WINEPブログ
福島県の県中浄化センターと県北浄化センターは、毎日の濃縮汚泥中の放射能 (I-131, Cs-137, Cs-134) を測定するという、忍耐強い調査を継続して、ホームページ上で公開している。
以前にも数回にわたってこのWINEPブログで紹介したのだが、両方の浄化センターではいまだに濃縮汚泥に高い I-131 を検出している。図1(県中浄化センター)と図2(県北浄化センター)に、昨年(2015年)1月以来から今年(2016年)の4月までの、公表されている数値データをわかりやすく横棒グラフで示した(それ以前のグラフはすでに以前のWINEPブログで示しておいた:付記参照)。図が縦に長いので、見にくいのだが、がまんして図を縦にスクロールしていただくと、時々赤い棒グラフ(I-131)が出てくることがわかると思う。
図1では特に赤い棒グラフ(I-131)が7月27日に800(ベクレル/kg)以上を示している。赤い棒のピークはこの間大小12回起こっている。これに比べて青い棒(Cs-134 + Cs-137)は6月16日に800(ベクレル/kg)以上を示している。平素の青い棒は200(ベクレル/kg)前後で徐々に低下している。
図2では特に赤い棒グラフ(I-131)が5月23日に800(ベクレル/kg)以上を示し、なお7月10、11日には1000(ベクレル/kg)以上を示している。赤い棒グラフのピークはこの間大小8回起こっている。これに比べて平素の青い棒グラフ(Cs-134 + Cs-137)は200(ベクレル/kg)以下で徐々に低下している。
右の緑のグラフは雨量を示している。この雨量が高いときはその1-2日後に左の青い棒グラフがほぼ例外なく高くなっている。しかし赤い棒グラフと雨量との明確な関係は、原発事故直後をのぞくと、2012年から今日まで認められない。
以前にも推測したように、青い棒のピークは福島第一原発由来であるが、赤い棒のピークは、ピークの形状からして原発由来でなく、病院由来であると思われる。小生がブログでこのことを婉曲的に指摘しても、福島県の病院は研究や検診や治療に使ったI-131を、患者の自宅の水洗便所やや病院から野放しに平然と垂れ流し続けていると考えられる。放射性同位元素施設では使用したI-131をいったん貯留して、この核種は8日間という短い半減期なので、検出限界以下になるまで減衰させてから放流する義務がある。現状ではどこかで違法行為がまかり通っていると思われる。放射能汚染した活性汚泥は肥料にしてはならないというのが肥料取締法である。農水省や環境省や厚生省は何をしているのだろう。どこが所轄の官庁か知らないが、原発事故で放射能汚染防止対策はどんどん実質的にザル法になりつつあるようだ。
これらの図は非常に重要なデータなので、関係官庁の役人やマスコミの目にとめてもらうめにも、しばらく記事を更改しないでさらしたままにしておきます。グラフをくりかえし丹念に精査していただければありがたいです。
図1.県中浄化センターの濃縮汚泥の放射能汚染の推移

図2.県北浄化センターの濃縮汚泥の放射能汚染

(森敏)
付記1:以下の過去のブログをご参照ください。
- 2015/09/22 : 放射能は降り続けているのだろうか? 連載(6-2):2014-2015年の県北浄化センターの131I, 137Cs、降雨量の推移について再検討する
- 2015/09/22 : 放射能は降り続けているのだろうか?連載(6ー1):2014-2015年の県中浄化センターの脱水汚泥中の131-I,137Cs降雨量の推移について再検討する
- 2015/09/12 : 放射能は降り続けているのだろうか? 連載(5):2011年からの脱水汚泥中の134Cs/137Cs(比)の推移について
- 2015/09/07 : 放射能は降り続けているのだろうか? 連載(4):2011年からの脱水汚泥中のCs-137の推移
- 2015/08/26 : 放射能は降り続けているのだろうか? 連載(3) 2015年以降の放射性セシウム(Cs-137)の拡散について
- 2015/08/23 : 放射能は降り続けているのだろうか? 連載(2) 2011年原発事故以降の射性ヨウ素(I-131)の拡散について
- 2015/08/21 : 放射能は降り続けているのだろうか? 連載(1)2015年の放射性ヨウ素(I-131)の拡散について
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追記:(2016年7月16日 記)
今朝、後楽園の東京都戦没者霊園でしゃんしゃんと鳴く初セミのシャワーを浴びた。実に新鮮だった。隣接する礫川公園を散策すると、地面に全部で数十のセミ穴が散在してあり、セミの抜け殻も散乱していた。お互いに長い年月水平距離で数十センチ離れて深く地中にもぐっていても、今朝が出番だ!というシグナルでいっせいに地上に出て羽化するそのシンクロナイズド・タイミングの良さには、心底感銘を受ける。2013年の夏の福島市郊外の弁天山公園では、蒸し暑い夜中の10時頃、クマゼミが羽化の最中であり、それを懐中電灯を照らしながら一時間ばかりじっくり観察したことを思い出した。