2015-10-17 09:08 | カテゴリ:未分類
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 図1。壮大な半円形に懸垂するのクモの巣の中に含まれているように見える小さな個々のクモの巣の集団
 
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 図2.大きな巣は半円形の巣は、小さな個々の巣よりも、太い糸で紡がれているように太く輝いて見える。




      福島では、小生らは、相変わらずジョロウグモなど昆虫を採取している。2011年9月に発見した原発由来の人工放射能である110mAgの消長をずっと追跡調査しているのである。執念深いのだ。

    

先日、早朝に福島県郡山駅から浪江町の立ち入りゲートに向かっていると、途中の二本松市で道沿いの50センチ幅の電線の幅に約200メートル以上にわたって延々とクモが網を張っている光景にぶつかった。太陽の逆光できらきらときらめいていた。よく見るとクモはこの同心円状の網の中心に必ず一匹存在し、個々の網の集団をさらに大きく包摂するようなクモの糸が半円状にこれまた同心円状にかけられていた(図1、図2)。後者のクモの糸は前者の糸よりも太く、網目が荒く作られていた。つまりダブルの網でクモは獲物を捕捉しようとしているのである。大きな網のほうはどのクモが作ったのかよくわからなかったが、クモの間で暗黙の協同作業で作られたものと思われた。それぞれの同心円の小網を外の大網によって補強しており、ちょっとやそっとの風圧では破れないぞ、という感じにも見て取れた。とにかく壮観なのである。

        

同乗の昆虫の専門家らと車をゆっくり走らせながらその様相について議論した。
             

「遠目でよく目えないんだが何グモなんだろう?」
                

「家の軒の電線の電柱に近いからオニグモかな?それとも大きくなって妊娠中のジョロウグモかな?」
    

「複雑に大きく網が張られているがどこにも破れた形跡がないようだね。あんなに明確に広い空間に群れを成して巣を張っているのに、クモはどうして鳥たちに食われないんだろうか?」
               

「夕方など鳥は鳥目だというから、間違えて網を突破したりしないのだろうかね? ところどころに同心円状に修復したばかりような細糸での網の張り方も見えるから、破れても案外ただちに修復するのかな」
                

「いくら鳥でもあの網にかかったら「鳥もち」みたいに、羽に絡んで気持ち悪くてバタバタして飛べないんじゃないかな。だから鳥は学習して警戒して近づかないんじゃないか」
                 

「昨年約100匹のジョロウグモの吐いた新鮮なクモの糸を約50mgばかり集めたことがあるけれど、ピンセットでも、指でも、なににでもくっついて、一旦くっつくとはがすのに苦労するんだよね。いったいどんな微細構造なんだろうかと思うよ。ジョロウグモの場合は1ミクロン間隔で粘着球というのがあるんだそうだが(付記1)。電子顕微鏡で見た人いるんだろうか?」
                  

「クモはえさがかかると、さささー!とクモの糸を伝わって餌に近づくよね。その時にもまったく糸が8本のどの脚にもひっかからないんだから、大したもんだ。クモの糸とクモの足のつま先には素晴らしい鉾と盾の関係ができていて、うまく組み合わさっても決して絡まないで脱着できるような反発の機構になっているんだろう。足先を顕微鏡観察しなくちゃあね」(付記4)
               

「もしジョロウグモなら、警戒色で鳥が寄らないのかもしれないね。鳥はものすごい遠視で、目の分解能が高いというから」
                  

「たしかに妊娠したジョロウグモは腹側に赤と黒と黄色と白で歌舞伎で観る石川五右衛門のような怖い形相を見事に描いているからね(付記3)。オニグモも腹側が「怖い顔」をしてる(付記2)」

                     

と、取りとめもない談義が続きました。他の調査グループと9時までに浪江町への入門ゲートまで到着しなければならないので、近寄ってじっくりクモを観察できませんでした。残念ながら次回の秋の調査時にはもうこの広大なクモの巣はいつものようにクモが出産して解体風化しているでしょう。

                      
(森敏)

付記1:大崎茂芳:クモの糸のミステリー 中公新書
       

付記2: いかつい形相のオニグモの腹側 (2011年11月渡利弁天山にて捕獲)
 
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付記3:威嚇するような図柄のジョロウグモノ腹側(浪江町にて捕獲)

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付記4:ジョロウグモの足先はフックの構造になっている。これでクモの糸を挟んで前に進んでいけるのだと思われる。このフックはクモの糸と接着しない成分で表面がまぶされているのだろうと想像する(CANON接写カメラで撮ったのだが、実体顕微鏡で強拡大で見る時間がない。どなたか観察してください)
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(森敏)
追記:10月25日に浪江町への調査の行き来にここを通ったのだが、すでにクモの糸は取っ払われて、ほんのわずかに、二、三カ所でたなびいているだけであった。実にはかない一生だと思った。
秘密

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