2009-05-03 14:54 | カテゴリ:未分類

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          上の図。女性研究者の割合

 

         

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3000億円は女性研究者の革命的待遇改善に- 野田聖子科学技術政策担当大臣に望む

       

 

  野田聖子科学技術担当大臣が、景気振興策として「3000億円の研究基金を創設し、30課題に5年間、各90億円拠出」と報じられている。(科学新聞4月24日)

大臣の発言は以下のとおりである。

   

「これまで現場の研究者から、予算が使いにくいという話を、また総理の有識者会議でも研究費のあり方についてご意見があった。各省庁で分配して細切れにして配分するよりも、一括してその研究者・プロジェクトチームに集中して配分する方が効率的。これからの科学技術をリードしていくためには優秀な人を確保してチームを作ることが重要。そうしたことを考えると、今のやり方では不十分で、日本の底力である科学技術力を発揮できるような環境を整備するため、直接研究者に必要な資金が届き、なおかつ多年度にわたって柔軟に使える、基金の創設を決めた。5年という制約はあるものの、この制度によって大きな成果が上がれば、単年度主義を前提としている国だけれども、科学技術についてはこういうスキームが良いという世論形成が出来れば」

   

こういう提案には、常々研究資金というパイが増える事を要求して来ている学術会議および大学の研究者は誰も反対できないだろう。

   

1課題を年間90億円という額は一プロジェクトチームが使うには建物などハードウエアに投入しなければとても使い切れるものではないだろう。5年間で一定の成果を上げることを要求するのであるから、この額はすでに実績がある研究者に付与されることになるだろう。すでに実績のある研究者にはすでにこれまでも大型予算が配分されているので、彼/彼女らは研究機器になどはすでに充分に装備している。ところが機器を買ってもそれを置く充分なスペースがない、しかもオペーレーターが予算上工面できないなどの理由でせっかく買った機器が有効利用されていない分野も多い。研究室面積が狭隘であるということは全国の大学研究者が味わっている共通の悲哀である。従ってこのままだと、結局この90億円という予算の半分以上は建物予算(研究棟の建築費)として土建屋に流れると考えて良い。それでも悪くはないのだが。 

   

この3000億円の額はすでにこれまでに実績がある研究者に付与されることになるだろう、と述べた。その理由は、この国は今だかって、海のものとも山のものともつかぬ未だ萌芽の段階の研究(あるいは研究者)にこんな高額の予算を投入した経験がないからである。だいたいそのような萌芽的研究を見抜くことは極めて難しいし、それは不可能に近い。また、ある若い研究者のプロジェクトリーダーシップを見抜くのもなかなか難しい。従って、熟年のすでに出来上がった研究者にリーダーシップをゆだねる事になるだろう。そういう研究者や研究課題の選考方法では、これまでの大型プロジェクトの課題選考方法と何ら変わり映えしない事になるだろう。

   

従って、今回文部省がやりそうなことは、少し趣向を変えてトップダウンでのプロジェクトリーダーの指名であろう。そのリーダーを選抜するための選考委員の選抜は官僚の個人的な人脈を使って極秘裏に行われるのではないだろうか。その結果は、これまでの人選とあまり変わらない顔ぶれが浮かび上がってくるように思われる。その結果、大学に関して言えば、端的にいえば、旧7帝大である国立大学優先の、地方大学や私立大学にはお涙程度の資源配分があるだけであろう(多分一割ぐらいか)。要するに、今回配られる資金は使い勝手が良くなる点では大いに評価できるだろうが、プロジェクトリーダーなどの選抜方法などはこれまでと変わり映えがしないのではないか。

   

そこで提案である。

  

現今の大学人ならば誰でも痛感していることであろうが、現状では国立大学はあまりにも運営費交付金が少ない。全国86国立大学で約2兆円である。少ない上に法人化して以来毎年1%カットのシーリングを課せられている。すでに5%以上カットされているだろう。これが旧帝大以外の大学の教育研究の基礎体力を徐々に低下させている。国立大学は認証評価や法人評価に忙殺され(ただし公立と私立は認証評価のみ)たのだが、たとえそれらの評価が良くても、その資金的な見返りがあまりない。従って現行の大学評価は大学教員のやる気を殺いでいるという悪循環の構造になっている。毎年1%を削減された分を外部資金で稼ぐのだけでも地方の国立大学は大変な努力を要している。

  

従って、この間に削減され続けてきた運営費交付金を今年はこの際一気に数年前のレベルまで引き上げるのも賢明な策ではないだろうか。ざっと考えて2兆円x1(%)x5(年分)=1000億円である。つまり今回予定されている3000億円の3分の一の金額をこれまで一律に削減されてきた運営費交付金に払い戻すのである。これだけでも地方の大学は泣いて喜ぶだろう。

  

次に提案したいのは、女性研究者に対する手当である。女性研究者支援はこれまでも少しずつ手が打たれているが、こんなとろとろとしたスピードでは未来永劫日本では女性研究者は男性研究者と待遇面で平等な肩を並べることができないだろう。野田聖子女史は今回せっかく女性として科学技術政策担当大臣になったのであるから、その女性大臣としての権限を存分に行使して、女性研究者のためにエゴイステイックにでもいいから腕力をふるってもらいたい。

  

女性研究者が出産と育児をすることが待遇面で有利になるように>このお金を使ってもらいたい。大学院生やポスドク在籍中に子供を産まなければ、ほとんどの女性研究者は高齢化するので出産・育児をあきらめざるを得ない事態に追い込まれている。出産したければ、大学院生の場合は育児期間中の大学院の授業料を払ってでも在学を延期するか、ポスドクの場合は研究を途中であきらめざるを得ないので無職に転ずるか(上司に理解があれば休職扱いで切り抜けられるが、職場環境は決して居ここちの悪いものになる)である。出産によって女性研究者の待遇が決して不利にならないように、むしろ有利になるような手を打ってほしいのである。出産と育児期間にかかる資金的・時間的なハンデイキャップをかならず取り返せる制度的保証を、この資金をテストケースとして是非活用してもらいたいものである。それに必要な種種の制度上の検討は全国で女性研究者支援プログラムがおこなっているのでそれから採用すればよい。

  

この様な巨額の基金が将来も続くのなら、一番してほしいことは女性研究者に特化した常勤定職(ポジション)の増員であろう。500億円もあれば7000人の若手女性研究者を一気に採用することができるだろう。定職を持てば、いろいろな意味で法律的サポートがあるので、安心して子育てができ、その後の研究にも専念できるであろう。それが結局日本国家の科学技術の活力の源泉になるだろう。極論すれば現状ではせっかく国家がお金をかけて養成した女性研究者の能力をみすみす<どぶに廃棄している>に等しい。

  

結局、人をプロフェッショナルにまで育てなければ、真の科学技術の振興にはならない。いくら物品や建物に資金を投入しても、単なる景気振興のための一過性の線香花火にすぎないだろう。

  

野田聖子大臣には女性研究者の地位向上のために、残された在任中に是非気合いを入れて頑張ってもらいたい。[それは小渕優子少子化対策担当・男女共同参画担当大臣の役割だ]なんて逃げないで。事は科学技術の問題なんだから。

       

(森敏)

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