2008-11-17 21:32 | カテゴリ:未分類

放射線障害とダイオキシン障害の類似性について

   

1986426チェリノイブイリの原発事故では、爆風が成層圏にまで吹き上がったので、半減期の長い放射性ストロンチューム(Sr90:半減期28.78) や放射性セシューム(Cs137:半減期30.07) 以外に半減期の短いヨード(I131:半減期8.02日)が大量に地球規模で拡散した。

 

小生は当時東京の文京区東大農学部の圃場でも雨水から放射能を容易にガイガーカウンターで測定できた。放射性降下物であるI131の放射線のエネルギーが大きいので、測定感度の高い液体シンチレーションカウンターなどを使う必要がなく、測定感度の低いガイガーカウンターで充分検出できたのである。

  

その後、その年の11月になって、フランスから輸入して解禁販売されたボジョレワインからは何と液体シンチレーションカウンターで測定して数千cpmの放射能を検出した。この場合、半減期の短い放射性I131はすでにかなり消滅しており、放射能の主成分はSr90 Cs137であった。そのワインを小生の周りでも日本の皆さんは平気で美味しいと飲んでおられた。

 

翌年、イスラエルで国際学会があったのだが、昼食時に野外でイスラエル産のワインを飲みながら、遠慮しがちにそこで出されたワインの放射能汚染の可能性を指摘すると、さすがにみんなに厭な顔をされたが、ヨーロッパの学者達は半ばやけくそに「放射性ワインでお腹を消毒するんだ」と居直って自虐的に乾杯していたことを覚えている。

    

ヨード(I)は甲状腺ホルモンであるチロキシンの構成元素であるので、空気や食事から体内摂取された放射線ヨード(I131)は直ちに甲状腺に集積して、甲状腺組織を放射線でヒットして甲状腺の絶えず新生される組織を破壊し続けることになる。すなわち、甲状腺ホルモンの生成量が低下する。このことが経験的に分かっているので、甲状腺が発達過程にある小児に対して、チェリノイブイリでは原発事故後直ちにヨードが配られた。これによって少しでも甲状腺での放射性ヨードの割合を薄めて、放射性ヨードを体外に排泄しようという主旨からであった。しかし、それにもかかわらずその後の経過は免疫疾患や小児の甲状腺がんが多発している。

  

ところでダイオキシンやジベンゾフランはチロキシン(ベンゼン環を2つもって酸素原子で -O- 結合している)が閉環した場合の構造によく似ている

 

(いまここではブログにうまく構造式を添付できないので省略させてもらう)。

 

これまでに知られている人の体内にある生体物質でダイオキシンやジベンゾフランに似たものはチロキシンしかない。

  

したがって、ダイオキシン類は甲状腺ホルモンと拮抗して、甲状腺ホルモンが標的とする様々な遺伝子の発現を抑制する可能性がある。その結果免疫力の低下や、神経疾患を誘発している可能性がある。人成長ホルモンと極めて大まかな名前で命名されている甲状腺ホルモンの作用に関しては、まだまだ未知の分野があると聞いている。

   

もちろん、ダイオキシンはDNAの鎖に直接入り込んで読みとりエラーを起こす作用も指摘されているから、遺伝子変異を起こしやすい。このことは、エネルギーの小さな放射線が局所的な塩基置換を誘発したりすることと酷似している。

 

すなわち、このようなダイオキシンや放射線による遺伝子変異が、父や母の生殖細胞で行われると後代に引き継がれ、死産、流産、奇形、原因不明の成長過程での免疫不全などの弱体化を引き起こすのである。

  

ダイオキシンはただ女性の子宮内の卵母細胞に影響するばかりでない。ベトナム戦争で米軍自身が散布した枯れ葉剤(の中に含まれていたダイオキシン類)を浴びた米軍の帰還兵(男子)が、アメリカ国内で結婚後、多くの流産、奇形児を産む羽目になったのは、ダイオキシンが精細胞にも特異的に作用を及ぼす化合物であることを証明するものである。

  

以上、ダイオキシン類と放射線障害のアナロジーについて述べた。まだ仮説の域を出ないが、参考にして頂ければありがたい。

   

(森敏)

 

付記:小生は40年前には、植物ホルモンの研究をしていた。除草剤である2,4Dや殺虫剤PCPにダイオキシンが含まれていることが、ベトナム戦争の奇形児誕生によって、明らかになって以来、ダイオキシンを合成して、毒性試験をしていた。この当時の小生の啓蒙的論文は、「技術と人間」に収録されている。

追記:本日(2008年11月20日)ボジョレの解禁日である。チェルノイブイリの原発爆発日以降まだ20年弱しか経過していないので、あのとき土壌に降下したストロンチュームも、セシュームもまだ半減期を経過していないので、半分以上土壌に存在しているはずである。土壌に化学的に固定されたり、雨水で土壌の下方に流亡されたりして、実際に植物に吸収されて、ブドウ果実に移行するこれらの放射性核種は格段に減少していると予想されるが、実際に当時と比べてどれくらいに減少しているか興味のあるところである。だれか測ってみませんか?

 

 

 

秘密

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