WINEPブログ
遅まきながら年初に出版されていた『東京、はじまる』門井慶喜(文芸春秋刊)を読んだ。この著者が宮沢賢治の父を描いた「銀河鉄道の父」で直木賞を取ったのを読んでいたので、注目している作家だからである。
この本は日本人としての建築学の創始者「辰野金吾」の伝記である。彼は、我々には ”白い腰巻を巻いたデザイン”の東京駅の建築家として有名である。読みながら時々の、司馬遼太郎流の大仰な文体がいささか鼻についたのだが、全体として非常に読みやすかった。
読んでいて、本筋からは外れるのだが、小生には2つのことがわかって面白かった。その一つは、東大
その二つ目は、辰野金吾の死因が1918-1919年に日本に襲来した「スペイン風邪」であったという史実である。このことは小生より一世代前の人たちには常識らしいが、小生には、あっと驚き、だった。そこで少し調べてみた。
スペイン風邪の死者は最終的にざっと、
アメリカで55万人、
イギリスで20万人、
インドで1250万人、
ということである。
日本人では最盛期には毎日200人以上の死者が出ており日本全体で約39万人死亡したということである。
世界全体の死亡者数は1700万人から1億人と極めてあいまいである。
スペインかぜの病原体は、鳥インフルエンザウイルスの変異株であるA型インフルエンザウイルス(H1N1亜型)であると確定している。
一方、現在進行形の中共ウイルス(COVID-19)ではこの原稿を書いた11月25日現在で、
アメリカの死者が257,514人、
イギリスの死者が55,327人、
全世界での死者が140万人、であるから、世界規模ではまだまだスペイン風邪の死亡者数の10分の一にも達していない。
死者数が少ないのは近代医療の成果なのかもしれないが、これからどこまで行くのか空恐ろしい。感染するかどうか、感染して重症化するかどうか、重症化して死に至るかどうか、などの各律速段階に関わる遺伝子は、その個人が人類進化の過程で獲得した遺伝子の中に中共ウイルスに抵抗性である遺伝子があるかどうかや、その遺伝子に変異があるかどうかなどなど、にかかっている。まさにこの方面の研究は現在進行形で花形の研究である。
辰野金吾の時代には感染症の概念が希薄であったので、警戒心が比較的薄く彼の死の床には、あらゆる政・財・官・民・学・界の建築関係者が駆けつけてきたようである。家族の感染があったかどうかは書かれていないのでわからないが、彼だけが感染死したようである。よほど運が悪かったんですね。
(森敏)