2008-09-29 22:15 | カテゴリ:未分類

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     つるつるに研磨された手のひら大の桂化木

 

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      上部の断面を見ると年輪がある

  

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      いかにも木の様に見える桂化木

  

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    上部断面には非常に細かい年輪が読みとれる

   

 

桂化木(けいかぼく)からの断想

 

今は亡き山梨大学名誉教授の太田道雄先生は、山梨大学退官後「桂化木」という私家本を第3巻まで上梓された。全部ご自分でワープロ打ちされて、それができあがるたびに、出身の東京大学植物栄養肥料学研究室に来られて、教室員に本を配っておられた。当時助手であった小生もこの貴重な本の寄贈を受けた。

 

ホームページの他の所でも紹介したが、太田道雄先生は、世界で最初に、ケイ酸がイネの生育にとって非常に重要な元素(beneficial element)であることを、証明された方である。その結果世界で最初に日本政府が「ケイ酸肥料」の認可を行ったと先輩から聞かされている。

 

「桂化木」第3巻を作られたときは太田先生は80才位であったと思う。本を贈られるたびに太田先生のケイ(桂)酸研究にかける情熱にはいつも脱帽していた。先生が、「桂化木」という名前をご自分の本のタイトルにされたのは、言うまでも無く、桂酸の桂という字が大好きであったからである。先生はその「桂化木」の中で繰り返し繰り返しケイ酸の有効性の発見の契機を書かれている。

 

先生は東京大学から山梨大学に赴任された。その山梨県の富士見土壌の低位収穫の理由が、水稲体内を分析してケイ酸欠乏であることを発見し、富士見土壌に溶鉱炉から出る「鉱滓を投入することによって水稲体内のケイ酸含有量が増加し、それと共に驚くべき籾収量の増加を得ることが出来たのであった。

  

先日、青森での土産物店街を冷やかしていると、場内のいちばん片隅に夫婦で“天然石”を売っているささやかなコーナーがあった。何気なく冷やかしていると、この店はなんと大小様々な桂化木が主体の石を並べているのであった。石がてかてか光っているのは、研磨剤の中で何十時間もぐるぐると回して艶を出すからなのだそうである。そんな石でも、よーく見ると、細かな年輪がしっかりと観察される。

  

つまり、何億年も前の地質年代の昔に倒れた木が土に埋もれて、腐植化せずに、ゆっくりゆっくりと、土の中に溶けているケイ酸成分を吸収して木の形のママ年輪を維持して鉱物化(SiO2)したものが、さらに地殻の変動で地底に潜り込んで高温高圧を受けて堅い岩石となったものである。

  

写真には、青森で300円で購入した手のひらに載る桂化木と、東京大学付属日光植物園の、学生実習用の寄宿舎の床の間に飾ってあった大きな桂化木を示している。今回青森で購入した経験からすると、後者はおそらく数万円はするものと思われる。なかなか風情がある。

  

なお、もっと巨大な桂化木が上野の科学博物館の庭に展示してある。これらは小中高の学生達に悠久の地球の歴史を想起させるのに格好の教材であると思われる。

  

(森敏)

 

追記1:先日、日比谷公園を歩いていたら、2本の桂化木の植え込みコーナーがあった。その標識の説明文には以下のように書かれていた。

「松木。今から3-5千万年前の植物が、水底に運ばれ埋没された後、桂酸質の液がしみこんだものを、桂化木と言います。北九州の炭田では 炭層中に、桂化木が含まれ、これを、松石または松炭と呼んでいます。ここにあるものは昭和初期、福岡市外亀山炭坑の地下300メートルの所から長い木のまま発見されたものの一部です。」

 

追記2:「進化し続けるしょくぶつたち」 (葛西奈津子著 日本植物生理学会 監修 植物丸かじり叢書 化学同人)をぱらぱらとめくっていたら、口絵のカラー写真に、”直径1.5メートル以上の巨大なジュラ紀ナンヨウスギの桂化木 のオーストラリアでの写真が掲載されていた。是非見てください。

 

 

 

 

 

 

秘密

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