2015-09-07 09:44 | カテゴリ:未分類

今回は厳密を期したために、少しかたぐるしい学術論文風になってしまいました。ご容赦ください。
     
先に(連載3において)、第5図、第6図で2015年の福島県の県中と県北の2つの浄化センターの脱水汚泥に含まれるCs-137の推移を示しました。

      

それでは、2011年3月の東電福島第一原発事故以降、今日に至るまでの毎日の脱水汚泥中のCs-137の推移はどうだったのでしょうか? それを示したのが第7-1と第7-2(以上県中浄化センター。二つの図ではBq/kgの目盛のスケールが異なることにご注意ください)と、第8図-1と第8図-2(以上県北浄化センター。二つの図ではBq/kgの目盛のスケールが異なることにご注意ください)です。
     
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  図7-1に見るように県中浄化センターでは脱水汚泥のCs-137の濃度が H23年(2011年)の4月の1340Bq/kg から大きな変動を繰り返しながら序序に低下しはじめ、翌年(H24年)の110日に初めて264 Bq/kg という最低値を記録しています。しかしその後雨の降るたびに 20004000Bq/kg のピーク高を示しており、H24年の12月2日にやっと 344 Bq/kg という低い値を示します。一端下がった最低値が再び上がったのは、単にこの年の雨量が高かったということばかりではなく、後日連載(5)で述べるように、原子炉からの再放出があった可能性も考えられます。その後は図7-2(図の縦軸の放射能のスケールを図7-1と変えているのでご注意ください)に見るように雨の降るたびに1000 Bq/kg のピーク高を繰り返しながら100 Bq/kg のバックグラウンド値で現在に至っています。
     

(連載3の)図5,図6でも指摘したように、H23年以降の全期間を通じて脱水汚泥の Cs-137の濃度が高まるのは、前日か当日に雨が降ったかどうかに対応しています。また、H25年以降は降雨量のピークの大小そのものが脱水汚泥の放射能ピークの高さと、正の相関が見られます。
     
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  図8-1、図8-2(両図の縦軸の放射能のスケールを変えているのでご注意ください)に見るように 県北浄化センターでは平成23年(2011年)の原発事故当初から雨が前前実から当日に降ったあとに脱水汚泥のピークが高まっていることがわかります。図ではおよそ7月29日の 6158 Bq/kg と 8月6日に4445 Bq/kg という高いピークを示していますが、全体として図5,図6でも指摘したように、H23年以降の全期間を通じて脱水汚泥の Cs-137 の濃度が高まるのは、前前日から当日に雨が降ったかどうかに対応しています。また、H25年以降は降雨量と脱水汚泥の放射能ピークの高さと正の相関が見られます。

      

両浄化センターともに2011年3月の震災発生から翌月の4月中旬まで、放射能の測定データが得られていません(少なくとも開示されていません)。このことは、返す返すも残念なことです。あの原発事故での膨大な Cs-137 の陸域への放出拡散量が、巡り巡って流域下水道に流れ込み、汚泥処理場(浄化センター)に流れ込み、その終末産物の脱水汚泥にどれくらい含まれることになったのかなど、爆発初期からの細かな日変動の記録が残っていれば、さまざまな考察ができたのにと悔やまれます。
 
      しかし前々回の連載(2)に、図3、図4に示した放射性ヨウ素( I-131)の場合と比べて、図7-1や 図8-1 に見られるように、 2011(H23)4月初期からの1年間は脱水汚泥中の急激なCs-137濃度の低下傾向が顕著です。原子炉から一度拡散降下した Cs-137 が、森林や植物や土壌や住居に降り注いだものが、降雨のたびに 水に溶ける成分が少しずつ雨で洗い流されて下水道に流入したであろうと考えられます。特に緊急避難区域の外のエリアをカバーする県中浄化センターなどでは、初期のころの降雨時期や降雨量とCs-137のピークの高さとの相関が見分けにくいのは、当時あちこちで試験的に行われた民家の人為的な除染活動によって土砂とともに放射能が側溝などから下水道に流入したという撹乱要因も働いたと思われます。
   
    

大まかに脱水汚泥のCs-137のバックグラウンド値で見ると、県中浄化センターの図7-1の前半から図7-2の後半にかけて、当初の約2000 Bq/kgから約200 Bq/kgになっています。また県北浄化センターの場合は、図8-1の前半から図8-2の後半にかけて、約1000 Bq/kg から100 Bq/kgに低下しています。したがって、原発事故後4年後には少なくとも土壌に降り注いだ全 Cs-137 量の90%以上が急速に土壌と不可逆的に固着して、現在では残りの10%ぐらいが雨で徐々に洗い流されているのではないかと考えられます。
      
  なお、Cs-137の物理的半減期は30年なので、原発事故で発生し飛散降下した当初のCs-137の半減期減衰による存在量は現時点でも理論的にはまだ90%は残っているはずですので、この両浄化センターでの脱水汚泥のCs-137の急速なバックグラウンドの低下傾向は物理的半減期では説明できないことは明らかです。
  
(さらに詳しい考察は、後の連載で行う予定です)

            

(続く)

         

(森敏) 



秘密

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