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2021-04-20 12:27 | カテゴリ:未分類
 


東山高校テーゼ

「根が肝心」 というタイトルの東山高校のポスターの写真

   



  京都の「南禅寺」から「永観堂」を通って「哲学の道」に抜ける狭い道路の途中に東山中学高と高等学校の一貫校(らしい)がある。その校門前の掲示板に、上掲の写真を掲げたポスターが張られていて、その下には、縦書きに


  根が肝心

  東山は、強い根を育てます

  「まなぶ」「つながる」「つくる」の3つの力が身に付き

  「強く」「たくましく」「幸せに生きる」

  ことができるようになります。


と書かれていた。


  植物の養分吸収に関する研究が専門の小生は、このポスターには思わず「おや?」と立ち止まってしまった。中・高生の段階で、根の重要性から人生を説き起こしている学風に、強くありがたい共感を覚えた。
   
  植物栄養学には hidden half (隠された半身)という英語の本があり、日本では「植物栄養学」(間藤徹・藤原徹・馬建鋒著 文栄堂出版)という立派な教科書がある。

  根の「形態」と「機能」の研究は、小生の終生の研究テーマであり、地上部の光合成や受精機能以上に重要なテーマであると強く思っている。のだが、中・高の生物学の教科書ではこのことは、きちんと教えられていないと思う。

  いまでは古い文章だが、以下に引用するように、風土論で著名な和辻哲郎のような昔の超インテリでさえも、大人になって初めて根の重要性に開眼する場合が多いようである。今現在、中共コロナウイルスが日本中で第4次のピークを描きつつ蔓延している。この精神的空間的閉塞状況の中で、人々が家庭菜園などを試みはじめ、連作障害や厭地現象などに気が付き始めている。根の重要性やそれを支える土の重要性に目が向き始めている。これは、奇貨というべきかもしれない。
    
  小生は放射線という一見目に見えないものを「放射線像」としてこの10年間可視化することに注力してきたが、どんなものでも、一見見えないと思われているものを技術の発展によって可視化することが、人間の教養のレベルを一気に高める(認識の拡大に貢献する)手法であると思っている。

  
   

樹の根

和辻哲郎
:::::::しかるにある時、私は松の樹の生い育った小高い砂山を崩している所にたたずんで、砂の中に食い込んだ複雑な根を見守ることができた。地上と地下の姿が何とひどく相違していることだろう。一本の幹と、簡素に並んだ枝と、楽しそうに葉先をそろえた針葉と、――それに比べて地下の根は、戦い、もがき、苦しみ、精いっぱいの努力をつくしたように、枝から枝と別れて、乱れた女の髪のごとく、地上の枝幹の総量よりも多いと思われる太い根細い根の無数をもって、一斉に大地に抱きついている。

私はこのような根が地下にあることを知ってはいた。しかしそれを目の前にまざまざと見たときには、思わず驚異の情に打たれぬわけにはいかなかった。私は永いなじみの間に、このような地下の苦しみが不断に彼らにあることを。一度も自分の心臓で感じたことがなかったのである。:::::あの美しい幹も葉も、5月の風に吹かれて飛ぶ緑の花粉も、実はこのような苦労の上にのみ可能なのであった。
    この時以来私は松の樹のみならず、あらゆる植物に心から親しみを感ずるようになった。彼らは我々とともに生きているのである。それは誰でも知っていることだが、私には新しい事実としか思えなかった。




(森敏)
秘密

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