2017-06-19 08:41 | カテゴリ:未分類
  先日漫然とテレビを見ていたら 「震災の歌に刻む六年」(NHK Eテレ)という番組があり、ここで選ばれた番組最後の歌に以下のものが紹介された。少し感動したので素早くメモした。それを作者に無断で紹介させていただくと、
  

  
       

安全の

証(あかし)などなし

原発の

世を生きゆかむ

孫らを思ふ

      杉本慧美子


(震災の歌に刻む六年:NHK Eテレ 2017。6。15 より)


というものであった。

      
以下はこの詠歌に関連した最新の科学論文の紹介です。
  
               
  実はちょうどこの日に Scientific report に掲載された以下の、胎児の成長に関する論文を読んだばかりであった。

   
   
(そこで、これから先は少し論文調になりますが、少し詳しくこの論文を紹介します。我慢して読んでください。)
   
この英文表題は

                     
Small head size and delayed body weight growth in wild Japanese monkey fetuses after the Fukushima Daiichi nuclear disaster
Scientific Reports 7, Article number: 3528 (2017)

doi:10.1038/s41598-017-03866-8
https://www.nature.com/articles/s41598-017-03866-8

         
  そこでこの英文表題を直訳すると、

「福島第一原発事故後の野生のニホンザルの胎児の小頭と鈍化した体重」
     

という衝撃的なものです。その論文の「要旨」(付記参照)を小生が勝手に日本語に直訳すると、以下のような内容です。
            
   
要旨     
「東電福島第一原発事故の影響を評価するために、原発から約80km離れた福島市に生息する野生のニホンザル(Macaca fuscata)について、2011年の事故の前後である2008年から2016年までに捕獲した母ザルの体内の胎児にいて、その外形的計測を行い、相対的な成長の違いについて調べた。事故前の31頭と事故後の31頭のニホンザルの胎児について体重や、頭のサイズ(前頭から後頭への直径と二頭頂骨の直径)の
     頭頂から臀部までの長さに対する比 を調べたところ、体重と、それに対応した頭のサイズは事故後の胎児では事故前に比べて、有意に低下していた。胎児の母親の栄養学的な指標に関しては事故前後で有意な差がなかった。したがって、放射線被ばくが、観測された胎児の成長遅延の一因子でありうると考えられた。」
                           
  
参考のためにこの論文に添えられた図表の一部を勝手に解釈して分かりやすく(したつもりで)紹介すると以下のようです。
                   


表1.母ザルが生息する地域の5年間にわたる累積空間放射線量(一番右の赤字データ)
羽山論文図2 jpeg 

      

                

 表2 2011年の事故後に各年に 捕獲した妊娠母ザルの筋肉の放射性セシウム量

羽山論文図jpeg-2   
    
   
    

    

 

スライド2 
  
    

図1.横軸のCRLとは頭頂から臀部までの長さ(CRL:crown-rump length = the length of the fetus from the top of  fetus head to bottom to torso)の事です。縦軸は頭のサイズ(面積)です。赤丸が東電福島第一原発事故後の胎児、青三角が事故前の胎児。全体として赤丸が下方にシフトしていることがわかります。

   

    

 
   
 

    

スライド1 
   
    

図2.図1と同じく、横軸のCRLとは頭頂から臀部までの長さ(CRL:crown-rump length=the length of the fetus from the top of  fetus head to bottom to torso)の事です。縦軸は体重です。赤丸が東電福島第一原発事故後の胎児、青三角が事故前の胎児。全体として赤丸が下方にシフトしていることがわかります。

   
       
       
     

  結論としてこの論文では、体重/CRL(図2)や頭頂面積/CRL(図1)が、胎児の体内での成長速度の指標になるという獣医学上の定義(常識)を前提として、東電福島第一原発の事故後に、母親の胎内の胎児の成長が鈍化していることを述べています。放射線障害に関しては、成人や小児の白血病などの癌や、新生児の奇形など、遺伝子変異による影響に注目するばかりではなく、母体内で胎児がどういう成長を遂げているか、などのここで述べられている視点は非常に重要です。
             
  現在、福島県の各市町村では年間被ばく線量の上限が年間20ミリシーベルトという途方もなく高い基準を設けて、避難区域を解除しました。そんなところに、これから子供を産もうとする夫婦も帰還するべきだろうか? この論文でニホンザルが野生環境の中で先行して示している ”母体内での胎児生長の鈍化 という危険なシグナルに、人間は謙虚に学ぶべきでしょう。医学生理学的には帰還してあえて人体実験に加わる必要などは全くないと思います。

  
   
    
       
(森敏)

付記:念のため abstract の原文は以下のとおりです。

To evaluate the biological effect of the Fukushima Daiichi nuclear disaster, relative differences in the growth of wild Japanese monkeys (Macaca fuscata) were measured before and after the disaster of 2011 in Fukushima City, which is approximately 70 km from the nuclear power plant, by performing external measurements on fetuses collected from 2008 to 2016. Comparing the relative growth of 31 fetuses conceived prior to the disaster and 31 fetuses conceived after the disaster in terms of body weight and head size (product of the occipital frontal diameter and biparietal diameter) to crown-rump length ratio revealed that body weight growth rate and proportional head size were significantly lower in fetuses conceived after the disaster. No significant difference was observed in nutritional indicators for the fetuses’ mothers. Accordingly, radiation exposure could be one factor contributed to the observed growth delay in this study.
 
追記1:
偶然だが眠れないので昨日と今日早朝5時ごろボケた頭でテレビを見ていたら

  一斉解除の町で~原発事故6年後の帰還~

というタイトルでNHKが2日にわたって再放映していた。避難所から帰還した御夫婦の奥さんが、自宅の庭や小学校の校庭に花を植えたり、近くの土手から草を摘んだり、していた。一応軍手はしていたが。テレビではそこの空間線量や地面の放射線量がどれくらいなのかという一番重要な情報を一切開示しなかった。NHKの取材班が放射能に鈍感なはずがない(鈍感なら取材する資格がないだろう)。意図的だと思わざるを得ない。NHKはいったい誰に向けて忖度してるんだろうと、見ていて怒りが込み上げてきた。
 
 一方、現地帰還をあきらめた他の御夫婦は無残にも放射能汚染した自宅を解体して更地にしていた。そこに住んでいた記念にと自宅の「郵便受け」だけを持ち帰った。私見ではこの郵便箱は野外にあったのでかなり放射能汚染しているはずである。 (2017年 6月27日。9時50分 記)
 
追記2:
この論文の筆頭著者である羽山伸一教授によれば、2011年の福島第一原発事故の放射能被でばくした母親ニホンザルが、身ごもって、翌年2012年に生まれたニホンザルのメス(雌)が、生長して妊娠可能になるのは、今年(2017年)からであるので、来年2018年から生まれてくる子ザルは被爆第3世代間ということになる。なので引き続き今年間引きのために福島市内で捕獲される母ザルの胎児を継続して観察する必要があるということです。 

 ほんとうは福島市内よりももっと激甚な10倍以上の放射能汚染地帯を縄張りにして生息するサルの群れを組織的に追究して観察することが重要なことは言うまでもありません。(2017年6月28日 午後5時 記)



2017-06-06 09:08 | カテゴリ:未分類
   
今回は少し難解ですが重要な発明ですので、どうか我慢して読んであげてください。
   
以下農研機構のホームページからの転載です
 
放射性セシウムを吸収しにくい水稲の開発に成功

- コメの放射性セシウム低減対策の新戦力 -

情報公開日:2017年5月31日 (水曜日)

農研機構
岩手生物工学研究センター


  1. 農地土壌から作物への放射性セシウムの移行を低減するために、水稲では、カリ肥料の増肥が効果的な対策として実施されています。一方、長期にわたって、省力的かつ低コストで行える新たな低減対策も生産現場から求められています。
  2. そこで農研機構は、イオンビーム照射による突然変異法により、放射性セシウムを吸収しにくいコシヒカリ(Cs低吸収コシヒカリ)を開発しました。Cs低吸収コシヒカリを、放射性セシウムを含む水田で栽培した場合、コメの放射性セシウム濃度はコシヒカリの半分に減少しました。
  3. Cs低吸収コシヒカリにおいて、コメの放射性セシウム濃度が低下したキー(鍵)となる遺伝子を岩手生物工学研究センターとの共同研究で特定しました。この遺伝子は、イネ根のナトリウム排出に関与するタンパク質リン酸化酵素遺伝子(OsSOS2;オーエスエスオーエスツー)が変異したものです。この変異が原因で、Cs低吸収コシヒカリは根のセシウム吸収がコシヒカリに比べて、抑制されていました。
  4. Cs低吸収コシヒカリの生育特性や収量はコシヒカリとほぼ同等で、コシヒカリと同じ方法で栽培できます。また食味もコシヒカリとほぼ同等です。
  5. セシウム吸収を抑制する遺伝子(OsSOS2の変異)を簡易に検出できるDNAマーカーを開発しました。このDNAマーカーの活用により、コシヒカリ以外の品種にも放射性セシウムを吸収しにくい性質を効率良く付与することができます。
  6. 本成果は英国科学雑誌「Scientific Reports」(2017年5月25日発行)のオンライン版に掲載されました。
        
      低Csイネjpeg

      


ホームページは

http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niaes/075645.html



投稿原著論文は
Satoru Ishikawa, Shimpei Hayashi, Tadashi Abe, Masato Igura, Masato Kuramata, Hachidai Tanikawa, Manaka Iino, Takashi Saito, Yuji Ono, Tetsuya Ishikawa, Shigeto Fujimura, Akitoshi Goto & Hiroki Takagi (2017) Low-cesium rice: mutation in OsSOS2 reduces radiocesium in rice grains. Scientific Reports, 7, 2432.
doi:10.1038/s41598-017-02243-9


(森敏)


付記1:

この研究は福島第一原発事故後の2年後ぐらいから農研機構の石川覚グループで行われていたもので、まさに画期的な成果です。小生は福島第一原発事故後の学術会議主催のシンポジウムで2回にわたって水稲根のセシウムの細胞内への膜輸送にはカリウムのトランスポーターが使われている可能性が高いので、カリウムのトランスポーターが働かなくなったイネの量子ビーム変異株をスクリーニングして低セシウム吸収イネを作出すべきことを提案していました。当初は皆さん「またモリビンがほらを吹いている」という冷たい雰囲気でしたが、日本土壌肥料学会では、その後石川覚グループが量子ビーム育種で、秋田県立大では頼泰樹グループが変異原(アジ化ナトリウムやMNU)を用いてスクリーニングを行って該当遺伝子を同定しています(これらの遺伝子破壊株はカドミウムの場合のようにほぼ100%セシウムを吸収抑制するわけではないということですが)。今回の農研グループの成果はカリウムトランスポーターの破壊株に関する発表ではないですが、先駆的な新種の発明であることは間違いありません。今後、カリウムトランスポーターであるHAKやAKT1などの破壊株の低セシウムコシヒカリの発表が続くものと大いに期待されます。(森敏 記)

 

付記2:

小生は今回の福島第一原発事故後の研究者の在り方として、単にチェリノブイリ原発事故で世界の研究者が明らかにしてきた事の追試的な研究ばかりでなく、サイエンスとして新しい観点からの発明や発見があるべきだとずっと主張し続けてきました。今回の農研機構・岩手生物工学センター・福島県農業総合センターの共同研究の成果は、まさに小生の提案に沿う成果であり、高く評価したいと思います。
 
付記3:過去の農研機構・東大との共同研究による「量子ビーム変異を用いた低カドミウム米の開発に成功」は以下のWINEPホームページとWINEPブログを参照ください。

  WINEPホームページ: http://www.winep.jp/news/153.html

  WINEPブログ:2014/05/14 : 中国の広大なカドミウム汚染土壌に、日本の無・カドミウム米「コシヒカリ環1号」を


2017-02-14 16:27 | カテゴリ:未分類
野鳥の会・法政大学人間環境学部共催のシンポジウム開催予告です。

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シンポジウム 福島の生きものは今 ―現在、そして、これからを考える

 

東日本大震災から約6年。巨大地震と大津波に端を発した原発事故に
 
よって、福島の自然及び社会には大きな影響が出ました。
記録映像、現地で調査を行なっている研究者や福島在住の方の報告に
基づき、それぞれの視点から今後について考えるシンポジウム「福島
の生きものは今
現在、そして、これからを考える」を34()
に開催します。
 ---------------------------------------------------------------
日 時:201734() 10:0017:30 (9:30開場)

 会 場:法政大学 市ヶ谷キャンパス 富士見ゲート校舎 G402教室
 
定 員:300
 
参加費:無料
 
申込み:不要
 主 催:(公財)日本野鳥の会・法政大学人間環境学部
 ---------------------------------------------------------------

 
 <
プログラム>
 10
時~

・映画上映
 
「福島の生きものの記録 シリーズ4 ~生命~」岩崎雅典(群像舎)
 
・トークショー
 
岩崎雅典(群像舎)×遠藤孝一(日本野鳥の会)

 

13時~
 
・研究報告
 
「放射線の性質と生物にとっての特徴」
      石田健(東京大学)
 
「野鳥の個体群レベルの保全と放射線 ―ウグイスを例に」
   石田健(東京大学)
 
「ツバメとカラ類への放射性物質の蓄積」
   山本裕(日本野鳥の会)
 
「放射能汚染地域の魚は健康なのだろうか?」鈴木譲(東京大学名誉教授)
 
「福島県の小型哺乳類における放射性セシウム蓄積の実態と生息環境」
 
山田文雄(森林総合研究所)
 
「フクロウの繁殖に与える放射能の影響」
    西海功(国立科学博物館)

 

15時30分~
 
・福島からの現状報告
「失われていく里山、伝統」 稲葉修(南相馬市立博物館)
 
「寸断された地域の絆、つながり」 松村直登(NPO法人 がんばる福島)
 
「失われた自然体験の場を取り戻す」
      弦間一郎((公財)ふくしまフォレ
                                           スト・エコ・ライフ財団)

 

16時30分~
 
・パネルディスカッション 「福島のこれからを考える」
 
<モデレーター> 高田雅之(法政大学)
 
<パネリスト> 石田健、稲葉修、弦間一郎、松村直登、山本裕

 
会場では、放射線像・写真展も開催します。
  [協力:写真家 加賀谷雅道、東京大学名誉教授 森敏]

 
<お問合わせ>
 (
公財)日本野鳥の会自然保護室
           TEL03-5436-2633 E-mailhogo@wbsj.org

 
<シンポジウム情報ページ>

 http://www.wbsj.org/activity/event/symposium-current-fukushima/

 
多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

スライド1 
 
 

 
 
スライド2
 

  
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
 
(森敏)

付記:
会場では我々の撮像した「放射線像」も15枚ばかりごらんいただけます。

2016-10-10 12:28 | カテゴリ:未分類
以下の情報が全国に避難されている飯舘村の皆さんにも届くことを期待して、
転載します。
小生のpdf からjpeg への変換技術が悪くて、その結果か解像度が悪くて画像の文字が読み辛いでしょうが、目をさらにして解読してください。すみません。 


飯舘村10 月村長選挙レポート

佐藤八郎さんと現村長・菅野典雄さんの政策比較を
2016 年10 月9日 飯舘村/福島再生支援東海ネットワーク 事務局

村長選は6 日に公示され、16 日の投票日に向けて闘いは既に中盤にさしかかってきました。
県外の支援者は一部の人を除いてなかなか応援もままならぬ状況ですが、その一端として両候
補の政策チラシをご紹介いたしますので、ご参考になさって下さい。

 
現村長の主張は来年春帰村、再来年春学校再開に集約されている。
帰村すれば、いいことあるよ、ということだろう。
安心安全と云われるが、国法を逸脱した年20ミリシーベルト安全説であり、事故直後の村民の高濃度被曝も無視されており、要するに「放射能無害」説ということになる。
加えて佐藤八郎は国とのパイプもなく、今後の補償・補助は期待できないよ、と。
     
対する佐藤八郎さんのスローガンは
「政府いいなりの来年春帰村方針の白紙撤回」がまずきて、
チラシ裏側が具体的政策となる。
     
政策は
1.村長出前相談会で村民の意向をしっかり聴き取る
2.完全除染の実現と学校再開時
期は父母の意向による
3.完全賠償を実現する
4.生涯無料検診・治療の実現
5.生業再建への全力支援
…となる。
         
子どもを筆頭とする村民のいのちを守るということが中心に据えられていると考えればよい。
煎じ詰めれば「いのちか、カネか」という選択となるわけだ。
その上で今後の村民の暮らしの再建を精一杯支援する、という骨組みである。
    
原発とカネを選びますか、それとも子どもや村民のいのちを選びますか。
この問いかけは、大きく言えばこのクニの全ての人々、ひいては全人類への巨大な問題提起となっていることに気付かねばならないだろう。
   
6日公示、16日投票。選挙はもう始まっている。
         
        
プレゼンテーション1
  


かんののりお 
  
  
  
(森敏)
 
追記1:(10月13日)発行の「週刊女性自身」に和田秀子取材・文として、2ページにわたって
全村避難の飯舘村12年ぶりの村長選挙ルポ
が載っている。
 
追記2:選挙結果です(2016.10.17)
   

飯舘村長に菅野典雄氏 新人・佐藤氏破り6選、避難解除を支持
 

20161017
     

任期満了に伴う飯舘村長選は16日、投票が行われ、即日開票の結果、無所属で現職の菅野典雄氏(69)=5期=が、前村議で無所属新人の佐藤八郎氏(65)を581票差で破り、6選を果たした。任期は27日から4年。

 12年ぶりに選挙戦となった同村長選は、来春に予定されている村の避難指示解除を最大の争点に激戦を展開。現職の菅野氏が解除時期の白紙を掲げる佐藤氏との戦いに勝利したことで、来年3月31日の帰還困難区域を除く避難指示解除に向けた動きは予定通り進む見通しとなった。

 菅野氏は、震災と原発事故後に政府と交渉して実現してきた施策や村長5期の実績などを強調。加えて、3月31日の避難指示解除後の「新たな村づくりによる復興の加速化」を訴えた。村民は村内の復興策を推し進める菅野氏の実績と姿勢に一定の評価を下し、再び村政のかじ取りを託した。
 
追記3:(転載です 2016.10.19))

負けて勝った、勝って負けた佐藤八郎さん
 

2016 10 18 日 飯舘村/福島再生支援東海ネットワーク事務局
 

以下は、負け惜しみで言うのではない。
 

投票数3709人で、現職・菅野典雄さんが2123票、佐藤八郎さんが1543票、その差580票。 ある

村民いわく、菅野村長の固定票は1000票だろう、それは現職故の利害がらみだからそうなる。

それに対し佐藤さんはこれまでの村議選での主にカネの絡まぬ血縁票が300票位かな、と。 だと

すれば今回の村長選結果を見るに、菅野さんが固定票に上積みしたのは1123票、対して佐藤さ

んは1243票を上積みしたことになる。
 

さて、ご存知かも知れないが、村民の間における菅野村長の一般的評価は、極めてよろしくな

い。
 

原発事故直後、当時の民主党がメルトダウンを隠して表面「安全」を云いつつも、村長に村民

避難を勧めたにもかかわらず、「村がなくなるのは困る」として断り、以後全村避難までの3

月半、村民を高濃度被曝させたこと、これに佐藤八郎さんが強硬な抗議をしていたこと、これ

は飯舘村では周知の事実なのである。
 

その後も東電や政府との交渉時、常にその加害者側と同列に立って村民の要求や不安を抑え続

けてきたことも、また同じ。
 

佐藤八郎さんは、およそカネには縁のない人である。彼の5期にわたる村議活動は、ひたすら村

民の自宅におもむき、その要望を聴き、相談に乗り、それらを村政に反映させることに費やさ

れてきた。事故以後、彼が加害者と一体化した村長を厳しく批判してきたこともまたよく知ら

れている。だから人望とか人気では菅野さんを圧倒していたといってよい。
 

だから今回の選挙の行方を予想した時、その佐藤さんの人気が、果たして投票に結びつくか否

か、ここが大きな焦点であったのだ。
 

結果を見れば菅野さんの当選となったのだから、この予想は「否」となったことになりそうだ

が、冒頭の上積み票差を見れば、決してそうは言い切れないだろう。固定票に対する上積み票

だけで見れば、ここは佐藤さんの勝ちなのである。
 

では、菅野さんの上積みした1123票の意味は何か?佐藤さんの上積みした1243票の意味は何

か?
 

佐藤さんの上積みはすぐに理解できる。仮設住宅での選挙演説には常に多数の村民が集り、拍

手喝采であったが、菅野さんのそれにはパラパラであったという事実。佐藤さんは菅野村政と

国政を厳しく批判し、それが一方的被害者である村民の内攻していた怒りに火を付け、よく立

候補してくれた、という感謝として現れてきたということである。
 

他方菅野さんの上積みは、単なる現状容認ではないだろう。村民すべてがこれからの人生・生

活への大きな不安感・苦悩を持っている。佐藤さんに投票したい気持ちはあれど、果たして佐

藤さんがそれを解決してくれるのかどうか。ここに「国とのパイプ」を強調する菅野さんの言

説が入り込む余地があったと言わなければならない。
 

佐藤さんは、負けたが、勝った。
 

だが、勝てる闘いを十分活かし切れずに負けた。

これを本物の勝ちにしなくてはならない。
 

その前提は負けたことへの謙虚な反省である。

子どもと村民のいのちと生活を守る闘い。

再来春学校再開方針との闘い。

来春帰村方針との闘い。

賠償や補助打切りとの闘い。

完全除染実現への闘い。

完全な放射能健康診断実現への闘い。
 

村長になろうがなるまいが、その村民との約束を守らなければならない。

だから、闘いはまだ始まったばかり、いや、これからが本当の闘いになる。
 

最後に一言。

新潟県知事選もそうだが、首長一個人にのみ過剰な期待を寄せるのは止めようではないか。

いま求められているのは、われわれ一人一人の自立である。

それなくして、決して原発はなくならず、このクニがよくなることはないのだから。__

 



2016-07-29 16:14 | カテゴリ:未分類
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