- 2018/04/15 : メジロの巣材の高濃度放射能汚染(双葉町)
- 2018/04/03 : 写真家加賀谷雅道さんの写真展『放射線像』が広島のテレビ局2局のニュースで紹介されました!
- 2018/03/26 : 水浸タンポポの高い内部被ばく
- 2018/03/19 : 帯化タンポポ 第一号を発見
- 2018/03/14 : NHKスペシャル 「被曝の森2018」見えてきた汚染循環 をネットで再視聴できます
WINEPブログ
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昨年(2017)末に双葉町の空間線量毎時10マイクロ シーベルトの畑の木が、葉が散って枝だけになっていたのだが、よく見ると地上数メートルの枝に鳥の巣が一つかかっていた(後で野鳥の会の山本裕氏にこの写真を見せて同定してもらったところ、これはメジロの巣だということであった)。鳥がいなかったので、アームが長い枝切ばさみで枝を切って、巣を回収した。卵もなかった。周りの空間放射線量が毎時10マイクロ シーベルトとべらぼーに高いので、この巣材自身の放射能がどれくらい高いのかが持参したβ線専用のガイガーカウンターではわからなかった。大学に持ち帰って測ると毎時1100カウント( cpm)であった。これはIPプレートで丸一日感光すれば十分な放射線量であった。放射能を測定すると Cs-134とCs-137の合量で 毎時342800ベクレル/乾物重 と非常に高い濃度であった(表1)。
図3,4,6,7はこの巣を裏表の両面からオートラジオグラフに撮像したものである。枝の部分は放射線量が相対的に低いことがわかる。それに比べて巣材に使われた緑色のコケ類は、放射線量が高い。
この巣の中で卵が孵(かえ)って雛(ひな)になってしばらく経て巣立つまでの全3週間ももし居ると想像すると、積算での被ばく線量は確率的に多分染色体異常などが発生する領域になるはずである。果たしてメジロの雛は無事に飛び立ったであろうか?

図1。 メジロの巣 枝切ばさみで高い枝から回収して、巣の真上から見たもの

図2。 メジロの巣 樹皮の繊維、コケ、ビニールなどでできていることがわかる。オートラジオグラフにかけるときに平らにつぶした状態

図3。 図2のオートラジオグラフ。木の小枝はあまり汚染していないが(むしろ小枝でその下の巣材からくる放射線が遮断されていることがわかる)、巣材のコケ類の汚染のされ方が濃淡さまざまであることがわかる。 黒い部分はコケの根についた泥と思われる。

図4。 図3のネガテイブ画像

図5。 図2の巣材を裏側から見たもの

図6。 図5のオートラジオグラフ

図7。 図6のネガテイブ画像
表1 メジロの巣材の放射能

東京電力福島第一原子力発電所の事故で被ばくした日用品などを特別な手法で撮影し、目に見えない放射線を写し出した写真の展示会が広島市で開かれています。
展示会は原発事故の影響について考えてもらおうと開かれ、会場には、被ばくした日用品などを特別な手法で撮影し、放射線を写し出した「放射線像」と呼ばれる写真30点が展示されています。
写真家の加賀谷雅道さんが放射能汚染の実態を数値以外で表現しようと、放射線を白く写し出す装置を使って撮影したもので、より強い放射線はより白く写ります。
このうち、浪江町の公園にあったサッカーボールは、濃淡の異なる白い斑点のような模様に覆われ、放射能に汚染された状況をはっきりと写し出しています。
また、福島第一原発からおよそ9キロの場所にあった長靴も、白く写し出された放射線にびっしりと覆われています。
主催したグループの代表の西村恵美子さんは「震災から7年がたち広島に住む私たちにとって、福島の問題はどこか遠い話しになっているように思う。多くの人に見えない放射線を見てもらい福島で何が起きているのか少しでも知ってほしい」と話していました。
展示会は広島市中区の旧日本銀行広島支店で、4月5日まで開かれています。
原発事故から7年余り、目に見えない『放射線』を特殊な技術を使って撮り続けている写真家の作品展が、広島市で開かれています。
福島県浪江町の屋外に放置されていた長靴の写真には、特殊な技術を使い放射性物質が付着した部分が白く映しだされています。
広島市中区の旧日本銀行広島支店で開かれている写真展『放射線像』は、加賀谷雅道さんが東日本大震災発生の後、被災地で集めた生活用品や植物などの写真およそ30点が展示されています。
エックス線写真の原理を用い、目に見えない放射性物質の分布や強弱がわかるように工夫されていて、放射能汚染の現状を静かに訴えています。
【写真家・加賀谷雅道さん】
「忘れてもいいんですよ、考えなきゃいけないことは過去を思い出すときは思い出して、やっぱり未来だと思うんですね、子どもたち次世代のためにあの事故を教訓として何をすべきかという…」
写真展は、来月5日まで開かれています。
昨年(2017年)の春、帰還困難区域に指定されている浪江町津島地区で、車を転がしていると、道路端に水たまりがあり、そこにタンポポが生えていた。水に永く浸かると、たぶんタンポポは枯れると思われるのだが、ここは、雨が降った時は5センチぐらいの水たまりになり、天気になると、蒸発して水が引けるので、地面が乾湿を繰り返していると思われた。それゆえにタンポポ種子は、前年度の2016年の秋ごろに発芽後も、真冬を生きながらえて、何とか、けなげにも花が3輪咲くところまで生長していったのだと思われた。(図1)
タンポポを根の際で根を切断して地上部のみを採取して、新聞紙を何回も取り換えて、植物体を完全に乾かして、オートラジオグラフを撮像すると、高濃度に放射能が全身にいきわたっていた。採取時に根の部分を掘り出すのは困難だったので、根は写っていない。根のすぐ上の茎の付けねの部分は、20年ほど前に小生が高崎の原子力研究所で見出し discrimination center (デイスクリーミネイションセンター)と命名したのだが、オートラジオグラフではこの部分が非常に濃く撮像され(図2、図3)、泥のコンタミもあってか放射能が非常に高いことがわかる(表1)。

図1.水浸タンポポ

図2.図1のオートラジオグラフ

図3.図2のネガテイブ画像 花器の基部の種子が形成されつつある部分が強く写っているように見える。
表1.水浸タンポポの放射能

(森敏)
付記:Discrimination Center (D.C.)は師管と導管が複雑に入り組んでおり、この部分で、根で吸収された必須元素が、いったんとどまっていろいろな地上部の組織に分配移行する。また、光合成産物は、この部分にいったん転流してきて、ほかの部分に分配(discriminate)されていく。このD.C.という、小生の発明した生理学的「機能」を意味する造語は、残念ながら最近では、その複雑な微細形態学的な「構造」がポピュラーになったので、植物関連の論文では使われなくなったようだ。
図2.開花した東大農学部のシロバナタンポポ
図3 右の部分に帯化タンポポが湾曲して見える。極端に倭化した西洋タンポポである。
図4.図3の拡大図
図3.帯化タンポポを根元からむしり取った。まだ完全に開花していない。
文京区では東大農学部の南面石垣下の言問い通り側の道路沿いに、3月11日にタンポポの開花が認められた。この場所は、南に面していて石垣で温められるためか、いつも西洋タンポポの開花が早い。今年は例年になく開花が早かった(図1)
この日は詳細に観察すると農学部構内でもシロバナタンポポが開花し始めていた。(図2)
そこで、3月18日に、さっそく6時に起きて某所にタンポポの観察に出かけた。早朝にはあまり咲いていなかったのだが昼頃になると次々と咲き始めたので少し慌てた。
そして早くも今年の第一号の帯化タンポポを見つけた。(図3、図4、図5)。
WINEPの読者には毎年呼び掛けておりますが、身近に帯化タンポポを見つけたら、
あてに、発見場所、発見日、帯化タンポポや付近の写真を添付でお送りいただければ幸いです。心からお待ちしております。
タンポポといえども汲みつくせないものがあります。たかがタンポポ、されどタンポポ。
(森敏)
追記:タンポポの帯化(たいか)奇形については、もちろん放射線の影響かどうかを考えて、長期の観察を続けているものです。小生たちは、タンポポの帯化がエピジェネテイックな変異で次世代にも遺伝することを確かめて、一昨年の日本土壌肥料学会ですでに報告しております。
タンポポの帯化遺伝子は次世代に遺伝する
森敏・中西板井玲子・安彦友美・森淳・山川隆・丹羽勝・中西啓仁
土肥要旨集 第62集(2016)p151.
過去の以下のWINEPブログの記事をクリックしてご参照ください。
- 2017/04/27 : 二本松市の2箇所でタンポポの奇形集団を発見した
- 16/05/28 : 今年飯舘村で遭遇した奇形タンポポの群生地
- 2015/04/14 : 宇治平等院付近を散策した
- 2014/09/20 : 巨大イチゴと巨大タンポポは同じ機作の変異であると思われる
- 2014/06/10 : 読者による奇形タンポポ調査
- 2014/05/27 : 奇形タンポポの異常に高い発生率
- 2014/04/17 : 今年も東京でみられはじめた奇形タンポポ
- 2013/07/27 : ”ひまわる”と奇形タンポポの類似性
- 2013/06/17 : タンポポの不思議
- 2013/06/02 : (続報)東京の異常タンポポから福島の多様な奇形タンポポ発生の機序を考察する
- 2013/05/26 : タンポポの多様な奇形花房発見!! :植物に対する放射線の影響(II)
- 2011/05/17 : 放射能汚染タンポポの葉の放射線像
NHKスペシャル 「被曝の森2018」見えてきた汚染循環 を以下のネットで再視聴できます。
http://www.dailymotion.com/video/x6fu0tm
この番組は一度見ただけでは、かなり見落としたところがあった気がしたので、深夜の再放送を見たのですが、寝そびれて最初の15分を見られませんでした。しかも起き抜けで寝ぼけていたので、あまりよく見れていませんでした。
ところが一昨日この番組に0.1秒だけ写っていた女性から、上記のネットで動画が見られると教えられました。そこで、再度慎重にストップモーションで映像を再確認しながら見ました。2016年の「被爆の森」の映像よりも、住民からの批判にも、科学的批判にも、十分に耐えられる映像になっているのではないかと思いました。
福島の放射能汚染の現状については、世界の科学界ばかりでなく、世界のジャーナリズムが、その継続的な分かりやすい日本からの情報を待ち望んでいます。NHKにはぜひ海外版を作成して発信していただきたいと思います。
(森敏)
付記:小生のところにも、10数名の方から、この番組に対する感想文をいただきました。