2017-01-21 22:11 | カテゴリ:未分類
以下安倍首相の施政方針演説の教育支援の部分の抜粋です。
相変わらず総花的だが、この部分は素人目には官僚の作文としてはよくかけていると思う。
予算的裏付けがあって実現すれば一歩前進であることは間違いない。


ーーーーーー以下抜粋ーーーーー

(希望出生率一・八)
 一億総活躍の最も根源的な課題は、人口減少問題に立ち向かうこと。五十年後も人口一億人を維持することであります。長年放置されてきた、この課題への挑戦をスタートします。
 「希望出生率一・八」の実現を目指します。
 一人でも多くの若者たちの、結婚や出産の希望を叶えてあげたい。
 所得の低い若者たちには、新婚生活への経済的支援を行います。不妊治療への支援を拡充します。産前産後期間の年金保険料を免除し、出産の負担を軽減します。妊娠から出産、子育てまで、様々な不安の相談に応じる「子育て世代包括支援センター」を、全国に展開してまいります。
 仕事をしながら子育てできる。そういう社会にしなければなりません。
 病児保育の充実など、子ども・子育て支援を強化します。目標を上積みし、平成二十九年度末までに合計で五十万人分の保育の受け皿を整備してまいります。返還免除型の奨学金の拡充、再就職準備金などの支援を行い、九万人の保育士を確保します。「待機児童ゼロ」を必ず実現してまいります。
 大家族による支え合いを応援します。二世帯住宅の建設を支援します。URの賃貸住宅では「近居割」を五%から二十%へと拡大します。新しい住生活基本計画を策定し、三世代の同居や近居に対する支援に本格的に取り組んでまいります。
 子どもたちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。
 ひとり親家庭への支援を拡充します。所得の低い世帯には児童扶養手当の加算を倍増し、第二子は月一万円、第三子以降は月六千円を支給します。
 幼児教育無償化の実現に一歩一歩進んでまいります。所得の低い世帯については、兄弟姉妹の年齢に関係なく、第二子は半額、第三子以降は無償にします。
 高校生への奨学給付金を拡充します。本年採用する大学進学予定者から、卒業後の所得に応じて返還額が変わる、新たな奨学金制度がスタートします。希望すれば、誰もが、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えます。
 いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子どもたちも、自信を持って学んでいける環境を整えます。フリースクールの子どもたちへの支援に初めて踏み込みます。子どもたち一人ひとりの個性を大切にする教育再生を進めてまいります。
 日本の未来。それは、子どもたちであります。子どもたちの誰もが、頑張れば、大きな夢を紡いでいくことができる。そうした社会を、皆さん、共に創り上げていこうではありませんか。
 
ーーーーー 
  
付け加えておくと、残念ながら子ども達や青少年に夢をどう与えるかが完全に欠落している。

未来への人材育成のための投資を叫ぶなら、安倍首相は素朴に謙虚にノーベル賞学者ともっと頻繁に交流した方が良いんではないか。これまでの彼の発言からは、「科学とはなんぞや、技術とはなんぞや」を学んだ形跡が全く感じられないからである。
 
話は少しそれるが
今回の施政方針演説では、エネルギー問題、原発再稼働問題から完全に逃げている。今国会の争点にしたくない姿勢がありありだ。 残念ながらマスコミも、彼の隠ぺい戦略に引っかかっている。 原発問題では、安倍首相は、よく勉強した小泉純一郎元首相からも謙虚に学んだ方がいい。小泉の呼びかけに対しては、無視し続けているようだが。



(喜憂)
追記:東京都の小池知事は本日(1月26日)の都の新年度予算案の記者会見で
上記の保育士問題や授業料無償化などで、国に先行して新基軸を打ち出している。7月の都議選に対しての対策でもあるのだが、なかなかはしっこいと思う。
2017-01-15 14:09 | カテゴリ:未分類

男の子がなりたい職業、「学者」2位に急上昇 連続ノーベル賞効果か 第一生命調査

 第一生命保険が6日発表した「大人になったらなりたいもの」のアンケート結果によると、男の子で「学者、博士」が2位となり、前回の8位から大幅に上昇した。第一生命は「日本人のノーベル賞連続受賞の影響があるのではないか」と分析している。

 男の子の1位は7年連続で「サッカー選手」、3位は「警察官、刑事」だった。前回18位の「水泳選手」が8位に浮上した。2016年夏に開かれたリオデジャネイロ五輪で日本人選手が活躍した影響とみられる。

 女の子は「食べ物屋さん」が20年連続の1位となり、人気を維持した。2位は「保育園・幼稚園の先生」、3位は「学校・習い事の先生」と続いた。また「ダンスの先生、ダンサー、バレリーナ」が10位と、09年以来のトップ10入りとなった。

 アンケートは第一生命が1989年から毎年実施しており、今回は16年7~9月に実施。全国の幼児や   小学生ら1100人の回答を集計、分析した。
 
 
 
      このニュースはすべての全国紙に掲載されているようだ。実にノーベル賞の効果は大きいと思う。子供は将来の生活のことなんか考える必要がないから、純粋に「理想の人物像」を具体的にノーベル賞受賞者 やサッカー選手に自らを同化して考えることができるのだろう。
 
  
    自分のことを顧みても、なんと言っても1949年の日本人初の湯川秀樹博士によるノーベル物理学賞受賞の影響は強烈だった。当時小生は満8才で、高知市旭第一小学校から芦屋市宮川小学校に転校したころであった。研究内容などはなんにもわからなかったのだが、世界で賞賛される栄誉みたいなものがまぶしくて仕方がなかった。5年生の時の国語の教科書には湯川スミ夫人によるノーベル賞受賞記念式典のときの印象記が載っていたと強く記憶している。
 

                

その後大学に至るまでや大学に入ってからも湯川の随筆や対談など多くの出版物では、彼の物理の専門書は歯が立たなくても、それ以外はほとんど全部読んだ。特に「創造性」や「独創性」や「直感」に関する彼の哲学的発言には、他の内外のどの科学技術論者よりも最も強く影響を受けたと思う。
    

おかげで、将来何になりたいかなど特に考えることもなく「研究者」以外になりたいと思ったことはない。もちろん「自分が研究者に向いているだろうか」とか「研究者になるためにはどういう生活をしなければならないか」などの点については、在学中や助手になりたての時は真剣に悩んだ。
      

先日から強烈な風邪を引いているのでぼんやりとテレビを見ていたら、昨日の 超絶 凄ワザ! というNHKの番組で、「油が水ですぐ取れるまな板がほしい」という命題を出した小学生が、番組の最後に司会者から「君は将来何になりたいですか?」と問われて「研究者になりたいです」と明言していたのにはいささか感動した。子ども達にも一昔前のロマンチックな科学者像が再現してきはじめたのかもしれない。これは第一生命の調査通りにノーベル賞効果だと思ったことである。
   

  科学への投資は、将来の人材育成への投資でもあることは明らかである。過去20年間にわたって1%シーリングで国立大学の研究予算を減らし続けてどん底に落とし込み、逆に防衛予算を飛躍的に増やし、フィリピン、インドネシァ、ベトナムなどに桁違いの海外援助資金で国家予算をじゃぶじゃぶ散財し続けている安倍政権のやり方は、人材育成の面から国を内部崩壊させつつある。

    
   
      
 
(森敏)
2015-10-07 23:10 | カテゴリ:未分類

今回の大村智先生のノーベル賞受賞のインパクトは、生物界における土の「微生物」の存在の重要さを、人々に再確認させたことだと思う。学校教育での中でも病原菌の事は取り扱われているが、地球上の生物界には「動物」「植物」「微生物」があることをきちんと教えているところは皆無だろう。小生が農芸化学科に進学して、当時の1年半に渡る学生実験で一番印象的であったのは『微生物実験』であった。坂口謹一郎先生や有馬啓先生によって編集されたといわれる実験書はいまでも実用書として使える。無菌操作、各種の菌の分類と分離同定法、菌の培養法、カップ法による放線菌のペニシリンの力価(りきか)の測定法など3か月を掛けた微生物実験はたなかなか充実していた。

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以下大村語録です。

ヒトのマネをするとその人をこえることは絶対あり得ない」(科学新聞10月6日号)
 

「自分の能力が人より劣っているとは思わなかったです。普通東大を出れば、大学院に行って5年も経てばドクターを取る。私は5年もかかってマスター(さらに5年後に薬学博士、7年後に理学博士)。この遅れを取り戻そうという気持ちはいまだにありますよ。::::::33歳で北里大薬学部の助教授に。だが、一段落すると研究が手につかない日が続いた。『負けない、負けない』の一心で、ちょっとおかしくなっちゃったんだよな。眠れない、目まいがする。そうしたら家内がわたしを精神科へ連れて行った。おいしゃさんが『これは仕事のしすぎです。パチンコかゴルフ、どちらかをやりなさい』と。それでゴルフを始めました。(週刊文春10月22日号)



私は微生物がやってくれた仕事を整理しただけです」 (2015.10.5.記者会見)

   

「微生物と付き合っていくと、まだまだいろんなことがわかる。微生物は人類に様々な良いことを提供してくれると思う。」(読売新聞2015.10.6.)

 

:::::::

微生物探しに何かコツがありますか。

「無いね。そんなのあったらもっと見つけてるよ。ただね、10カ所で土を取ってくるとする。求めていない人はその辺で適当に土を取ってくる。やる気がある人は、ちょっとでも環境の違いそうな場所から集めてくる。その違い。」:::::(世界救う発見「求めなければ授からない」 (大村さんノーベル医学生理学賞 一年前本紙に語った理念 東京新聞2015.10.7.)

 

農家の長男出身と問われて

農業は科学者がするものです。温度を測ったり、お天気を調べたり。。。だから

(有用物質探索のために)土を採取する私の研究は農業の延長線上のものです。」

(NHK「クローズアップ現代」2015.10.7.)

 

信条はと問われて

幸運は強い意志を好む」(英語でどういったのか早口で聞き取れなかった)

NHK「クローズアップ現代」2015.10.7.

 

「成功した人は失敗をなかなか言わないが、人よりヘマをしていると思う。やりたいことをやりなさい」(2015.10.8.記者会見)

 

やっぱりチャレンジ精神ですね。「これをやってみたいな」と思ったら、失敗を恐れないこと。私なんか、はるかに失敗したことの方が多い。失敗は論文には書けない。成功しか書けないです。でも失敗が重なって成功が現れるのです。恐れてはだめです。(読売新聞利根川氏との電話対談 読売新聞 2015.10.6.)

 

小さなことでもよいので、人のためになることは素晴らしいことだと学んでほしいと思います。なんでもよいので、人のためになることが自分の幸せだと思ってもらいたいですね。(読売新聞利根川氏との電話対談 読売新聞 2015.10.6.)

 

「本業は科学だが、滅入った時には絵があった。私の中では、美術と科学は補完し合っていた」(毎日新聞2015.10.6.)


「大村先生は「科学も芸術も感性の世界だ」と言っていました」 富士吉田市吉田の画家 桜井孝美さんの伝。桜井さんの絵を10枚買い上げて病院に飾っている(読売新聞山梨版)とか。。
 
山梨科学アカデミーを創立支援している意図について
「たとえてみれば、山梨県からビル・ゲイツが一人でればいいんですよ
        NHKローズアップ現代 2015.10.9.


(野依・大村の2人が対面するのは)受賞決定後初めてで、野依さんが「先生は多くの人を感染症から救い、人類に幅広く貢献した。医学生理学賞を超えて平和賞がふさわしい」とたたえると、大村さんはアフリカでほぼ全員が熱帯病に感染している村を訪問した話を紹介。「平和賞ものだと思った」と冗談交じりに当時の感動を打ち明けた。(201510.10.共同)
   

――――――――――――――――――――――

ついでに、

 

 かたえくぼ

「ノーベル医学生理学賞」

土遊び させます

-教育ママ

(福岡・ぶらジッジ。朝日新聞2015.10.7.)

 

何気なく 踏んでた土に 触れてみる

千葉県 白井幸男 (朝日新聞2015.10.7.)

 
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(森敏)
 
付記1:今年2015年は今後100年に一回と回ってこない国連が決めた「国際土壌年」である。増大する人口や科学技術の発展が土壌に過剰なストレスを与え続けており、土壌が持つ緩衝能をはなはだしく劣化させている。近未来の食糧・健康・環境の崩壊(カタストロフィー)が危惧されているからこの「国際土壌年」がわざわざ国連で定められたのである。大村智先生のノーベル賞受賞は、微生物学や天然物化学からすればきわめてオーソドックスな手法の成果であるが、改めて、土壌が有用微生物の宝庫であるこということを大衆ばかりでなく、われわれ農学者にとっても再認識させる機会となった。上掲の川柳 「なに気なく 踏んでた土に 触れてみる」 は大村智先生の精神を凝縮して表現したものだと思う、と同時に「国際土壌年」のキャッチフレーズにしてもいいくらいの名文句であると思う。
   
付記2:東大の肥料学研究室(現在は植物栄養・肥料学研究室)出身の大先輩である太田道雄先生は山梨大学教授の時に山梨大学付属小学校の校長も務めておられた。先生は土壌学と肥料学の権威であられたが、小学校の朝礼では、一握りの土を高く掲げて 「皆さん、この一グラムの土の中にいったいどれくらいの微生物が生きていると思いますか?」 という設問を生徒達に投げかけて、フレミングがペニシリンをワックスマンがストレプトマイシンを土の微生物から分離し結核を退治したことなどを話し、子供たちに土は生きているという事を身近に感じてもらっていたということであった。今回、大村智先生が山梨大学出身と知って、直ちにこの太田先生直伝の話を思い出した。太田先生は大村先生が得意とするスキーのベテランでもあった。山梨大学学芸学部生時代や後の助手時代の大村氏と太田道雄教授の接点があったかどうかは知らないが。
 ちなみに太田道夫先生は山梨大学教授時代に、山梨県の富士見土壌の水田で「水稲の珪酸欠乏症」を世界に先がけて発見し、「珪酸肥料」を開発し、日本の水稲の収量水準を大幅に向上させた偉大なる人物です。現在では珪酸肥料の施用は世界の水稲栽培では必須です。このことは以前にも述べたことがあります。桂化木からの断想 (どうぞクリックしてください)
 
追記1:以下に農芸化学会から大村智先生関連論文のネットアドレスが送られてきた。大村先生は農芸化学会の名誉会員です。これらにアクセスすると多少専門的になりますが、大村先生グループの多角的・体系的研究展開の内容がよくわかります。
(2015.10.10. 記)

日本農芸化学会誌 71巻 530頁~534頁(1997)
抗HIV活性を有するgp 120-CD 4結合阻害剤
田中晴雄、松崎桂一、大村智
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nogeikagaku1924/71/5/71_5_530/_article/-char/ja/
 
化学と生物 8巻 139頁~150頁(1970)
微生物の生産する大環ラクトン化合物? マクロライド (Macrolide)
大村智
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/8/3/8_3_139/_article/-char/ja/
 
化学と生物 12巻 787頁~794頁(1974)
抗生物質セルレニンの脂質代謝阻害作用
大村智、栗谷寿一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/12/11/12_11_787/_article/-char/ja/
 
化学と生物 15巻 309頁~315頁(1977)
マクロライド抗生物質の生合成 (1)
大村智、竹嶋秀雄
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/15/5/15_5_309/_article/-char/ja/
 
化学と生物 15巻 381頁~386頁(1977)
マクロライド抗生物質の生合成 (2)
大村智、竹嶋秀雄
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/15/6/15_6_381/_article/-char/ja/
 
化学と生物 15巻 447頁~453頁(1977)
マクロライド抗生物質の生合成 (3)
大村智、竹嶋秀雄
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/15/7/15_7_447/_article/-char/ja/
 
化学と生物 23巻 379頁~385頁(1985)
抗ウイルス抗生物質スクリーニングの展望
岩井譲、志水秀樹、大村智
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/23/6/23_6_379/_article/-char/ja/
 
化学と生物 32巻 463頁~469頁(1994)
微生物の生産するインドロカルバゾールアルカロイドスタウロスポリンを中心に
岩井譲、李卓栄、大村智
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/32/7/32_7_463/_article/-char/ja/
 
化学と生物 34巻 761頁~771頁(1996)
微生物2次代謝産物生合成の機能的改変による有用物質の生産
池田治生、大村智
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/34/11/34_11_761/_article/-char/ja/
 
化学と生物 40巻 694頁~700頁(2002)
放線菌
池田治生、大村智
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/40/10/40_10_694/_article/-char/ja/
 
化学と生物 44巻 391頁~398頁(2006)
放線菌ゲノム解析を応用した有用物質生産系の構築
池田治生、大村智
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/44/6/44_6_391/_article/-char/ja/
 

追記2:老人には、エバーメクチン、イベルメクチン、メクチザン、オンコセルカ症などと専門用語を覚えるのが大変だ。
 
追記3:どこかの川柳選考会で
  
おれよりも役に立ってる微生物
というのが選ばれていた。シャイな微生物が表舞台に出てきたのは非常によかったと思う。これからは教科書でも、大村先生をきっかけにした題材で、微生物の項目を入れてもらいたいものだ。(2016年2月21日記)

 

 

2015-09-19 18:59 | カテゴリ:未分類

     昨日の新聞に大きく「NORIN TEN」の映画の広告が載った。東京での有楽町の「スバル座」での封切り上映のあとに出演俳優が舞台で挨拶するというので、朝から出かけた。別に特別な理由があるわけではないが、最近小生は少し映画づいている。

   

「NORIN TEN」に関しては、北陸地方でまず上映されたので、小生はまだこの映画を見ていなかったのだが、すでにこのWINEPブログでも、このコムギ倒伏耐性品種「農林10号」の育成者の稲塚権次郎に関しては詳しく紹介しておいた。「農林10号」はノーベル平和賞に輝いたボーローグ博士のコムギの多収性品種創製の母本として使われたものである。

NORIN TEN 稲塚権次郎物語」(主演 仲代達矢、監督 稲塚秀孝) (くりっくどうぞ!)

 

「育種」という新品種育成に何十年もかかる地味な実学分野で、幸いにもヒット作を打ち出せた人物がどのように描かれているか興味があった。ほとんどの育種学者は生きている間に彼が開発した品種が日の目を見ないで世を去る運命にあるので。

  

一番知りたかったのは、この半矮性のコムギ(フルツ達磨とターキーレッドの掛け合わせ)を圃場で見出したときの感動の場面であったのだが、それは残念ながら描かれていなかった。描かれなかったのはその場面を稲塚権次郎氏が書き残したり、周りに語ったりしていなかったからなのかも知れない。あるいは収穫後の収量調査などの解析結果が出なければ、卓越した差が圃場での観察のみではすぐにはわからなかったのかも知れない。

 
      じじつ中央政府によってつけられた系統番号が「農林1号」ではなく「農林10号」であったということは、全国の他の指定試験地でも相応の成果を示す品種が相次いで出ていたせいかと思われる。しかし、病害虫耐性、倒伏耐性、低温耐性、高収量性などの総合評価の卓越した結果が農水省中央での検討会議で発表されたときの育種家としての喜びは大変なものであったと想像できる。そこの所の喜びの表現があまり映画では印象に残っていない。彼が最初に手がけた大曲(おおまがり)試験地でのイネの「農林1号」の開発に成功したときの喜びは、政府から電話連絡を受けて、喜んで飛び上がる演技が印象にはあるが。

 

それにしても、この映画で出てくる四季折々の富山の田園風景はすばらしい。とくに航空写真がすばらしい。

 

映画は青年~壮年期の権次郎を演じた松崎謙二(映画のあとのカーテンコールでは仲代達矢の弟子だと自己紹介していた)が健闘していた。仲代達矢が危惧しているように、仲代よりも演技が上手かったと思う。松崎自身が実際に稲や小麦の花粉交配の実技を自分でやったのだそうである。この交配の子細な場面は非常に教育的でよかったと思う。

 

最後に仲代達矢の挨拶があった。「昨日、安保法案が国会を通りました。この映画を与党の人にも野党の人にもぜひ見ていただきたいと思います」

 

この映画は是非カンヌ映画祭などに打って出てもらいたいと思う。1人の日本人農業技術者が「緑の革命」に貢献したという世界に通用する話題であり、世界に誇れる日本の伝統文化と自然を映し出しているからである。

 

ストーリーを追うのに気せわしかったので、機会をつくってもう一度見に行かなければと思う。
     
    農学部学生や農学研究者必見と思う。

     
    
(森敏)

追記1:昔、サッポロビールの工場を見学したときに、そこの育種圃場に案内された。育種家が、圃場で丁寧にビール大麦を一本一本観察しながら、マークし、有望と思われる穂株を切り取っているのが非常に印象的であった。圃場現場では鋭い観察眼(直観)が必須なのである。
 
追記2:そもそもどういうルートでボーローグ博士がこの農林10号の種子を手に入れたのかが小生には疑問だったのだが、この映画で納得した。太平洋戦争で日本が敗戦後、アメリカ軍は科学技術将校を日本に派遣して日本の知的資源を収奪して回った。当時京都大学の育種学教室の木原均教授(のちに小麦の起源であるタルホ小麦を発見した)を訪れて、日本の小麦の優良品種を紹介されて、NORINTENを東北農試から持ち帰った、それがボーローグ博士にわたった、ということであった。
(木原教授はのちにカラコルム・ヒンズークシ探検隊を組織し小麦の起源である「タルホ小麦」を発見した、という映画を小生が中学生の時に見た記憶がある)
 
追記3: 仲代達矢氏は11月3日に今年の文化勲章を授賞した。しかし、芝居の公演日とぶつかって授賞式には参加できなかった、とのことである。芝居日を授賞式にぶつけたのだろう。これまでも文化勲章の授賞式に参加しないヒトが時々いるが、参加しない理由は意味深長である。

2015-07-07 10:26 | カテゴリ:未分類

最近、学術の動向(2015年6月号)に特集号として

内山真・日本大学精神医学系主任教授が

厚生労働省による

 健康づくりのための睡眠指針2014 ~睡眠12カ条~

というのを紹介している。

 

第1条    よい睡眠で、からだもこころも健康に。

第2条    適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。

第3条    良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。

第4条    睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。

第5条    年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を。

第6条    良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。

第7条    若年世代は世更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。

第8条    勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。

第9条    熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。

第10条 眠くなってから寝床に入り起きる時刻は遅らせない。

第11条 いつもと違う睡眠には、要注意。

第12条 眠れない、その苦しみを抱えずに、専門家に相談を。


 
      小生は年のせいか、最近とみに睡眠のリズムが狂ってきた。若いときから睡眠が浅く、今でも一日合計8時間は寝なければ気持ちがわるい。最近は入眠に時間がかかるので、入眠剤「マイスリー」の助けを借りて、すとんと入眠することにしているが、それでも夜中に2回は起きる。11時半に寝て3時半と5時頃に起きて、食事をして、7時から8時半までまた仮眠をする。そうしないと、昼の2時頃に強烈な睡魔に襲われる。
  

   これまでも睡眠には諸説があり、個人的体験もさまざまなので、誰の睡眠学説もあまり信用できないのではないかと漠然と思っていたのだが、どうやら上記の内山先生の箇条書きには、きちんとした学問的な裏付け(医学的エビデンス)があるとのことである。小生としては、第5条と第9条を合わせて一本とした睡眠に関する指導理念としたい。つまり「眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。昼間ねむたくなったら短い仮眠を取る」

   

小生が睡眠に関して一番恐れるのは、学会での講演発表などの、緊張覚醒していなければならない時間帯に、眠気に襲われることである。前夜が少しでも睡眠不足だといくら頑張っても講演では言語が明晰さを欠き、頭が多岐にわたって相関的に働かなくなる。そうなると質疑応答であらゆる角度から相手を言い含めたり反論したり出来なくなる。

   

睡眠に関してはいつも強く疑問に思っていることがある。それはいくら眠くても昼真は少しの仮眠(せいぜい20分)で、なぜ頭がすっきりするのかである。仮眠でなぜ頭の雑音(ノイズ)がシャッフル(棄却)されて、整序化される(つまりデフラグ)のかである。これは本当に不思議である。脳科学者はこれまで誰もその生化学的メカニズムを説明してくれていないのではないだろうか? 小生が知らないだけなのだろうか?

    

地球の自転に合わせた昼夜の「睡眠と覚醒のバイオリズム」は、げに玄妙な生物進化の産物だと思わざるを得ない。さまざまな精神病者の体験談を読むと、「不眠症」が原因か結果か判然としないのだが、ほとんどが「頭の働きが昼夜逆転していて、社会生活リズムに自分を適応矯正できない」という状況に陥っているようである。現代文明の産物はことごとくこの「バイオリズム」を異常に狂わせるような方向に発展(?)してきているので、いずれ世界人類は発狂するのではないだろうか、と思わざるを得ない。

     

だから、私見では、科学技術の発展も、<<その技術や製品が人の「睡眠と覚醒のバイオリズム」に生活を合わせるように矯正していくことに貢献できるものであるかどうか>> と言う観点からの「評価基準」が必要になってきているように思う。世界の若者(ばかりでなく誰もが!)が時間を忘れて夢中になっているコンピューターゲームソフトなどは最悪の文明の産物だと思う。マニアックな誹謗と中傷が支配するインターネット情報社会、ウイルスとアンチウイルスがやり合う留まるところを知らない闘いは、人類の精神の荒廃と崩壊過程を示しているように思う。

      

現代社会の危機の多くは<睡眠と覚醒のリズムが狂っている>ところから来るのではないだろうか。どこかの国の社会学者がそういう「睡眠と覚醒」という公理系で現代社会を切って見せてくれないだろうか。
  
     
(森敏)
追記1:上記で紹介したように、日本学術会議が出版している「学術の動向」6月号
高齢化社会の食と医療ー心身の健康のためにー
という特集を組んでいる。別に学術会議に「よいしょ」するわけではないが、小生にとってこれほど学問の成果が身近に感じられた記事は近年ではあまり例がない。以下のタイトルの簡潔な4頁ごとの記事が掲載されている。余計な出しゃばりな物言いに聞こえるかも知れないが、これらは全高齢者が必読の記事ではないかと思う。

超高齢社会と地域医療ー医療変革と社会変革ー  寶金清博
生活習慣と健康 ー疫学研究からー 玉腰暁子
健康づくりのための催眠指針2014 内山真
がんの予防はどこまで可能なのか 浅香正博
認知症の早期発見と予防 下濱俊

追記2:以下のようにスマホ依存症は激増し、若者の神経を蝕んでいる.一方で情報産業はとてつもない収益を計上している。 このことは以前にも述べたが、実に皮肉なパラドックスである。大学人を含めて誰も本気でこの流れを変えようともしない。
 
スマホ依存度高い高校生、心身不調の割合3倍に

20150714 1529分(読売新聞)

スマートフォンを頻繁に利用する高校生の間で、スマホに対する依存度が高いと、心身の不調を感じる割合が約3倍になることが、埼玉県立春日部高校の村井伸子養護教諭の調査で分かった。

村井教諭は、2013年、県内の高校生約600人を対象に、携帯電話の使用目的や時間のほか、心身の自覚症状など約70項目を4段階の程度に分けて回答してもらい、数値化した。

 その結果、高校生の9割がスマホを持っており、1日3時間以上使用する生徒が6割いた。無料通話アプリ「LINE」は4人に3人がほぼ毎日使っていたほか、ツイッターは6割が閲覧していた。

 心身の不調では、「眠い」「目が疲れる」「昼間でも横になりたい」「イライラする」などの項目で数値が高かった。

 


 

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