2018-06-22 04:08 | カテゴリ:未分類
 

ススキは、原発爆発当初から注目して、福島県の各地でサンプリングし、放射能を測定してきたが、2011年秋に開花したススキは、あまり放射能が高くなかった。その後もあまり高くなかった。福島第一原発が暴発した時にはススキはまだ芽が地中にあり直接被曝したわけではなかったので、その後に穂が出ていてもこれはほとんどオートラジオグラフに感光しなかったのである。だから毎年ススキは穂が出るのだが、あまり関心がなかった。しかし小生がサンプリングしてきたススキはことごとく道端の畑状態に群生しているものであった。大体福島の農家の人々は結構潔癖好きで、この雑草を疎ましく思うのか、毎年根際から刈り倒しているので道端のススキの地上部には、あまり経年変化立ち枯れした古いものはないのである。

   

しかし今回(2017年晩秋)、久しぶりに試しに双葉町の水田のあちこちに生えているススキの穂を、サンプリングしてきた。これらのススキはすでに穂の種子の「もみ殻」に汚くカビが生えていた(図1、図2)。

   

研究室に持ち帰ってガイガーカウンターを充てると150cpmばかりあった。この放射線量は、これまでの経験と異なり明らかに有意であった。

    

オートラジオグラフを取ると黒カビで汚染している種皮が顕著に放射能汚染していた(図3、図4)。すべての種皮が比較的均等に汚染しているので、これは外部に放射能が付着しているのではなく、種子の栄養をカビが摂取して種皮が放射能で表面汚染しているように見えるのではないかと思われた。

 

穂軸と種子に分けて測定するとほぼ同等の汚染度であった(表1)。今回のように野生のイネ科植物といえども原発事故以来一度も耕作したことがない放棄水田の中に定着したものは、この原発事故以降直近までの数年の内に、何度も乾湿を繰り返す土壌条件の中では、湛水還元状態のときに溶解してくる放射性セシウムイオンを吸収する機会が多くなる。だから、野山の陸地(畑:酸化)状態の、大部分が土壌に固着しているセシウムを吸うのとは訳が違うのかもしれない。
     
  このWINEPブログの過去のどこかで紹介したことがあるが、春先のフキノトウでこのことはすでに証明されている。今回の多年生のススキの種皮の放射能汚染は外部飛来付着ではなく、全部根から吸収して茎を転流してきて種子に蓄積した放射性セシウムを種皮に付着したカビがカリウムの代わりに栄養源として濃縮したことよる内部被ばくと思われる。

 

イネとおなじくススキも生息地が湿地か陸地かによって、セシウムの吸収量が異なるわけである。

 

  

                                                                             



 
スライド1 
 
図1 水田に生えていたススキの穂
 
 
  
 
 
 
 
スライド2
 図2. 図1のオートラジオグラフ
 
   
  

 

 
スライド3 
 
 図3.図2のネガテイブ画像
 
 
 
 
 
 スライド4
図4.図3の拡大図
 
 
 



スライド5  

 図5.図4のオートラジオグラフ
 
 
 

 
 
 表1. ススキの穂の放射能

 すすきjpeg
 
 

(森敏)
2018-03-31 10:49 | カテゴリ:未分類

「博士」でも任期付き若手研究者の雇用厳しく

20180301 1433分 読売

 文部科学省科学技術・学術政策研究所は、大学院の博士課程を修了して大学や研究機関に就職した若手研究者らの半数以上が、3年半後も任期付き雇用にとどまっているとの調査結果を発表した。

 同研究所は、2012年度に博士課程を修了した2614人について、3年半後の生活状況などをアンケートで調べた。60%が大学や国の研究機関などに就職していたが、そのうち52%は任期付きの不安定なポストにあることがわかった。

 また、15年度に博士課程を修了した人への別の調査では、4922人の回答者のうち、38%が返済義務のある奨学金などの借金を負っていることもわかった。

 若手研究者が厳しい環境に置かれていることから、文科省は、大学で若手にポストを用意できるような人事システムの改革など、若手研究者を育てるための新計画を6月末をめどに取りまとめる方針だ。

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  こういう若手研究者の深刻な身分の不安定さは、インパクトファクターの高い論文への掲載を狙った若手の研究者によるデータの偽造(フェイクデータ)の、温床になっている。、結果的に日本発の研究論文の信用の失墜に確実につながる可能性が非常に高い。実際論文の被引用度でもボデイーブローのように効いてきているのではないか。
           
  話が横道にそれるが、先日某国立大学の研究者に会って久しぶりに話を聞いていたら、この大学ではすでに研究者一人当たりの光熱水料を差し引いた研究費は年間たった10万円だということで、これには心底驚愕した。
          
  科学技術の人材育成と財政支援の両面が国立大学では崩壊しつつある。
 
   

論文の引用件数や、専門分野ごとの上位1%に入る重要論文の件数が、日本が米、中国、EU諸国にもおいぬかれて、ここ数年にわたって確実に低下しているという指摘が各種の調査機関でなされている。また、日本では国立大学よりも、国立研究法人(理化学研究所、物質材料研究所、生理学研究所、原子力機構などなど)のほうが質の良い論文を出している、などとも報道されている。後者の方が投入予算に対する研究成果が高い、すなわち投資効率が高い、との指摘もなされている。「国立大学は研究マネージメントが悪い」、と日経連や経済同友会に集まる民間会社の社長クラスが国の科学技術政策を論じる会議に参加してしきりにのたまう。
  

しかしこれらの指摘は、大学の有する特質を無視しているものと言わざるを得ない。大学は研究ばかりでなく教育の場である。国立大学の教員が有する教育の負担は甚大なものがある。研究ということがどういうことなのかに全くと言ってよいぐらい無知な新入生を一人前の研究者に人格的にも研究能力的にも気合を入れて真面目に育する苦労は筆舌に尽くしがたい。
  

極論すれば、上記の国立研究機関は、国立大学の教員たちが苦労して育て上げた研究者たちを、ポスドクなどの有給で雇用して、彼らの能力を研究成果として短期間で搾り取る(収奪する)機関なのである。苦労した学生たちを送り出す大学教員たちには、何の見返りもないと言っていいだろう。また、優秀な大学生を就職時に雇用する民間会社も、優秀な学生を育てろと大学側に文句はつけても、教員たちに対する研究資金面での見返りは、多くの場合、何もない。それどころか国立大学は毎年文科省からの「運営費交付金」を減額され続けている。国立大学の教員たちは、研究費を教育費に転用しないと真面目な教育ができない状態に貶められている。だからすでに述べたように教員一人頭10万円しか研究費がないという国立大学の研究室も出てきているのである。
  

大学では自分たちが育てた優秀な修士や博士研究者をポスドクやパーマネントの助教などに継続して昇格雇用できるシステムがいまでは壊滅的に崩壊している。ごくごく少数の有名教授たちが外部資金の大金を獲得して、それらの恩恵に浴しているにすぎない。そのためにほかの零細分野の多くの教員たちはますます研究費が細り、毎日が金欠病でひーひー言っている。研究室間での貧富の差が激しくなっている。好き勝手にやる、数十年後には、ブレークスルーに結び付く研究の種(構想)が貧困化している。本当に危機だと思う。
  

こんなことを言うと「それはお前が無能だからだ」という声が直ちに返ってくるだろう。無能だからかもしれないけれど、最低限の研究費は保証して下さいよ、と現役の研究者を代弁していいたい。年間10万円の研究費で何ができますか? 
    
       
(森敏)
付記:「日本の大学は、一見して企業投資を喚起するような革新をもたらす魅力的な構想がかけているため、日本の大企業が米国の大学に投資をしている。」(科学新聞 3月30日号 「日本の研究力低下に歯止め」 ピーターグル―ス沖縄科学技術大学院大学学長 談)。日本の企業は大学から優秀な人材だけをかっさらって、日本の大学の研究はだめだからと言って、アメリカの大学に研究投資して、そこで得られた特許を、商品として世界中に売りまくる、という資産運用循環を形成しているわけだ。これが企業のグローバル化の実態だ。日本の国立大学の育成人材の活躍の成果である企業の儲けが日本の大学の研究者に還流していない。あったとしても微々たるものだ。


2018-03-26 12:32 | カテゴリ:未分類
 

  昨年(2017年)の春、帰還困難区域に指定されている浪江町津島地区で、車を転がしていると、道路端に水たまりがあり、そこにタンポポが生えていた。水に永く浸かると、たぶんタンポポは枯れると思われるのだが、ここは、雨が降った時は5センチぐらいの水たまりになり、天気になると、蒸発して水が引けるので、地面が乾湿を繰り返していると思われた。それゆえにタンポポ種子は、前年度の2016年の秋ごろに発芽後も、真冬を生きながらえて、何とか、けなげにも花が3輪咲くところまで生長していったのだと思われた。(図1) 
  
  タンポポを根の際で根を切断して地上部のみを採取して、新聞紙を何回も取り換えて、植物体を完全に乾かして、オートラジオグラフを撮像すると、高濃度に放射能が全身にいきわたっていた。採取時に根の部分を掘り出すのは困難だったので、根は写っていない。根のすぐ上の茎の付けねの部分は、20年ほど前に小生が高崎の原子力研究所で見出し discrimination center (デイスクリーミネイションセンター)と命名したのだが、オートラジオグラフではこの部分が非常に濃く撮像され(図2、図3)、泥のコンタミもあってか放射能が非常に高いことがわかる(表1)。

    


  

 
スライド1 
 
図1.水浸タンポポ
  


  

 スライド2 
 

図2.図1のオートラジオグラフ

  
  


  
 
スライド3
 
 
図3.図2のネガテイブ画像 花器の基部の種子が形成されつつある部分が強く写っているように見える。
  


   
   

表1.水浸タンポポの放射能

放射能水浸タンポポのjpeg   
 
  


(森敏)


付記:Discrimination Center (D.C.)は師管と導管が複雑に入り組んでおり、この部分で、根で吸収された必須元素が、いったんとどまっていろいろな地上部の組織に分配移行する。また、光合成産物は、この部分にいったん転流してきて、ほかの部分に分配(discriminate)されていく。このD.C.という、小生の発明した生理学的「機能」を意味する造語は、残念ながら最近では、その複雑な微細形態学的な「構造」がポピュラーになったので、植物関連の論文では使われなくなったようだ。

 
 
 

 
2018-03-01 16:34 | カテゴリ:未分類

NHKスペシャル 「被曝の森2018」見えてきた汚染循環

2018年3月7日(水)

午後10時25分〜11時15分  50分番組 NHK総合 (全国放送)

http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20180307

 

 東京電力福島第一原子力発電所の事故によって放射性物質で汚染された区域はこの先どうなっていくのか? 2016年3月に放送した「被曝の森~原発事故5年目の記録~」では、急速に家々を覆っていく植物や、昼間から住宅地に出現するイノシシなど、無人の町が野生に侵食されつつある衝撃の実態を明らかにした。放射性物質の生物影響に関する様々な研究報告も伝え、低線量被曝の謎に迫った。今回の番組はその続編。
 去年の春、被災地は新たな局面を迎えた。国による計画除染が終わり、広い範囲で一斉に避難指示が解除された一方で、山間部を中心に「帰還困難区域」として取り残される地域が生まれたのだ。その面積は340km2(東京23区の約半分)。対象となる住民は2万4千人に及ぶ。そうした「帰還困難区域」で、放射性物質はどのような影響をもたらしているのか? 科学者による研究は、より深く、より多角化している。これまで調査されてこなかった高線量の森に踏み込み、生態系の中で放射性物質がどのように移動・残留しているのか、解明が進んでいる。科学者たちの挑戦や住民の思いを追いながら、その実態を記録する。

 

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ということだそうです。


(森敏)

小生らの放射線像も何枚か登場するはずです。放映は遅い時間帯ですが、番組向上のためにも、ぜひ御視聴いただき、後に批判的感想を「NHK 科学環境番組部」に寄せてあげてください。
 
 
追記:
速報!
NHKスペシャル 「被曝の森2018」見えてきた汚染循環」
再放送は深夜です。

再放送は
2018年3月10日(土) 午前0時55分〜(50分)
つまり、金曜の25時55分から
ということです。

録画しなかった方は、ぜひ再視聴ください。

 
追記2:以下のホームページでも見られます。
http://www.dailymotion.com/video/x6fu0tm

2017-11-18 14:31 | カテゴリ:未分類

捕獲の二ホンジカ 基準超える放射性セシウム検出 長野
    

1118日(土)1145分 産経ニュース

県林務部は17日、富士見町で13日に捕獲された野生のニホンジカから国の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。出荷はされていなかった。

 同部などは、同町で捕獲されたニホンジカの肉を当面の間、出荷や販売、自家消費しないよう、野生鳥獣肉加工施設や狩猟者、飲食店などに周知する。

 検出されたのは放射性セシウム134と同137の計160ベクレル(1キロ当たり)。同部によると、この肉を毎日1キロ、1年間食べ続けても健康には影響がないという。


    


        

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付記1:先日長野県北部の「塩の道」を歩いていて、民家の石塀の上に苔が生えていたので採取してきた。ゲルマニウム半導体で測定したところ

Cs-134: 10.4  (ベクレル/kg乾物重)

Cs-137: 121.3  (ベクレル/kg乾物重)

であった。この長野県内の場所は上記の記事の富士見村より約90キロ以上北に位置している。富士見村は東電福島第一原発から290キロも離れている。このように、長野県が福島第一原発の放射能プルームで被ばくしたことはすでに明らかである。

ニホンジカはコケや木の皮(バーク)などを食する。木の皮のリグニンなどの固着した放射能は年月が来て樹皮が剥離落下しないかぎり、いつまでたっても放射能が固着したままなので、無意識にその放射能汚染樹皮を食べるニホンジカもいまだに放射能で筋肉が汚染されているというわけである。長野県庁は、樹木の樹皮の放射能汚染を追跡調査を恒常的に続ける必要があるだろう。もちろん長野県ばかりでなく、宮城県、岩手県、群馬県、栃木県、山形県、山梨県、埼玉県、東京都、静岡県、茨城県、千葉県もやるべきである(小生のように旅行先で気まぐれにサンプリングしてやるのではなく)。 この富士見町での知見は多分氷山の一角だと思われます。
  11月15日から始まった ”ジビエ” 解禁ブームに水を差すような話ですが。関東一円はまだ要注意かと。 
      

(森敏)

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