2013-12-08 06:49 | カテゴリ:未分類
昨日、日本土壌肥料学会関東支部会が、東京大学農学部で開かれた。小生も以下の講演内容で15分しゃべりました。
 

東電福島第一原発による放射能汚染地域での小動物の放射能(Cs-134, Cs-137, Ag-110m)汚染の推移について

森敏・田中豊土・田野井慶太郎・小林奈通子・山川隆・中西啓仁

(東大農学生命科学研究科)

 

東京電力福島第一原発の暴発事故による陸域・海域汚染は、大量住民の被曝・避難という壮大な悲劇と引き替えに、研究者に対しては壮大な放射能汚染実験場を提供しているとも考えられる。あえてこの放射線の飛び交う過酷な環境の中から「自然の法則性」を見いだすことは科学者の責務であるだろう。われわれは、20111018日に偶然捕獲したジョロウグモから、陸上生物ではじめて、放射性銀(Ag-110m)の生物濃縮を見いだした。これは炉心溶融した原子炉中性子制御棒の銀の被覆剤に燃料ウラン(U235)の中性子が安定同位元素Ag-109に反応して生成する特徴的な異性核放射性同位元素である。その後、高濃度汚染地区から各種の小動物(クモ類、ゴミムシ類、トンボ類、チョウチョウ類、カタツムリ、トカゲ、カエル、ヘビ)などを採取して、放射性核種(Cs-134, Cs-137, Ag-110m)の経年的な消長を追跡している。トカゲ、ジグモ、ジョロウグモなどの同一地点で採取したサンプルを調べたところ、これら3種はいずれも放射性核種の体内含量の低下が著しく、半減期による減衰率よりも急速であった。特にジグモの低下が著しく、20111018日から201365日にかけて、計算上の半減期減衰値に対してCs-1340.32Cs-1370.37Ag-110m0.23であった。これは土壌表層で棲息するジグモでは土壌の放射能の挙動を他の小動物よりもより直接的に反映しているためではないかと思われた。すなわち原発由来の放射性セシウムは急速に土壌粘土(おそらく雲母)との固着に向かい、放射性銀は急速に土壌の下方に雨水と共に流下するので、土壌表層の土壌微生物やダニ類などによる吸収量が急速に低下し続け、つぎにそれらを食する、年次毎の生き死をくりかえすジグモの吸収量が低下しているのではないかと推察した。

 


(森敏)

 


追記1:

読者から[ミミズはいかがですか?]という質問があった。

実はミミズは腐葉土やどぶの泥などで生きていること。1か月ごとの福島現地訪問では、生息場所の乾湿が激動していることもあって、簡単にミミズが消滅してしまうこと、などで非常に自然生態系では扱いにくい生き物です。特に田んぼなどでは、表層がイノシシにあらされたりして放射能のかく乱が起こっているところが大部分です。それにイノシシはミミズが大好物と聞きますし。

 

しかしミミズは今後そのつもりで、人や野獣のかく乱が起こらないと思われる「定点観測地点」を設けて、経時的に追跡していく必要があると思います。いいご提案ありがとうございました。

 

ミミズは乾物重のほとんどが取り込んだ土ですので、生きているうちに、いったん絶食させて、これを糞として全部吐き出させる必要があります。そのためには一匹ずつ隔離して絶食させる必要があります。それが案外難しいです。以前に生態学の連中がミミズの放射能を分析しているのですが、これは全然あてにならない値です。体内の土の放射能を測っているので。この点に関しては以前の小生のデータを見てください。

2012/02/06 : 生きとし生けるものはすべて放射能汚染してしまったのである(ミミズの銀とセシウムについて)


 
追記2: 具体的なデータは以下の通りです。

追記3: 具体的なデータは以下の通りです。
追記4: 関東支部会での他の講演者で放射性セシウムに関する講演タイトルは以下の通りでした。
 

神奈川県内茶園土壌における放射性セシウム垂直分布の経時変化(第1報)

武田甲 ら(神奈川県農業技術センター北相地区事務所)

 

放射性セシウムの土壌実態及びコマツナにおけるカリウム施肥の影響

山崎晴民ほか(埼玉県農林総合研究センター)

 

湛水が土壌中放射性セシウムの挙動に及ぼす影響

若林正吉ら(農研機構中央農研・東北農研)

 

開花期以降に経根吸収されたCs-137の玄米内部における3次元分布

廣瀬 農ら(東大院 農)

 

黒ボク土水田での有機物連用による水稲の放射性セシウム吸収への影響

宮崎成正ら(栃木農試)



秘密

トラックバックURL
→http://moribin.blog114.fc2.com/tb.php/1788-4e946ece