2018-01-11 15:46 | カテゴリ:未分類

  昨年以下のニュースが流れた。
  
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政府 地上配備型の迎撃ミサイルシステム 導入決定NHKニュース&スポーツ モバイルニュース) 

北朝鮮の核・ミサイル開発が新たな段階の脅威となる中、政府は19日の閣議で、弾道ミサイルによる攻撃に備えて防衛能力を高める必要があるとして、地上配備型の新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基を導入することを決めました。

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イージス・アショアは、日本とアメリカが共同で開発している新型の迎撃ミサイルを搭載し、2基で日本全域をカバーできるとされ、配備先の候補地には秋田市と山口県萩市にある陸上自衛隊の演習場が検討されています。

また、1基当たりの価格は現時点で1000億円弱になる見通しで、政府は今年度の補正予算案にアメリカから技術支援を受ける費用などとして28億円、来年度予算案に基本設計などの費用として7億円余りをそれぞれ盛り込むことにしています。::::

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  現役の大学の研究者なら、イージス・アショアたった1基で1000億円という、その高額さにため息をつくところであろう。この2基の合計金額2000億円は下図1に示すように、全国の大学の研究者が毎年10万人強も応募している、文部科学省の「科学研究費」の年間予算と同額なのである。この研究費は彼らの研究の生命線である。しかも採択率は4人に一人しかない。(図1は文科省ホームページからの転載)
   
    

mori1.jpg 


    
  別の観点からであるが、このミサイル1基1000億円の予算があれば、現在約1万5000人以上いると思われる、日本の大学の臨時雇用のポスドク(博士研究員)の、約1万人の再雇用が成就でき、彼らは人生をあと1年間生き延びられる!   
    
  現時点での政府による防衛予算案であるから、常套手段として「北朝鮮」との軋轢をあおりたてて、防衛相がイージス・アショアの単価をここぞとばかり増額させるであろうことは目に見えている。元々兵器の予算などはどんぶり勘定だろうから。かくて安倍政権下での防衛省長官を筆頭に防衛官僚はざるのようにアメリカのトランプ政権に税金を垂れ流す政策を創作し続けている。彼らはイケイケどんどんで笑いが止まらない。
    
  一方で毎年多くのポスドクは失業して、研究断念を余儀なくさせられている。
     
  保険会社第一生命の毎年行っている、「将来何になりたいか」の昨年の児童に対する希望調査で、男児では、「博士・研究者」が一位なんだそうである。一昨年は「学者」が2位だった。
        
  国は、できもしない実害無益の戦(いくさ)の準備なんか止めて「子供が希望する未来に投資しろ!」と何度でも言いたい。
           
                   
(森敏)
追記1.以下の記事のように、この国では、せっかく意気に燃えて研究の世界に飛び込んできた人材を、経済的不安に陥れている。若手研究者はかくして研究不正を行うことになる。かくて、日本のサイエンスの世界が自分で首を絞めることになっていきつつある。
     

山中所長が当分 給与全額を寄付へ 京大iPS論文不正で

125 1507

京都大学iPS細胞研究所の助教が発表した論文にデータのねつ造などの不正があった問題を受けて、研究所の山中伸弥所長は、今月から当分の間、みずからの給与の全額を研究所の基金に寄付することがわかりました。

この問題は、京都大学iPS細胞研究所の36歳の助教が去年発表したiPS細胞に関係する論文に、ねつ造と改ざんの不正が見つかったもので、この研究には研究所が一般から集めた寄付金およそ230万円が使われたことがわかっています。

こうしたことから、山中所長はNHKの取材に対し、今月から当分の間、みずからの給与を全額、研究所が集めた寄付金で作った基金に寄付することを明らかにしました。

その理由として山中所長は、今回の不正の検証や再発防止策の検討、それに、これまで寄付した人への説明のためにiPS細胞の研究開発などの本来の仕事ができないため、責任を感じていることをあげています。

山中所長は「不正のあった研究に使われた寄付金の補填(ほてん)を意味するものではないが、自分自身の気持ちを納得させるためにも給与を寄付することにした」としています。

 


 

追記2.日本の科学論文数の低下は目を覆うばかり。
       
    
   
世界の趨勢を無視した科学技術戦略と全部連動していることである。長期にわたる科学研究人材育成へ投資への無視が、ボデイーブローとして一気に顕在化してきたのである。これから再建し始めても回復には10年以上かかるだろう。

  

     

科学論文数、日本6位に低下米抜き中国トップ

20180125 1513分 毎日新聞


論文数の推移jpeg    

    

【ワシントン=三井誠】科学技術の研究論文数で中国が初めて米国を抜いて世界トップになったとする報告書を、全米科学財団(NSF)がまとめた。

 中国を始めとする新興勢力が研究開発費を大幅に増やして力をつける一方、日本はインドにも抜かれ、存在感を低下させている。

 報告書は各国の科学技術力を分析するため、科学分野への助成を担当するNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された中国の論文数は約43万本で、約41万本だった米国を抜いた。日本は15年にインドに抜かれ、16年は中米印、ドイツ、英国に続く6位。昨年、文部科学省の研究機関が公表した13~15年の年平均論文数では、日本は米中独に次ぐ4位だった。
   


   
追記3.またどぶに金を捨てた。(2018年2月2日 記)
  

米、ミサイル迎撃実験失敗 SM3ブロック2A 日本と共同開発 (産経ニュース)
    

【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省ミサイル防衛局は1月31日、日米で共同開発している弾道ミサイル防衛用の改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の迎撃実験を行ったと発表した。実験の結果については明らかにしなかったが、米CNNテレビなど主要メディアは「実験は失敗した」と報じた。

 国防総省やCNNによると、実験は、ハワイ沖の航空機から発射された標的を、同州カウアイ島にあるミサイル訓練施設から発射されたSM3で迎撃するものだったが、標的を撃墜できなかったとみられる。

 失敗が事実とすれば、SM3ブロック2Aの実験失敗は、昨年6月に続いて2回連続となる。

 実験結果を公表しない理由について、国防総省はCNNに対し、北朝鮮が韓国・平昌五輪に参加するなどの微妙な情勢に配慮したためだと説明した。

 SM3ブロック2Aは北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗するため、海上自衛隊のイージス護衛艦や陸上配備型システム「イージス・アショア」に配備される予定。米国務省は今月、日本に同ミサイル4発などを総額1億3300万ドルで売却することを議会に通告していた。

    

     

2016-11-22 22:29 | カテゴリ:未分類
 
少し論文調になりますが、赤松が奇形になる理由について、以下に説明いたします。
    
  浪江町の津島高校分校は今は誰もいませんが、2011年3月11日東日本大震災の後に起こった、東電福島第一原発事故のあと、浪江町よりも南の市町村の人たちが、避難してきて何日間か宿泊したところです。浪江町の住民は彼らを炊き出しで支援し、自分たちもそこでかなりの被ばくをしたはずです。
     
  ここの校庭は、当時の状況を現状から考察するに、更地にして新しく山土で均平にされて余り年月がたっていなかったと思われます。3月15日にはその更地に近い山土の校庭にかなりの放射能が降雨とともに降り注いで、空間線量は毎時20マイクロシーベルト以上になったのではないかと思われます。現在毎時5マイクロシーベルト前後です。
    
  当時何も生えていなかったその校庭には現在東側の山から次第に赤松が侵入してきて、旺盛な生育を示しております。この山土は酸性で貧栄養なので、松やススキしか生えないようです。(図1)

  

   
   
スライド1 
  (図 1) 東側の斜面から赤松が優先的にランダムに侵入してきている校庭

     

    この山肌の斜面はほとんどアカマツが優先種であり、その松の10-20%ばかりが主茎になんらかの奇形を呈しています。先端部が大きく二股や3つ股に分かれて伸長しているのです。普通は一本だけがすくっと伸びるのですが。(図2、図3、図4)
  
  
 


スライド2 
(図 2) 赤松の群生地と化した東側の斜面

  
  


goyoumatsu jpeg 

(図 3) 主茎が3つ又になっている (中央部分の3本)

   

  

スライド3 
 
(図 4) 分枝が異常に多く太い枝が3本見える。普通は5-6本。
 
    
   そこで、図3の3本の奇形主茎のうち、一本を切り取ってラジオオートグラフを撮ってみました(図5)。すでに先端部は8本の幼芽をつけています。これらが次の枝や松かさになっていくのです(図7)。
    

   

スライド1 
 


(図 5) 3本の奇形枝の1本を採取した。
   
     





スライド1 
 
 


(図 6) 図5のオートラジオグラフのポジテイブ像(左)と、ネガテイブ画像(右)。 先端の葉芽の画像が圧倒的に強く放射線で感光していることがわかる。
 
   

  

スライド4 

 


  (図 7) 先端部分の拡大図  すでに8つの新芽が付いている。

      
   


 スライド5

 
 
(図 8)   図6(右)のネガテイブ画像の拡大図。葉芽が鮮明に濃く映っている。
  
     

    図6、や図8 で定性的に明らかなように、マツの幼芽はほかの組織に比べて圧倒的に放射生セシウムが濃縮しやすい場所と考えられます。事実、この枝の組織をばらしてNaIスペクトロメーターで放射性セシウムを測ると、以下のような数値となりました。新芽は1キログラム乾物重あたり13万ベクレル以上(!!)を含んでおり、これはほかの葉や幹の10倍以上の濃度です (表1)。
             
  この高く濃縮した放射能による内部被ばくと、毎時数マイクロシーベルトの外部被ばくで、ここの赤松はいまだに新芽の細胞の奇形分化が進行していると考えられます。


    
 


     表1 赤松の枝の部位別放射能 (Bq/kg乾物重) 
 
   
五葉松の放射能jpegブログ用 
 
    


   

(森敏)


 
付記1: ネガテイブ画像は加賀谷雅道カメラマン制作によるものです。NaIスペクトロメーターによる測定は広瀬農・助教(東大農学生命科学研究科)の協力によるものです。
 

付記2: 関連記事を以下のWINEPブログに載せています。クリックしてご参照ください。

2016-10-04 17:25 | カテゴリ:未分類

【大隅良典さんノーベル医学・生理学賞受賞】快挙に中韓ビックリ 韓国「オタク文化」例に「日本に学ばねば」 中国「どんな秘密があるのか…」大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)がノーベル医学・生理学賞を受賞したニュースは、APやロイターなど海外の通信社も速報した。
   

 韓国の聯合ニュースは、自然科学分野で日本人のノーベル賞受賞が相次ぐ背景として、「日本特有の匠(たくみ)の精神」や一つの分野に没頭する「オタク文化」の存在を挙げ、「政策や文化といったさまざまな側面の結晶だといえる」と分析した。韓国ではこの分野で受賞がないことから、「日本の政策に学ばねばならない」という韓国の研究者の意見も伝えた。

 中国では北京紙、新京報(電子版)が大隅氏の受賞を報じた上で、「ここ数年、日本の科学者によるノーベル賞受賞が続出している。どんな秘密があるのだろうか」とした。

 英BBCテレビ(同)は「大隅氏の業績はがんからパーキンソン病にいたるまで、何が病気を悪化させるかを説明する助けになった」と重要性を強調。米CNNテレビ(同)は、「オートファジーの存在は1960年代から認識されていたが、大隅氏が酵母を用いた先駆的な実験を行うまで、仕組みがほとんど解明されていなかった」と伝えた。

    

 
  きわめて専門的になりますが、以下に学士院賞受賞時と京都賞受賞時の大隅良典先生の研究内容と、国際賞受賞時の挨拶、をホームページから転記しておきました。
   

     

日本学士院賞審査要旨(2006)
  

理学博士大隅良典氏の「オートファジーの分子機構と生理機能の研究」に対する賞審査要旨
 

分子生物学では、セントラルドグマ確立以来、遺伝子発現すなわちタンパク質の「合成」のしくみの解明に多くの努力が割かれ、タンパク質の「分解」の問題は、受動的でそれほど大きな生物学的な意味を持たないのではないかと長らく考えられてきた。しかし近年、生命が持つ遺伝子の相当な部分がタンパク質やその複合体の分解に関わっており、分解も、合成に匹敵するほど大切であることが認識されつつある。生命が絶えざる合成と分解のバランスの上に成り立っていることから考えればむしろ当然のことであろう。五〇数年前に細胞内小器官「リソソーム」が発見されて以来、タンパク質の分解はこのコンパートメントの中で行われていると一般的に考えられてきた。しかし現在では、細胞内タンパク質分解は、ユビキチン/プロテアソーム系とリソソーム系の二つに大別することができ、両者が機能分担を行っていることが明確になっている。前者が厳密な識別に基づく選択性の高い分解であるのに対し、後者はむしろ非選択的でバルクな(大量な)分解を担っている。

リソソーム内に分解基質を送る過程は、自己を食すると言う意味の「オートファジー」とよばれる膜現象からなることが示されてきた。しかし様々な困難からその分子機構は全くの謎であった。大隅氏は、酵母細胞が栄養飢餓条件にさらされると、リソソームと相同な分解コンパートメントである「液胞」で大規模なタンパク質分解が誘導されることを顕微鏡観察によって発見した。そして、その後の電子顕微鏡による解析から、これが高等生物で知られていたオートファジーと同一の膜現象であることを証明した。次に、酵母の系の優位性を生かして遺伝学的な解析に取り組み、オートファジーに欠損を持つ多くの変異株を分離し、一四個の関連遺伝子(ATG遺伝子群)を同定することに成功した。その後に発見されたオートファ

ジーに必須の遺伝子が三個のみであることから、大隅氏らの当初の戦略が極めて優れていたことが窺える。大隅氏は、引き続き、ATG遺伝子群のクローニングに着手し、それらがコードするタンパク質(Atgタンパク質群)を同定したが、ほぼ全てが新しい分子で、それらの機能の推定は困難であった。しかし数年の間に大隅研究室ではこれらAtgタンパク質に関する重要な発見がなされた。(1)Atg12がユビキチン様タンパク質で、二つの酵素Atg7Atg10を介してAtg5と共有結合体を形成する。(2)Atg8もユビキチン様タンパク質で、Atg7により活性化された後、Atg3に転移し、膜リン脂質の一つホスファチジルエタノールアミンと結合する。(3)Atg1はタンパク質キナーゼ活性を有し、この活性がオートファジーに必須であること、(4)Atg14は、オートファジーに必要な特異的PI3キナーゼと複合体を形成すること、などである。また、栄養飢餓の関知にTorと呼ばれるキナーゼが関わることも明らかにした(mTORは動物栄養センシングに関連して注目されている)。オートファジーの最大の謎は細胞質の一部やオルガネラ

をまず膜が取り囲んで隔離する膜現象にある。上記の反応系は全てこの過程(オートファゴソーム形成)に関わっている。オートファジーは真核細胞の基本的な機能の一つであり、発見されたATG遺伝子群は酵

母からヒト、高等植物にまで広く保存されていることが明らかとなった。これらの機能解明は、オートファジーの機構解明に留まらず、細胞内の膜動態の分子機構を理解する上でも重要な知見を与えると

期待されている。オートファジーには未だ多くの謎が隠されているが、大隅氏らによるATG遺伝子群の同定を契機として、多くの生物種でオートファジーが確認され、また、タンパク質分解の破綻が様々な病気や老化などにも関わっていることが明らかになってきた。現代の人間社会には資源のリサイクルシステムの構築が求められているが、細胞は自らのタンパク質を分解して必要なタンパク質を合成するという見事

なリサイクルシステムを獲得したものと考えられる。オートファジーの重要性は、今後も、細胞内有害物質の除去機構、細菌感染、抗原提示、老化など様々な形で明らかにされるであろう。このように本研究分野の活性がいっそう高まる中、大隅氏は一貫してオートファジーの分子機構の解明に正面から取り組んでおり、他の追随を全く許さない研究を続けている。また、大隅氏は、Gordon Research Conferenceなど主要な国際会議から基調講演に招かれ、本分野における国際的なリーダーシップを発揮しており、平成一七年には藤原賞を受賞している。

   

  
 

 

京都賞の受賞理由
     

細胞の環境適応システム、オートファジーの分子機構と生理的意義の解明への多大な貢献
     

大隅良典博士は、細胞が栄養環境などに適応して自らタンパク質分解を行うオートファジー(自食作用)に関して、酵母を用いた細胞遺伝学的な研究を進め、世界をリードする成果をあげた。オートファジーは、1960年初頭に、動物細胞内の食胞として知られているリソソーム中に細胞質成分であるミトコンドリアや小胞体が一重膜で囲まれて存在していることから提唱された概念で、細胞内成分や細胞内小器官がリソソームに取り込まれて分解を受ける過程を意味する。その後、多種類の細胞やいくつかの臓器でこの現象が報告されてきたが、オートファジーの分子メカニズムや生理的意義は不明なままであった。大隅博士は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeで空胞の機能を研究していたが、1992年、タンパク質分解酵素B欠損株を低栄養培地に曝すことにより空胞中に一重膜で囲まれた細胞内小器官成分が出現すること、即ち、酵母でオートファジーが誘導できることを発見した。同博士は、ついで上記現象を利用して、タンパク質分解抑制と栄養飢餓によってもオートファジーが誘導されない多数の変異株を同定した。博士の酵母におけるオートファジーと変異株の発見は、オートファジーの分子機構解析に道を拓いたものである。これが基盤となり、これまでオートファジーに関係する数十の分子が同定され、これらの機能解析により、飢餓などの刺激に応じて、どのようにして細胞内成分や細胞内小器官を囲む新規の膜構造が形成され、これがリソソームに融合するかの道筋が明らかになりつつある。

酵母におけるオートファジー関連分子の発見は、哺乳類を含む動物細胞でのオートファジー関連分子の同定につながり、これらを利用して、動物におけるオートファジーの多様な生理的意義が多くの研究者により明らかにされた。すなわち、オートファジーが出生に伴う飢餓状態への適応に不可欠であること、オートファジーが神経での異常タンパク質の蓄積を防ぎ神経細胞死を防止するために必要であること、心臓の収縮力を維持するためにオートファジーを伴う代謝回転が不可欠であることなどがある。

大隅博士の貢献は、生体の重要な素過程の細胞自食作用であるオートファジーに関してその分子メカニズムと生理的意義の解明に道を拓いたものとして高く評価されるものである。

以上の理由によって、大隅良典博士に基礎科学部門における第28(2012)京都賞を贈呈する。

    
 
 

 国際生物学会賞での挨拶(2015)
 

(一部略)

私はこれまで機会あるごとに述べて参りましたが、私自身、様々な偶然と出会いに助けられて、研究者としての細い細い道を今日まで歩んで参りました。東京大学教養学部の今堀和友先生の下で学び、京都大学、東京大学農学部、ロックフェラー大学留学を経て、東京大学理学部安楽泰宏教授のもとで研究をする機会を得ました。その後、東京大学教養学部、基礎生物学研究所にお世話になり、現在も、東京工業大学で大変恵まれた環境を頂いて研究を続けています。今日科学研究は激烈な競争があるというのも事実ですが、私は元来競争が苦手で、人のやらないことをやりたいという思いで研究を進めて参りました。

   
私は細胞内のタンパク質の分解の機構に興味を持ち、1988年以来28年間に亘ってオートファジーと呼ばれる細胞内の分解機構の研究を進めて参りました。生命体は絶えまない合成と分解の平衡によって維持されています。合成に比べて分解の研究は興味を持たれず、なかなか進みませんでした。

   
私は一貫して小さな酵母という細胞を用いて、オートファジーの謎の解明を目指し、関わる遺伝子群とその機能を解析して参りました。オートファジーに関わる遺伝子の同定を契機として、今日オートファジーの研究は劇的な広がりを見せ、高等動植物の様々な高次機能に関わっていること、そして、様々な病態にも関係していることが次々と明らかになって参りました。すなわち、分解は合成に劣らず生命活動には重要であるということが次第に認識されて参りました。しかし、まだオートファジーの研究には沢山の基本的な課題が残されています。私は残された研究時間で今一度原点にたちかえって、「オートファジーは何か」ということに向かいたいと思っています。また、近い将来オートファジーのさらなる機構の解明が進み、細胞の一層の理解のもとに、病気の克服や健康の増進などの研究がさらに進むことを心から願っています。

   
いうまでもなく現代生物学は一人で進められるものではありません。私のこれまでの仕事も、30年近くに亘る沢山の素晴らしい研究仲間のたゆまぬ努力の賜物でもあります。また素晴らしい共同研究者にも恵まれました。心から彼らに感謝の意を表するとともに、彼らとともにこの栄誉を分かち合いたいと思っております。
   
これまで私を支えてくれた今は亡き両親、妻萬里子と家族にも心から感謝をしたいと思います。

最後にこれから生物学を志す若い世代に向けて、
   
私達の周りには、まだ沢山の未知の課題が隠されています。素直に自分の眼で現象をみつめ、自分の抱いた疑問を大切にして、流行や様々な外圧に押し流されることなく、自分を信じて生命の論理を明らかにする道を進んで欲しいと申しあげたいと思います。
   
私も微力ながら残された時間を、効率や性急に成果が求められる今日の研究者を巡る状況が少しでも改善し、生き物や自然を愛し、人を愛し、豊かな気持ちで研究ができる環境というものの実現に助力したいと思います。
本日はどうも有り難うございました。

       
      


       
  大隅先生ご自身が選んでいる主要な業績は以下のとおりです。
  

01. Takeshige, K., Baba, M., Tsuboi, S., Noda, T., and Ohsumi, Y. (1992)

Autophagy in yeast demonstrated with proteinase-deficient mutant and its

conditions for induction. J. Cell Biol., 119, 301-311.

02. Tsukada, M., and Ohsumi, Y. (1993) Isolation and characterization of

autophagy-deficient mutants in Saccharomyces cerevisiae. FEBS Lett.,

333, 169-174.

03. Baba, M., Takeshige, K., Baba, N., and Ohsumi, Y. (1994) Ultrastructural

analysis of the autophagic process in yeast: Detection of autophagosomes

and their characterization. J. Cell Biol., 124, 903-913.

04. Matsuura, A., Tsukada, M., Wada, Y., and Ohsumi, Y. (1997) Apg1p, a

novel protein kinase required for the autophagic process in Saccharomyces

cerevisiae. Gene, 192, 245-250.

05. Baba, M., Ohsumi, M., Scott, S. V., Klionsky, D. J., and Ohsumi, Y. (1997)

Two distinct pathways for targeting proteins from the cytoplasm to the

vacuole/lysosome. J. Cell Biol., 139, 1687-1695.

06. Mizushima, N., Noda, T., Yoshimori, T., Tanaka, T., Ishii, T., George, M.

D., Klionsky, D. J., Ohsumi, M., and Ohsumi, Y. (1998) A protein

conjugation system essential for autophagy. Nature, 395, 395-398.

07. Mizushima, N., Noda, T., and Ohsumi, Y. (1999) Apg16p is required for

the function of the Apg12p-Apg5p conjugate in the yeast autophagic

pathway. EMBO J., 18, 3888-3896.

08. Kirisako, T., Baba, M., Ishihara, N., Miyazawa, K., Ohsumi, M., Noda, T.,

and Ohsumi, Y. (1999) Formation process of autophagosome is traced

with Apg8/Aut7p in yeast. J. Cell Biol., 147, 435-446.

09. Kirisako, T., Ichimura, Y., Okada, H., Kabeya, Y., Mizushima, N.,

Yoshimori, T., Ohsumi, M., Noda, T., and Ohsumi, Y. (2000) The

reversible modification regulates the membrane-binding state of

Apg8/Aut7 essential for autophagy and the cytoplasm to vacuole targeting

pathway. J. Cell Biol., 151, 263-275,

10. Kabeya, Y., Mizushima, N., Ueno, T., Yamamoto, A., Kirisako, T., Noda,

T., Kominami, E., Ohsumi, Y., and Yoshimori, T. (2000) LC3, a

mammalian homologue of yeast Apg8p is processed and localized in

autophagosome membranes. EMBO. J., 19, 5720-5728.

11. Ichimura, Y., Kirisako, T., Takao, T., Satomi, Y., Shimonishi, Y., Ishihara,

N., Mizushima, N., Tanida, I., Kominami, E., Ohsumi, M., Noda, T.,

Ohsumi, Y. (2000) A ubiquitin-like system mediates protein lipidation.

Nature, 408, 488-492

12. Mizushima, N., Yamamoto, A., Hatano, M., Kobayashi, Y., Kabeya, Y.,

Suzuki, K., Tokuhisa, T., Ohsumi, Y., and Yoshimori, T. (2001) Dissection

of autophagosome formation using Apg5-deficient mouse embryonic stem

cells. J. Cell Biol., 152, 657-668.

13. Suzuki, K., Kirisako, T., Kamada, Y., Mizushima, N., Noda, T., and

Ohsumi, Y. (2001) The pre-autophagosomal structure organized by

concerted functions of APG genes is essential for autophagosome

formation. EMBO J., 20, 5971-5981.

14. Suzuki, K., Kamada, Y., and Ohsumi, Y. (2002) Studies of cargo delivery

to the vacuole mediated by autophagosomes in Saccharomyces cerevisiae.

Develop. Cell, 3, 815-824.

15. Mizushima, N., Yamamoto, A., Matsui, M., Yoshimori, T., and Ohsumi, Y.

(2004) In vivo analysis of autophagy in response to nutrient starvation

using transgenic mice expressing a fluorescent autophagosome marker.

Mol. Biol. Cell., 15, 1101-1111.

16. Ichimura, Y., Imamura, Y., Emoto, K., Umeda, M., Noda, T., and Ohsumi,

Y. (2004) In vivo and in vitro reconstitution of Atg8 conjugation essential

for autophagy. J. Biol. Chem., 279, 40584-40592.

17. Yoshimoto, K., Hanaoka, H., Sato. S., Kato, T., Tabata, S., Noda, T., and

Ohsumi, Y. (2004) Processing of ATG8s, ubiquitin-like proteins, and their

deconjugation by ATG4s are essential for plant autophagy. Plant Cell, 16,

2967-2983.

18. Kuma, A., Hatano, M., Matsui, M., Yamamoto, A., Nakaya, H., Yoshimori,

T., Ohsumi, Y., Tokuhisa, T., and Mizushima, N. (2004) The role of

autophagy during the early neonatal starvation period. Nature, 432, 1032-

1036.

19. Atg8, a Ubiquitin-like Protein Required for Autophagosome Formation, Mediates Membrane Tethering and Hemifusion (Nakatogawa, H., Ichimura, Y. and Ohsumi, Y.), Cell 130: 165-178, 2007

 

   

     
    
(森敏)

2016-08-16 12:32 | カテゴリ:未分類

日本土壌肥料学会2016年度佐賀大会 公開シンポジウム

「事故から5年―農業環境・農作物・農業経済の変遷と課題―」

 

日 時:2016(平成28)年922日(木)13301640

会 場:佐賀大学本庄キャンパスX会場(教養教育大講義室)

主 催:一般社団法人日本土壌肥料学会、日本学術会議 農学委員会土壌科学分科会、農学委員会・食料科学委員会合同IUSS分科会

趣 旨:

  東京電力福島第一原子力発電所の事故によって福島県を中心とする農業は大きな打撃を受けた。事故から5年が経過し、農業環境において様々な放射性物質の低減化対策が検討され、農産物中濃度は基準値を充分に下回るようになった。本シンポジウムでは、5年間にわたり研究が進められてきた農業環境における低減化対策とその効果、農業環境における放射性物質の現状と将来予測、作物摂取による被ばく線量評価、更には原発事故がもたらした農業経済への波及と回復等についてこれまでに取り組んできた専門家に紹介頂き、土壌肥料学会員に広く周知するとともに、一般市民にも公開・普及する。また、今後の課題や営農再開に向けた取り組みなどについて議論する。

 

次 第:

・座長:中尾 淳(京都府立大学大学院生命環境科学研究科助教)

        塚田祥文(福島大学環境放射能研究所副所長、教授)

13:30 開会あいさつ:

         間藤 徹(日本学術会議連携会員、日本土壌肥料学会会長、京都大学大学院農学研究科教授)

13:35 5年間における放射能汚染対策の概要と成果-農地の復興をめざして-」

信濃卓郎(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 農業放射線研究センター長)

14:05 「果樹における放射性セシウムの動態-果樹園の回復をめざして-」

佐藤守(福島県農業総合センター果樹研究所栽培科専門員)

14:25 「水田における放射性セシウムの動態とモデル化-安全な稲をつくるために-」

江口定夫(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構物質循環研究領域水質影響評価ユニット長)

14:45 「農耕地土壌における放射性セシウムの動態にかかわる有機物の役割-有機物の意外な効果-」

山口紀子(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構有害化学物質研究領域無機化学物質ユニット上級研究員)

14:55 「森林環境における放射性セシウムの分布と挙動-森林・林業の復興にむけての課題-」

金子真司(国立研究開発法人森林総合研究所立地環境研究領域長)

15:15 「福島県における農作物中放射性セシウムとストロンチウム-90濃度および作物摂取による被ばく線量評価-福島県農作物の現状-」

塚田祥文(福島大学環境放射能研究所副所長、教授)

15:35 「原発事故がもたらした農村農業への影響と5 年間の総括-現地の取り組みと復興のいま-」

小山良太(福島大学経済経営学類国際地域経済専攻教授)

16:05 総合討論:

コメンテーター:万福裕造(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生産体系研究領域バイオマス利用グループ主任研究員)、齋藤雅典(東北大学大学院農学研究科教授)、齋藤 隆(福島県農業総合センター浜地域農業再生研究センター技術研究科主任研究員)、南條正巳*(日本学術会議会員、東北大学大学院農学研究科教授)、木村 武(全国農業協同組合連合会肥料農薬部技術対策課技術主管)

16:40 閉会

 

入場無料

問い合わせ先:佐賀大学農学部 日本土壌肥料学会2016年度佐賀大会運営委員会事務局

                E-mail: jssspn2016@ml.cc.saga-u.ac.jp




  

スライド1
2016-03-28 10:20 | カテゴリ:未分類

中西友子東大教授(農学生命科学研究科)が2016年度のヘベシー賞を受賞した。

「生物学分野でのラジオアイソトープ・イメージングの研究」と「東電福島原発の事故の農学関連への主導的役割」が授賞理由である。授賞式はハンガリーのブダペストで4月10日から15日に開催されるInternational Conference on Radioanalytical and Nuclear Chemistry (RANC-2016)で行われる。

    

ヘベシー(Hevesy)はハンガリー出身の科学者で1943年ノーベル化学賞を受賞している。この賞は Hevesyの栄光を記念して1968年に創設されたものである。この賞はこれまで日本人としては Suzuki Nobuo氏 が受賞しているのみで、中西友子教授の受賞は2人目である。

   

私見では2つの授賞業績理由のうちの後者(社会貢献)に関しては下記の2冊をSpringer社から編集刊行し、これを無料でダウンロードできるようにしたことも大きい理由ではないかと思われる。世界のジャーナリズムや研究者がこれらの英文の著書を通じて、東電福島第一原発事故で飛散した放射能の農業へ影響の実情をまとまって知ることができる。他にこれまで膨大な数の原著論文が日本からは英文で発信されているが個々の専門的研究分野の雑誌に限定されているものが多い上に、事件発生当初は、緊急性にかんがみ、日本人に向けての日本語の論文が非常に多かったからである。
     
     

1.Agricultural Implications of the Fukushima Nuclear Accident .(Tomoko M Nakanishi, Keitaro Tanoi 編集.  Springer Open Access 全204) 2013年刊行

2.Agricultural Implications of the Fukushima Nuclear Accident. The first three years.(Tomoko M Nakanishi, Keitaro Tanoi 編集. Springer  Open Access 全203頁) 2016年刊行

     

実におめでたい。

 

   

(森敏)
 
付記1: 以下に学会事務局から広報されている。
 
ANNOUNCEMENT OF THE HEVESY MEDAL AWARDEE 2016

The Hevesy Medal Award Selection Panel 2016 (HMASP-16) is pleased to announce that Professor Tomoko M. NAKANISHI (atomoko@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp) of the Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo, Japan, has been selected to receive the Hevesy Medal Award 2016 (HMA-16) in recognition of her work in radioisotope imaging in botany and her leadership in the agricultural consequences of the Fukushima nuclear accident.

The Hevesy Medal and a Scroll will be presented to Professor NAKANISHI at the International Conference on Radioanalytical and Nuclear Chemistry (RANC-2016) to be held in Budapest, Hungary during 2016 April 10-15.

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The George Hevesy Medal Award is the premier international award of excellence in radioanalytical and nuclear chemistry. It is named after George de HEVESY (1885-1966) who received the Nobel Prize for Chemistry in 1943 for his work on the use of isotopes as tracers in the study of chemical processes. The George Hevesy Medal is awarded to an individual in recognition of excellence through outstanding, sustained career achievements in the fields of pure as well as applied nuclear and radiochemistry, in particular applications to nuclear analytical chemistry. Established originally in 1968 by Professor Tibor BRAUN, Editor-in-Chief of the Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry (JRNC), the Hevesy Medal Award was given 19 times during 1968-86. This Award was reactivated in 2000 by Professors BRAUN and CHATT. It is sponsored by JRNC, administered as well as adjudicated by the JRNC Board of the Hevesy Award. The Award has no monetary value. The George Hevesy Medal Award comprises an engraved bronze medal in a presentation case and an ornamental scroll, which are presented at a major international radiochemical conference being held in the year of the award.

 

付記2:中西友子教授は今年3月末で定年退職される。 

付記3:みなさま、タンポポの奇形観察お忘れなく。
2016/03/10 :
タンポポの奇形をお見逃しなく :観察次第ご連絡ください (クリックどうぞ)

 

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