2008-09-16 22:55 | カテゴリ:未分類

メラミンで腎臓結石とは

 

北米のペットフードの事件の時は、中国製ペットフードを食べて犬が何千頭も死亡したということを聞いても、あまり興味が湧かなかった。元来、家畜の餌には、人間が食べた残りかすなどのいい加減なものが入っているであろうから、このときは「さもありなん」という感想であった。であるから、イヌが下痢でもして死んだのだろう、としか思っていなかった。当時は死因の病名が報道されなかったからである。

 

ところが今回の中国での事件は真に衝撃的であった(最初に9月9日の読売新聞が小さな記事で報道したのを小生は名古屋に旅行中のホテルの中部版で見たが、その後、瞬く間に各紙が連日報道するようになった)。

 

小生は腎臓結石を有しているので、当初読売新聞を読んだときにはこの化合物の正体がぜひ知りたいものだと思った。いわゆる食べ物の「食い合わせ」によって、腎臓で水に不溶態のものが形成されて腎尿細管を詰まらせたのだと予想したのである。多分ミルクのカゼイン・カルシュームと反応する化合物が大量に添加されて腎臓内部で不溶態を形成したためだろうと考えた。

  

ところがその後、次々と報道された真相は、乳幼児の粉ミルクにメラミンが添加されていて、それで腎結石になったため死者1名、患者数432人、潜在的被害者は約3万人ということである。すぐに原因が特定されて、犯人も国内大手の「三鹿集団」ということである。本日の朝日新聞夕刊の報道では被害者は2死者を含む1253人ということである。

  

メラミンといっても単体(モノマー)なのか高分子(ポリマー)なのか、メラミン単体と何かが結合した化合物なのかわからなかったが、腎結石の結晶の本体は、先のペットフードの時に解明されているらしく、どうやらメラミンシアヌレート(melamine cyanurate)という難溶姓の結晶化合物のようである。非ハロゲン系の難燃助剤として主に用いられているが、白色系の潤滑油添加剤としても用いられている、とインターネットのwikibediaでは説明されている。

 

メラミンは一分子に窒素を6つ、シアヌル酸は一分子に窒素を3つ持っており、ミルクの全窒素含量を高めることによって栄養価が高いように見せかけようとしたもののようである。まったく、こんなものを入れる気が知れない。中国の食品公害もきわまれり。まだメダミドフォス混入(添加?)の冷凍餃子事件は犯人が検挙されていないし。。。。

 

来る10月に北京に学会で行くのだが、オリンピック後であるので、心配である。北京が建物がきれいになればなるほど、食品や飲料水の作為的な汚染が進んでいくようである。この中国の現状は、東京オリンピックのあとの都市の発展と公害が同時進行した当時のニッポンの姿と重なる。

  

どこまで進めば、共産党政権による政策的なフィードバックがかかるのであろうか。ロシアの過去の状況を見れば、腐敗堕落した共産党員による政権が続く限りこの暴走は止まらないのではなかろうか。

   

中国では日本の1960年代の高度成長・公害先進国時代の食品添加物公害が今まさに展開中である。暴走していると言っても過言ではなかろう。しかしいくら何でも日本では今回のような増量剤として有害物質を食品に大量に添加するという詐欺まがいのことは行われなかったように思う。事故による森永ヒ素ミルク事件や意図的な防腐効果を狙った乳業各社によるミルクへの過酸化水素添加事件などがあったのだが。

 

(森敏)

付記:ソビエト連邦の共産党政権のときは、メドべージェフ氏などによって多くの環境破壊が内部告発されて、西側に紹介されていたが、強い報道管制が敷かれていて、外からはなかなか定量的な真相がつかめなかった。しかし共産党政権がつぎつぎと崩壊して(1989年ベルリンの壁崩壊) 、これらの内部告発は全くの事実であることが明らかになった。

中国の共産党政権は「生産力至上主義」(GNP至上主義と言っていいかもしれない)を放棄できないで、土壌、空気、水の環境容量が経済発展の規定要因ではなく、これらはまだ無限大と考えているところがあるように思われる。

追記1:知人によれば「メラミン」という言葉は、ペットフードの事件のときにすでに出ていたと言うことである。そういわれれば出ていたようだ。小生に興味がなかっただけなのだ。そこで思い出したのだが

①「ペットで起こったことはいずれ人間にも起こる」(例えば有機水銀による水俣病の発生前の「猫の狂い死に」を想起しよう)

② 労働災害はいずれふつうの人にも起こる(例えばアスベストによる「中皮腫」をふり返ってみよう)

という、昔、宇井純氏達が提唱していた「公害発生の原則」を小生は忘れていたようだ。

猫や犬や鳥などの異常にもっと敏感にならなければならないと思ったことである。彼らは環境異変の敏感な検知器なのだ。(9月17日 記)

追記2:この件で思い出したことがある。乳牛の大量死事件というのが1970年後半だったと思うが北陸の富山県や石川県で起こったことがある。これは牛の第1胃は細菌と原生動物(プロトゾア)によるルーメン発酵をしていること、その窒素源として尿素を同化できること、等の研究者による発見に基づいて、尿素の替わりに本来は緩効性窒素肥料であるIB(isobutylidene diurea)を乳牛の餌に混入したために起こった事故であった。その結果この化合物が胃の中で分解して「尿素」と「イソ酪酸」が出てきて、後者が急性中毒を引き起こして牛が死亡したものと思われた。実にいい加減な意図的な牛のための飼料への窒素源添加事件であった。この時は100頭近くの乳牛が死亡した。飼料中の窒素含量を増強しようとする意図は、中国製のペットフーードの小麦粉にメラミンを添加したり、牛乳にメラミンを添加した行為と<意図としては全く同じもの>である。(9月18日 記)

追記3:現在河北省石家荘市長など28人が逮捕・拘束され、河北省長が免職、中国国務院(政府)で食品安全問題を担当する国家品質監督検査検疫総局の李長江局長(63)が22日辞任した。(2008年9月23日)

追記4:当初メラミンシアヌレート(melamine cyanurate)が腎臓結石の本体だと思っていたが、くり替えされる報道を見ると、メラミン(melamine)そのものが原因物質と言うことのようである。この単体のメラミンと結合して腎臓内で結晶化している相手方の化合物は何なのだろうか? 興味がある。是非病理学者に化合物の構造を天然物化学者と共同研究して同定してもらいたいものである。

秘密

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