2013-08-30 21:27 | カテゴリ:未分類

せっかく返還された基地の跡地土壌から、ダウケミカル社の崩壊したドラム缶が多数見つかった。ドラム缶のなかの残留物を沖縄市と防衛省でクロスチェックしたところ、両者の分析結果はほぼ一致しており、ダイオキシン類が見つかった。小生は二つの報告書を見た。
  
      残留物には、 中でも催奇形成能が強い2,3,7,8-ダイオキシン含量が高い。この化合物は森林の潅木を枯らす枯れ葉剤である2,4,5-T2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸)を工場規模で合成するときに不純物として含まれてくるものであるので、ドラム缶が2,4,5-Tを主成分の1つとして含んでいたことは疑問の余地がない。実際いくつかのドラム缶から残留2,4,5-Tが検出されている。
 
  実は分析されたダイオキシン類の中で、もっとも含有量が高かったのは1,2,3,4, 5,6,7,8-ダイオキシンであった。この塩素が八つ付いたダイオキシン化合物は日本でも1960年代に水田除草剤として一世を風靡した雑草皆殺し除草剤であるPCP(ペンタクロロフェノール)を工場規模で合成するときに不純物として含まれてくるものである。なので、PCPがドラム缶のもう一つの主成分として大量に含まれていたことであろうことも全く疑問の余地がない。しかし2つの報告書ではなぜかPCPの分析値がない。イネ科の植物の除草剤である2,4-D2,4-デイクロロフェノキシ酢酸)も分析値がない。この二つの化合物は埋蔵されているうちに土壌菌によって分解されたのかも知れない。 PCPは分析した形跡がない。
 

  これらの結果から、在沖米軍がベトナム戦争で不要になった枯れ葉剤や除草剤を沖縄に回収して、その後、もてあまして、一部を沖縄の民間業者に払い下げたが、あとは基地に埋めてしまった物と思われる。
 
  だから、まず汚染実態を明らかにするためには、どこに何をどれくらい埋めたのかの、過去の記録(または全軍労などの当時の基地労働者の記憶)を掘り起こす必要がある。米軍側では、ダイオキシン被害沖縄帰還兵への本国での補償裁判などの事情もあって、当時の記録の開示を米軍側から勝ち取るのはかなり困難と思われる。
 
  だから、現実的な方策は、返還基地や今後返還予定基地の土壌を、徹底的に掘り返して、すべてのドラム缶を回収する必要がある。もちろん汚染土壌も回収する必要がある。それらを一時仮置き場に積んで、除染対策を考えるのである。現在東京都が豊洲で行っている築地市場用の工場跡地の除染作業が大いに参考になるだろう。
 

  この沖縄の問題は、放射性セシウム汚染した土壌をどう処理すべきかという福島県の現在進行形の超難問よりも、技術的な解法があると思う。

 

 



ダイオキシン検出 識者「枯葉剤」2013725日(琉球新報)

【沖縄】沖縄市の米軍基地返還跡地のサッカー場から米国の枯れ葉剤製造大手企業の社名が記されたドラム缶が発見された問題で、沖縄防衛局(武田博史局長)は24日、ドラム缶内部の一部付着物や周辺にたまった液体から、国が定めた環境基準値を超えるダイオキシン類が検出されたと発表した。土壌の環境基準と比較した場合、付着物は基準値の1・1倍、液体は水質基準値の28倍を含んでいた。専門家は「枯れ葉剤由来のダイオキシン類だ」と断言している。
 防衛局は24日午前、沖縄市役所内で開かれた県や沖縄市との連絡調整会議で調査結果を報告。東門美津子沖縄市長は会合後、サッカー場敷地の全面調査を実施する考えを示した。3者は、今月末に出る沖縄市の調査結果を踏まえ、今後の対応を検討する。
 ダイオキシン類は、ドラム缶の全22検体から検出された。環境基準値を超過したのは2検体で、最も高い数値は毒性等量(TEQ)1グラム当たり1100ピコグラム(ピコは1兆分の1)。残りは62~1000ピコグラムと数値にばらつきがある。液体は同1リットル当たり28ピコグラムを含んでいた。
 米軍がベトナム戦時に使用した枯れ葉剤「エージェント・オレンジ」の主要成分「2,4,5―トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5―T)」は、22検体中13検体から検出された。一方、同じ主要成分の「2,4―ジクロロフェノキシ酢酸(2,4―D)」は、全ての検体から検出されなかった。
 結果から、防衛局は「オレンジ剤の断定は一切できない」と指摘。ベトナム戦時に多くの除草剤で「2,4,5―T」が使用されていたと説明した上で、「除草剤の可能性がある」とした。
 ダイオキシンの処理や分析技術を研究する本田克久愛媛大学教授は、枯れ葉剤特有のダイオキシン類の一種「2,3,7,8―テトラクロロジベンゾ(2,3,7,8―TCDD)」が多く含まれていることに着目。「この物質が7割を占めるのは枯れ葉剤由来のダイオキシンで間違いない」と断定し、汚染土壌の浄化を求めた。
 ドラム缶と液体のいずれからもポリ塩化ビフェニール(PCB)は検出されなかった。ドラム缶発見地点の土壌からは、基準値を下回る同1グラム当たり140ピコグラムのダイオキシンが検出された。基準値を若干上回るヒ素やフッ素が検出された。

 
(森敏)

付記:沖縄返還前の1971年に米軍の毒ガス輸送作戦である「レッドハット作戦」に小生は助手の時に琉球政府調査団の一員として田村三郎東京大学教授、小山内宏軍事研究評論家、和気朗予防衛生研究所研究員らと、米軍基地に立ち入ったことがある(肩書は当時)。これは沖縄のレッドハットエリアに保管されている致死性毒ガスVX,GB,マスタードガスなどの戦略化学兵器をジョンストン島に移送するオペレーションであった。当時小生は公害研究ばかりでなく催涙ガスやダイオキシン研究にもわが青春を費やしていた。
 沖縄返還後は、沖縄では毒ガス問題は終わったと思っていた。だから、今さらこのドラム缶埋設事件を聞いて、ちょっとうんざりしている。この件も含めて今後返還される米軍基地に関しては、日本政府の手で徹底的に土壌汚染調査ののちに除染しなければ、地方自治体予算で行うことは経済的にまず不可能だと思う。

追記1:沖縄の基地の一部返還予定が発表された。
米軍基地162ヘクタール返還へ 日米合同委、17年までに

日米合同委員会は5日、沖縄県の米軍基地キャンプ・ハンセンの一部約162ヘクタールを2017年6月までに所有者の名護市などに返還することを決めた。日米両政府は1995年12月に返還合意してから約18年を迎えることを問題視し、返還時期の明確化により返還計画を加速させたい考えだ。

 162ヘクタールのうち、55ヘクタールは14年6月末までに返還し、残り107ヘクタールを17年6月末までに返還する。所有者には一部民間の所有者も含まれている。

201395 1822共同)

追記2: 読者からのコメントによれば、返還される予定の162ヘクタールはほとんどがあまり使い物にならない崖地だということです。「返すなら平地を返せ」というのが地元の方の本音のようです。

 

 

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