2015-08-21 23:30 | カテゴリ:未分類
  

福島県には4つの下水道浄化センターがあります。

それらの施設は2011年3月の東電福島第一原発事故以来、恒常的に施設から排出される脱水汚泥の放射能を測っています。しかし欠測値が無くて、毎日測定値を開示しているのは以下の二カ所の浄化センターです。この二カ所の特性はホームページによると以下の通りです。

   

県中浄化センター:住所 福島県郡山市日和田町高倉追越89

(地図で測ると東電福島第一原発からの距離は西北西に62.5kmです

下水処理範囲:郡山市 須賀川市 本宮町 鏡石町 矢吹町の 88384世帯

脱水汚泥処分量:26423トン/平成20年(残念ながら最近のデータがありません)

    

県北浄化センター:住所 福島県伊達郡国見町徳江上悪戸46-1

(地図で測ると東電福島第一原発からの距離は北西方向に71kmです
下水処理範囲: 伊達市 福島市 桑折町 国見町の 50723世帯

脱水汚泥処分量:13953トン/平成20年(残念ながら最近のデータがありません)

      

地図で測ると県中浄化センターと県北浄化センターとの距離は南北に52kmです。

           

ちなみに脱水汚泥とは活性汚泥法で処理された下水道の汚泥を遠心分離器などで脱水濃縮したものです。(また、活性汚泥法とは:下水排水空気を吹き込んで活性汚泥発生させ,これを利用して,水中有機物分解し,浄化する方法大都市下水処理広く用いられている方法です。)
    
又、活性汚泥法では脱水汚泥になった段階で流入下水の放射性セシウム濃度の約3200倍にもセシウムを菌体が生物濃縮することがわかっています(付記2の文献参照)。
  
又、I-131の半減期は8日ですから40日も経過すればもとの放射能の32分の1に急速に減衰してしまうことを、以下のグラフを読むときには頭に入れておいてください。

           

以上はこれから連載で述べる内容をご理解していただくための予備知識です。読者には図を見ながら東電福島第一原発からヨウ素(I-131) や セシウム(Cs-134, Cs-137) がどのように毎日放出拡散しているか想像をたくましくしてください。多くの図を一気に掲載すると複雑になりますので、小分けにして順次連載で掲載していきたいと思います。

       

  さて本日、第一回目は県中浄化センターと県北浄化センターとで測定された値を使って、平成27年(2015年)直近の過去半年間に放射性ヨウ素(I-131)が脱水汚泥にどの程度濃縮されていたのかを図示します。赤い折れ線グラフが放射性ヨウ素(I-131)の脱水汚泥1kgあたりの放射能(Bq)を示しています。
   
  

                第1図             
スライド3
  
  第1図で明らかなように I-131 は1月初旬、2月初旬、四月下旬、5月中旬、6月初旬と、間歇的に県中浄化センターがカバーする面積に存在する88384世帯の家屋からの下水道に出現していることがわかります。
      
  
                   第2図
スライド6 
     
  第2図で明らかなように、I-131 は2月から4月中旬にまで時々わずかずつ、また5月20日前後から急激に上昇し6月初旬にまで検出が続いています。このことは5月20日当たりに東電福島第一原発でそれほど高温ではないが水蒸気爆発などが発生した可能性を示唆しています。ヨウ素の沸点は184.3℃ですので、どこかに滞留していた I-131 が高温で一気に気化し風に乗って拡散したのかもしれません。       
  図1と図2を比較してみると5月20日前後には両方の浄化センターで I-131 が高く検出されていますから、東電福島第一原発現場でそれほど高温ではないが水蒸気爆発などが発生し風向きによって北西や西北西に幅広く流れたのかも知れません。
       
  ここに示した図は直近のデータから作図したものですので、今後の行政当局による「避難解除」を押し勧めている広範な地域は、この間もほとんど放射能雲でうっすらとカバーされてきたのかも知れません。次回にも述べますが過去にもこの「ヨウ素ピーク」は頻発しています。今後も同じ傾向が続くものと思われます。
     
  ここで少しコメントしておきます:
  現在、エアロゾルフィルターで福島県や茨城県や宮城県などの各地で、局所的な空間線量が各大学や原子力機構によって測定されているようです。それらの点としての測定にくらべて、浄化センターの下水道はめちゃめちゃ広域をカバーしますが、脱水汚泥は3200倍と濃縮度が高いので、どこかで放射性降下物が下水に流れ込めば、毎日の測定値が確実に得られる利点があります。I-131 なども8日間という早い半減期減衰であるにもかかわらず、放射能運が流れたその日か次の日から検出されるので非常に感度がいいものといえます。つまり、空間濃度が極低濃度であるためにエアロゾルで不検出な放射能が、この脱水汚泥では濃縮されるために検出できているのです。事実ほとんどの放射能観測者は現在は I-131 が測定にかからないので、測定対象にしていません。しかしこういう微分的な(短期間で局所的な)測定にかからないからと言って、放射能が原子炉から放出拡散していないと言う理屈にはなりません。
             
(続く)
      
(森敏)

追記1:先ほど匿名の読者から
「医療用のヨウ素だと思います」というズケリという感じのご指摘をいただきました。この読者は医療関係者で、甲状腺などのシンチグラムを撮るのに、ご本人が I-131 を使用されているのかも知れません。このご指摘には心底まいりました。
  そういう視点から解釈すると、この図1,図2ばかりでなく、次回に述べる図3、図4などのデータは腑に落ちることが多々あります。この点は後ほど詳しく議論します。しかし、とりあえず、今しばらくは浄化センターのデータの提示を前に進めたいと思います。
  医療RIが十分に放射能減衰させずに病院から堂々と下水道にながされているということがわかったとすれば当該病院は重大な放射線安全取扱法の規則違反になるはずです。(2015年8月22日19時 記)
  
付記1:このシリーズで扱う全てのデータは公表値からのものです。
 
付記2:以下の参考文献です。
對馬育夫・小越眞佐司・山下洋正・原田一郎:下水処理場における放射性セシウムの挙動調査および溶出試験。水環境学会誌 36, 23-28(2013)

 



 
 


 






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