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2018-08-12 05:27 | カテゴリ:未分類

来る8月29日から31日まで、日本大学生物資源科学部(神奈川県藤沢市亀井野1866)キャンパスで開催される日本土壌肥料学会の講演のタイトルが、最新の学会誌(日本土壌肥料学雑誌)に掲載されました。以下はその中から放射性セシウムに関する研究のみをピックアップしたものです。
    
  提示されているタイトルをよくよくみると「放射性セシウムの動態」に関して、実に地道で骨の折れる研究が、多角的に展開されていることがわかります。
    
  周知のように2011年の原発暴発以来、すでにこの土壌・植物栄養・肥料学分野ばかりでなく、他の多様な学問分野の研究者たちからも、多方面にわたる斬新な研究成果が得られてきています。 
    
  7年半経過した現在でも帰還できない住民にとって、現状は実に腹立たしい悔しいしいことです。いっぽうでは、この広域にわたる愚かな人間が作りだした放射能汚染帰還困難区域は、真摯な研究者に対して、「壮大な実験圃場」を提供しているともいえるでしょう。研究者達は、執拗に、粘り強く、現地での、あるいは現地の材料を用いた実証的研究を通して、放射能汚染の実態を明らかにし、世の中に継続的に問い続けることが必要です。
      
  「福島ってまだ放射能があるの?」というのが残念ながら関西以西の大部分の日本人の感覚のようです。著しい「こころの風化」です。
             
  放射能汚染現地の森林などは驚くほど静寂で一見美しい風景です。初めて訪れると誰もが「それでこの場所のどこが危険なの?」と思うでしょう。未だ現地に足を踏み入れたことがない方は、この夏休み、一度訪れてみてください。各所の通行禁止の道路がつぎつぎと解除されてきていますので、時々車を止めて、音の鳴る放射線線量計を持って放射能を感知してみてください。くれぐれも熱中症に気を付けて。

 
     
 
以下演題です

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〇福島県の森林における雨水、土壌水、渓流水中の放射性セシウム濃度の経年変化

小林正広・・大貫靖浩

〇三つの異なる森林小流域における安定セシウム循環の比較  

伊藤優子・・今矢明宏

〇土壌から樹体への放射性セシウム移行吸収―ヒノキ苗植栽後3年間の動態

平井敬三・・・新家武

〇施肥による133Cs K2Oの可吸化と可溶化               

杉山恵

〇プラスチックシンチレータを利用したリアルタイムRIイメージングシステムによる植物中の元素動態解析              

菅原康平・・・・・田野井啓太朗

〇イネのセシウム吸収におけるカリウムとの拮抗作用の品種間差 

谷本涼・・・近藤始彦

〇植物体内の元素動態を可視化する新たなオーオラジオグラフィー技術の開発

粟田圭輔・・・酒井卓郎

〇水稲のOsHAK1以外の主要K輸送体のセシウム吸収・輸送への関わり

頼泰樹・・・・・・・・・服部浩之

〇福島県山木屋地区除染後農耕地土壌における肥沃度回復(第1報)~除染による肥沃度低下の現地報告~                   

菊池優汰・・斎藤葉瑠佳

〇福島県山木屋地区除染後農耕地土壌における肥沃度回復(第2報)~土壌炭素蓄積、窒素循環および土壌養分に対する緑肥の影響~       

斎藤葉瑠佳・・菊池優汰

〇福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第44報) 低カリウム条件下における飼料用コメ品種・系統のCs-137移行のリスク評価   

斎藤隆・・・・・横山正

〇大豆体内における放射性セシウムとカリウムの動態     

本島彩香・・信濃卓郎

〇セシウム吸着シートを用いた畑地土壌の溶存態放射性セシウム量評価と作物吸収量判定―現地大豆圃場における溶存態放射性セシウム量評価について 

井倉将人・・・平山孝

〇被曝現場に放置された日常品の放射能汚染を立体像で可視化する

森敏・加賀谷雅道・・・・中西啓仁

〇福島県農耕地土壌を対象にしたセシウム固定ポテンシャル評価法の確立

金野優也・・・・・・加藤拓

〇土壌中の交換性放射性セシウム濃度の経時的変化と非交換性カリ含量との関係

久保堅司・・信濃卓郎

〇コンテナ内ポット試験による灌漑水中放射性セシウムのイネへの影響評価

鈴木啓真・・・・・・・・原田直樹

〇原発事故影響地域での営農促進に向けた玄米の放射性セシウム濃度評価手法の検討

藤村恵人・・・・・・信濃卓郎

〇放射性トレーサーを用いた栽培実験による土壌―牧草間放射性セシウムの移行を支配する土壌要因の解析                      

武田晃・・・・久松俊一

〇放射性セシウム集積特性の異なるイネ系統における土壌溶液カチオン濃度と植物体放射性Cs濃度の関係

小島克洋・・・・・・・・横山正

〇表土剥ぎ客土した除染後圃場におけるカリ増施による大豆の放射性セシウムの移行動態(3) 大豆生育過程の大豆地上部への放射性セシウム、カリウムの移行動態

関口哲生・・・島田信二

〇福島県相馬市における復興水田および大豆畑の追跡調査 

吉田拓史・・・・後藤逸男

〇カラム試験による福島県大柿ダム低質からの137Cs溶出 

塚田祥文・久保田富次郎

〇福島県の森林土壌における交換態放射性セシウムの割合とその経年変動

眞中卓也・・・・・金指努

〇福島県の農地における放射性物質に関する研究(第45報)-水稲におけるセシウム吸収シートを用いた土壌中可給態放射性セシウムの評価 

矢ケ崎泰海・・・・佐藤睦人

〇土壌中セシウム133および137の吸収を指標とした作物別吸収特性の評価

古川真・・二瓶直登

〇土壌から水稲への放射性セシウム移行を土壌溶液のセシウムとカリウムの濃度から推定する                  

植松慎一郎・・・・・・Erik Smolders

〇福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第43報)-除染後水田での生育ムラ対策と牛ふん堆肥による地力回復効果―     

松岡宏明・・・・・信濃卓郎

〇未除染・除染後草地の2011~2017年における牧草中放射性セシウム濃度の推移について                    

渋谷岳・・・・・・山本嘉人

〇放牧草地における地形面毎の牧草への放射性セシウム移行と交換性カリ含量の推移

山田大吾・・  村恭子

〇ダイズGmHAK5ノックダウン系統個体のセシウム吸収特性

二瓶直登・・・・・・・杉山暁史

〇カリ施肥量がイネの根におけるカリウム輸送体遺伝子発現量とセシウム吸収に及ぼす影響                  

石川淳子・・・・・・・・・近藤始彦

 

(以上同一テーマの複数の著者についてはfirst author last authorのみを記しています)

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(森敏)
2018-07-12 17:13 | カテゴリ:未分類

  福島県双葉町の道沿いには、なぜか榧(カヤ)の木の幼木が多い所がある(図1)。カヤノキの実生が発芽して以来、土壌の腐葉土からくる高放射線量(毎時10-30 Sv)による外部被曝の故か、矮性で生育のいじけたものも多い。ここに示すのは、正常な形態のものである。しかし放射能を測ると、結構高い。放射性セシウム汚染腐葉土からの直接経根吸収による内部被ばくも、激しいことがわかる。
   
  オートラジオグラフでも、明らかなように、枝の先の新陳代謝の激しい、Kの要求量が大きい新芽の部分と、3つ叉にわかれている枝の節目(師管と導管が入り組んだ部位)が放射能が高いことがわかる。これまで幾たびとなく述べてきたように、カリウムの代わりに周期律表上の同じ系列の放射性セシウムも積極的に植物体内を移行分布しているからである。
 

 
 
 

 
榧木jpeg  

図1.榧木(カヤノキノ)の枝葉







スライド2 


図2.図1のオートラジオグラフ


 
 
 
 
 
 
スライド3  
3.図2のネガテイブ画像



 
 表1.カヤの木の部位別放射能
kaya no housyanou jpeg 

 
 
(森敏)

付記:台東区の蔵前というバス停の前には「榧木寺」という、珍しい名前のお寺がある。由来は以下のとおりである。寺の中には現在も4本ばかりの大きな、青々とした新鮮な榧の木がある。

:::::「榧木寺」の現存する4点の縁起によれば、「かつて境内に樹齢千年の榧の大木が立っていましたが、当地が火災に見舞われた際には、榧の木から水を発し、たくさんの町民・本尊ほか多くの寺宝を火災から守ったとあり、現在、本尊の右に安置する秋葉権現像は300年程前この榧木で造像したもので、江戸の大火事から人々を守り、火防せの信仰をうけていたと記されています。:::::::」ということです。

2018-06-30 07:19 | カテゴリ:未分類

        年を取ると自分の体で毎日生体実験をしているような自覚がある。

 

尿が細くなってきた小生は、尿管の拡張作用があるということで、NO(一酸化窒素)発生剤を処方してもらっている。それを服用していて気が付いたのだが、この薬剤は本来が末梢血管の血流を促す(勃起誘起剤)として開発されたのであるから、血流が悪い足指の先端の血流を促すのに著効があることが分かってきた。もちろん血管が拡張して血圧が急激に低下するので、用量は慎重に極めなければならない。実は小生はいまだに適量を定めかねている。案外多くの臨床の医者は足指の先端の血流を促す作用のことには興味がないようである。

 

小生の足指の先端のしびれは、脚のしびれにまで部位が上昇してきた。しびれはもうすでに3年ほど続いているのだがだんだんひどくなってきた。あちこちの医者にかかったのだが、診断がつかなかった。最近テレビを見ていて、ハタと気が付いたのだが、小生のは神経根型の「脊柱管狭窄症」にぴったりの症状で、間違いはなさそうである。そのテレビの画面では血流促進剤として経口プロスタグランジンE1誘導体製剤が紹介されていた。NO剤は紹介されていなかった。重症化すると手術を薦めていた。

 

一方で、一酸化窒素(NO)1987Palmerらによって内皮由来血管弛緩因子の一つとして報告されて以来多くの研究がなされてきたことはこの世界では周知のことである。血管系におけるシグナル分子としてのNOの発見に対して、1998年に3名のアメリカの研究者にノーベル医学生理学賞が授与されている。(望月精一 生体医工学43:32-35,2005)。NOはヒトのさまざまな組織(気道,消化管や尿管など)L-アルギニンを基質としてNO合成酵素(NOS)の作用により生成される。NOは血管拡張作用、神経伝達作用、生体防御作用などを持ち、広く生体内で働いていることが明らかにされている。NOは呼吸器においては肺上皮細胞、肺胞マクロファージ、血管内皮細胞,鼻腔粘膜上皮細胞など種々の細胞から産生され、動物やヒトの呼気中に存在することが確認されており、大部分が鼻副鼻腔由来であると言われている。(宮崎由紀子 目耳鼻102,1318-1325,1999

 

このように、人間は自分自身でNOを体内で発生させているのだから、本来ならば、自力で血管拡張を活性化させて血圧を維持する事にも貢献しているのだろう。このNO合成酵素遺伝子(NOS)には恒常的な遺伝子発現をするeNOS型と環境因子誘導型のiNOSがあるとのことである。研究者は誰も断言していないが、私見では老化してくると恒常的な発現そのものも低下してくるのではないだろうか。老人になるとインポテンツになるというではないか。

 

昨晩足がしびれて脚の筋肉がけいれんして止まらないので目が覚めた。筋肉や血管が部分的に冷えたか、寝相が悪くて脊髄の神経が圧迫されて、血流が悪くなったのだと解釈した。そこで、痙攣する痛い脚膝を少し立てて、マスクをしたまま鼻からゆっくり深呼吸してみた。16秒ぐらいかかって肺の奥深くまで鼻から空気を吸い、3秒ぐらいで鼻から吐き出した。口呼吸はしなかった。吐き出す呼気の中にもNOがあるはずなので、それを少しでも回収しようという魂胆なのであった。それを、15分ぐらい続けたら、なんと足指の先端が少しポカポカしてきたではないか。血流が徐々に回復して、酸素が筋肉のミトコンドリアまで供給され始めたのだろう、と思った。ベッドからゆっくり降りて立ち上がると、脚の痙攣は収まっていた。足指のしびれは完全には収まっていないのだが。ともかく自力で、痙攣が収まったのだ。そこでまた水を飲んで、眠りについた。

 

と、また1時間半後に、先ほどと同じ右脚に痙攣としびれがやってきて、目が覚めた。:::::

       

(森敏)

2018-06-22 04:08 | カテゴリ:未分類
 

ススキは、原発爆発当初から注目して、福島県の各地でサンプリングし、放射能を測定してきたが、2011年秋に開花したススキは、あまり放射能が高くなかった。その後もあまり高くなかった。福島第一原発が暴発した時にはススキはまだ芽が地中にあり直接被曝したわけではなかったので、その後に穂が出ていてもこれはほとんどオートラジオグラフに感光しなかったのである。だから毎年ススキは穂が出るのだが、あまり関心がなかった。しかし小生がサンプリングしてきたススキはことごとく道端の畑状態に群生しているものであった。大体福島の農家の人々は結構潔癖好きで、この雑草を疎ましく思うのか、毎年根際から刈り倒しているので道端のススキの地上部には、あまり経年変化立ち枯れした古いものはないのである。

   

しかし今回(2017年晩秋)、久しぶりに試しに双葉町の水田のあちこちに生えているススキの穂を、サンプリングしてきた。これらのススキはすでに穂の種子の「もみ殻」に汚くカビが生えていた(図1、図2)。

   

研究室に持ち帰ってガイガーカウンターを充てると150cpmばかりあった。この放射線量は、これまでの経験と異なり明らかに有意であった。

    

オートラジオグラフを取ると黒カビで汚染している種皮が顕著に放射能汚染していた(図3、図4)。すべての種皮が比較的均等に汚染しているので、これは外部に放射能が付着しているのではなく、種子の栄養をカビが摂取して種皮が放射能で表面汚染しているように見えるのではないかと思われた。

 

穂軸と種子に分けて測定するとほぼ同等の汚染度であった(表1)。今回のように野生のイネ科植物といえども原発事故以来一度も耕作したことがない放棄水田の中に定着したものは、この原発事故以降直近までの数年の内に、何度も乾湿を繰り返す土壌条件の中では、湛水還元状態のときに溶解してくる放射性セシウムイオンを吸収する機会が多くなる。だから、野山の陸地(畑:酸化)状態の、大部分が土壌に固着しているセシウムを吸うのとは訳が違うのかもしれない。
     
  このWINEPブログの過去のどこかで紹介したことがあるが、春先のフキノトウでこのことはすでに証明されている。今回の多年生のススキの種皮の放射能汚染は外部飛来付着ではなく、全部根から吸収して茎を転流してきて種子に蓄積した放射性セシウムを種皮に付着したカビがカリウムの代わりに栄養源として濃縮したことよる内部被ばくと思われる。

 

イネとおなじくススキも生息地が湿地か陸地かによって、セシウムの吸収量が異なるわけである。

 

  

                                                                             



 
スライド1 
 
図1 水田に生えていたススキの穂
 
 
  
 
 
 
 
スライド2
 図2. 図1のオートラジオグラフ
 
   
  

 

 
スライド3 
 
 図3.図2のネガテイブ画像
 
 
 
 
 
 スライド4
図4.図3の拡大図
 
 
 



スライド5  

 図5.図4のオートラジオグラフ
 
 
 

 
 
 表1. ススキの穂の放射能

 すすきjpeg
 
 

(森敏)
2018-03-31 10:49 | カテゴリ:未分類

「博士」でも任期付き若手研究者の雇用厳しく

20180301 1433分 読売

 文部科学省科学技術・学術政策研究所は、大学院の博士課程を修了して大学や研究機関に就職した若手研究者らの半数以上が、3年半後も任期付き雇用にとどまっているとの調査結果を発表した。

 同研究所は、2012年度に博士課程を修了した2614人について、3年半後の生活状況などをアンケートで調べた。60%が大学や国の研究機関などに就職していたが、そのうち52%は任期付きの不安定なポストにあることがわかった。

 また、15年度に博士課程を修了した人への別の調査では、4922人の回答者のうち、38%が返済義務のある奨学金などの借金を負っていることもわかった。

 若手研究者が厳しい環境に置かれていることから、文科省は、大学で若手にポストを用意できるような人事システムの改革など、若手研究者を育てるための新計画を6月末をめどに取りまとめる方針だ。

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  こういう若手研究者の深刻な身分の不安定さは、インパクトファクターの高い論文への掲載を狙った若手の研究者によるデータの偽造(フェイクデータ)の、温床になっている。、結果的に日本発の研究論文の信用の失墜に確実につながる可能性が非常に高い。実際論文の被引用度でもボデイーブローのように効いてきているのではないか。
           
  話が横道にそれるが、先日某国立大学の研究者に会って久しぶりに話を聞いていたら、この大学ではすでに研究者一人当たりの光熱水料を差し引いた研究費は年間たった10万円だということで、これには心底驚愕した。
          
  科学技術の人材育成と財政支援の両面が国立大学では崩壊しつつある。
 
   

論文の引用件数や、専門分野ごとの上位1%に入る重要論文の件数が、日本が米、中国、EU諸国にもおいぬかれて、ここ数年にわたって確実に低下しているという指摘が各種の調査機関でなされている。また、日本では国立大学よりも、国立研究法人(理化学研究所、物質材料研究所、生理学研究所、原子力機構などなど)のほうが質の良い論文を出している、などとも報道されている。後者の方が投入予算に対する研究成果が高い、すなわち投資効率が高い、との指摘もなされている。「国立大学は研究マネージメントが悪い」、と日経連や経済同友会に集まる民間会社の社長クラスが国の科学技術政策を論じる会議に参加してしきりにのたまう。
  

しかしこれらの指摘は、大学の有する特質を無視しているものと言わざるを得ない。大学は研究ばかりでなく教育の場である。国立大学の教員が有する教育の負担は甚大なものがある。研究ということがどういうことなのかに全くと言ってよいぐらい無知な新入生を一人前の研究者に人格的にも研究能力的にも気合を入れて真面目に育する苦労は筆舌に尽くしがたい。
  

極論すれば、上記の国立研究機関は、国立大学の教員たちが苦労して育て上げた研究者たちを、ポスドクなどの有給で雇用して、彼らの能力を研究成果として短期間で搾り取る(収奪する)機関なのである。苦労した学生たちを送り出す大学教員たちには、何の見返りもないと言っていいだろう。また、優秀な大学生を就職時に雇用する民間会社も、優秀な学生を育てろと大学側に文句はつけても、教員たちに対する研究資金面での見返りは、多くの場合、何もない。それどころか国立大学は毎年文科省からの「運営費交付金」を減額され続けている。国立大学の教員たちは、研究費を教育費に転用しないと真面目な教育ができない状態に貶められている。だからすでに述べたように教員一人頭10万円しか研究費がないという国立大学の研究室も出てきているのである。
  

大学では自分たちが育てた優秀な修士や博士研究者をポスドクやパーマネントの助教などに継続して昇格雇用できるシステムがいまでは壊滅的に崩壊している。ごくごく少数の有名教授たちが外部資金の大金を獲得して、それらの恩恵に浴しているにすぎない。そのためにほかの零細分野の多くの教員たちはますます研究費が細り、毎日が金欠病でひーひー言っている。研究室間での貧富の差が激しくなっている。好き勝手にやる、数十年後には、ブレークスルーに結び付く研究の種(構想)が貧困化している。本当に危機だと思う。
  

こんなことを言うと「それはお前が無能だからだ」という声が直ちに返ってくるだろう。無能だからかもしれないけれど、最低限の研究費は保証して下さいよ、と現役の研究者を代弁していいたい。年間10万円の研究費で何ができますか? 
    
       
(森敏)
付記:「日本の大学は、一見して企業投資を喚起するような革新をもたらす魅力的な構想がかけているため、日本の大企業が米国の大学に投資をしている。」(科学新聞 3月30日号 「日本の研究力低下に歯止め」 ピーターグル―ス沖縄科学技術大学院大学学長 談)。日本の企業は大学から優秀な人材だけをかっさらって、日本の大学の研究はだめだからと言って、アメリカの大学に研究投資して、そこで得られた特許を、商品として世界中に売りまくる、という資産運用循環を形成しているわけだ。これが企業のグローバル化の実態だ。日本の国立大学の育成人材の活躍の成果である企業の儲けが日本の大学の研究者に還流していない。あったとしても微々たるものだ。


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