2013-09-09 06:25 | カテゴリ:未分類

           わが人生で長野の善光寺はなぜかこれまで全く縁がなかった。今回、善光寺とその門前町をひやかしてきた。良寛さんも生前にわざわざ二回も善光寺参りをしたようだから、死ぬ前に一度はお参りしておかねばバチが当たるかもしれないと殊勝な心で出かけた。 
 

         善光寺は歴史上10回(17回?)以上焼けており、おまけに本殿の現在位置は昔の位置から200メートルばかり北に移動しているということである。木造建築としてもヒノキ作りという以外は特徴が感じられなく、内蔵する国宝もないようで、あまり全体として印象深くなかった。

 

善光寺本殿の正面の幕に卍文字と一緒に刷り込まれているマーク(図1)が見たことがない植物図案らしきものだったので、ちょうど正午に勤行を終えて正面階段から降りてくる黄色い袈裟を着たお坊さんにマークの意味を聞いてみた。彼によるとこれは善光寺の建立者本田善光家の家紋で「タチアオイ」だということであった。家紋の右側の茎が縦に離れているが、左側が離れているものもあるとか。あまりこだわっていないとのことであった。おどろくべきおおらかさだ。このお寺は仏教上の宗派の分け隔てがなく、戒律などが厳しくないと見受けた。京都のお寺のようにぐだぐだと、弘法大師や法然や親鸞やなどの、歴史的由緒を語らないので、そぞろ参内する人たちも心なしか落ち着いた雰囲気だった。
 
  庭で休んでいてわかったことだが、庭の手入れや何やらの雑事はすべてを修業僧が行っているのではなく、いわゆる民間業者に下請けに出している(はやりの言葉でいえばアウトソーシング)部分もあるようであった。正午に行われた勤行のとき、2分ばかり本殿奥の仏壇の3体の仏像の「御開帳」(?)のときの幕の上げ下げが自動化されていた。そのとき、お坊さんたちは集団でお経をあげて太鼓をたたいていたが、小生には多少観光化してマンネリ化しているように感じられた。
 

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 図1.寺社では見たことがない本殿正面のマーク
      

  境内のまわりを歩いていると過去から現代に至るいろいろな人物の歌碑などがあちこちに建てられていた。その中に、なんと

 生きて仰ぐ

 空の高さよ

  赤蜻蛉          漱石

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図2.夏目漱石の句碑
  

というのがあった(図2)。これは夏目漱石が十二指腸潰瘍で喀血して命拾いした時に畳の病床で仰臥しながら読んだ句と記憶している。この句碑にだけ説明文の立札がなかった。なぜこんな句がここに、だれの意思で建てられているか想像をたくましくできて面白かった。高浜虚子だろうか?

  門前市はいろいろなものを売っていたが、長野県産品かどうか怪しいものが多いように思った。店前で手打ちしているそば屋でそばを食べてみたが、そば粉も具材も含めてその他の土産物の原産地は中国など外国産のものが多いのではないだろうかと少し疑問を持った。

 
  善光寺には祭事のときには何百万人もがお参りに来るということなのだが、そのありがたみを全く理解できないまま本殿を後にした。付近に大黒天という神社があってそこには国宝である等身大の寝釈迦(ねしゃか)がお祭りしているということであったが、なぜか幕が下りており見せてもらえなかった。記念にヘビ年生まれの携帯電話用ストリップを一つだけ購入した。

 

善光寺を出て東に200メートルばかり歩いて行くと「東山魁夷館」という美術館があった。東山魁夷(ひがしやまかいい)の絵についてはこれまでも、あちこちの美術館でぽつりぽつりと偶然に本物の作品に出会ったり、彼のいくつかの画集を見たり、自伝を読んだりしていたが、ぜひ本物の作品を一度にまとめて見てみたい、と思っていた。だからそこまで足を延ばしてみた。平成2年に彼が作品500余点を長野市(?)に寄贈し、それを今年は年6回にテーマに分けて展示するということであった。現在は“Imagine”というテーマで空想上の白馬が描かれている作品などが70点展示されていた。

 

至近距離でいろいろの作品を詳細に見ることができたので、感動した。なので、思わず二順して鑑賞してしまった。心が洗われたとしか表現のしようがない。東京からJR長野駅まで新幹線で1時間半と近くなったので、ここにはこれからも時間があればぜひ訪れてみようと思った。実は千葉の市川にも東山魁夷美術館があるが、まだ一度も出かけていない。灯台下暗し、まったく間抜けな話なのだが。

              

 

(森敏)
付記:絵画鑑賞の後、館内に東山魁夷にちなんだ「Kaii」というカフェがあったので、この店が推奨する「ザッハトルテ」という、ケーキを食べてみた。複雑な甘みと込み入ったテクスチャーで実にドイツ的でおいしかった。

秘密

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