2016-05-15 14:14 | カテゴリ:未分類

  先日のBS1「原発事故5年目の記録」前編「被曝の森」で 小生たちが「浪江町」で採取したスギの樹皮の「放射能汚染像」が放映された。そのとき放射能汚染していない対照区に使った杉の皮は映像では「福岡」と書かれていた。

  


スライド4 
図1.左3本は浪江町津島地区の杉の皮:左から1番目が皮の裏側、2,3番目が皮の表側。

右3本は九州大学農場の杉の皮:左から1番目と2番目が表側。3番目が裏側。放映では「福岡」と表示されたモノ。


  
スライド3  
図2.のオートラジオグラフ。九大の杉の皮は裏も表もまったく写っていないことがわかる。

 
スライド2 

図3.杉の葉。 左が浪江町津島地区の杉の葉(採取後時間がたっているので枯れている)。右が九州大学圃場の杉の葉(入手直後のモノ)。 
 
 
スライド1 
 
 図4. 図3のオートラジオグラフ。津島のモノは外部被曝と内部被曝(葉の先端の新芽に転流)。九大の杉の葉もなにも写っていないことがわかる。

       

この杉の皮(図1)は実際には九州大学の農場の防風林のスギである。この九州大学農場に勤務している安彦友美助教に提供をお願いしたところ、3カ所の別々の防風林からスギの樹皮とスギの葉を上司の許可を得て採取して大量に宅急便で送って頂いたモノである。

    

放射能汚染していない対照区の放射線像を撮るのはよほどのことがないかぎり、我々研究者にとっては時間と労力の無駄になるので、撮りたくなかったが、NHKのデイレクター氏が「視聴者を納得させるために必要です」というので、スギの樹皮とすぎの葉を九州大学のモノを対照区として浪江町のものと一緒にカセットにセットして感光させた。(小生にとっては以前に京都の南禅寺のスギを対照区として撮像していたので、何も像がでないことはわかっていた)

 

図2にみるように、案の定、何も対照区では放射線像は出なかった。疑い深い研究者は、スギには放射性カリ(K-40)が若干でも含まれているはずだから、感度を上げれば像が出るはずだ、と思っているだろう。しかし今回の浪江町の放射能汚染したスギの樹皮は総放射性セシウム量が131643ベクレル/kg であり、葉の方は180979ベクレル/kgもあるものなので、IP-プレートでの感光時間がわずか3日間のものである。だから対照区では全く感光しなかったのである。

   

  我々の放射線像の撮像に関して、日頃から多くのかたにお世話になっているのだが、その方たちへの謝辞がBS1放映の最後に流される一連の謝辞欄(エンドロール)には掲載されていなかった。以下のかたがたにお世話になった。ここでNHKに代わって御礼申しあげます。

加賀谷雅道(写真家)、安彦友美(九州大学農学部助教)、広瀬農、小林奈通子(東大農学部RI施設助教)、中西啓仁(東大農学部講師)、田野井慶太朗(東大農学部准教授)

 

 
(森敏)

付記1.よく言われているように、もともと福島第一原発由来の放射性セシウムによってこういう高濃度汚染しているものでは、元来生物にとって摂取が不可避の天然のK-40による内部被曝の影響を考えることにはあまり意味がない。

付記2.放映されなかった内容でも、NHKのために、我々にとってはすでに遙か昔に実験を終えた当たり前のことを、再現してみせるということもいくつかやっております。NHKはデータの偽造をおそれてか、自分でサンプリングしたり、自分で立ち会って得た実験映像しか放映には採用しないようです。これはきわめて正しい報道姿勢ですが、研究者にとっては無駄な繰り返しごとになるので少々疲れましたね。

 

 


秘密

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