2015-05-18 14:59 | カテゴリ:未分類

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図1.ジョロウグモの放射線像を撮るために袋に入れていたもの。
採取地点は浪江町塩浸,空間線量は毎時4-6マイクロシーベルト。
このクモの採取は加賀谷雅道カメラマンによるものです。

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 図2.上記図1のオートラジオグラフ。
   

  これまでに沢山のジョロウグモの放射線像を撮影して来たのだが、2014年末に投稿した論文が「掲載可」として受理されるまでは、このwinepブログや我々の近著『放射線像 放射能を可視化する』(皓星社)にはその撮像を掲載できなかった。学術論文としては、通常すでにどこかで一度でも発表された画像は、オリジナル論文には採用出来ない。幸い今回我々の論文が日本学士院の欧文誌であるProceedings of the Japan Academy Series Bに受理されての今年の4月号に掲載された。なので、今回ジョロウグモのオートラジオグラフを紹介し、その画像の撮像が如何に困難であったのかの苦労話を延々としたい。オートラジオグラフに興味のある方は我慢して読んでください。

 

  現地でよく観察すると、ジョロウグモは桜の樹を好んで生息することが分かった。クモを現地で採取すればわかるが、2匹以上を同じビンにいれると猛烈に暴れまわって共食いをするので五体満足なクモ(クモは八本足だが)でなくなる。だからクモは一匹ずつしか保管できない。もし透明のポリびんなどに保管すると、1-2日もすると、クモは網を張ってそれに60℃の角度で頭を下にして懸垂する。秋口に妊娠した雌のジョロウグモはおなかがパンパンに膨れており、2-3日暗所に置いておくと卵嚢をつくりそれを空中に懸垂する。自分自身は出産後の萎びた体になって8本の足を閉じて硬直して死んでしまう。また、クモを小型のZiplocなどの密閉したポリ袋に空気を抜いてぴったりと保存すると、酸素欠乏で、あっという間に体液を分泌して、死んでしまい、体が融解しはじめてしまう。図1に示すように袋の中は溶け出た体液だらけになる。このようになかなか扱いにくい生き物なのである。

 

  ジョロウグモをオートラジオグラフに撮るには、姿かたちを整えてIPプレート(X線フィルムに相当する)に密着するために扁平にしなければならないのだが、これがまず難しい。生きたクモは絶対に扁平にはならないし、死んだクモも硬直して立体的に折りたたまれているからである。それを上から無理押しして平らにしようとすると足や首ががボキボキに折れるか簡単に「自切」してばらばらに抜けてしまう。これはカニやエビなど節足動物をオートラジオグラフに撮るときの共通の困難さである。おまけにクモは長く圧着すると体液を出して死んでしまうので、図2のように体液が放射能を含んでいて、この放射能も共に感光してしまう。

 

  上の図1には袋に入ったままのジョロウグモの放射線像と、体液がにじんだ袋から出したジョロウグモの放射線像を示している。図2の写真と比較すれば、袋に入れたものは、袋の周辺にたまった体液がにじんでいることがわかる。今回の写真では一つとしてまともなオートラジオグラフが取れたものがないことを示している。それでも、
1.すべてのジョロウグモが放射能汚染しており、
2.おなじ地点でとったにもかかわらず一匹ずつの放射能が異なる。
3.漏れ出た体液も放射能汚染している。
などと、きれいな像が撮れていなくても、このオートラジオグラフの手法によっていろいろなことがわかるのである。

本格論文には以下の写真を載せた。
プレゼンテーション1-- 
 図3.ジョロウグモの放射線像(左:2011年捕獲)、(:右2014年捕獲)
  
  図3の左の写真は2011年9月に捕獲したジョロウグモで放射能は110mAg, 137Cs, 134Csを含んでいるものである。右の写真Bは2014年10月に捕獲したジョロウグモで137Csと134Csを含んでいるが110mAgは環境から物理的な半減期減衰で消滅してしまった時期のものである。だから図3の左の画像で見る3つの点々は110mAgがジョロウグモの中腸腺に含まれていることを示しており、137Csと134Csは体全体に含まれているように見えると想像した。実は、すでにかなり以前のブログでも述べたのだが、節足動物の場合は銅が酸素と結合して酸素の運び屋である「ヘモシアニン蛋白」の活性中心に存在している。放射性銀(110mAg)は銅と周期律表で見ると同族であるので、銅と入れ替わってヘモシアニンと結合して体中を回っていると考えられるのである。人間の場合はヘモグロビンの活性中心には鉄があり、酸素がこれと結びついて血流にのって体内循環しているのであるが、銀と鉄とは同じ周期律表の系列ではないので置換しない。だからヘモシアニンを持つ節足動物は強い銅の腸管吸収トランスポーターを進化的に持っていると考えられるのである。この銅のトランスポーターが放射性銀をも間違って腸管吸収するのである。
  
(森敏)
附記:我々のジョロウグモの研究論文は

Nakanishi Hiromi et al:  Discovery of radioactive silver (110mAg) in spiders and other fauna in the terrestrial environment after the meltdown of Fukushima Dai-ichi nuclear power plant. Proceedings of the Japan Academy, Series B, 91, 160-174 (2015)
というタイトルで以下に掲載されています。無料でダウンロードできます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjab/91/4/91_PJA9104B-03/_pdf

 

 


秘密

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