2014-05-23 12:54 | カテゴリ:未分類

「女のいない男たち」 村上春樹(文芸春秋)

 

の中で、珍しくも村上春樹が「まえがき」を書いており、そこにこの6つの短編小説集の創作の動機を書いている。


 

まえがき

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この短い作品『女のいない男たち』を書くにあたってはささやかな個人的なきっかけがあった。そのきっかけがあり、「そうだ、こういうものを書こう」というイメージが自分の中に湧き上がり、ほとんど即興的に淀みなく書きあげてしまった。僕の人生には時としてそういうことがある。何かが起こり、その一瞬の光がまるで照明弾のように、普段は目に見えない周りの風景を、細部までくっきりと浮かび上がらせる.そこにいる生物、そこにある無生物、そしてその鮮やかな焼き付けを素早くスケッチするべく机に向かい、そのまま一息で、骨格になる文章を書きあげてしまう。小説家にとってそういう体験を持てるのは何よりも嬉しいことだ。自分の中に本能的な物語の鉱脈がまだ変わらず存在しており、何かがやってきてそれをうまく掘り起こしてくれたのだと実感できること、そういう根源的な照射の存在を信じられること。:::::::::::::::::::::::::::::::
   

    
この村上春樹の指摘は、われわれ自然科学の研究者が全くの偶然に自然現象の法則性の発見に至る場合と酷似している。自らの下意識にいくつものクモの網を張って獲物を待っている人には、長い人生に一度ぐらいは幸運の女神が下りてくる場合があるのである。独創性というのはそういう心的状態のことを言うのであると思う。
 
(森敏)

追記:去る4月29日の朝日新聞お東京版に、米国の動物学者エドワード・S・モースが1877年6月に「大森貝塚」を発見した契機が
大森停車場を出た直後の、汽車の車窓からだった
と書かれている。多分彼は、日本に来て何か人が見つけていないものを新しい視点から見つけてやろうという新鮮な気持ちで車窓から自然観察をしていて「ん?何かあの地層は違うぞ!」と一瞬にして認識したに違いないのである。

秘密

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