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2008-12-26 08:02 | カテゴリ:未分類

icyou 1 

             写真1

銀杏の葉の変異。左の縦列から右の縦列へ順次追って見てください。

変化の順序が分かるでしょう。一番右の縦列は不規則変異群で、

すこし対称性が崩れています。たぶん葉の成長過程で栄養欠乏

や物理的刺激などの環境ストレスが強く作用したためと思われます。

 

icyouuu2.jpg 

        写真2

銀杏の葉をくるりと巻くと両側面がぴったり

と合う場合があります。

 

icyou3.jpg 

            写真3

    それを上から見るとカボチャの花のようです

 

icyou4.jpg 

            写真4 

銀杏の葉を真ん中で畳んでみると、左右がぴったりと一致します。

左右のくびれ込みが葉の発生時の同時期に発生していることが

分かります。

  

イチョウの葉の様々な形態に思う

   

イチョウがほとんど散ってしまった。下を向いて歩いていると、実に様々なイチョウの葉の形態があることに気づく。

 

その落ち葉を拾って並べてみた。(写真1

 

そうすると法則性が見えてきた。

     葉にまったく切れ込みがないものがある。

     切れ込みが無くても葉の周りが比較的スムーズなのと、ギザギザのある葉とに分かれる。

     まず、葉辺の中央部が少しくびれ込んだもの。

     次にこの葉辺の中央部が深くくびれ込んだもの。(くびれが葉柄まで至るものもある)

     この葉辺中央部のくびれ込みの両サイドの葉辺の中央部分がまたくびれ込む。鋭く葉柄部分までくびれ込んだものもある。

     次にまたそれぞれに分岐した葉辺の中央部分がくびれ込む。

     くびれ込み方は浅いものと深いものに分かれる。したがってほとんどの葉は対称型にくびれ込みが出来ている。

     これらがイチョウの葉の変異の一般型であるが、対称性が失われているものもある。葉が成長している過程での外的要因(太陽の当たりかた、物理的障害、栄養輸送組織の発達阻害などなど)で成長が阻害されたためであろう。

 

そういうことを考えていたら、最近入手した『進化し続ける植物たち』(葛西奈津子著 日本植物生理学会監修。化学同人)の口絵に東大校内にはラッパ型の葉を付けるイチョウがある、という説明文つきでそのイチョウの葉の写真が載っていた。それによると、イチョウの葉が扇状になる前には円筒型の組織に一度くびれ込みが入らなければならない、ということである。その最初のくびれ込みがよわいと普通観るイチョウの葉のように開帳しないものになるのだろう、ということなのだろうと想像した。

 

そこで、文京区の本郷通りを歩き回って、落ちているイチョウの葉で、地面にべったりとくっついて広がっているのではなく、すでに扇型ではあるが未だラッパ状に少しくるりと巻いているものを拾ってきた。そして葉の縦の左右の線を(扇の両側面にあたる)くるりと巻いて会わせてみるとなんとぴったりと一致して、上から見るとまるで朝顔やカボチャの花が開いたような形になるではないか!(写真2、写真3、写真4

 

なるほど。葉の発生の時に、まず逆円錐形の一か所の細胞にアポトーシス(細胞死)が起こり、次に時間差で、それと対称(180度向かい側)の位置の細胞にアポトーシスが起こる。それから少しして左右それぞれ90度の位置の細胞にアポトーシスが起こる。そのアポトーシスの起こる時間差の違いによって切れこみの入り方が異なる葉になっていく。であるから一見いろいろなイチョウの葉ができあがるように見えるのである。という結論に達した。

 

これらのアポトーシスの起こり方は、品種によって遺伝的に固定されているものではない。なぜなら一本のイチョウの木でも実に様々な変異の葉があることをその木の落ち葉で観察することが出来るからである。

 

葉の細胞は縦に分裂していくから、いったんアポトーシスが起こるとそこから先は細胞が成長しない。しかしその両サイドの細胞は細胞分裂して縦に伸びていくので、あたかもはさみが入って切れ込んだままのように見えるのである。

 

そういう目で見ると、東京大学の現在のロゴマークのイチョウのデザインは正確である。これは実在の2種類の変異イチョウを組み合わせたものである。

  

 

(森敏)

 

付記:アポトーシスとは(一部WIPIKEDIAによる):

生物の発生過程では、あらかじめ決まった時期、決まった場所で細胞死が起こり(遺伝的にプログラムされた細胞死)、これが生物の形態変化などの原動力として働いている。例えばオタマジャクシからカエル変態する際に尻尾がなくなるのはアポトーシスによる。

秘密

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