WINEPブログ
図1 首里城炎上
図2 琉球の舞 諸屯 島袋恵子
図3 めぐり逢い 組踊「執心鐘入」より 玉城栄一
首里城炎上の実況放映画像は、映画の城のセットが燃えているのか? と現実とは思えないものがあった。由緒ある建造物でも、木造のペラペラの人工物は、わずか30分で消失しうる儚(はかな)いものだということを目の当たりにした。(図1)
小生は、沖縄が1972年(昭和47年)5月15日本土復帰前、琉球大学が首里城跡にあった時と、復帰後に初期の建設中の首里城を見学したことがある。だからこの未完の首里城の印象は全く強くはなかった。むしろ復帰前に、苔むした今帰仁(なきじん)城廃墟をとぼとぼと歩いたときの方の印象が強く残っている。結局、完成した首里城は見ないままに今回、瞬く間に炎上してしまった。
先日、親類が日展に入選したというので六本木の新国立美術館での日展入場券を送ってくれた。11月3日は文化の日で、足腰の調子が良かったので、出かけ、落ち着いて多くの秀作を鑑賞することができた。
その中に
No.5028 琉球の舞 諸屯 島袋恵子 東京都 (図2)
No.1142 めぐり逢い 組踊「執心鐘入」より 玉城栄一 沖縄県 (図3)
という二つの、沖縄出身者と思われる琉球衣装の油絵が展示されていた。この絵はもちろん首里城炎上前に描かれたものであるが、炎上後の今、これをみると、作者の制作意図に関わらず、小生には琉球の着物を着た女性の、その首里城炎上後の憂愁の思いが感情移入して鑑賞された。
余計な節介かもしれないが、首里城炎上の年の入選作として、この二つの絵は長く後世に残すべき作品ではないだろうか。多数のこれまでの貴重な美術工芸品が炎上してしまったということでもあるし。
(森敏)
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