2017-02-17 08:06 | カテゴリ:未分類

民家の庭先にショウブとハスを混食しているプラスチックバットがおいてあった。きっと避難している家主は水生植物の愛好家だったのだろう。これまでも溜め池などでは、岸から離れているハスなどの水生植物を採取するのが少しややこしかったので、このプラスチック箱の中から紫色の2本を茎の部分から上を失敬した。葉は全面的に水につかっていた(図1

       

新聞紙で乾燥するとさらに紫色が強くなった(図2)。研究室に持ち帰ってガイガーカウンターを当てると1600 cpmと、とてつもなく高い値を示した。以下の動画を見てください。
 https://vimeo.com/190422228 

         
  それをオートグラフに取ったのが図3(ポジテイブ画像)と図4(ネガテイブ画像)である。ハスの葉脈が子細にくっきりと浮かび上がっているのがわかる。
    
  この植物体を葉と茎にわけて放射能測定したものが表1である。茎と葉は共に、Cs-134 と Cs-137の合量で数十万ベクレルとべらぼうな値であることがわかる。


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 図1.民家の庭に放置されたハスを育てているプラスチックバット
 
 
 
スライド1 
 
 図2. ハスをサンプリングして押し葉にしたらこんな紫色になった。

 
 
 
 
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 図3.図2のオートラジオグラフ
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 図4.図3のネガテイブ画像



 
表1.ハスの放射能
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なぜこんなに高いのだろうか? 以下に若干考察してみた。

       

第一にこの地域に降り注いだ総放射線量がべらぼうに高かったであろう。今でも空間線量は8マイクロシーベルト付近である。しかしそれ以外に、第二に、原発事故以来このプラスチックの箱に降り注いだ放射能は箱の外には逃げないで箱のなかに留まったままであるはずだ。土壌は箱の底に数センチである。いつも土壌表面は水で空気から遮断されているので還元状態にある。たぶんそういう環境下ではセシウムは土壌への吸着が進みにくく、いわば箱の中で放射性セシウムは水の中でリサイクルし続けていると思われる。冬になって葉が枯れて腐ると、微生物菌体のコロイド状になり、そのコロイド状の有機性セシウムは、また次の春になると無機セシウムイオンとして遊離されてハスの根からばかりでなく葉からも再吸収されるわけである。

     

フキノトウなどでは、淡水状態で出てくるフキノトウと陸生のフキノトウでは前者の方が遙かにセシウム汚染が強いことがすでに明らかにされている。これは淡水状態では水につかっている地上部分からも容易に放射性セシウムが吸収されるからである。

      

水稲の場合も、水を張った出穂期に森林で汚染した沢水がかかると、容易に茎からセシウムを吸収して、お米の放射性セシウム含量がたかまるので、要注意なのである。小生自身が実験したわけではないが、カリウムを農水省が定める基準値量(25mgK2O/100g土壌)以上施肥していてもこの経茎吸収は押さえられないと思われる。

      

たかがハス、されどハス。 原発事故後ほぼ6年になるが、放射能汚染地での自然観察で学ぶことはまだまだ多いのである。

  
   
(森敏・加賀谷雅道)

     
 
 
 
 

2017-02-11 03:01 | カテゴリ:未分類

転載1:

文化庁芸術祭のテレビドキュメンタリー部門で優秀賞を受けた
NHK制作の
「被曝の森~原発事故5年目の記録」

の優勝盾の写真が関係者からメールで送られてきたので転載します。
よほどうれしかったのだと思います。
  
 ひばくのもりたてプレゼンテーション1

 

  NHK会長も替わったことだし、この受賞を契機に、この間の局内の少し重苦しかったのではなかろうかと想像される雰囲気を払拭して、制作に関わったスタッフ達にはさらに原発関連の事実を伝えるドキュメンタリー制作に意気軒昂でがんばっていただきたいと思います。

廃炉、海洋汚染、除染、住民避難、森林生態汚染など原発事故は何も解決していないのですから。何事も報道されなければ歴史的になかったことになります。

 

転載2:

 

以下の放送は
東電福島第一原発の汚染水対策のこれまでの経緯と現状、今後の課題をまとめたものだそうです。

212日(日) 23:30〜24:00 Eテレ 

サイエンスZERO 「最新報告 汚染水との戦い」

http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp572.html

(再放送)218日 土12:30〜13:00

NHKオンデマンドでも配信

https://www.nhk-ondemand.jp/

 


    
(森敏)

2017-01-25 04:09 | カテゴリ:未分類
 

  これまでに複数回キク科の植物を採取してオートラジオグラフを撮ったことがあるのだが、どうもキク科はセシウムの地上部への移行が悪い(移行係数が低い)のではないかとずっと思っていた。

 

  1昨年の秋あちこちにキクが最盛期を迎えていたので、道ばたに一株旺盛にはえているきわめてありふれたキクをランダムに枝の部分から数本採取した。

   
 
図1.道路端のノジギク
スライド1 
     
       
 図2.図1のノジギクのオートラジオグラフ(数値はガイガーカウンターの値)
 
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 図3. 図2のネガテイブ画像
のじぎくネガjpeg  
 
     
   
スライド1 
表1. ノジギクの放射能
    
     
        
   これを台紙に貼り付けてガイガーカウンターであらためてベータ線量を量ると枝ごとにかなりのばらつきがあった(図1)。そこで実際にオートラジオグラフを撮ると、枝ごとにかなり濃淡が出た(図2、図3)。

          

   多分、ある枝に対応する根は可溶性の放射能を含んだ土壌に接しており、それを吸い上げたのだろう。一方、別の枝に対応する根は放射能が固着した土壌に接しており、セシウムを吸収しなかったのだろう。

            

   組織を部位ごとにわけて放射能を測定したら、表1 のようになった。葉 > 花 >茎 の順に濃度が高いのだが、オートラジオグラフでは一番花が強く感光しているように見える。これは全体を押し葉にしたので花が花びらやその他の生殖器官で折り重なって凝集しているので、多重に放射線を発してフィルム(IP-プレート)が感光しているからである。葉の部分でも折り重なっているところは濃く感光していることがわかる。
       
  植物は根が土壌中に深いか、浅いか。根の生長点や根毛が土壌の放射能に接しているかどうか。などの微妙な差異によって、道管を通って地上部の対応する組織まで放射能が到達する量が極端に変動することが明らかになった。すでに漠然と明らかになっていることだが、こんなにはっきりと差が出るとは予期していなかった。
     
  従って、いささか専門的な議論になるが、
植物による放射性セシウムの「移行係数」なるモノは、根がどっぷりと浸かった水耕栽培でしか評価できないと断言できる。すなわち:
移行係数=地上部の放射性セシウム濃度/水耕液の放射性セシウム濃度
この値は従来から土耕栽培やフィールドで測定されている
移行係数=地上部の放射性セシウム濃度/土壌の放射性セシウム濃度
よりも、はるかに高くなると考えられる。

   
      
   
    
(森敏)
   
     

付記1.植物学者の牧野富太郎はこのキクを郷里の土佐吾川郡川口村の仁淀川河畔で発見して、のぢきく(野路菊)と新称し、ラテン学名に自分の名 Makino を付した。すなわち、Chrisanthemum morifolium Ramat. var.spontaneum Makino と命名した。
しかし彼はその後全国を旅しているうちに、この菊がいわゆる「家植菊」と同種に属し、既知の「小菊」と酷似して区別できないことを知った。これが栽培されていくうちに好事家によって大輪の様々な園芸新種に改良されていったのであろう、と記している。つまり、のぢきく が原種に近い品種であると認識した訳である。
牧野富太郎は発見したこの野地菊の写生図を、以下のように牧野植物図鑑(北隆館)の第12図版に重要な発見として特別に載せている。
 
まきのにじぎくjpeg 

この写生図を見てもわかるように、牧野は根の形態には全く着目していない。
 
追記1: イネに関して今回の原発事故による放射能汚染土壌水田からサンプリングしたイネに関しては、『移行係数』は0.57-0.017と300倍にもなる、大きな幅のばらつきがある。
2017-01-15 14:09 | カテゴリ:未分類

男の子がなりたい職業、「学者」2位に急上昇 連続ノーベル賞効果か 第一生命調査

 第一生命保険が6日発表した「大人になったらなりたいもの」のアンケート結果によると、男の子で「学者、博士」が2位となり、前回の8位から大幅に上昇した。第一生命は「日本人のノーベル賞連続受賞の影響があるのではないか」と分析している。

 男の子の1位は7年連続で「サッカー選手」、3位は「警察官、刑事」だった。前回18位の「水泳選手」が8位に浮上した。2016年夏に開かれたリオデジャネイロ五輪で日本人選手が活躍した影響とみられる。

 女の子は「食べ物屋さん」が20年連続の1位となり、人気を維持した。2位は「保育園・幼稚園の先生」、3位は「学校・習い事の先生」と続いた。また「ダンスの先生、ダンサー、バレリーナ」が10位と、09年以来のトップ10入りとなった。

 アンケートは第一生命が1989年から毎年実施しており、今回は16年7~9月に実施。全国の幼児や   小学生ら1100人の回答を集計、分析した。
 
 
 
      このニュースはすべての全国紙に掲載されているようだ。実にノーベル賞の効果は大きいと思う。子供は将来の生活のことなんか考える必要がないから、純粋に「理想の人物像」を具体的にノーベル賞受賞者 やサッカー選手に自らを同化して考えることができるのだろう。
 
  
    自分のことを顧みても、なんと言っても1949年の日本人初の湯川秀樹博士によるノーベル物理学賞受賞の影響は強烈だった。当時小生は満8才で、高知市旭第一小学校から芦屋市宮川小学校に転校したころであった。研究内容などはなんにもわからなかったのだが、世界で賞賛される栄誉みたいなものがまぶしくて仕方がなかった。5年生の時の国語の教科書には湯川スミ夫人によるノーベル賞受賞記念式典のときの印象記が載っていたと強く記憶している。
 

                

その後大学に至るまでや大学に入ってからも湯川の随筆や対談など多くの出版物では、彼の物理の専門書は歯が立たなくても、それ以外はほとんど全部読んだ。特に「創造性」や「独創性」や「直感」に関する彼の哲学的発言には、他の内外のどの科学技術論者よりも最も強く影響を受けたと思う。
    

おかげで、将来何になりたいかなど特に考えることもなく「研究者」以外になりたいと思ったことはない。もちろん「自分が研究者に向いているだろうか」とか「研究者になるためにはどういう生活をしなければならないか」などの点については、在学中や助手になりたての時は真剣に悩んだ。
      

先日から強烈な風邪を引いているのでぼんやりとテレビを見ていたら、昨日の 超絶 凄ワザ! というNHKの番組で、「油が水ですぐ取れるまな板がほしい」という命題を出した小学生が、番組の最後に司会者から「君は将来何になりたいですか?」と問われて「研究者になりたいです」と明言していたのにはいささか感動した。子ども達にも一昔前のロマンチックな科学者像が再現してきはじめたのかもしれない。これは第一生命の調査通りにノーベル賞効果だと思ったことである。
   

  科学への投資は、将来の人材育成への投資でもあることは明らかである。過去20年間にわたって1%シーリングで国立大学の研究予算を減らし続けてどん底に落とし込み、逆に防衛予算を飛躍的に増やし、フィリピン、インドネシァ、ベトナムなどに桁違いの海外援助資金で国家予算をじゃぶじゃぶ散財し続けている安倍政権のやり方は、人材育成の面から国を内部崩壊させつつある。

    
   
      
 
(森敏)
2016-12-20 16:25 | カテゴリ:未分類

   放射能汚染地域では、避難して人が入らないので、森林では樹木に様々なツル性植物が自由自在に繁茂しています。このツル性植物は、何らかの遺伝子が欠損しているために単独では重力に抗して空に向かって屹立できないので幹木に着生して上に伸びていくものと思われます(図1、図2)。(おそらく野生のツル性植物は宇宙線やトランスポゾンによる自然突然変異で、ジベレリン生合成系の遺伝子の変異株だろうと思われます。)       

              
  友人の園芸師に依れば「
このツルアジサイは、名前のようにツルになってのびるアジサイで、貧弱ですがガクアジサイに似た花を咲かせます。付着根という細い根で、高木の幹や岩などにくっついて上っていきますが、付着根は水を吸う働きは無く、吸水はふつうの植物と同じに、地中にのびた根が行います」と言うことです。(付記1)
   

   現地の藪の中で、松の幹木に張り付いて高く高く昇っているいくつかのツル性植物をみて、これが松の木の樹皮などの表層に高濃度で付着している放射能を吸収しているのかどうかを知りたいと思いました。そういえば、これまで小生は着生植物などにあまり着目していませんでした。(よく言われることですが風景は本人がその気にならなければ{見れども見えず}ですね)

     

   そこで、このツルアジサイを松の木から丁寧に引っぺがして、実験室に持って帰り、押し葉乾燥後、オートラジオグラフを撮像しました。
  


スライド1 
図1.ツルアジサイ。ツルのあちこちに細い着生根がでている。下から上に向かっている。
    
    
スライド2


 

 図2.図1のオートラジオグラフ

   
   

スライド3 
 
 図3.図1の同じツルのもっと上の部分。下部に新芽が見られる。右上の部分は樹皮ごとはがれたもので、そこに着生根が食い込んでいる。ツルは左下から時計回りに先端に向かっている。
 
   
    

スライド4 
  
    
    


図4.図3のオートラジオグラフ。新芽や着生根が放射能で内部被曝(すなわち内部標識)されていることがわかる。
 

スライド6 
 
 図5。樹皮に食いついたツルアジサイの細い着生根部分の拡大図
    
    
  
   

スライド7 

 図6.図5のオートラジオグラフ。図4のネガテイブ画像の右うえの部分の拡大図。着生根はあまり強くは感光していない。樹皮は外部被曝の証拠であるホットパーテイクルが付着してつぶつぶに光っている。

    
     
 
 
表1 ツルアジサイの組織部位別放射能: Bq(ベクレル)/kg乾物重
ツルアジサイの放射能jpeg 
   
 

表1や図2,図4で見るように、ツルアジサイではツル性茎の部分の放射能濃度が最も高く、これは全部内部被曝によるものです。また、主ツルや分枝ツルから少しばかりちょろちょろ出ている付着根は葉やツル性茎と比べて圧倒的に放射能が低い。これらのことは、ツルアジサイが着生した松の樹皮から水やセシウムを吸収しているのではなく、松の根元の土壌からたちあがっている主ツル性茎の根そのものから、放射性セシウムを吸収して地上部に移行していることを意味しています。あちこちの付着根はただ我が身を松の幹に支えてもらうための「取っ手」にすぎないことを意味しています。

      

表1に見るように、ツルの放射能濃度が斯くも高いのは、降雨の時の松の樹幹流から松の根元の土壌や落ち葉や腐植層に流下拡散する放射能を、ツルアジサイが吸水とともに効率よく吸収するためではないかと思われます。ツル性植物は一般に鳥の巣材にも使われます。このようにしてツル性植物は放射性セシウムの森林での循環にゆっくりと人知れず関わっていくのだと思われます。

      

 
     
       

(森敏)
  

 付記1.小生にはこの植物の同定ができなかったので野田坂緑研究所の朋友野田坂伸也所長に問い合わせたらこのような解説をいただいた。

 

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