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2016-06-20 06:46 | カテゴリ:未分類

   
焼却処理が完了 放射性物質汚染の下水汚泥 2016/06/01 11:02 福島民報 )

 郡山市の県県中浄化センター下水汚泥仮設焼却施設で31日、東京電力福島第一原発事故による放射性物質に汚染された下水汚泥の処理が完了し、施設の運転が終了した。
 施設は環境省が整備し、平成25年9月に1キロ当たり8000ベクレルを超える放射性セシウムを含む「指定廃棄物」の汚泥約1万1千トンの焼却を開始した。26年4月からは同8000ベクレル以下の汚泥約2万7千トンを県が処理した。
 汚泥は全て同センターでの下水処理の過程で発生した。焼却前、フレコンバッグ(除染用収納袋)に入れられ、センターの敷地内に山積みされていた。
 焼却灰約7500トンはフレコンバッグと貨物コンテナに入れて敷地内で保管している。このうち約7千トンは指定廃棄物で、国有化された富岡町の管理型処分場に搬入される見込み。8000ベクレル以下の残る約500トンは埋め立て処分できるが、県は環境省と対応を協議している。県は29年3月までに施設の解体を完了する予定。費用は東電に請求する。
   
   

去る20151121()午後900分~949分 に放映された
NHKスペシャル シリーズ「東日本大震災追跡原発事故のゴミ」
に関しては、このWINEPブログでも紹介したのだが、読者はすでに忘却の彼方だと思う。
   
     このときの現地の映像がすこし放映された『福島県・県中浄化センター』について、「放射能汚染した活性汚泥の焼却を終えた」という由の記事が、上記「福島民報」に掲載された。小生はこのNHKテレビクルーの取材のときに、頼まれて福島県郡山にある「県中浄化センター」に同行したので、今回の新聞記事には感慨深いものがある。小生自身もこの時カメラ撮影したので、以下に施設を簡単に紹介しておきたい。最近の義務教育では生活科学科での環境教育の一環として <下水道施設の見学> などが組み込まれているようなので、若い世代には以下の内容はめずらしくもないかもしれない。しかし60歳以上の日本国民は下水道施設を見学された経験のない方が多いと思うので。


  
スライド1

 図1.福島県「県中浄化センター」本館の最上階のガラス窓越しに北側の 微生物による汚泥処理施設 を俯瞰した光景。 画面中央部全面は広大な開放型の曝気槽。 
  
     
  図1の手前の暗渠(あんきょ)から下水を取水し、画面中央部の開放系の曝気(ばっき)層で好気的に菌体を培養して汚水成分を栄養源として吸収させて増殖させて、左上方の白い建家(図2)の中に生じた菌体(汚泥成分)を回収し、汚泥脱水機(図3、図4)で、水分を絞って濃縮汚泥とし、これを回収し(ここに菌体に取り込まれた放射能が回収される)、きれいになった:(生物的酸素要求量(BOD)が低下した)水は向かいの山がわの下を流れる阿武隈川に放流される。
 
  原発事故以来この県中浄化センターでは濃縮汚泥の一部を掻き取って1リットルのプラスチック容器に入れて(図5)、放射能測定器で放射能を測定している(図6)。以前にもWINEPブログで紹介したように、主としてI-131、Cs-134、Cs-137が現在でも検出され続けている。

 

 

 

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図2.汚泥処理棟

 


 
 

10%汚泥脱水機 

図3.汚泥脱水機 


 
 

 

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図4. 汚泥脱水機の横のふたを開けたところ。フィルター越しに絞り水がでている。

 


 
 

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図5.汚泥脱水機から掻き取った汚泥が入ったの測定用容器
 

 

 

 

10%bekurerumonita 

図6.放射能測定器。このなかに図5の容器が入っている。測定値が机上のコンピューター画面上上でピークパターンとして表示されている。 

 

 
スライド3 
図7. 奥の赤い建物が本館。玄関南正面に汚泥が入ったフレコンバックががずらりと約1万袋並んでいる。写真右の空き地は、これまでに焼却処理にまわされたフレコンバックがあったところ。図1の写真はこの本館最上階から北の山側を俯瞰したもの。 

 

  図7にみられるフレコンバック内の汚泥を順番に高温で燃焼して減容化していっているのだと所員に説明された。高温燃焼は民間業者が請け負っており、「平成27年までに終了すべし」という地域住民との契約であるので、その時点で解体するとのことであった(今回の福島民報での報道は、その住民との約束を忠実に実行している、ということの表明なのだろう)。この高温燃焼炉なるものは建屋全体が全面的に高い塀に覆われたもので、中身は残念ながら見学させてもらえなかった。高温燃焼で出てきた線量の高い飛灰を付着したバグフィルターや、高濃度に濃縮された焼却灰の取り扱いをどのように行っているのか非常に興味があったのだが、現在あいにく工事中という理由で見学は断られた。映像がテレビで放映されて、クレームがくるのをおそれたのかもしれない。この燃焼施設などの建設や運転費用なども教えてもらえなかった。上記の記事では汚泥焼却にかかった費用は東京電力に請求すると報じられている。当然だろうが、いつ実現するのだろうか? 

スライド2 
図8.燃焼した灰やバグフィルターなどの保管庫エリア。奥の方にももう一か所山積みされている。あと2カ所別のところにも。
 
    

  放射線量が高い焼却灰などはフレコンバックに詰められて、それらがこの時点ではステンレス製(?)の20トンコンテナに内蔵されていた。図3.の写真に見るように、このコンテナが20(横)x3(横)x4(高さ)x(2カ所)=480個ばかり集積されており、まだ増える様相であった。写真のコンテナを囲む緑のフェンスの脇で放射線量を所員に測定してもらうと毎時0.23マイクロシーベルトで、そこからはなれるごとに線量は低下していったが5メートル離れても 毎時0.12マイクロシーベルトあった。コンテナの中身は相当な放射線量と思われる。我々が訪問した昨年10月の時点では、このコンテナに収蔵された高濃度放射能含有廃棄物はこれをどこに持っていって貯蔵するかあてがないようであった。しかし今回の新聞報道では「このうち約7千トンは指定廃棄物で、国有化された富岡町の管理型処分場に搬入される見込み」とある。実際にはいつになることやら。
        
  
現在も発生し続けている低濃度放射能汚染汚泥は、許容基準が8000Bq/kg以下という暫定基準を満たしているかぎり、従来通りの扱いになるのだろう。しかしいくら合法的だと言っても、従来通りのルートで埋め立てや従来通りの燃焼炉での焼却にただちに持っていけるかどうか、不透明なところがある。しばらくはまだ敷地内に集積保管されるのではないだろうか。
             
  以前にも述べたように、福島県ではこの県中浄化センターと県北浄化センターは原発事故以来、忠実に活性汚泥の放射能値を毎日測定し毎月ごとにホームページ上に開示している。このモニタリング事業は地味だが非常にすばらしい活動だと小生には思える。なぜなら、もし東電福島原発が廃炉工程で再度爆発したりして放射能が飛び散れば、それが直ちに活性汚泥に反映されることが今や明らかになっているからである。このモニタリング事業は一種の原発の監視機構として機能しているのである。したがって福島第一原発の廃炉が続くまでずっと続けるべき事業だと思う。
 
      
(森敏)
付記:濃縮汚泥にいまだにI-131が検出され続けている理由については、別の機会に紹介したい。
追記:以下の記事です。ご参照ください。
福島県では依然として下水に放射性ヨウ素(I-131) が放流されている 
  
 


  
 
  



     

  


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