2009-02-08 12:12 | カテゴリ:未分類

霜柱は何故出来るのか

  

  麟祥院の霜柱(WINEPブログ2009年1月4日)で

述べたように、過去に霜柱の研究がどこまで進んでいるのか、

北大の「雪の結晶」の権威である中谷宇吉郎氏がどこまでこの

研究をしていたのか、わからなかった。

  

  先日、自宅の書庫をかたっぱしから整理していて、なんと

「中谷宇吉郎集」茅誠司編(弥生書房)というのがでてきた。

全く記憶にないが、昔、「いきしちに」という相模原の古書店

で購入したものらしい。

  

  その本をぱらぱらめくると「霜柱と凍上の話」という昭和

14年12月執筆の話が掲載されていた。小生が生まれる前の

科学随筆である。

  

  それによると彼が紹介しているのは東京の自由学園の自然

科学グループの研究である。曰く

“霜柱は、ある特殊の土質について成長するもので、この氷が

土から分離して凍る作用が生ずるためには、非常に細かい土の

粒子があることが必要であって、しかもその微粒子が荒い土の

粒と適当に混じていることが大切だ”

    

  それに中谷先生自身が付言して

“微粒子といっても、どれぐらいの大きさの粒ならば良いかと

か、荒い土の粒子とどういうふうに混合して置けばよいかとか、

なお大切なことは、微粒子の存在以外に、霜柱の成長に必要な

他の条件がないかとか、沢山の問題がある 。”
  

“完全な砂では霜柱は立たない・・・・逆に微粒子ばかりの土

即ち粘土でも霜柱は立ちにくい・・・・・”
  

“結局関東平野の赤土のような土質が一番霜柱の成長に適して

いるのである・・・”と述べている。

  

  これを読んで、思わず学生の頃農芸化学科で弘法健三先生

に習った土壌学の基礎を思い出した。

 

1.土壌水には、「重力水」と「毛管水」と「吸湿水」がある。

http://www.mate.pref.mie.jp/kankyo/kisotishiki/dojyo5.htm

2.土壌には、砂(直径が大きい鉱物)と粘土(直径が小さい

粘土鉱物)の割合によって、「砂土」、「砂壌土」、「壌土」、

「植壌土」、「埴土」に分けられる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E5%A3%8C

  

  そこで、以下のように霜柱形成のメカニズムを小生なりに

考察してみた。
 

  つまり、上記の「吸湿水」はどのような条件でも土壌粒子の表

面に強く張り付いてから動かない水である。であるからこれは

霜柱の形成にはあまり関係がない水であろう。

  

  砂と粘土が適当なヘテロな混合割合にあるときには、「重

力水」と「毛管水」の割合が変わる。従って霜柱の形成にはそ

の混合割合が問題なわけである。

   

  霜柱が形成されるときに土壌の微細な間隙を伝わって土の

上方向(表面)に登ってくるのは「毛管水」である。この霜柱

の形成に使われる「毛管水」を、その土壌が保有している「重

力水」の側からたえず供給してあげなければならない。つまり

「重力水」は「毛管水」の貯蔵庫になっているのである。その

「重力水」からの供給が絶たれるところで霜柱は成長をやめる

ことになる。

 

  麟祥院で見た霜柱の長さがそろっていたのは、その長さま

でしか「重力水」から「毛管水」への水が供給できなかったか

らであろう。

  

  上記の「砂」だけだと土壌粒子間の間隙が大きすぎて「重

力水」が重力で地面の下方に全部抜けてしまう上に「毛管水」

が形成出来ない。これでは土の上方向に毛管を通って水が動き

ようがない。また、あまりにも土壌粒子が細かい「粘土」だけ

だと、ほとんど「重力水」がないので、今ある「毛管水」だけ

の量しか上方向に動けないので、すぐに霜柱の伸張が停まるこ

とになる。従って、関東ローム層のようなヘテロな「砂壌土」

が、霜柱の形成に、適しているのだろうと、考えられる。

  

  なお、「毛管水」が地上部に顔を出しても、それがすぐに

空気中に蒸散してしまっては、霜柱にならない。従って、土の

表面には急速な蒸散を抑制するような蘚苔類やカビなどがあっ

て、ゆっくりとした霜柱の成長を見守る条件が必要かと思われ

る。この点に関しては、麟祥院では人が踏み込まない所で浅く

マット状に苔が生えている下層に、長いきれいな霜柱が形成さ

れていた。なので、極めて納得がいく。

   

(森敏)
  
追記:この記事を書いて、一年以上経った、最近読んだ本『土の100不思議』(日本林業技術協会編 1990年初版、2004年第12刷)の中に 「霜柱の立つ土」というタイトルで粕淵辰昭氏(北海道農業試験場生産環境部水田土壌管理研究室長)が2頁にわたってわかりやすい記事を書いている。これには主として大気圏要因が述べられているが土壌学的要因に関する研究が、未解明であることが正直に述べられている。

秘密

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