WINEPブログ
ところでアメリカから購入するこの戦闘機の1機の値段が116億円ということである。現在までに、15機が購入されており、12機が待機中であり、向こう何年間かで全部で105機の購入が予定されているとか。トランプ政権の恫喝に屈しての事であろう。
この戦闘機の総購入金額は単純計算で 116億円x105機=1兆2180億円 となる。アメリカから購入する飛行機の予算はいつも不透明で毎年バブル化していくので、おそらくこの予算では済まないだろう(と、悔しいことに、マスコミに何度もあおられているうちに、小生も含めて国民は「防衛予算」に関しては、いつもこういう思考回路に慣れさせられている)。
このように総金額を知ると、「本当に日本の教育や科学技術予算は大丈夫かね」と、腹の底から怒りがこみあげてくる。
日本のすべてのノーベル賞学者達が口を酸っぱくして、若手研究者の養成や長期的な基礎研究への国家予算の投資を呼び掛けているが、現政権は、いまだに馬耳東風であるとしか小生には思えない。実際少なくとも自然科学系の研究者の実感では、中国の躍進は本物で、すべての科学技術分野で、日本が後塵を拝することになるのも今や時間の問題である。政治家はそれが全く分かっていない。自民党議員ばかりでなく、「一番でなきゃいけないんですか?」という国会議員に代表されるように野党議員も五十歩百歩であろう。総じて熾烈な学問の世界での争いを経験してきたうえでの理系出自の国会議員があまりのも少ないからである。
翻って、4年生の国立大学生一人を卒業させるまでに国家が投資する金額は約500万円ということである。実は入学金や授業料約250万円などの自己負担金を差し引くと国立大学生の卒業までの「人材養成費」としては実質わずかに150万円ぐらいしか国からは投入されていない。
ステルス戦闘機105機を購入する代わりに、その分を、国立大学の入学金と授業料免除などで実質的に250万円を国が無償で提供するとなると、単純計算で48万7200人の学生を自己負担ゼロにできる金額である。
戦争のための予算と、未来の人材育成のための予算と、どちらが肝心か、未来のある若い人なら誰しも後者に賛成するだろう。悲惨な戦争体験や戦後の食糧難を体験していない、思考が擦り切れた観念論者のみが戦闘機の方を支持するだろう。
以上のような議論は、これまでも飽きるほどなされてきた。ステレオタイプの議論だと言われようと、小生は何度でも言いたい。いや何度でも言わなければならないと、人生終末期の最近は強く感じている。未来の人材育成と基礎科学振興にしか日本の未来はないと。
(森敏)
付記:本日、尊敬する農芸化学の大先輩である森謙治東大名誉教授【学士院会員】の訃報を聞いた。にわかには信じがたい。
追記:その後、2019年5月10日の朝6時25分のNHKニュースでは、アナウンサーが何の弁明もなく、さりげなく、このステルス戦闘機(F35A)の購入予定機数を147機!と解説していた。まことにサブリミナルな姑息で汚らしい「NHKと防衛省との連係プレー」である。
つまり、十分な研究費がなくて、教授がお金集めに奔走しているんですね。
他のあまり有名でない先生方の研究室の窮状はいかばかりか!
日本がこんなことに成っているなんて!!衝撃を受けました。