2017-03-26 21:56 | カテゴリ:未分類
原発事故で住民が避難したあとの民家の庭には、観賞用の草花の種が毎年稔っては散り、稔っては散り、雑草も交えていろいろな草花が繁茂している。その内の一つにコスモスがある(図1)。

 

       コスモスを刈り取ってきて、放射能を測ってみると、意外に花の部分にも強い放射能が検出された。そこでオートラジオグラフをとってみたら、見事に全身の放射能が撮像された(図2,図3)。コスモスの葉の幅はわずか2-3ミリと細いのだが、くっきりと写しだされた。
 
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図1.民家の庭のコスモス 黄色い紙の上はこぼれ落ちたコスモスの種をセロテープに貼り付けたもの

 

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図2.図1のオートラジオグラフ。
赤丸内部は、落ちこぼれた種子をかき集めてセロテープに貼り付けたもの。

  
    
  

  
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図3.コスモスのオートラジオブラフ。図1のネガテイブ像
 

 
 

 
 
 
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表1。コスモスの部位別放射能濃度(表中ホウセンカ名は間違い)
 
   
  少し細かく組織をわけて放射能を測定したら、細い葉が一番強く汚染しているのだが、種子も茎と同ていどに高濃度に汚染されていた。図2や図3で、どの株も花の部分が強く汚染しているように見えるのは、花器には種子がごっちょりとついて放射線(ベータ線)が重なって撮像されているからである。図2と図3の左下に赤丸で囲んでいるのは、一つ一つの種子である。これら一粒ずつがくっきりと感光していることがわかる。つまり、これまでもこのWINEPぶろぐでも幾度となく述べてきたように、セシウムは次世代に移行する。
 
       現在 住民が避難して居ないので、コスモスは原発事故以来毎年タネを付けてはそれを周辺土壌に落下させて、また翌年に発芽させてきたことになる。コスモスは栽培種であるので、根からの養分吸収力(吸肥力)がつよく、根が浅いので絶えず表層の放射能汚染土壌から放射性セシウムを容易に吸収してきたものと思われる。避難する前の住民がカリを含む肥料をこの庭土に撒いていたとしても、5年間もこの庭で草花が生々流転(吸収枯死分解)を繰り返せば、すでにカリの効果も少なくなって野生に近い土壌条件になってきているのだろう。
 
 子細に見ればコスモスはいろいろ形態的な変異を起こしているに違いないのだが、いかんせん普段の正常な姿が小生の頭にはないので、異常かどうかがわからないのが、我ながら情けない。

 
       
(森敏)

2017-03-01 12:54 | カテゴリ:未分類
晩秋になると木々や草花が枯れ始めて種子が熟し、はじけ飛ぶ(図1)。
  
 
いのこずちjpeg
図1.かなりタネが散り始めたイノコズチ
  
  昨秋福島県浪江町のそんな藪の中の樹木の枝に、道ばたに自動車を止めてハニートラップ 

 (2016/09/17 : ハニ―トラップ クリックしてください)
 
を仕掛けにはいり、作業を終えて藪の中から道ばたに止めている自動車に帰ってきた時には、化繊でできた真っ白な防護服の下半身にはいろいろな雑草の種子がびっしりとついてびっくりした(図2)。これらの種子は拡大してみると、2本の鈎型の部分を発達させていて、安物の化繊服の表面のけばけばのぶぶんに見事に鈎の部分で引っかかっているのです(図3)。ヌスビトハギ、イノコズチ、オナモミなどです。(図2 は防護服から手ではたいてかなりの種子をはぎ取った後ですが、まだくっついてとれていません)


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図2.防護服からはたいてもとれないイノコズチの種子
 
      
  
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図3.鋭い2つの鈎をもつイノコズチの成熟種子

  
  

そこでイノコズチを採取して、オートラジオグラフをとってみました(図4,図5)。実際に放射能濃度を測定するとどの部位も結構な放射能濃度であることがわかります。左の固まりはこぼれた種子を集めてセロテープに貼り付けたもののオートラジオグラフです。
   
   表1に見るように種子はまだ結構高い濃度の放射能を持っています(表1)。サル、イノシシ、ハクビシン、タヌキなど野獣が異常に増殖して頻繁に荒れ地に出入りしているので、このイノコズチをはじめとする付着性種子は彼らの体にくっついてあちこちにばらまかれています。すなわち放射能が生物にくっついて拡散汚染しているわけです。 
 

     

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 図4.図1のオートラジオグラフ。左側はこぼれた種子を集めてセロテープにはり付けた画像。
 
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 図5.図4のネガテイブ画像

  
  

 
表1.イノコズチの部位別放射能濃度
 イノコズチjpeg 

 
(森敏)
 
付記:70年前の太平洋戦争終戦に近いころには、兵庫県の深江に中島飛行機工場があったためか、阪神間は絨毯(じゅうたん)爆撃を受けて民家が焼失し、さんざんなめにあったということである。野坂昭如の「火垂るの墓」にそんな場面があったように思う。そのためか芦屋市でも、高級住宅地での広い庭の洋館が焼夷弾でねらい打ちされて、消失して、その後ずっと草が茫々であった。そんなところは、庭に防空壕があって、我々小学生のがきどもの格好の「かくれんぼ」遊びの場であった。遊び疲れて家に帰るころは、衣服にイノコズチやオナモミがびっしりとついて、それをぜんぶはたき落とさないと母が家の中に入れてくれなかった。というようなことを思い出した。


2017-02-05 05:41 | カテゴリ:未分類

昨年夏に福島県浪江町で車を転がしていると、道路脇に低木の新鮮な若木がはえていたので、何気なくサンプリングして、大学に持ち帰った。サーベイメーターで測ると、葉の部分が異常に高い放射能値(660 cpm) を示した。葉の部分がこんなに高い内部被曝の植物はこれまで検知したことがなかったので、これは外部被曝のせいかな?と思った (図1,図2.)。

  

そこで押し葉にしたら、葉は実にペラペラの半透明で薄い紙のようになった。だからオートラジオグラフを撮ると実に鮮明な像がとれた。(図3,図4)。枝分かれしたどの葉も葉脈が明快にわかり、葉脈間もほぼ均一に内部被曝していることがわかる。外部被曝は全くない。

     

  木本(もくほん)で地上部がこんなに放射能が高いのはこれまで経験がない。あまり気にしていなかったのだが、この植物が生えていた土壌が腐葉土で可溶性の放射性セシウムを大量に含んでいたのかもしれない。あるいは、この植物の根のカリウムイオン・トランスポーター(膜輸送体)がかなり特異的にセシウムイオンも吸収するトランスポーターなのかもしれない。セシウムイオンの濃度を調べる必要が出てきた。この植物は意外にセシウムを濃縮する植物なのかもしれない。

 

  この植物の名前が長い間わからなかったのだが専門家に同定してもらったところ「ミツバウツギ」ということである。
     
  表1でもわかるように、この植物の葉や茎はとてつもなく高い放射線量で被曝をしていることがわかる。繰り返すが、図3,図4でわかるようにこの植物は全く外部被曝に特徴的なホットパーテイクルが見られない、すなわち全部腐葉土から放射能を吸収したものである。

      

 

 

 





ミツバウツギ低木jpeg 
 図1.ミツバウツギ。光っているのはセロテープ。
 
       
 
 
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 図2 ミツバウツギ 黄色のメモ用紙にガイガーカウンターでの測定値(cpm:1分間計数値)がかかれている。
 
     
    
 
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図3.図2のオートラジオブラフ(ポジテイブ画像)放射能がどの葉にも均一に分布していることがわかる。全部内部被曝である。

 




 
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図4。図3のネガテイブ画像 中心部の茎の分かれ目が強く感光しているのは、いつも説明していますが,ここは導管と師管が複雑に入り乱れている部分なので放射能の滞留量が多いからなのです。
  

  

       

表1 ミツバウツギの放射能 


ミツバウツギの放射能jpeg 
(森敏)
謝辞: ミツバウツギは若林芳樹(株アスコット)氏による同定です。ありがとうございました!

2017-01-25 04:09 | カテゴリ:未分類
 

  これまでに複数回キク科の植物を採取してオートラジオグラフを撮ったことがあるのだが、どうもキク科はセシウムの地上部への移行が悪い(移行係数が低い)のではないかとずっと思っていた。

 

  1昨年の秋あちこちにキクが最盛期を迎えていたので、道ばたに一株旺盛にはえているきわめてありふれたキクをランダムに枝の部分から数本採取した。

   
 
図1.道路端のノジギク
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 図2.図1のノジギクのオートラジオグラフ(数値はガイガーカウンターの値)
 
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 図3. 図2のネガテイブ画像
のじぎくネガjpeg  
 
     
   
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表1. ノジギクの放射能
    
     
        
   これを台紙に貼り付けてガイガーカウンターであらためてベータ線量を量ると枝ごとにかなりのばらつきがあった(図1)。そこで実際にオートラジオグラフを撮ると、枝ごとにかなり濃淡が出た(図2、図3)。

          

   多分、ある枝に対応する根は可溶性の放射能を含んだ土壌に接しており、それを吸い上げたのだろう。一方、別の枝に対応する根は放射能が固着した土壌に接しており、セシウムを吸収しなかったのだろう。

            

   組織を部位ごとにわけて放射能を測定したら、表1 のようになった。葉 > 花 >茎 の順に濃度が高いのだが、オートラジオグラフでは一番花が強く感光しているように見える。これは全体を押し葉にしたので花が花びらやその他の生殖器官で折り重なって凝集しているので、多重に放射線を発してフィルム(IP-プレート)が感光しているからである。葉の部分でも折り重なっているところは濃く感光していることがわかる。
       
  植物は根が土壌中に深いか、浅いか。根の生長点や根毛が土壌の放射能に接しているかどうか。などの微妙な差異によって、道管を通って地上部の対応する組織まで放射能が到達する量が極端に変動することが明らかになった。すでに漠然と明らかになっていることだが、こんなにはっきりと差が出るとは予期していなかった。
     
  従って、いささか専門的な議論になるが、
植物による放射性セシウムの「移行係数」なるモノは、根がどっぷりと浸かった水耕栽培でしか評価できないと断言できる。すなわち:
移行係数=地上部の放射性セシウム濃度/水耕液の放射性セシウム濃度
この値は従来から土耕栽培やフィールドで測定されている
移行係数=地上部の放射性セシウム濃度/土壌の放射性セシウム濃度
よりも、はるかに高くなると考えられる。

   
      
   
    
(森敏)
   
     

付記1.植物学者の牧野富太郎はこのキクを郷里の土佐吾川郡川口村の仁淀川河畔で発見して、のぢきく(野路菊)と新称し、ラテン学名に自分の名 Makino を付した。すなわち、Chrisanthemum morifolium Ramat. var.spontaneum Makino と命名した。
しかし彼はその後全国を旅しているうちに、この菊がいわゆる「家植菊」と同種に属し、既知の「小菊」と酷似して区別できないことを知った。これが栽培されていくうちに好事家によって大輪の様々な園芸新種に改良されていったのであろう、と記している。つまり、のぢきく が原種に近い品種であると認識した訳である。
牧野富太郎は発見したこの野地菊の写生図を、以下のように牧野植物図鑑(北隆館)の第12図版に重要な発見として特別に載せている。
 
まきのにじぎくjpeg 

この写生図を見てもわかるように、牧野は根の形態には全く着目していない。
 
追記1: イネに関して今回の原発事故による放射能汚染土壌水田からサンプリングしたイネに関しては、『移行係数』は0.57-0.017と300倍にもなる、大きな幅のばらつきがある。
2017-01-01 00:00 | カテゴリ:未分類

明けましておめでとうございます。 
     
  新春からえんぎでもないが、小生は最近もの忘れが非常に多くなってきた。顔は思い出してもその人の名前がどんどん頭から消えていく。高齢者が誰もが考えるように、特に脳の老化の進行を抑えたいと切実に思っている。親類にアルツハイマーで死亡した人物もいるので、なおさらである。単なるボケは一時的な記憶喪失であろうが、特にアルツは家族にばかりでなく、周囲の方々に、小生本人が自覚しないうちに、多大なる不快な思いをさせていることになるので、小生にとっては実に喫緊の課題である。

 

        と思って、最近送ってこられた日本農芸化学会の発刊する「化学と生物」をぱらぱらとめくっていたら、食品成分による脳老化改善・認知症予防の可能性 という総説が飛び込んできた。昔懐かしい生化学で習ったカルノシンやアンセリンなどという化合物の新しい機能として、認知症を遅らせる機能が発見されつつあるようで、実に慶賀の至りだと思う。

 

        以下ご参考までにあちこちから転載します。後期高齢者は必読かと。
   
1.
カルノシン と アンセリン の構造式 (:イミダゾールジペプチドと総称される)
     

カルノシン、アンセリンjpeg

 

2.

動物筋肉に多く含まれているカルノシンやアンセリンは、20世紀前半に発見されたジペプチドであるが、その研究は動物組織における分布や代謝に関するものが多かった。近年、これらは、様々な生体調節機能を有することが明らかとなってきた。わが国では、これからの高齢社会に向けて、カルノシンとアンセリンは、ヒトの健康維持に寄与する天然の機能性素材の1つとして非常に注目されている。(カルノシン・アンセリン研究会)

 

 

3.カルノシン

ヒトなどの哺乳類では、筋肉神経組織に高濃度に存在している。アヒルなどの一部の動物において N-メチルカルノシン (アンセリン)あるいはバレニンが多く見られる。生体内において酸化的ラジカル種のラジカルスカベンジャーとして働き、酸化的ストレスから保護しているといわれている。(Wikipedia)

 

 

4.アンセリン

哺乳類[1]骨格筋、および鳥類で見られるジペプチドであるヒスチジン基のイミダゾール環の酸解離定数pKa)は7.04であり、これが生理的pH水素イオン指数)の緩衝効果をもたらす[2](Wikipedia)

     

5.

「鶏肉には、高機能成分であるイミダゾールジペプチドがとても多く含まれている。特に、鶏胸肉には含有量が多く、100gあたり1gを越えるイミダゾールジペプチドが含まれている。このイミダゾールジペプチドには、筋肉の疲労を和らげる効果があることが知られていたが、筆者らが行った研究から脳老化に対しても改善効果があることがわかった。鶏胸肉は、高タンパク質で低脂肪であることから、生活習慣病が気になる高齢者にも、適した食材であると思われる。日々の食生活の中で、ほどよい頻度で鶏胸肉を摂取して頂くことを通じて、脳老化の改善が可能になると考えており、このことを証明する研究に、今後取り組みたいと思う。」{食品成分による脳老化改善・認知症予防の可能性}「化学と生物」2016年12月号)久恒辰博・東大新領域創成研究科准教授 の総説

 

 

  以上のように脳の老化の改善に、鶏の胸肉 が奨励されている。鳥肉は、ぱさぱさしてあまり小生の好みではないのだが、早速付近の安売り店で1kg購入してきたら、「こんなどこの産地かわからないものは料理しません」と家人にはけちょんけちょんだった。小生が大学に在職中にはイスラム圏からの留学生を引き受けたが、彼らは宗教上の理由と鶏肉が安価であることから、ほとんど毎食鶏肉を食べていた。統計を見たことはないのだが、案外モスレム圏の人たちにはアルツハイマーは少ないのかもしれない。是非疫学調査をして仮説を実証してもらいたいものだ。
     
  確かに、最近頻繁に鶏の胸肉を試食してみると、手羽肉と比べて胸肉は独特の粘っこいテクスチャーで、牛肉や豚肉のように、一度にあまりたくさん食べられるものではないようだ。その独特の風味こそがカルノシンやアンセリンによるものかもしれないが。胸肉をおいしくいただく調理法をホームページで勉強しなくっちゃ。しばらくは我慢して、舌が慣れるように、今年は人体実験してみようと思っている。何しろ酉年だから。

   

    


(森敏)
 
付記: そんなことテレビでガンガン紹介しているよ、と言われそうですが、小生自身はこの久恒辰博准教授の総説を読んでもっともらしいと思ったので、遅ればせながら紹介しました。


 
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