2016-01-12 21:33 | カテゴリ:未分類

   小生らは2011年秋にジョロウグモに東電福島原発事故由来の110mAgを発見して以来、執念深くジョロウグモを採取して放射能の変遷を追跡している。その結果の一部が図1である。
      


ジョロウグモの110mAg,134Cs,137Cs jpeg--


   図1.ジョロウグモの体内放射能の年次変遷
 
   
        

  放射能値(ベクレル/キログラム乾物重)を測定したのは図1に示すように、110mAg(赤色)、134Cs(空色)、 137Cs(青色)である。当初(2011年から2014年まで)は主として飯舘村で採取していたが、2014年夏ごろからから除染業者による水田や牧場の表土剥離という手荒い手法の放射能除染活動が猛烈なスピードで始まって、生態系が無茶苦茶にかく乱されることになったので、それ以降は主として浪江町のほうで採取してきた。浪江町は除染活動が今でもまだ本格化していない。
      
  第1図では横軸に採取順に番号が振ってある。採取順位の1番~10番,13番は飯舘村のジョロウグモで、11番,12番,14番,15番,16番は浪江町のジョロウグモである。大体採取時期は各年次の晩夏から晩秋にかけてである。煩雑になるので細かい採取地区はここには記載していない(付記の論文には記してある)。
      
  結果は半減期が30年の137Csの値を見ると、ジョロウクモたちの採取時点での空間線量(煩雑になるので表には書き込んでいない)とジョロウグモの137Csの値とがごく大まかにではあるが、比例相関にあった。110mAgは半減期が250日であり、134Csは半減期が2年なので、まずジョロウグモの110mAgの値が急速に低下し、次に134Csの値も徐々に低下していることがわかる。しかし浪江町で採取したジョロウグモは微量だが2015年秋の段階でもまだ110mAgが検出される場合がある。
      
  浪江町でのジョロウグモでの134Cs 137Csは依然として高い値を示している。飯舘村でのジョロウグモの放射能値がかなり減少しているにも拘わらず、いまだに浪江町のジョロウグモが高く推移しているのはなぜだろうか? (最初から浪江町のジョロウグモを採取していれば、ジョロウグモのすべての放射能値が飯舘村のジョロウグモよりもはるかに高い値として検出されたであろうが、この避難区域には容易に調査に入れなかったのが悔やまれる)
       
  浪江町では本格除染が始まっていないので、今日に至るまで道路端の樹木や民家の庭や田畑で棲息している ≪ジョロウグモが食する食物連鎖の下位の小動物≫ がいまだに高い放射能を含んだまま棲息していると思われる。われわれは無断で森林に入ったり民家の庭に奥深く入ったりできないので(自警団や警察に警告される!)、やむなく道路端の主としてサクラの木などからジョロウグモを採取している。
      
  だから、民家とその周辺や道路と周辺森林を優先的に土壌剥離除染する現行方式によっていちばん明快に放射能含量の低下が認められる小動物は、食物連鎖の比較的上位にいるジョロウグモではないだろうか。飯舘村がそのよい例なのだろう。言い換えれば、ジョロウグモの放射能値の増減の傾向はそこの生態系の中で循環して生物が使いうる放射能の増減の傾向を示していると思われる。ジョロウグモは有力な「除染効果の指標生物」になりうると思う。
      
  たかがジョロウグモ、されどジョロウグモ、である。
         
(森敏)
付記:2011年から2014年までのジョロウグモとその他の全35種類の小動物の放射能測定データはこれまでも何度か紹介しているわれわれの以下の論文に収録しています(無料でダウンロードできます)。本日の紹介はその後の考察を兼ねた追加報告です。
Hiromi Nakanishi et al.  Discovery of radioactive silver (110mAg) in spiders and other fauna in the terrestrial environment after the meltdown of Fukushima Dai-ichi nuclear power plant. Proc. Jpn. Acad., Ser. B 91 (2015)160-174.

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