2008-10-02 23:02 | カテゴリ:未分類

リゾチームに思う

 

話は半年ほど前にさかのぼるが、シロアリの卵認識フェロモン(性誘因物質)としてリゾチームが同定された。岡山大学大学院環境学研究科の松浦健二助教グループの成果である。リゾチームの多様な機能が明らかにされたわけである。

  

本来リゾチームはグラム陽性バクテリアの細胞壁を溶かす酵素なので細胞が溶けてしまって(溶菌という)死滅する作用を持っていることが分かっている。それ以外の機能を考えた人はいなかったはずである。快挙である。

  

実はリゾチームは、これまでも日本の企業によってリゾチームを用いた様々な商品が開発されている。その代表格にリゾチームが入った <チューブ入りの練り歯磨き> がある。小生は学部学生の時の微生物実験でリゾチームを使ったことがあり、その威力(溶菌力)をよく知っていたので、この練り歯磨き粉が出たときから愛用している。今でも女房と二人で2ヶ月に1本は消費していると思う。歯を隅々まで歯ブラシでぎしぎしと磨かなくても、5分間ばかり雑ぱくに磨いていればリゾチーム酵素の反応で口腔内細菌が死滅するだろうという当て込みで、もう15年以上なんとなく愛用してきた。

  

ところが最近、小生に虫歯が2カ所発生した。もう10年以上も無かったことであった。幸い虫歯菌による腐食が歯の神経にまでは届いていなかったので、腐食部分を削ってセラミックの詰め物をして、治療は完了した。

  

が、歯医者さんの言うには、「あなたの歯茎(しけい)は歯石(しせき)だらけです、採らないと歯周病(ししゅうびょう)になるかもしれません」とおどかされた。女房に言わせれば、「歯医者さんはいつも患者をつなぎ止めるために歯周病の危険を振りかざして歯石取りを勧めるのよ」とのことであるが。 確かに最近歯の付け根の周辺がざらざらすると感じていた。そこで上あごと下あごの2回にわたって歯石を取ってもらった。歯肉の内側にまで歯医者さんが挑戦してくれたせいか、口中が血痕だらけになった。多少過剰にエナメル質を削られたような気もする。

  

物の本によると『歯垢(しこう)が石灰化して歯牙(しが)表面に張り付いたものを歯石と呼ぶ』とある。で、『歯垢とはその組成の8割が水分、残り2割が有機質で、この有機質の大半は細菌口腔常在菌)とその代謝物である』とある。小生の場合はリゾチームでは溶菌されない細胞壁を持つ菌が口腔内細菌にいて、それらが徐々に徐々に互いに凝集して歯石になったのであろうと思われる。

  

それにつけても思い出すのは、昔、大学の研究室の後輩に「ボクは歯を磨かなくても虫歯になったことがありません」と豪語する助手がいた。今から想像するに、彼の口腔内には一酸化窒素(NO)や過酸化水素(H2O2)のような、反応性の高いガスを代謝過程で放出する常在細菌がいて、口の内を絶えず殺菌していたのかもしれない。あるいはなにか特殊な抗生物質を分泌する菌がいたのかも知れない。

  

こういう人間のミュータント(変異株)からこのような有用な口腔内細菌を単離して、その殺菌力のある化合物を同定してみたらいかがだろうか? だれかから聞いた話であるが、野生の動物は虫歯にならないということである(動物園で飼育されている動物は餌に砂糖や添加物が入っているので虫歯にかかるようであるが)。であるから、彼らの口腔にもきっと殺菌力のある化合物を出している特殊な細菌が常在しているに違いない。

  

それらの化合物を添加した歯磨きを作るか、その有用菌を添加した歯磨きを作るかしたら大いに虫歯の予防に貢献できるだろう。この化合物は元々口腔内にあるものなので人体毒は極めて少ないだろう。

  

そうなれば歯医者さんは「歯石取り」の仕事が減って、なおかつ虫歯の患者数も減って商売が上がったりになるかも知れないが。

   

(森敏)

追記:最近、歯科医による歯周病予防のキャンペーンが積極的になされている。一方、報道によれば、内科医、外科医、産婦人科医、小児科医、放射線科医、麻酔医などすべての医者が現在不足しており、そのために医師が確保できなくて地方の公立の病院といえども閉鎖に追い込まれているという。ところが歯科医は全国的に多少過剰供給気味であるという。歯周病予防のキャンペーンは、確かに“歯科医のための仕事作り”なのかも知れない。

 

 

 

秘密

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