2013-10-12 05:53 | カテゴリ:未分類

    小生たちはジョロウグモの放射性銀(Ag-110m)の消長に関して、福島で追跡調査を行っている。
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 図1.ジョロウグモノ背中側の模様
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 図2.ジョロウグモの体側面の模様IMG_9287--.jpg
図3.ジョロウグモの腹側の模様

    

  今年の春には孵化後の小さなジョロウグモがあちこちのいろんな樹種の木にところ構わず網を張っていた。これらは車を走らせながらも容易に見つけられた。夏にかけてその網が少しずつ大きくなりクモも大きくなってきていた。

 

  さて、昨年の経験から、そろそろ大きくなっておなかがパンパンになって妖艶なおなかの模様が鮮明になってきただろうと予想して、先日福島の放射能汚染地帯にジョロウグモを採取に出かけた。

 

  ところが予想外にジョロウグモの数が激減していた。車を速く走らせていてはとても見つけられない頻度である。その上クモがいなくて巣網がところどころほどけてぼろぼろになって風になびいているものもあった。クモがいるほとんどの巣網のあちこちには捕獲した獲物がいくつかクモの糸でぐるぐる巻きにされて原形をとどめないでぶら下がっていた。これらのえさは自分のためばかりでなく子クモができた時のえさに確保されているのかもしれないと思われた(違うかな?)。クモは過半数がメスと思われ、写真のようにおなかがパンパンに膨らんでいた。この時期のクモは動作がのろく、素手で容易に確保できた。

 

  ジョロウグモを採取しているうちにわかってきたことは、多分出産の最終段階に入ったと思われる現在、彼らがぶら下がっている樹は圧倒的にサクラの木の葉が散り始めた枝であった。それか、ウメの枝。多分これらの落葉樹にはチョウチョウやガやアメリカシロヒトリなどの尺取虫や毛虫が葉を食って多数発生するので、それらが羽化して飛び立つ瞬間のものをクモの巣で捕獲を食べていたのかもしれない。あるいはこれらの樹木はクモが好きな匂いの物質(誘引物質)を発生していたのかもしれない。それにしても、今回は一つのサクラの木に一匹いるかいないかぐらいの分布確率であった。最初は多かったのだが、その後お互いに捕食しあったのだろうか、それとも小鳥たちに食われて淘汰されていったのだろうか。それとも少しだけわれわれの訪問の時期が時季遅れで、既に産卵した親クモはかなり死んでしまったのかも知れない。

  ただし、あとで気がついたのだが、川俣町の低地に下りてくると、まだ少し気温が高いためか、サクラの木にはけっこうジョロウグモクモが居た。少し高地では秋が早く来たのかもしれない。まだ紅葉は3分ぐらいだったのだが。

  実に皮肉なことだが、現在放射能汚染で住民避難地域指定されているところでは農家が不在で、多くのプレハブでビニールが破れて30センチぐらいの間隔のアルミの屋台骨(フレーム)がむき出しになっていた。この放棄プレハブのフレームに巣を張っているジョロウグモがけっこう居た。30センチぐらいの間隔の幅が巣を張りやすいのかも知れない。

 

  クモがよく巣を張る場所の法則性が見いだせるまで試行錯誤を午前中いっぱい費やしたので、3人がかりで一日85匹を採取するのがやっとであった。

  これらを、共食いを避けて1匹ずつ別々に透明なプラスチック容器に入れて研究室に持ち帰った(彼らは一緒の容器に入れると猛然と暴れだし、共食いをして、1匹しか残らない)。

  ジョロウグモはAg-110mの発見という情報を届けてくれたので、いささかゲテ物趣味かもしれないが、いまではとても可愛い。 これから数日の間にジョロウグモのメスたちが容器の中に網をかけて、彼らの何匹かが子袋を生み落して、そこから多数の子グモが生まれるであろう過程の観察が非常に楽しみである。
 

(森敏)

 付記1:以上のような知見は、ジョロウグモの研究者には常識なんだろうが、われわれには新鮮な驚きの連続だ。
 
付記2:はじめての方に。ジョロウグモによる放射性銀(Ag-10m)発見の記事は以下です。
  

  
追記1:昨日、皇居の周りを一周して桜の樹をはじめとする植え込みを検分したのだが、わずかに1匹ジョロウグモを採取できたのみであった。多分たぶん、桜の樹はアメリカシロヒトリの異常発生を警戒して年に一度消毒されているだろうし、一年中車の排気ガスを浴びていているだろうし、車の騒音も大変なものだし、春はサクラの花見の観光客が、嫌がってクモの巣を振り払うだろうし、と考えると、ジョロウグモにとっては最悪の生育環境なのだろう。そういうことをあらためて知らされた皇居一周であった。(2012.10.13.記)

追記2:福島でも皇居でも気が付いたのだが、ジョロウグモは結構明るく風通しのいいところを好むようである。かれらも太陽を浴びてビタミンDを、皮膚の表面で生産しているのかもしれない。

 
追記3:ジョロウグモは上向きにおなかを見せて頭を下向きにして鉛直に約30度ぐらいで懸垂している。その理由がよくわからないのだが、謎が解けたことがある。それは、ジョロウグモのおなかには、図3のように奇怪な模様があって、それが上向いているので、この文様で鳥などを威嚇するのではないかと思われることである。これは歌舞伎役者の苦み走った顔相にどこか似ている。

秘密

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