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2016-07-25 08:52 | カテゴリ:未分類

「先輩、お久しぶりです」

 

『いや長生きしちゃったよ。こんなに長生きすると思わなかったもんね。昔は55才ぐらいまで生きれば御(おん)の字だと思っていたもんね』                                                                         

 

「今どきはなかなか簡単には死なせてくれないですよ。どうやってこっそり死のうかと、日々頭がいたいですね」

 

『ひとりが年間3500万円もするオプジーボで健康保険適用で肺がんの年寄りが長生きできるかもしれない時代になっちゃった。実際それで助かってる友人もいるんだ。そのおかげで95才が100才まで生きられる世の中なんて、むちゃくちゃ税金食っちゃってほんとに若い世代に悪いよなー。国家財政が破綻してしまう。いや、もう実態は破綻してるんだけどね』

 

「ほんとにね! 老人が近代医療で長生きするのが <気が引ける> 世の中になっちゃったですね。だから自分で安楽死の装置を操作しても良い、ということを真面目にオランダのように日本でも法律で認めるべきだと思うよ」

 

『いやー、おれも前立腺ガンなどやったのでいろいろ考えさせられてんだ。最近そんなんでなく、一銭もお金がかからない死に方ってあるんだと気づかされたよ』

 

「ほんとに? どんな?」

 

『実は話せば簡単なんだ。高齢な老人がまだ健全な意識のあるうちに20日以上水だけ飲んで断食するんだ。確実にハッピーに自然に死ねるんだそうだ。「鑑真和上(がんじんわじょう)」とか生き仏になった高僧はそうだったんじゃないか? 実は知人の知人が最近それを実践したんだという話だ。もちろん誰にもそんなこといっていないでだよ。きれいな死に顔だったそうだよ。苦しまなかったと言うことだ。 どうだ? 理想的な死に方と思わないか? 現状では医師がそれをやると自殺幇助になりかねないから、病院じゃ無理だけれどね』

 
「そうかぁ、それは考えなかったナー。しかしそういう死にざまを20日間も黙ってみていなければいけなかったご家族も、相当な覚悟が必要だったんじゃないですか。本人も悟りをひらかないとできないことだと思われますね。ぜひ断食による自然死の具体的な経過を、それを目撃したひとには勇気を持って世の中に紹介してもらいたいですね。<本人の堅い宗教的信念による断食> ということで、宗教家ならば「信教の自由」ということでいまでも許されていいのかもしれないですね」
 
「断食による自然死のすすめ」なんて本のタイトルで、後期高齢者には案外ベストセラーになるんじゃないか』

  
        
(喜憂)
追記1:1974年にノーベル生理学医学賞を「細胞の機能と構造に関する発見」で受賞したベルギーのクリスチャン・ド・デイユーブは、1917年に96才で子ども達に見とれながら安楽死したと報じられている。よくよく悩んだ末の大科学者らしい生き方だと思う。
 蛇足だが、クリスチャン・ド・デイユーブは動物の細胞内顆粒である「ライソゾーム」を発見した。その研究に触発されて1970年代後半に植物の液胞の徹底した電子顕微鏡による形態学研究で研究で、小生達(西澤直子・森敏)は植物の液胞形成がオートファジーとヘテロファジーによることを明らかにした。
(2017年2月8日 森敏記)
追記2:その後「わが死生観」というテーマで、宗教学者の山折哲雄氏(国際日本文化センター名誉教授)が話した内容が、学士会が発行するNU7という雑誌に掲載されている。そこでは高僧たちは「断食往生」していたと述べられている。「自然死」というよりはこの昔からある「断食往生」という言葉のほうがなんとなく解脱して死を選択する状況にふさわしいですね。(2017年7月6日 森敏記)

 

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