2007-12-26 13:11 | カテゴリ:未分類

団塊の世代の不安

 

一仕事を終えた団塊の世代が、退職して、過去を振り返る余裕が出来てきたのか、次々と、小学校や中学校の同窓会に出席し始めた。そこで彼らが驚愕するのは、すでに物故した同窓の多さである。多い場合は同学年のすでに一割ぐらいを占めている。したがって次にいつ自分が死を迎えてもおかしくないと切実に感じられるのである。これまでは主として両親や親類の自分よりも年上の葬式につきあってきた。自分はあくまで葬送する方であったが、これからはいつ葬送される方に回るかも知れないという、切実感を抱いて、同窓会から帰ってくる。

 

思えば、終戦直後に生まれた団塊の世代は、本当に母体の中にいるときから栄養不良で、生まれてからも、全くの栄養失調であった。我が家では姉が小生の弟の脱脂ミルクの供給に毎日配給所に並んだということである。大豆かすやトウモロコシかすを粉にして水に溶いて牛乳代わりに与えた。詳しくその理由を両親(すでに物故した)に聞いたことがないが、次に生まれた一番下の弟は養育が不可能で、父の会社の部下の養子に送り出す羽目になったようである。当時5歳児の小生は田圃や畑でイナゴ、どじょう、タニシ、木イチゴや桑やグミの実などを追って、毎日が狩猟採取生活であった。

 

農業では「苗半作(なえはんさく)」といわれている。この言葉は作物によっては必ずしも正しくないが、「多くの作物は、しっかりした苗を作らないと、あとでいくら栽培学的な創意工夫をしても、初期生育のハンデイキャップを乗り越えることが出来ない」と言う意味である。団塊の世代で特に膾炙(かいしゃ)していることは、『血管が細い』という事実らしい。いくら成人して栄養をとっても、こればかりは後天的には改善されないようである。したがって病院での注射針が血管に入りにくい、と言う。また、脳血管が弱いので脳溢血などになりやすい、と言うことで、高血圧の人は特に神経質であるようだ。ご本人はさほど意識していないが、脳のあちこちから少しずつ出血した血痕のある症例が小生の周りにも聞かれる。激昂したり、急に激しい運動をしたりすると、脳血管がパンクして ”あの世” が待っているので、ひたすら平滑に、平滑に、calmfulに生活しなければならない、と心がける必要があるらしい。

 

ところが、団塊の世代が退職して悟ることは、自分が如何に地域社会と関わっていなかったかということである。市役所、税務署、郵便局、銀行などの窓口へ行くと、その非能率さと、ばかげた形式主義(strictly formal)に、腹を立てない人は皆無だろう。今まで奥さんや会社が本人の替わりにやってくれていたことを、自分でやらなくてはならないことが多くなった。何でも保険証や免許証やパスポートでの『本人確認』が必要である。しかし、ふつうの主婦はそれに対してはすでに慣れっこになっているので、いらだちはしない。時々大声で窓口の人に抗議している初老の紳士や淑女に出くわしたときは、「宜なるかな」と妙に同情を禁じ得ない。彼らは、自分自身の地域社会への不適応さにいらだっているのである。怒りが収まるのに数時間はかかるのではないだろうか。これはきわめて脳血管によろしくない所行である。

 

喧噪の都会を離れて農業でもやりながらゆっくりとした余生を過ごしたい、と言っても、体力もないし、よく考えれば栽培技術も持たない。土地が安いところは無医村の交通の便のない超高齢化が進んだ『限界集落』だらけである。そんなところに行ったら即、死期を早めるに違いない。

 

かくして不安な団塊の世代は平均余命20年間の“楽しかるべき”人生の方向を決めかねているようである。

 

(森敏)

 

追記:先日2008年7月1日、東京大学農学部で

「バイオサミット in Tokyo 地球環境を改善するアグリバイオ 

という NPO北海道バイオ産業振興協会主催のシンポジウムがあった。ところがこの会議の演者3人が北海道から参加するということで、予定の12時半に現れず、また会場の設営も12時半から行われはじめたという始末であった。1時まで待ったご高齢の参加者2名がついに立ち上がって、「いったいいつ始まるのだ。東大がこんな集会をやるなんて、初めてだ。まことに恐れ入った」と憤懣やるかたないご様子であった。他に若い人たちも、消費者団体のご婦人方も居たのだが、洞爺湖サミットの警備でなにかとあったのだろうと「仕方がないか」という顔でみな待機していた。このように、現在、リタイアしたご高齢の方たちはみんな短気なのだ。彼らは現役在職中は “きちん、きちん”と仕事をこなすことが当然で、それがプライドでもあったので、時間を厳守することは当たり前の社会のルールと思っているのだ。多分「今の東大農学部はだらしない」とあちこちで、憤懣をぶちまけ続けているだろう。大学は心しなければならない。

 

 

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