2015-07-17 13:00 | カテゴリ:未分類

    昨晩、退職後14年ぶりに東大農学部教授会の「暑気払い」に参加してきた。これは要するにこの春(331日)に無事東大を退職し、名誉教授の称号を得た人たちの今後のご活躍を祝っての、先輩や現役をまじえての懇親会である。小生の実感からいうと名誉教授資格の審査はやたら厳しいが、名誉教授になっても何のメリットもない。唯一、年に一度のこのような懇親会に出て「ただ飯」を食えるくらいである。それどころか、最近は執拗に毎年大学への寄付金を仰がれる。

   

   20年以上前にはやせていて精悍な助手(現在の呼称は助教)だった人たちがいまは現役の教授であったり、すでに退官されていたりする。現役のみなさんのおなかが出て少し太り気味なのが大いに気になった。メタボ症状ではないだろうか? デスクワークの激増が主な理由のようであった。切れ目のない研究費獲得のための申請書の作成や、学内外での自己や他人の「研究」や「教育」評価書の作成等のための作業で忙殺されているのであろうと推察した。そのために、皆さんあまり自ら「試験管を振る」時間が無くなっているようで「そんなことでいいのだろうか?」と少し心配になった。実験系の研究者は、自分自身による現象の観察が重要で、そこにこそオリジナルな発見の契機があると小生は信じるからである。余計な心配かもしれないが研究テーマが先細って行かないことを心から念じた。

   

退職名誉教授の多くが小生と同じく健康管理に気を付けておられた。そのことは、年齢による日々のどうしようもない体調の現象が、切実な現実問題であるからでもある。毎日の積極的な、歩き、整体師通い、ジム通い、などいろいろと工夫されていた。この「暑気払い」に出てこられていた退職教員たちは全体の5%にも満たないだろうから、むしろ出て来ておられない方々の健康が他人事ながら心配になった。小生もこれまで14年間でてこなかったので、何かといろいろ言われていたことだろうと思った。

   

退職して完全に雑用から解放された某先輩名誉教授が「ガロアの群論」の解法の研究をしていると聞いて、驚愕した。若い時から数学が強かった人は年をとってもなかなか頭が強靭なのだと思った。話が少しそれるが、太田朋子氏(国立遺伝顕名誉教授・東大農学部卒。81歳)が『分子進化のほぼ中立説』で、つい最近クラフォード賞(9000万円)を受賞されたのだが、その理論のご本人による説明が4ページにわたって学士会会報7月号にのっている。またネット動画で授賞式の講演が1時間にわたって放映されている。しかし彼女の説明には一切数式が使われていない。言葉でのみ説明が行われている。でも小生にはチンプンカンプンである。この理論の背景には深遠な数学が使われていることは素人の小生にも匂いを感じられた。実に数学のできる人は長生きするのだなと思う。(ガロアは若気の至りで20歳で決闘で死んだが)。
  
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クラフォード賞で受賞講演する太田朋子国立遺伝研名誉教授(動画からのパクリ)

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小生には理解不能な太田理論 (動画からのパクリ)
 

皮肉にもこの暑気払いの日の716日は安保法案(野党によれば[戦争法案])が強行採決により衆議院を通過した。この日は日本の憲政史上に汚点を残した「立憲政治の崩壊」の日と記されるだろう。安倍内閣は日本国が憲法という体系的な法律に基づく運営を行わない行政府や軍部の暴走を許す国になる道を拓いたかもしれない。並行して行政による一方的な現在進行形の <原発再稼働> の動きが、まさにその暴走の顕著な「表現型」である。

 

名誉教授の某先生は昨日の安保法案通過に反対するために一昨日は国会議事堂のデモに参加したとのことであった。「女性が多いのにびっくりした。しかし若者が少ないのにがっかりした」とのことであった。昨日の昼の衆議院での採決を自宅でテレビで見ながら小生も「ここまで長生きすべきでなかった」と感じた。デモなどに参加すればいっぺんに体調を崩すので行かなかったが、1960年の619日に岸内閣が強行採決した「日米安保条約」自然承認の日の国会議事堂前での徹夜の座り込みが走馬灯のように浮かんできた。白々と夜が明けて来たときの敗北感はいまでも忘れられない。当時、国会周辺に総勢5000人以上いたその東大生や教職員は、今皆さん小生と同じ心境だろうと思う。
    
(森敏)
追記: 学会や退職後の再就職で中国に出かける人も多くなった。彼らの中国に対する印象は、様々である。共通していることは「日本の10倍の人口であるので、急速に世界水準に学問レベルが挙がってきており、部分的にはすでに日本を凌駕している」というものである。台湾や香港のように、「100年後にはいずれ日本は中国の一省になるか、アメリカの一州になるかの決断を迫られるかも知れない」というのが実は小生の危惧する所なんだが。

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