WINEPブログ
「飯舘村のカエルの放射能汚染」
| ホーム |
2023-04-25 12:56 |
カテゴリ:未分類
先日
(公財)農学会-公開シンポジウム「食の未来-タンパク質食品-」
日時 2023年4月23日 01:00 PM 大阪、札幌、東京
というのが東大農学部の弥生講堂で開催された。この講堂の硬い椅子に長く座ると腰が痛くなるので、小生はZOOMで事務所からWEB拝聴した。
シンポジウムのコンセプトは、近い将来世界の人口が100億人以上になって、食品中の「タンパク質が足りないよ!!」という時代が来るので、それに備えて日本でも何をすべきか、という話題提供であった。従来の食糧危機は穀類などの糖質の不足を意味しているが、今回は、3大栄養素であるタンパク質もそのうち足りなくなるよ、というわけで、これを「プロテイン・クライシス(Protein crisis)」と呼んでいた。
背景には、家畜などの動物性タンパク源である牛・豚・鶏などの濃厚飼料(大豆やトウモロコシ)が、ヒトの食糧とバッテイングする上に、大動物のげっぷがメタンなどを生産し、糞尿が炭酸ガスやN2Oなどの温暖化を促進する、ということでSDGs(持続可能な開発目標)や、COP(気候変動枠組条約締約国会議)などに動物の肉を食べ続けることは、これらに敵対する、という側面があるからということらしい。
細胞培養筋肉や昆虫食(フタホシコオロギ:Cryllus mimaculatus)や大豆タンパクからの加工肉に関わっている研究者や業者が登壇してこれらのタンパク食品の日本での社会実装の困難さを紹介していた。
すでに述べたように、食品業界や環境問題専門家の間ではこの問題を「Protein crisis(タンパク危機)」と呼ぶのだそうである。
欧米での世論調査では、植物由来などの人工肉を食べるか?という質問に対して、「食べる」という賛成者が40%以上いるが、日本では極端に少ない(5%以下?)、ということである。
これは
① 日本人が地球環境問題に対して、まだまだ鈍感であることと、
② 日本人が味(や風味)に対して、高い感受性を有している(あたまでわかっていても体が受け付けない)ので、人工肉の製品が自然の風味に追い付いていない、
からではないかということであった。
そこで、シンポジウムの後、ネットで検索するとオランダの研究機関からの報告で、以下の文章が出てきた(要旨だけ翻訳した)。
「世界人口を養うという課題の高まりと、私たちの食の選択が気候変動に与える影響を最小限に抑えるという意識の高まりから、より植物に近い食事が人気を集め、市場に出回る植物性食品の数も増加しています。
長期的な健康増進にもつながる植物性食生活を刺激するためには、これらの製品が動物性食品に代わる健康的な代替品であるかどうかを監視するためのデータが必要です。
そこで本研究では、オランダのスーパーマーケット8店舗で販売されている916種類の植物由来の肉、魚、乳製品の代替品を調査した。各製品の栄養品質は、(1)オランダの食品ベースの食事ガイドライン、(2)Nutri-Scoreによって評価された。
その結果、70%以上の肉、魚、乳製品の代替品は、Nutri-ScoreがA/B(高い栄養品質を示す)であるが、オランダの食事ガイドラインに適合していないことがわかった。これは主に、塩分が高くビタミンB12や鉄分が少ない(肉や魚の代替品)、またはタンパク質やカルシウムが少ない(乳製品の代替品)ことが原因です。
結論として、植物由来製品の大半は、栄養学的に動物由来製品の完全な代替品ではありませんが、まだ改良の余地があります。消費者が健康的な植物性食品を選択できるようにするためには、Nutri-Scoreと推奨される食事ガイドラインをより適切に調整する必要があります。」
シンポジウムの議論を聞いていていろいろ考えるところがあった。
実は1960年代に石油タンパクのプロジェクトが発足して、石油から酵母を作って、そのタンパクを食しようという動きがあった。しかし、当時これは製品から石油の香りを抜ききれないとか、石油をたべるというイメージが悪くて、消費者運動に抵抗されて日本では認可されなかったと記憶している。当時のソ連圏では石油発酵技術が進歩して、酵母が食品に使われているという噂であったが。
実は、このブログでも紹介したことがあるが、これまで3回ばかりスターバックの人工肉ハンバーグ入りサンドイッチを食したことがある。素直に、「これはいけるかもしれない」と味覚に鈍感な小生は思った。そこで興味をもってダイズタンパク由来のすでに市販されているあちこちのスーパーの肉のコーナーを徹底的に物色したのだが、その十数種類の袋の裏書を見て添加物の多さにうんざりした。天然肉の味やテクスチャーを出すために、涙ぐましい努力が感じられるのだが、ハムやソーセージとどっこいか、それ以上の添加物の多さである。元来味覚が鋭い健康志向のわが女房殿は、添加物だらけのハムやソーセージを決して食べないので、小生は今も買うのを控えている。値段もまだ結構高いし。
本当に人工肉が環境負荷の削減に寄与しているかもまだ疑問だ。環境「産業連関表」を使って、天然肉100グラムと、人工肉100グラムについて、生産から店頭に並ぶまでのCO2やNOxの排出量を、計算してみてくれませんかね。農水省か経産省の誰かが計算をしているだろうか?シンポジウムではこの点でのデータが示されなかったと思う。
(森敏)
追記1:本日以下の記事が、放映された。肉ではなく卵ならこれなら受容されるんではないか?
植物性由来の「代替たまご」とは?鳥インフルで卵不足のなか発売
卵の供給が安定しないなか、植物性由来の「代替卵」が4日に全国のスーパーで発売されました。 植物性食品を扱う「2foods」と大手食品メーカーの「カゴメ」は、常温で長期保存が可能な代替卵を開発しました。 植物性由来の代替食品では一般的な大豆を一切使わず、ニンジンや白インゲン豆から作ることで、卵の「ふわとろ感」を再現しているのが特徴です。 去年秋から過去最多の規模で発生している鳥インフルエンザの影響で国内の卵の安定供給が難しくなるなか、卵の新たな選択肢を提供したいとしています。
| ホーム |