2015-03-14 18:37 | カテゴリ:未分類

KANO1931海の向こうの甲子園』という映画を見てきた。小生の母親が台北で生まれ育ったということを知っている知人が紹介してくれたのである。映画のストーリーは 戦前の台湾南部の嘉義農林学校(KANO)の当初全く無名の野球部が近藤平太郎監督の指導の下に甲子園に台湾代表として初出場して中京商業との優勝決定戦までいって残念ながら4対0で敗れたが、これは台湾では有名な高校野球史上素晴らしい歴史的事実である、ということを映画化したものである。当時の台湾は日本の領土であったのだが、日本人、台湾人(漢人)、台湾原住民の混成チームが “KANO” というゼッケンをつけて一丸となって、甲子園出場にまで急成長していった「青春」「友情」「根性」ものでもある。

 

  KANOの野球部の近藤監督を演じる永瀬正敏が熱血漢ぶりを発揮している。彼の振る舞いや目つきなどは、なぜかところどころ高倉健に似ていて、熟慮の末の演技と思った。ピッチャー呉明捷を演じるツアオ・ヨウニンが実にたくましく可憐で初々しい。

 

  小生にとってはこの映画に出てくる八田與一という人物と、彼が設計した台湾南部の大規模灌漑事業「嘉南大圳」(かなんたいしゅう)をこの映画で紹介していることに感銘をうけた。 彼は石川県金沢市の出身、東大土木工学科卒業の技師で「鳥山頭ダム」と周辺の灌漑施設を完成させ嘉南平野を台湾の一大穀倉地帯に変えた人物として日本の土木工学の歴史に名を残している。京都で有名な『琵琶湖疏水』を設計した工部大学校出身の若手技師田邉朔郎と共に小生の頭に刻まれている。

 

この映画は台湾では興行収入10億円の大ヒットしたのだそうである。映画の内容ではあえて一切「反日」の雰囲気を見せていないので、見る人が見ると逆に著しく「親日」に見えるのか、台湾内部には「親日的すぎる」という批判もあるとか。ところがこの監督の前作は1930年の台湾原住民による抗日暴動いわゆる霧社事件を扱った映画「セダックバレ」の監督で大成功を治めたとのことである。だから、映画の思想性に関してはステレオタイプに反日とか親日とか言わずにきちんと意識して仕分けして取り組んでいると思えた。話はそれるが、この時日本軍は暴徒鎮圧のために最初に毒ガスを台湾原住民に対して実験的に使用したといわれている。小生は助手の時に1969-71年に大学闘争に頻繁に使われた「催涙ガス」の研究をしているときにその歴史的事実を初めて知ったのである。

 

知人によれば現在台湾では大陸系の漢人が政治勢力を伸ばしており、好日や親日の印象を与える史跡や、史実を教科書から消去したがる傾向にあるとのことである。上記八田與一の現地の銅像などもいずれ破壊される運命にあるのかもしれない。

 

小生の母は台湾高女の出身でその父は台北中央郵便局長だった。これをステレオタイプに表現すれば、祖父は植民地勢力の先兵であったのだ。その祖父母の写真が小生の幼少時には、高知の自宅では壁に掛けられていたが、繰り返した引っ越しにより今では全く散逸している。年代を計算するとこの映画の舞台である1931年にはすでに母は高卒後すぐに京大生の父と結婚して京都に住んでいたはずなので、今は亡き母の台湾時代とこの「KANO」の映画とは時代が少しずれている。しかし、生まれて一度も母の生まれ故郷の台湾には小生はまだ行ったことが無い。なので、すこしばかりこの映画の中の台湾の風景には「郷愁」を感じた。ここも死ぬ前にいずれは巡礼しなければと思ったことである。これまでは熱帯性の病気が気になって、機会があっても決して東南アジア諸国に行かなかった。わが恩師Prof.Horst Marschner はアフリカのニジェールに教え子の招待で講演にいって、ドイツに帰国してわずか二週間でマラリアで死亡したということが、小生の心のトラウマになっている。おくびょうなのかもしれないが。。。
  
(森敏)
追記:以下のような現今の台湾の政治家の感想もある。

日本統治がもたらした恩恵も記憶を=台湾総統

[台北 25日 ロイター] - 台湾の馬英九総統は25日、日本による台湾統治終了から70年を記念する今年の「光復節」に際して演説し、日本が統治時代に行った悪いことを忘れない一方、良いことを記憶するのも重要と述べた。

総統は、日本の侵略により多くの命が奪われたことも、いわゆる「従軍慰安婦」などの問題が今日も大きな痛みをもたらしていることも事実と指摘。

そのうえで、嘉南大シュウや烏山頭水庫など日本が監督した2つの水利事業を挙げ「日本の統治は台湾に建設事業をもたらした。これにより台湾の農家は恩恵を受けており、それは当然肯定すべきことだ」と述べた。

さらに、今後は双方が「恩と恨みを区別する」態度をもち、議論していくことが必要だと述べた。

 

秘密

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