外の枝葉の特許が効いてくるというところ。これは考えてみたら当然で、五年、十年と時代の変化で技術は進歩するのに、それでも以前の予想通りの基本特許が中心になっているような分野は「進歩がなかった」「巨大ビジネスとして据野が広がらなかった」ということなんですよ。リチウムイオン電池の場合、電池本来の機能と別の部分の「集電体に使える金属はアルミしかない」という発見が、特許にしたおかげで結果として予想外にライセンス事業を守ってくれました。

 

ここに書かれているような、きめの細かい特許取得のノーハウは、大学の研究者には、ほとんど知られていないし、たとえ知られていても実行がほとんど不可能である。

 

大学の知財本部にも、特許を製品化するための有効なサジェスチョンを与えられる人材は皆無に近い。大学の知財本部には民間会社の研究機関からの出向者が大部分で、自分の出自の会社のためにネタを探しに来ているとしか思えない輩が多い。

  

現状では大学の研究者の研究業績は主として「論文」で評価され、ポジションの向上も実際には「特許」はほとんど考慮に入れられていない。

 

全国の大学がほとんど全部「法人化」したので、研究者は大学当局に尻を叩かれるから、一応特許出願はするが(そのために学会発表や論文の投稿が半年ほど遅れるのが常である)、それはあくまで大学側が特許出願自体を奨励するからであって、発明者本人である研究者は製品化にはほとんど興味がない。

  

基礎研究者はどうなるかわからない製品化のための製品開発目的志向研究なんかに全力投球の時間を割けない。これが大学研究者の現状であろう。

  

じり貧の大学の会計を建て直すために各大学は特許収入をあてにしたいところだが、現状は極めて厳しい。大学の総収入の1割を特許で獲得するのにもあと50年はかかりそうである。

   

(森敏)

秘密

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